33.ランド平原 出会いの地で…
【サイン視点】
レンに高級品を倍の値段で売りつけ、1億エルンゲッチュ。ウハウハな俺は浮かれて注意散漫になっていたのかもしれない。
今俺の目の前にいるは合成機械兵器。合成機械兵器は落ちたパーツを適当にくっつけた、なんでもありでポンコツな機械兵器だ。
今回俺が相対しているのは左腕がノコギリみたいなブレードで、右腕がキャノン砲になってる機械兵器だ。
「ガガガガガ…GAーーーー!!」
ブースター背中のブースターの接着がおかしいのかヨロヨロ…そして素早く突撃してきた。
ヤミイチ製ショットガンを撃ちながら横に飛び込み回避する。ノコギリが顔の横を通り過ぎる。あぶねぇなぁ。
ドゴォン!!
おかしいブースターで飛んだせいかその機械兵器は止まれずに壁にめり込んだ。隙だらけ…に見えるがここで油断をしてはいけない。
予想通りにキャノン砲を向けてきたな。発射されたキャノン砲は、これも無理やりくっつけたもので精度が悪く明後日の方向に飛んでいく。
精度が悪くても不用意に近づいたら当たりやすい。再装填できるような見た目ではないので後は壁から抜ける前にショットガンを連射する。
バチバチバチバチ…フシュー…
壊れたかな?
圧勝だったが少し弾を撃ちすぎたし、合成機械兵器が壁にぶち当たった音が大きすぎる。急いで離れなければ何が来るかわかったもんじゃな…
オオオオオオオオオオ!!
四脚の生物兵器が走ってきた。あれキメラの類だな。ツギハギで付けられたような長い手足を獣のようにバタつかせ走っている。
そいつは俺に気づいてないようで、俺がぶち壊した機械兵器に向かって突撃し捕食し始めた。
うーん…キモいな。食べ方がキモい。
おっと、眺めてる場合じゃないか。
ふぅ…ここまで来れば大丈夫か。
腹が減ってきたわ。俺も飯を食べよう。ただ、ゴザル特製避難所はこの辺にないのでサクッと保存食を取り出しかじる。美味い。
アミューには好物の果物缶だ。缶を後ろに投げると缶ごと丸呑みにしたのか缶が消えた。
3個くらいで足りるかな。
それにしても丸呑みか…アミューの口そんなに開いてるの見たことないけどどうやってんだ?
そしてまた隠れながら進む。
時に壁に体を押し付け気配を消し、時に岩陰に身を隠し、時には全力で走り抜けヤバそうな足音から一気に距離を取る。
結構最前線近くまで進んだんじゃないか?最初はどうなるかと思っていたが道中は順調だったな。合成機械兵器以降は弾を1発も撃ってないし。
そして地下深くに進む。前にも通った道だ。この先を進むと地上に続く登り坂があり、使える武器や残骸が数多く転がってる俺のお気に入りのポイントに出る。そこは昔から通ってるが、いつも何かしらレア物が転がっていることが多い。
今回はつよつよ武器があるといいな。前は無かったんだよな…あと前の時はこっそりと、いつの間にか付いてきていたアミューに拾った物を片っ端から喰われてたんだった。
…ん?なんだかこの辺りは機械兵器の残骸が多いな。機械兵器は基本的に生物兵器に破壊された場合、そのまま捕食されることが多い。
大体こういう時は近くに人間がいて、そいつらが撃破した残骸ってパターンなんだが…
(装甲が凄い力で殴られたような凹み方だな)
弾丸で穴が空いてるだとか、爆発物で焦げ、ひしゃげるみたいな痕跡もない。
心の中で俺はため息をつく。俺はもう察してしまった…どうせこの先にこれをやった奴がいて待ち構えてるんだ。
アミューみたいな知性ある生物兵器が「やあ、次の相手は君かな?」だとか、機械兵器によって全身サイボーグに改造されたゴザルが理性を無くして機械兵器達をボコボコにして暴れてるだとかそんなパターンだよこれ。
できれば後者でお願いします神様アミュー様。
なんて洒落た妄想をしていたら、程よく広い地下の広場の真ん中で一人立ってる人間?のような形をした何かがいる…えぇ?
