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アルティメイト ~最凶な世界でもエンジョイライフ~  作者: ちょばい


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12.ルナのしんわざ『とりにちぃ』

【リプレ視点】

前線のミートゾーンに向かう道中、私はサインから色々、これからの探索についての説明を受けていた。ちなみに移動手段は……。


「やっふー!」

「やっふー!」


シェルターの教育施設にあった、昔の『旧生物図鑑』に載っているラプトルの姿へと変身したアミューさんの背中に乗ってだ。

こういう規格外の姿を間近で見ると、『あっ、この人やっぱり普通の人間じゃなくて、ちゃんと生物兵器なんだな』と改めて実感させられる。


そして、そんなラプトル形態のアミューさんには、あの隠れ家にあったサインのお手製異形アーマーが装着される。それにアミューさんが手を加え、私達のパワーアーマーのフレームと合体して「三人乗り」ができるような特殊なサドルになった。


さらに凄いのは、背に乗った私達の姿も完全に透明化して、周囲の景色に溶け込んで見えなくなったことだ。

アミューさんには自身の皮膚を光学迷彩のように消せる能力があり、それをこのパワーアーマーの…しなじー?とやらを利用して、背に乗る私達のアーマーの装甲にまで行き渡らせているらしい。


ちなみにルナちゃんのパワーアーマーは特殊品らしく、アミューさんがパワーアーマーの上から被せる形で、あの液体謎装甲で覆っている。


サインが後の席で、

『これで、道中の不要な野良ウォーカー共との戦闘がスルーできるぜ♪』

と呑気に喜んでいた。私はどちらかと言えば、戦闘したいのだけれどね。私がそう不満をこぼすと、サインは呆れたように言った。

『女子供だけで外の荒野を走ってたら、下衆な強盗共に絡まれすぎて、本来の目的地に着く前に日が暮れて夕方になっちまうよ。無駄な戦闘は避けるに限る』


確かに、言われてみればそれは時間の無駄かもしれない。私のこの「前線に行ける」という貴重な休暇の時間は限られている。小悪党のゴミ共を始末するのは、別に今日じゃなくてもいいか。


「まず、ミートゾーンってのは名前の通り、俺達人間でも調理すれば食える動物系の生物兵器が多く生息してるエリアだ。アミューからしたらマズくて食えねぇらしいがな……そして、俺達の今のこの過剰な装備の質なら、余程のイレギュラーがない限りは余裕で戦える場所でもある。前線探索の初心者には最適ってことだな。しかし問題は、そんなに換金できる素材が落ちてないから『稼げない』ってことか。どんなに敵をぶっ殺して弾を消費しても、結局は赤字だ。まあ、今日は利益関係なく、ルナとリプレの前線慣れが目的だからな。弾薬のコストは気にせずガンガン戦え」

「……わかったわ」

「わかったー!」


「そしてアミューは今日はサポートな? あんまりでしゃばって敵を狩り尽くしちゃダメだぞ? もちろん、2人が危険な時は全力で助けてやれ」

「はーい!」


アミューさんは信じられないほどの猛スピードで荒野を走っているのに、背中の上の私達の席は全く揺れないので会話は舌を噛む心配はない。アミューさんの体幹凄まじいわね……ところで……


「で、後衛で一番後ろに乗っているサインは、一体何をしてくれるのかしらね?」

「俺は今日は荷物持ちと解説係だ。あとはアミューのアーマーと連動して色々試したいこともあるし……なんだその冷ややかな目は。何回も言ってるが、俺はお前らと違って全く強くないんだよ。戦闘は完全に専門外だ。むしろ俺を守ってください」

「シャインは、わたちが守るねー!」

「ありがとな、ルナ」


3歳の女の子に『守って』とお願いして感謝するおっさん……もうツッコミを入れる気力も湧かないわ。


ある程度前線の奥へと進むと、遠くから激しい銃声や爆発音の戦闘音が聞こえてきた。私達の進んでいる方向からだ。


「サイン、戦ってるみたいよ」

「おう。少し止まってくれ、アミュー」


サインは情報端末を取り出し、どこかの誰かに直接連絡を取り始めた。端末から怒声や銃声のような激しい音が聞こえてくるが、向こうが何を言っているかはここからは分からない。


「よう。少しお前らんとこに顔出そうと思ったが、援軍いるか? 敵はなんだ? ……ああ、なるほど、そりゃ災難だな。わかった。黒い仮面を付けた奴を『2人』送る。そいつらは味方だから絶対に撃つなよ?」


