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祓ノ血族(はらいのけつぞく)  作者: ハルヤ
【祓ノ血族】-本編-
122/193

【引き返せない者たち・後編】

冠崎家。


夜。


玄関の戸が開く音がした。


修一

「ただいま。」


由美

「おかえりなさい。」


いつもの声。


いつもの家。


けれど、修一の表情を見た瞬間、

由美は笑みを消した。


由美

「……何かあったのね。」


修一

「神崎組の件だ。」


その一言で、

居間の空気が変わった。


真奈

「退院か?」


修一

「ああ。明日には出られる。」


陸斗

「なら良かったじゃねぇか。」


隼人

「やっと一段落か?」


修一は、首を横に振った。


修一

「一段落ではない。」


真奈が、静かに目を細める。


修一

「あいつらが、霊力を強くしたいと言い出した。」


空気が止まった。


杏奈

「……本当に?」


修一

「ああ。」


由美

「それは……知らない世界に、踏み込むということね。」


修一

「そうだ。」


真奈

「親父。」


真奈

「止めなかったのか。」


修一

「止めた。」


修一

「知らない方がいい。普通に戻れるなら、その方がいいと言った。」


修一

「だが……。」

言葉が詰まる。


修一は深く息を吐く。


修一

「は~~~~~。」


由美

「……あなた?」


修一

「色々、問題が出てきた。」


修一

「親父にも相談せんといけん事だらけだ。」


由美

「ここじゃ解決できないことなのね?」


修一

「ああ。」


修一は、少し間を置いた。


修一

「まずは、桐生蓮。あいつの事だ。」


真奈

「あいつがどうかしたのか?」


由美

「桐生……。」


由美の顔色が変わる。


由美

「もしかして……。」


修一

「ああ。」


修一

「その、もしかするとだ。」


由美

「あぁぁ……。」


由美の目に、じわりと涙が滲んだ。


由美

「そうなのね……。」


由美

「やっとなのね……。」


胡桃

「お母さん……?」


修一

「まだ、そうだと決まった訳じゃない。」


修一

「ただ、確認した限りでは……そうじゃないかというだけだ。」


修一

「ここは、親父に任すしかない。」


由美

「そうね……。」


由美は小さく頷いた。


由美

「そうだったわね。」


由美

「母親としては、そうだと思いたいわ。」


由美

「麗華さん、本当に苦しんでるもの。」


真奈

「麗華……?」


真奈

「……桐生家か。」


修一

「そうだ。」


修一

「それと、結界核と封印具も戻さにゃならん。」


陸斗

「やば。」


陸斗

「頭が追いつかね~。」


隼人

「情報多すぎ。」


胡桃

「…………。」


胡桃は、黙ったまま俯いていた。


蓮のこと。

結界核のこと。

封印具のこと。


そして、神崎組のこと。


全部が、ひとつに繋がっていく気がした。


修一

「とにかく。」


修一

「今回、親父の所には全員行かなきゃならん状態になった。」


修一

「車二台で行く。」


修一

「陸斗、隼人。頼んだぞ。」


陸斗

「へ~~い。」


隼人

「俺もか……。」


真奈

「私が運転するぞ。」


陸斗

「…………。」


隼人

「…………。」


陸斗・隼人

「俺らが運転しよう。」


二人の声が、綺麗に重なった。


真奈

「なんでだよ!」


陸斗

「絶対寄り道する!!!」


隼人

「そこら中のサービスエリアへ立ち寄る!!!」


真奈

「くそ。バレたか。」


陸斗・隼人

「バレるわ!!!」


胡桃

「クスクス……。」


由美

「相変わらずね~~。」


張り詰めていた空気が、ほんの少しだけ緩む。


けれど。


修一の表情だけは、まだ晴れなかった。


親父に相談しなければならない。


それはつまり、

冠崎家だけでは判断できないほどの事態だということだった。

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