そいつは真っ白いゆったりした服を着ていて、身体はまるでミツガレのような、美人スタイルだが顔がおかしい。半分が人間で半分が何か…まるで煙のようにフワフワしている。崩落した天井から差し込んだ外の光に照らされてボスキャラっぽい雰囲気がする。
「やあ、待っていたよサイン。まさか本当にここに来るとはね」
何故だ!気づかれてる!?まだ顔をほんの少しだけ出しただけだぞ!
あと半分煙女は俺のことを知っているようだ。俺はアイツのことを何も知らないのに。
こういう時はボロを出さないように何も喋らない方がいい。
俺は顔を引っ込め無言で相手の出方を待つ…いや、逃げるか?
「無視か。信用できないだろうが私は…私自身はお前と敵対するつもりはない。しかし私はお前に聞きたいことがある。隠れたままでもいい」
あの女すげー淡々と喋ってて怖いんだが。しかも見た感じ武器も…パワーアーマーすらも装備していない。まさかアイツがあのたくさんの機械兵器を?
「お前はどうやってあのダイナロイドを手懐けた?」
………アミューの話か?別に餌あげて仲良く一緒に色んなことをして遊んだだけだが。逃げようと持ち上げた腰を元に戻す。
「ふむ、逃げるのはやめて話を聞く気にはなってくれたか」
どうやって見てるんですかね死角の俺を。
「私は今はもう亡き研究所で産まれた人間と生物兵器のハーフだ。名前は87番…まあ私の話はどうでもいいな。私の産まれた研究所では知性ある生物兵器を利用し、人間の領域の利権を手に入れようとしていた。私自身はそんな程度のことで利権を手に入れられると思っていなかったのだがな。とある日、研究所の兵士が機械兵器に運搬されている複数の卵を見つけて奪って持って帰ってきた。それはダイナロイドの卵だと後にわかり研究所は大盛り上がりさ。しかし上の連中が『適当に孵化させて暴れられたら困る』だとか言い出したので、一つ卵を私が処置してこの場所に監視カメラを付けて放置した。卵をここに運搬している時、スカベンジズに情報が漏れて少しいざこざがあったがね」
棒読みのように淡々と長く喋るから話が頭から抜けそうだ。何?アミューの誕生秘話的な?いいよそういうのはどうでもいい。ってかもしかしてアミューはウチのもんだから返せって話か?
「そして孵化したダイナロイドは自分の産まれた殻を食し…いや、食す前にお前と出会いお前について行ってしまった。隠しカメラに映像にその映像がちゃんと残っていたぞ。しかし私の処置…卵の毒抜きは上手くいっていたのがわかった。研究所は早速自分達のダイナロイドを手に入れようと別の卵を毒抜きし孵化させた。そのダイナロイドは最初は大人しかったが、だんだんと暴れるようになり最終的に研究所は壊されてしまったよ」
返せって話でもないな?俺にそんな話を聞かせて何になる?
「…ここまで話しても返事がないのか。期待薄だがもう一度聞こう。どうやってあのダイナロイドを手懐けた?これは私個人が気になったので聞いているだけだ。別に方法を聞いてそれを実践しようとかという話ではない。全ては後の祭りだからな」
そういうことね。
「…別に何もしていないぞ。一緒に美味いもん食べて一緒に楽しく遊んだだけだ」
俺の返答を聞いて、女の、人間の顔の部分が少し笑ったように見えた。
「ああ、ありがとう。なるほどね。私達の研究所はその当たり前ができていなかっただけなのだね。納得できたよ…さて、私個人の目的はこれで果たされたのだが…」
ああ、この流れはアレだ。勘の鈍い俺でもわかるよ…
「私の研究所のダイナロイドが『人間ごときに従う同種を許せない』って言うんだ」
戦闘開始の合図だ。
風を切るような音が俺の耳元でする。そして後方で激突音が響く…アミュー?もしかして今ふっ飛ばされたのはアミューなのか?振り向くのが怖い。ナックラーにぶん殴られひしゃげたオクトパスの死骸が頭をよぎる。
しかし状況把握のためには振り向かないといけない…見るしかない。
「ご…フッ…」
アミューじゃないダイナロイドがそこには埋まっていた。俺の横から安心する声が聞こえてくる。
「今の攻撃は当たってたらサインを巻き込んでた。許さない」
アミューさぁん!!




