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アルティメイト ~最凶な世界でもエンジョイライフ~  作者: ちょばい


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20.ドラドラ・ドラ

【サイン視点】

とりあえず、この白炎竜と意思疎通ができるようになったので、これから「どのようなボディが欲しいか」を直接聞いてみることにした。 今の体はアミューの異型アーマーにジェネレーターをぶち込んだだけ。あくまで仮だからな。……仮なんだよ? あの、聞いてる? 自分で勝手にアーマーの形を改造するのやめてもらっていいかな?


「なんていうか……すっかり『竜人』って見た目になっちゃったね」


白炎竜は、俺が作ったアミューの異型パワーアーマーのフレームを引っ張って伸ばしたり折り曲げたりして、器用に自分で形を変えている。


「なぁ……俺の声、ちゃんと聞こえてるか?」


後ろから話しかけてみると、白炎竜はこちらを振り向き、コクコクと丁寧に頷いた。意思疎通は可能なようだ。


「その身体はあくまで仮だからな? 今からお前専用の本格的なボディを作ってやるから、どんな形状がいいか希望を教えてくれ」


それを聞いた白炎竜は、自分の身体を弄るのをピタリとやめて、這いつくばって隠れ家の床に、アーマーの鋭い爪でダイレクトに何かを書き出し始めた。 いや、待てっ! 隠れ家の床をガリガリ削って設計図を書くのやめて! ほら、今ちゃんと紙とペン持ってきてやるからっ!!


大慌てで手渡した紙に、白炎竜は凄まじい筆圧で、何やらやたらと壮大なスケールのドラゴンの絵を描き始めた。


「えっと、どれどれ……。全長・大きさ100メートル級の二足歩行超巨大ドラゴン型? 口からブレスを吐いて? 背中には音速を超えるための可変スラスターをたくさん……? ――ふぅ、……無理だよ」


「!?」


スケッチブックの案を即座に却下したら、白炎竜さんは「そんな馬鹿なっ!?」と言わんばかりに両手を広げて大袈裟に驚いたリアクションをした。 喋らないけれど、意外とリアクションが面白くて可愛いな、白炎竜。いや、白炎竜さんか。


「俺の隠れ家に入るサイズを考えたらな……最大でも5メートルスケールが限界だな」


俺が現実を突きつけると、白炎竜さんはショックだったのか、ガックリと両手で頭を抱えて落ち込んでしまった。 とりあえず、俺は一応その白炎竜さんが描いた設計図をアミューに渡した。


「アミュー、5メートルスケールに縮小したバージョンでいいから、この設計図の通りに『ダンゴロムシの甲殻ブロック』で体を作ってくれ」

「いいよー!」


アミューに頼んで、まずは外見だけの模型を作ってもらう。 昨日の前線で姉御と戦っていた時は四足歩行だったけれど、本当はこういう二足歩行スタイルの方が好みだったのかな? それとも気分転換だろうか。


いざ、アミューの【シナジー】によって実物大の模型として完成したソレを見ると、シェルターのレトロゲームにある名作『ほにゃららクエスト』に出てくる、世界を滅ぼすラスボスのドラゴンの魔王様にそっくりだった。


とりあえず、外側だけのダンゴロムシ模型ができたので、後はこれが滑らかに動かせるように、俺達が手作業で関節やシリンダーの駆動パーツを仕込んでいこうとした、その時だ。


コンコンッ。


白炎竜さんが、小さな仮の身体のままフワフワと空を飛び、アミューが作った5メートル模型の胸部装甲のあたりをノックするようにコンコンと叩いた。


もしかして…


「アミュー、胸部の装甲ブロックを、アイツが直接入れるように開けてやってくれ」

「うん、わかった!」


アミューが模型のボディの胸を開けると、待ってましたと言わんばかりに白炎竜さんの仮の身体がその中へと吸い込まれるように入っていった。


次の瞬間。


――ブヴヴヴヴゥゥゥゥンンンンッッッ!!!!!