サインが通話を切り、端末をポケットに戻すと、私とルナの方を見た。


「戦闘だ。敵は『ブレイカー教』の狂信者集団。銀色の聖棍ってのを持ってる奴らだ。奴らは信仰心で恐怖が麻痺してるし、電磁バリアが厚くて近接破壊に特化している。その辺の野良ウォーカーよりも遥かに強いから気をつけろ。

そして、聖棍を持ってない……攻撃されてる側のウォーカー達は俺達の味方だ。間違えて攻撃するなよ?」

「わかったー!」

「……了解」


話を聞く感じ、こいつの知り合いのウォーカーを救うための乱入戦らしい。この私が、見ず知らずの薄汚いウォーカーを守らないといけないなんて……


「アミューと俺は手を出さない。フォローはする……さて、リプレとルナ、どっちが多く殺せるかな? さあ、行ってこいっ!」


サインの号令と同時に、純白の天使のような小型パワーアーマーを付けたルナと私が、アミューさんの背から飛び降りて、戦闘音のする方向へと全力ダッシュを仕掛ける……ッ!


(――!? 速すぎよっ! 何よあの子っ!!)


並走しようとした瞬間、ルナちゃんは一瞬で私の遥か前方へと消え去り、文字通り視界から姿が見えなくなってしまった。

私も慌ててパワーアーマーの出力を全開にして走り続けると、すぐに激しい白い砂煙の上がる戦場が見えてきた。


すでに、敵の断末魔が響き渡っている。


「ギャァッ!」

「くそっ! なんだこいつ! 子供か!?」

「速いぞ! 動きを先読みして殴れっ!」

「無茶言うな! 神官様ァーーーッ!」


白い光の軌跡が、黒装束の集団の中を超高速でビュンビュンと飛び交っているのが見えた。その軌跡が通るたびに、赤い血飛沫が残酷に宙を舞い、大の男達が次々と地面に倒れ伏していく。


(……本当に強い……というか、人間業じゃない速さ!)


ルナの動きは、あのゴザルさんには及ばないものの、とにかく異常なほどに速かった。どんな体しているのよ…… そして、面白いように敵を殺しキルスコアを稼いでいる。私も早く行かなければ、殺す奴が全部あの子に狩り尽くされていなくなってしまう。


私もようやく砂煙の中心の戦場に到着した。


敵は目立つ黒装束をして、確かに分厚い銀色に輝く聖棍を持っていた。そして私達が助けに来た奴らは、車を壁のように並べて高所を取り、そこから撃ち降ろす防衛戦の形で戦っていた。


私も、このサインから渡された新武器……『ダンゴロムシソード』を抜刀して、襲いかかってきた敵を袈裟懸けに斬りつける。名前は最高にダサいけれど、この剣の切れ味は本物で、ブレイカー教の分厚い電磁バリアごと、敵の肉体を容易く真っ二つに両断できた。


しかし、この敵は……狂信者ゆえか、仲間が真っ二つにされても恐怖を感じないのか、私に向かって凄まじい速度で死に物狂いの突撃を仕掛けてきて、その聖棍を無造作に振り回してくる。


どんどん斬る! 避ける! 斬る! しかし――


ドゴォーーーーンッ!!!


「――ッ!」


強い衝撃。私の背後から突如現れた巨大な影が、私のパワーアーマーの電磁バリアを一撃で粉砕し、私を大きく吹き飛ばした。

間一髪で聖棍自体は剣の腹で受け流したので、私自身はノーダメージだが、衝撃の余波だけで十メートル近くも飛ばされてしまった。アレは……


「ふむん? 随分と威勢のいい若い新手が来たと思ったが、なかなか強いようだな?」

「神官……」


ブレイカー教を率いる、スカベンジズでいう隊長格の『神官』だ。

巨大な聖棍を持った凄まじい筋肉の鎧。そして、その露出した体中の傷跡からわかる、歴戦の戦闘経験値……流石に、さっきまで狩っていた他の信者達みたいに、一筋縄ではいきそうにない。私が体勢を立て直そうとした、その時。


「わたちが相手だよー!」

「えっ? ルナちゃん!?」


私の前に、ふわりと舞い降りるようにルナちゃんが立った。

……確かにルナちゃんは常軌を逸して強かったけれど、この歴戦のバケモノみたいな神官に、こんな3歳の幼女が本当にタイマンで勝てるの……?


