36.ランド平原 最前線化
【サイン視点】
「うめぇ…うめぇよ…」
「そう!本当の食べ物は美味しいものなの!」
グォンドが泣き崩れるようにメロンの缶詰を食べる。結局グォンドはアミューの押しに負けて食べた。
果物の缶詰はアミュー用だからレンには売らなかったとはいえ、帰りの分が無くなるぞ…
「ふむ、これを見ていると私達のあげていた食事にも問題があったようだな」
「アミュー自身が言ってたが、飯は強くなるのに大事らしい。だからうちのアミューはイツボシシェルターの飯や、最前線級の兵器のものしか食わない」
「本当に君はお金があるのだな。私の所属していた研究所じゃ到底無理な話だ。そもそもダイナロイドを育てるなど分不相応だったということなのだな」
煙女と俺はもう普通に並んで話している。
「俺だって余裕綽々で稼げてるわけじゃないぞ。だからこうやって金を稼ぎに前線走ってんだよ」
「金稼ぎか。私にもできるだろうか」
「できるんじゃねぇの?ここまで来れるくらいなら最前線にでもうっかり入らなきゃ余裕で稼げるぜ」
「私はグォンドに連れられてここまで来たのだよ。私自身に戦う力はない。それに金になるものもよくわからない」
「俺の来た方向にグォンドが壊した機械兵器の残骸あったろ?あの装甲とかグォンドに引っ剥がしてもらって持って帰って売りゃいいじゃねぇか。それで食べ物買えばって…」
おい!なんでダイナロイドの育て方レクチャーしてんだよ俺は…敵だった奴なのに。
まあ、アミューが気にかけてんなら少しくらいはいいか。
「グォンドが私の言う事を聞くと思うかね?」
この煙女は何を話しても表情が変わらないし…飼い主含めて怖いよ。
「聞くだろ。ここまで一緒に来てんだ。少なくとも蔑ろにはしねぇはずだよアイツも…あと言う事を聞かせるんじゃねぇ。頼むんだ。俺はいつもアミューにお願いしている」
「私にはその違いがわからないんだが」
言った後に思ったけど俺も細かいニュアンスはよくわからんな。無かったことにしよう。
「やっぱ今のなしだ。今まで通りでいこう。お前自身が変わると良くない気がする。とりあえずお願いがあったらグォンドに言っとけよ。聞く聞かないはわからないけど言わないよりかはずっといいはずだ」
「そういうものか…ずっと聞いててなんだが疑問があるので聞いてもいいか?答えたくなかったら答えなくてもいい」
「なんだ?」
少し改まった空気に俺はドキドキする。
「何故君は我々の、研究所の人間を殺したのだ?君のその感じだと別にダイナロイドの育成方法を秘匿してるだとか、そういう雰囲気を感じられないのだが」
「…はい?」
「心当たりがないと言った顔だな」
「ないな」
ええ…兄妹が居候してた頃だよな…
研究所の人なんて珍しいお客さんがいたら絶対覚えてるはずなんだが。
「君の家に向かって帰ってこなかったんだよ。研究所の研究員も兵士もね」
わかったわ。
「そりゃアレだ。俺んちはアポ無しの奴らは全員罠で焼却処分してんだよ。もしかしたらそいつらトラップの中に遺灰と遺影セットで詰まってるかもな」
「そうか。ちなみにアポを取る方法は?」
「ねぇよ。俺は仲間以外に基本的に連絡先教えてねぇし」
「…インターホンくらい付けたらどうかね?」
「インターホン…今までの人生で必要になったことがねぇからなぁ…」
俺んちに来る奴は大体『こんにちは死ね』か『こんちには物資寄越せ』だったし。
「グォンド、お前はこれから美味しいものをもっと食べるべき。そしたらもっと強くなれる」
「…感謝する。そして襲いかかってすまなかった。あとサインを殺そうとしたことも謝る」
「許す!」
あっちはあっちで食事に一区切りついたっぽいな。あんなにも傲慢だったグォンドが一瞬で大人しくなってしまった。上手い飯って偉大だな。
グォンドが素直にアミューに頭を下げている。
アミューが勝手に許してるけど。
まあ円満に解決したのならいいや…
良くないな。やっぱもう1億欲しかった。
「サイン!」
アミューがこちらに向かって全力で走ってきた!