隠れ家全体がガタガタと震えるほどの、物凄い重低音と振動音が響き渡り、5メートルのドラゴンの模型の形状が生き物のようにうねり始めた。 本来なら、俺とアミューが微調整しながらフィッティングするはずだった、関節やフレームの可動パーツの作成と馴染ませの作業を、白炎竜さん自身が内部からの圧倒的なエネルギー出力で強引に力任せに行っているようだ。


余分なダンゴロムシ甲殻の破片や削りカスが、振動と共にパラパラと大量に床へ落ちていく。

それ破片だけでも数十万エルンくらいの価値がある素材なんだが?


バキバキと凄まじい音を立てて新規ボディの自己最適化に夢中になっている白炎竜さん。隣を見ると、ルナもアミューも「すごーい!」と目を輝かせてその魔改造ショーを楽しそうに眺めていらっしゃる。


仕方がないので、俺はホウキとチリトリを手に持ち、床に散らばる高価な灰色の破片を掃き集める作業に没頭した。 まぁ、こんな自堕落な男の隠れ家の床が普段から綺麗なわけもなく、素材の破片よりも、普段から溜まっていた部屋のホコリの方が先にチリトリに溜まっていくのが最高に切ない。


そういえば、昨日の別れ際に姉御が「あなたの新作巨大パワーアーマーにでもぶち込んでおけ」とか言っていたけれど、結局こうして一から白炎竜さん専用のドラゴンボディを作ることになったな。 まあ、あっちの巨大パワーアーマーをもう一個作る手間が省けて良かった、ということにしておこう。


バキバキ! と大きな音を立て続けること、数時間。


俺とアミューとルナの3人で、のんびりとお昼ご飯を食べ終わった頃に、ようやくその改造が終わったっぽい。 ちなみに、部屋中に砕け散った甲殻のカスを掃き集める作業は、開始5分で腰が痛くなって完全に諦めた。後で適当に集めよう。


完成した5メートル級のドラゴンのボディを得た白炎竜さんは、今度はその巨体を、さっきの仮の身体を動かしていた時よりも遥かに滑らかに、まるで本物の生き物のように有機的に動かし始めた。しなやかな尾が床を優しく叩く。


そして、白炎竜さんは俺達の方に向かってゆっくりとドスンドスンと足音を立てて歩いてくると、隠れ家の奥にある「大型車両用の脱出ハッチ」の方を、巨大な鉤爪でじっと指差した。


ああ、なるほど。きっと外に出て、ちゃんとその新しい身体の出力テストや、全力の運動確認をしてみたいのだろう。


俺は隠れ家の防衛用の罠を解除し、車両用の大型ハッチを開放した。


すると、白炎竜さんは荷物置き場に置いてあった、俺の巨大パワーアーマー用の大剣(全長3メートル超)をガシッ! と片手で力強く掴み取ると、そのままルンルンとした足取りで外の荒野へと出て行った。


俺とアミュー、そしてルナも小走りでその後を付いていく。 そして、ハッチから外に出た俺達3人が目撃した光景は……


「〜♪」


巨大な大剣をブンブンと楽しそうに振り回してはしゃぎ散らかしている、白炎竜さんの姿だった。


言葉は発していないけれど、何を考えているのかはなんとなく伝わってくる。 なるほど、なんで四足歩行じゃなくて、頑なに二足歩行の竜人型に拘っていたのか不思議だったけれど、武器…使ってみたかったんですね。


「でも、白炎竜さん。それは四足歩行と両立できないのか?」


俺が声をかけながら、紙に『四つ足で大地を駆け、二本の腕で武器を持つドラゴン』の絵を簡単に描いて見せてみる。


すると、白炎竜さんはブンブンと巨大な片手を前に出し、人間味に溢れた仕草で激しく首を横に振った。 そうかダメなのか…謎のこだわりを感じる。


……っていうか、本当にめちゃくちゃ面白いな、この白炎竜さんは。 何も喋らないし、表情も一切変わらないのに、身体のジェスチャーだけで感情が手に取るように分かって愛着が湧いてくる。


