【動き出した歯車・終】
修一
「ふぅ~~~。」
静かな溜息。
修一
「……そうか。」
沈黙。
修一
「だがな。」
全員が顔を上げる。
修一
「あれは強くしてしまうと。」
「向こうも、お前達に気付く。」
空気が止まった。
修一
「今までは違う。」
「通りすがり。」
「悪戯。」
「偶然。」
「その程度の関係だった。」
修一
「だが――。」
「気付かれた瞬間から敵になる。」
静寂。
修一
「いいのか?」
玲央
「……。」
修一
「知らない方が普通に生きられる。」
「普通。」
「平穏。」
「当たり前の日常。」
修一は窓の外を見る。
修一
「それが一番平和だ。」
修一
「……そして。」
「俺達には、最も遠いものだ。」
神崎組止まる。
修一
「だからこそ。」
「お前達には、まだ選んで欲しい。」
修一は立ち上がる。
修一
「今日は帰るよ。」
「ゆっくり治しなさい。」
扉が閉まる。
カチリ。
静寂。
玲央
「…………。」
海斗
「……ズルくねぇ?」
鷹臣
「なんかさ。」
「·······。違和感しかなくね?」
紫苑
「……。」
玲央
「普通。」
玲央は俯く。
玲央
「そんなもん。」
玲央
「最初から無かった。」
全員止まる。
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冠崎コーポレーション本部
社長室
修一
「ふ~~~~~。」
「知らない········か。」
暫くして。
プルルルル。プルルルル。
内線が鳴る。
修一
「私だ。··········。通してくれ。」
暫くして。
扉。コンコン。
扉が開く。
巌
「どうだった?」
修一
「開口1番それか?」フッと笑った。
片手を上げて、人差し指を上へ指した。
屋上で話すとの合図だ。
2人は屋上へ向かった。
巌
「あ~~~~!!!硬っ苦しい世界だな!」
修一
「仕方ないさ。この世界は理不尽で出来ている。」
タバコへ火をつけた。
巌
「··············。だな。」
タバコへ火をつけた。
巌
「····で、どうだった?」
修一
「どっちが先だ?」
巌
「······。ふ~。まずは異形と結界核だ。」
「知ってたか?」
修一
「完全に知らなかった。」
「それどころか、存在すら知らなかった。」
巌
「……だろうな。」
沈黙。
風が吹く。
修一
「……気持ち悪いな。」
「早く言いたい事を言え。」
巌
「お前……。」
「デリケートって言葉知ってる?」
修一
「お前にデリケートな部分があったとは、今日知ったぞ。」
巌
「俺にもあるよ!そういうとこ!」
修一
「いいから早く言え。」
巌
「…………。」
巌
「息子……だったか?」
修一止まる。
修一
「分からん。」
「ただ。」
「体内の核部分が封印されている。」
「かなり凝縮されたエネルギー体だ。」
修一
「もし、生まれつきなら。」
「赤子の頃は小さかったかもしれん。」
「だが。」
「相当なエネルギーだった筈だ。」
静寂。
巌
「…………。」
巌
「そう……か。」
震える声。
巌
「そうだった……のか。」
膝から崩れ落ちた。
修一
「生まれた時。」
「……あまりにも力が強すぎた。」
修一
「焔に包まれて出てきたんだったな。」
巌震える。
修一
「お前は。」
「泣いている我が子を見て。」
「苦しんでいると思った。」
修一
「だから封印した。」
沈黙。
巌
「……あぁ。」
巌
「あぁ……。」
拳を握る。
巌
「それが。」
「それが、あいつを苦しめてたんだな。」
巌
「封印した事で。」
「力が無くなった。」
巌
「他の兄弟達は力が使える。」
「なのに、自分だけ無い。」
巌
「悔しかっただろうな。」
「苦しかっただろうな。」
声が震える。
巌
「……でも。」
「仕方なかったんだ。」
巌
「仕方なかったんだよ……。」
巌
「麗華も。」
「悩んで。」
「悩んで。」
「ずっと迷ってた。」
涙が落ちる。
巌
「今でも。」
「今でもあいつは。」
巌
「蓮也が戻ってくるって信じてる。」
修一
「蓮が蓮也かは、俺には分からん。」
「だが……しかし……。」
修一は考え込む。
修一
「う~~ん。」
「実はな。」
「親父にも話す事なんだが。」
「神崎組の連中。」
「霊力を強くしたいと言い出したんだ。」
巌止まる。
修一
「だが。」
「力は強くすればする程。」
「精神の制御。」
「受け流す力。」
「防ぐ力。」
「祓う力。」
「全部必要になる。」
修一
「攻撃だけじゃない。」
「我慢。」
「耐久。」
「受け入れる器。」
「それが必要だ。」
修一
「彼らに出来るのか。」
「耐えられるのか。」
修一
「まだ考える時間が必要だと判断した。」
「今は保留中だ。」
沈黙。
修一
「巌はどう思う?」
巌の涙は止まっていた。
巌
「そうか。」
「普通なら。」
「二度と関わりたくないと思うんだがな。」
巌
「……まずは適正だ。」
「そこを知らなきゃ始まらん。」
巌
「だが。」
「適正を見る時点で、もう関わる事になる。」
巌
「見込みはありそうか?」
修一
「あの異形へ立ち向かった。」
「普通は逃げるぞ。」
巌
「確かにな。」
二人は笑った。
修一
「土曜に親父の所へ行く。」
「その時に話してみるさ。」
巌
「ああ。」
「そうしろ。」
間。
巌
「……息子の事。」
「分かったら教えてくれ。」
修一
「分かっている。」
修一
「流石に鬼族は教えられん。」
巌
「はは。」
「そうだな。」
爽やかな風が吹いた。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
序章編はここで一区切りとなります。
次回から少しずつ、
止まっていた歯車が動き始めます。
冠崎家。
神崎組。
そして、
まだ見えていない世界。
ここから本編へ入ります。
引き続き見守っていただけると嬉しいです。