「……強いな、小童」


ルナちゃんを前に、巨大な神官は一切の油断なく両手で聖棍を構えた。子供相手でも、彼女から発せられる異常なプレッシャーを本能で感じ取り、一切油断してくれそうにない。


「トリニチィ!」


ルナのパワーアーマーの頭部に付いた……天使の輪っかみたいなパーツが、キィィィンと高い音を立てて高速回転し始めた。


すると――。


「……ルナちゃんが、3人っ!?」

「ぬっ!」


私の目の前にいたルナちゃんの姿がブレたかと思うと、完全に実体を持った3人のルナちゃんに分裂したのだ。


「「「行くよ!」」」


3人のルナちゃんが別々のベクトルへ超高速で散開し、全方位から神官に飛び掛かった。

すでに、神官とルナちゃん以外は全員が戦闘の手を止めている。敵も味方も、みんなこの神官と小さな天使の戦闘の行く末を、息を呑んで見守るつもりのようだ。


しかし神官も相当な腕利きのようで、超高速で襲い来る3人のルナちゃんの斬撃を、巨大な聖棍一本と最小限の体捌きだけで紙一重で避けきっていた。


私は、神官よりもルナちゃんの動きを……そして周りの信者からの急な横槍攻撃を警戒しつつ、注視した。ルナちゃんの強さの底を分析していく。


ルナちゃんは、とにかく小さい。……そして速い。

そのため、そもそもの被弾面積が恐ろしく小さいのだ。それが相まって、神官の振るう聖棍の振り回しが彼女には全然当たらない。


さらに、ルナちゃんは自身の電磁バリアを局所的に『非透過設定』に切り替え、空中に展開し、そのバリアを足場にして、スーパーボールみたいに三次元の空中を不規則に跳ね回っている。動きを先読みさせないように、フェイクの足場まで空間に作るという、巧妙な罠まで織り交ぜていた。


そして、私が一番驚愕したのは……


「敵を……見ていない……?」


ルナちゃんは、3歳児という自身の小さなパワーを……パワーアーマー込みでもどうしても絶対値の足りないその力を、自身をコマのように激しく回転させる遠心力で補って斬りつけていた。


普通の人間が空中で連続してあの回転の動きをやったら、三半規管が狂って、さらに脳震盪も起こして動けなくなってしまうだろう。

三半規管が異常に丈夫だとしても、あの戦い方は、とても敵を『視認』しながら戦っているとは思えなかった。完全に反射と、何か別の感覚だけで神官を追い詰めているのだ。


対する神官の方は、段々とその屈強な肉体に切り傷を増やしていく。

頭と首や心臓などの致命的な急所への攻撃だけは完璧に守りきっているが、ルナの振るう短剣による浅い傷口が、全身に満遍なく、確実に刻み込まれていく。


「ふんぬぅーーー!!!!」


神官が、形相を変えて攻撃……明らかに一撃必殺の全力のフルスイングを溜める体勢を取った。

空気が鳴動する。予感する……アレはマズイ! 少し離れた私の場所まで余波が届くレベルの広範囲攻撃だ!


しかし、3人のルナちゃんは全く焦る様子もなく、揃って綺麗に空中でバク宙をキメながら、神官の攻撃範囲から一瞬で遠くへと距離を取った。

そして、完璧に間合いを外したルナを見て、神官は大きく息を吐き……構えていた力を抜いた。


「……ふぅ……今のワシでは、お前という壁を越えられぬようだ。……お主の名前は?」

「「「ルナだよ!」」」


「あいわかった! ルナよ! 我々はこれより退却する! もしこのまま追撃をするのであれば、我々も自爆特攻をしてでも、今ここにお前達を巻き込む被害を撒き散らす覚悟だ! ……どうする!」


ブレイカー教の戦闘員達の体に、最後の特攻の力がギュッと入るのを感じる。私もいつでも戦闘が再開してもいいように、ダンゴロムシソードを構え直す。

というか、ルナちゃんにこの大局の決定権を委ねていいのかしら……

すると、ルナちゃんは神官の決死の覚悟に対して、キョトンとした感じで首を傾げて言った。


「……それを決めるのは、わたちじゃないね。あっちの大人達だね?」


ルナちゃんが、バリケードの車の上に立っている……今現在、こいつらに襲われていた側のウォーカー達を指差した。


指を差されたその男は……。


「あー、帰れ帰れ! さっさと消えろ! 二度とうちのシマに来るんじゃねぇぞ、この狂信者共っ!」


手を払うように……そして、ひどく面倒くさそうに言い放った。

終戦だ。私はダンゴロムシソードを腰に収めた。


「教徒共! 帰るぞ! 本拠地で鍛え直しだ! 我々は弱かった! 彼女らを天に帰す力は、今の我々にはないっ!」

「「「「はいっ!」」」」


ブレイカー教の神官と教徒共は、この戦闘で死んだ自分達の仲間の教徒達を一切振り返ることもなく、規律正しく足早に戦場から去っていった。

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