冗談ですやん!1億エルンなんてすぐ稼げるしグォンドはこれからいい子になるんだよねわか…
ドンッ!
アミューは俺にタックルし、その勢いのまま持ち上げ走り出した。ああ、何か敵が来たのね…
隣の煙女もグォンドが持ち上げ走る。
ほらな、やっぱりなんだかんだ気を使われてんだよお前も。
そして天井から複数の虹色の…生物兵器が降ってくるのが見えた。
アレは…
「《ビートルウォーリア》だ。」
ビートルウォーリアは最前線の生物兵器だ。最前線の機械兵器の装甲プレート纏い、武器を人間のように装備し攻撃してくる生物兵器だ。カナブンとやらがベースになってると聞いたことがある。あと豆知識としては大体装備している装甲プレートより、自分の体の殻の方が硬いという。
やべぇな。やべぇぞ。最前線生物兵器じゃんかよ。なんでこんなところにって…そうか。
グォンドが壁に激突した時の音で来ちまったか。
アミューが俺を地面に置き庇うように前に立つ。
「キチキチキチキチ…」
ビートルウォーリアの1体の持っていた、俺ですら見たことのない武器が光り輝き始める。ありゃあ…撃たれたら終わりだな。
あれが発射されたら洞窟内のもん全部蒸発するだろう。撃った本人も含めて…絶対に洞窟で使う武器じゃない。
アミューがそんな武器の発射を許すわけがない。アミューが足を地面にめり込ませ体を固定。両手を前に重ね俺のお宝だった武器に変形させる。
「懐かしいな。多連装爆雷フレシェットランチャーか」
「うん、ごめんねサイン」
かなり前にアミューに食された武器。残弾は確か6発だったはずだ。
武器の再現が終わったらアミューはそれを即発射した。
人間の胴体くらいのデカい弾丸が白い煙を吹きながらビートルウォーリアの集団に飛んでいく。その間ビートルウォーリアもただ立っているわけではない。
自身に迫る危機を回避するために散開していく。
しかしそれは間に合わない。この武器の弾丸…フレシェットは前方に広範囲で拡散する。
ドパァン…
火薬が炸裂する音と共に俺の鼓膜は破れた。
アミューの「ごめんね」はつまりこういうことだ。威力の高い兵器は大体爆音を鳴らす。
もう『キーン』と頭に響く音しか聞こえない…頭が痛い…気持ち悪い。多分耳から血が出てるな。液体が耳から垂れてる感触がする。
ビートルウォーリア共は体をたくさんのフレシェットで貫かれ…はしない。体に刺さってはいるが耐えている。さすがの最前線生物兵器だ。装甲が違う。
ただこれで終わりじゃないんだよその武器は。
飛び散ったフレシェットは今度は爆弾と化すのだ。装甲タイプの生物兵器の体内で小爆発が起こりまくる。
フレシェットを大量に浴びたビートルウォーリア共は膨らみ爆散していった。
奴らの持っていた貴重な最前線武器と共に…ああ、しょうがないとはいえ勿体ねぇなぁ。
俺はパワーアーマーに内蔵された鎮痛薬と回復薬紫を注射する。
煙女は爆音のせいか気絶してるようだった。グォンドに寄りかかってぐったりしている。ポケットに入ってた回復薬紫をグォンドに投げ渡す。乱暴に投げても取れるだろお前なら。
「煙女に使ってやれ」
耳は機能していないからちゃんと言えてるかわからないがそう言った。
ここに最前線生物兵器が来るということは、もうのんびりしてる暇はないのだ。急がないと激戦に巻き込まれる。そしてそれはアミュー1人になんとかさせるのはきっと無理だ。
速やかに離脱しなければ…
音が戻ってくる中アミューが別の方向の洞窟を指差す。あっちに行けということか?
「…ン!…っちか…く…」
待ってくれアミューまだ鼓膜が戻ってねぇんだわ…でもなんとなくわかった…
別の何かがあっちから来てんだろ?
またアミューが俺の前に立った。
しかしその洞窟から来たのは…
「ありゃ?アミュー殿とサイン殿でござる」
金髪の独特なパワーアーマーを付けた人間…ゴザルだ!えっ?美少女を5人連れてる。いや、あの美少女達は機械兵器か…関節が球体だ。
レンを助けたおかげか?運が上振れてきたわー!
とりあえず写真撮っとこ。
カクヨムの方の近況ノートにアミューが…('ω')