その時、ポケットの俺の情報端末がピピッと鳴り、メッセージが届いた。 差出人はヤミイチからだ。

どうやら白炎竜さんにビビって近寄れないらしい。


大丈夫だよと返信してやると、いつものヤミイチトラックが来た。トラックから『ヤミイチ』と、ルナのお兄ちゃんの『ウィルン』と、ヤミイチの弟子『ユイ』が降りてきた。


(トラッパーの弟子のエリザの姿はなかった。一度トラッパー師匠の元に戻ったのだろうか)


「あ! ンお兄ちゃんだ」

トラックの助手席から降りてきた兄の姿を見つけるなり、ルナちゃんが手を振る。


「ルナ……」

ウィルンも妹に手を振る。しかし、その視線はチラチラと、後ろで大剣を構えている5メートルの白炎竜さんを見ていた。初めて間近で見るドラゴン型機械兵器のプレッシャーに、やはり恐怖しているようで、表情が強張っている。


しかし、一方でヤミイチの弟子のユイは、興味津々の様子だった。


「うーわっ!! 凄い!! なにこれお得意さん! 超カッケー!!」

ユイは白炎竜さんに向かって全力でダッシュしていく。 白炎竜さんも、小さくて元気なユイちゃんを歓迎するように大剣を地面に突き立てると、巨大な手のひらをスッと差し出し、彼女をその上に乗せてあげて一緒になってはしゃいでいた。


「……あのぉ〜、サインさぁ〜ん?」

ヤミイチが、表情をピキピキと引き攣らせながら俺の元へ歩み寄ってきた。


「おう、ヤミイチ。……こいつは白炎竜さんだ。ちょっと色々あって、今日から俺の隠れ家に一緒に住むことになったから、今後ともよろしくしてやってくれ」

「……いやいや、何がどうなってるんですかぁ。私の常識の範疇を完全に超えてるんですけどぉ……」


まぁ、後でヤミイチには、姉御がこの白炎竜さんをボコボコにした昨日の映像でも見せてあげることにしよう。


それよりも、先に俺がヤミイチに……昨日ルナを預かった時に個人的に頼んでいたものを受け取ろう。


「ヤミイチ、俺が頼んでた、塗料……ちゃんと持ってきてくれたか?」

「ええ、もちろんありますよぉ」

ヤミイチがトラックの荷台から重いコンテナを降ろす。


塗料を頼んだのには理由がある。

ダンゴロムシの甲殻を素材にして作った防具や武器は、驚くほど全部が地味な『灰色一色』になってしまうのだ。 前線での隠密性という意味では、灰色はそこまで悪くない…悪くないんだけどな。さすがに全部の装備が灰色一色なのは、あまりにも味気ない。そしてテンションも上がらない。

変にカラフルに色を塗れば、前線で目立って敵に狙われやすくなるリスクもあるけど、味気無さすぎるのもなあ…


というわけで、俺の巨大パワーアーマーやアミューの装備を、自分の手で格好よく塗装しようってことだ。


塗料の入った特製コンテナをパカッと開ける。そこには、発色と耐久性に優れた高級塗料の缶が山のようにギッシリと詰まっていた。 これからの巨大パワーアーマーの本格的な塗装のために、ヤミイチから総額500万エルン分も買い占めたので、カラーバリエーションはかなり豊かだ。


よし、どこから手を付けようか……と俺がウキウキで考えていると、ポンポンと背後から俺の肩が叩かれた。


振り返ると、白炎竜さんが5メートル級の巨体から抜け出し、あの小さな仮の身体の姿で、俺の後ろにちょこんと立っていた。


そして、その小さな右手には、どこから持ってきたのか、もう既に塗装用のハケがしっかりと握りしめられていた。


そして塗料のコンテナをじっと見つめている…顔がないけど、頭がそっちを向いていたので見つめているのだろう。どうやら、自分で自分の新しい身体の色を、お好みのデザインに塗りたいらしい。


「自由に使っていいぞ。もう購入済みだからな」


俺の許可を貰うと、白炎竜さんは嬉しそうに、自分が一番欲しかったであろう「白色の塗料」がたんまりと入った大きなバケツを両手で抱え、ハケをブンブンと振り回しながら、5メートルボディの元へと戻っていった。

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