23.トラッパーの過去と今
【???視点】
師匠のトラッパーとの物資漁りが終わった。車の荷物を入れるスペースには荷物がみっちりだ。
「ふぅー、いい装備だったなこいつら。ごちそうさまでした。俺を狙わなけりゃ有名なバウンティハンターになれそうだったのにナムナム」
「死にかけの人間からバッグ引っ剥がす時すんごい顔で睨まれたわ…」
「俺を襲おうとしたこいつらがわりぃんだよ。だから逆恨みだ気にすんな」
なるほどね…そういう考え方をしてるの。
私達はまた車に乗り移動を再開する。
「でだ、俺の…過去か。賞金首のきっかけな?ずっと昔は俺も別の仲間と組んでたんだが…」
車に乗り込みすぐに昔話を始めた師匠…さっき襲われたばっかりなのに。ああ、師匠にとっては襲われることも日常なのか。
【昔のトラッパー】
「お前罠置くのやめろよ!味方も引っ掛かんだよ!」
「は?なんでそこに罠置いてんだ。誰も通んねぇだろ」
「罠だけしか上手く使えねぇって。前線の探索に役に立たねぇから荷物でも持ってろ」
俺の前の所属してた組織…というか規模はグループか。基準としては大体50人くらい所属が組織か。【アーガノード】という16人のウォーカーグループに所属していた。
ほどほどに前線を探索し物資を売り、衣食住の確保と装備の補充ができる、ウォーカーとしては成功しているグループだった。
俺はそこで嫌われていた。俺もこいつらが嫌いだった。俺の罠の美学をなんもわかってくれやしねぇ。俺の罠は芸術なんだよ。テメーらが理解できないだけで俺の罠は完璧だ。そう思っていた。
金が貯まったらさっさとこんなとこ離脱するつもりだったが、金が貯まる前にきっかけが起こる。
俺の罠で味方に死人が出たのだ。
もちろん俺はグループのみんなから銃を向けられた。
「ついにやりやがったな…」
「いつかやるとは思ってたんだ。だからさっさとコイツは殺しちまえば良かったのによ…」
「もう美学だアーチストだとか意味のわかんねぇ言葉で逃げさせやしねぇよ。最後に遺言くらいは聞いてやる。さあ…さあ!」
そうだな…遺言か…遺言ね?
ああ、遺言じゃないけど気づいたわ。
天啓ってやつじゃね?
「【俺の罠に引っ掛かる雑魚がわりぃ】」
「…死ね!」
怒ったグループの奴らが銃の引き金を引く…引くけど弾は出ねぇよなぁ?細工してあんだよこういうことが絶対あると思ってたからな。
「な!」
「ロックされてる!」
「落ち着け!近接武器用意!かかれ!」
俺はポケットの中のボタンを押した。
かつての仲間だった奴らの武器やパワーアーマーに仕込んでた爆発罠が破裂する。奴らは自身の装備の破片を至近距離で浴びバラバラになって死んだ。
「ああ、俺って天才じゃね?そうだよ。俺の罠がわりぃんじゃねぇ。俺の罠に引っ掛かるやつがわりぃんだ」
これに気づいてから俺は一人で自由にやった。
自分の思うままに罠を仕掛け、一人で前線にも通い、たくさんの生き物を殺し、機械も壊してきた。
賞金首になるのにはそう時間もかからなかった。
賞金首額が6500万エルンくらいになった頃、俺への恨み節しか来ない情報端末にとあるメッセージが届く。
『私の仲間にならないか?お前の罠で死ぬような雑魚はいねぇ。きっと楽しいぞ』
賞金首になった俺に勧誘メッセージ…俺を誘い出して殺す。そんなメッセージかと最初は思った。しかし箱を開けてみたら本当にただの勧誘だった。
所属していたメンバーのほとんどはバケモンみたいな奴らで、超有名人や極悪人として名高い奴ら…どこにも所属してないと思われてたソロウォーカーが数多くいる。
そして俺は【ウキウキ♪フロントラインウォーカー部】に入った。決め手は名前も含め面白そうだったから。
「今日からお前は【トラッパー】を名乗れ。後は好きにしていい」
リーダーの姉御が俺に新しい名前をくれた。
超かっけぇやん…俺に相応しい名前だ。
すぐに入って良かったと思った。
ここは俺を咎めるやつはいねぇ。何をしてもいい。
むしろ何もしなくてもいい。
何よりも…
「おー、今バウンティハンターの間で話題沸騰のトラッパー様やん!よろしくな!」
「賞金額がまた上がりそうですね。いくらまで上がるか楽しみです」
「トラッパー、シェルターの高級飯買ってきてやったぞ。俺の分はお前のおごりな?」
本当のダチができた。
俺を嫌ってるやつがいねぇ。居心地がいい。
みんな俺を正しく評価してくれる。
ここが俺の居場所だったか…!
…たまにイジられるけど許してやる!
【???視点】
「どや、感動しただろ!」
師匠がこちらにキラキラした目を向ける。
感動できる要素どこ…?
「感動はしなかったけど、とても興味深い話だったわ」
「そうか!興味深いか!ならいい!」
師匠が昔話をしてルンルンになってるとこ悪いが私は別のことで頭がいっぱいだ。そうか、師匠は…
(究極の自己中ってことね)
さも名言っぽく言っていた【俺の罠に引っ掛かる雑魚がわりぃ】。こんなの自己中以外の何物でもないわ。
でも実際に自分の罠でなんでも解決してきたから、それがまかり通ってしまっていると。
面白いけど本当に怖い人ね。
色々と考えていたら師匠が…
「どうした?気分でも悪いか?」
話しかけてきた。
「いや…んー…私も師匠みたいになれるのか不安になっちゃって。さっきのバウンティハンターの待ち伏せとかも最初から来るってわかってたみたいな……罠配置で………」
とっさの言い訳をしている途中で私は気づいてしまった。顔から血の気が引いていく。
師匠の…言い方はアレだけどポンコツな面が強すぎて、そして当たり前のように待ち伏せを返り討ちにしたせいで気づかなかった。
40人規模の襲撃をあっさり返り討ちにしたこと。
返り討ちを全部罠で行っていたことを。
しかも逃げながら敵を罠に誘導するのではなく、予め敵が来る位置に罠を…そう、まるで未来を見てきたかのような罠の配置だった。
後はもうボタンを押すだけで勝ち…
とんでもない神業である。
師匠が眉を八の字にして答えた。
「まああれだ。俺は今日ここで襲われると思ったからいい感じの待ち伏せの場所に罠を置いただけさ。これまでの経験的に何となくな。お前もきっとできるようになるぜ?」
フォローのつもりなのか、師匠が私の頭を撫でながら言う。
「セクハラ…?」
「おいおい!これアウトなんか!俺のダチを参考にした慰め方なんだが…」
「人によっては嫌うわね。私は別に構わないわ。いい子いい子されるような歳じゃないけど」
「難しいぜ!とりま結果俺のようになれなくてもいいさ。でも俺の罠の知識は全部くれてやる。それをお前の好きなように活用できたらいいんじゃねぇか?」
かっる〜…師弟関係ってもっとこう…
(俺のようになれ!)
的なやつじゃないのかしら…
まるで近所の子供に少し教えるくらいな軽さだ。
…少し気になったことができた。
「ねぇ、なんで弟子なんて取ろうと思ったの?師匠の性格的にそういうの興味なさそうだけど」
「そうさなぁ…俺も誰かと一緒に行動したかったんだ…ボッチは飽きた」
ええ〜…そんな理由?
世界で一番人間殺してる人間のセリフじゃないわ。
「おいおい、似合わねぇ理由だなぁって表情に出てるぜ?」
「ふふっ、ごめんなさい」
「…ダチに仲間ができたんだよ。今の俺が一番の親友だと思ってるやつにな。そいつが仲間と一緒に楽しく暮らしてる話を聞いてたら急に寂しくなっちまったんだ…でも俺と…一緒に暮らしてるくれるやつはいねぇ。原因は賞金首になっちまった俺のせいってのはわかってる。こんな俺と一緒に過ごせるやつなんているはずがねぇって…」
…自分の過去を語ってる時より真面目な顔になってる。ちょっと内容がトンチンカンな気もするけどツッコまないでおこう。
「そんな時にピエロが人身売買を始めたんだ。最初は俺だって買うつもりはなかったさ。でもなんとなく見てたら…腐らせておくには惜しい程の才能を持ったお前を見つけてしまったんだよ」
「才能って…写真を見ただけでしょ?わかるものなの?」
「ああわかる。俺は罠の勘に関しちゃ最上級を自負している。その俺が保証するよ。お前はすげー罠使いになれる」
…罠の勘て…まるで私が地雷女みたいな言い方じゃない。
でも師匠の保証か…自分じゃわからないけどなんだか自信が湧いてきた。
「でもいつだって師弟関係を解消してくれて構わねぇからな?俺と一緒に過ごしてたら間違いなく賞金首になるだろうし、ならなくても狙われることになるはずだ…もちろん解消した場合は物資もちゃんと渡して解放する…どうだ?」
師匠が悲しそうな顔をしてこちらを見てる。
師弟関係を解消したくないのが丸わかりだ。
本当に面白い人ね。
でも私の意思は最初から決まっているわ。
私にとってこれは最上級の成り上がりチャンスだ。
バウンティハンター?全部返り討ちにしてやればいいのよ。
「師匠、それは師匠についていくって決めた時点で最初からわかっていたことよ」
「!」
「私もバウンティハンターを返り討ちにしてこう言えるようになるわ…【私の罠に引っ掛かる雑魚がわりぃ】ってね」
「…ハハッ!お前を弟子に選んで良かったよ!」
師匠は今日一番嬉しそうな顔で笑っていた。
【数日後の鍵屋】
『ってなわけでお涙ちょーだい話してたら、他の罠解除しち忘れちまった。解除頼むわぁ。解除方法は添付ファイルについてるから。新作のトラップもあるんだぜ?解除に失敗したら感電死するから気をつけてくれ。いやぁ〜、やっぱり持つべきものは友達と弟子だな!アッハッハッハッ!』
「ふん!」
バキッ!
「あなたその情報端末高いんじゃないの?」




