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アルティメイト ~最凶な世界でもエンジョイライフ~  作者: ちょばい


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3.置いてけぼリプレ

【サイン視点】

ゴザルにくっついている機械兵器『サンノハ』から、本当に俺宛てにゴザルの活躍の録画データが送られてきていたんだよな。


あの時はアミューの良さをダンゴロムシの甲殻で引き出すのに夢中だったから、お礼のメッセージだけ送って後回しにしていたんだ。


面白そうだしみんなで見るとするか。だが……こうなると、当初の予定だった『座学』からは完全に脱線しちまったな。まぁ今日はまだ時間もあるし、少しくらいはいいだろう。


「私も一緒に見ます!」


モニターを起動しようとした瞬間、背後からやけに弾んだ、可愛らしい女の子の声が聞こえてきた。


振り返ると、さっきまで俺が座っていたパイプ椅子に、いつの間にか『姉御』がちょこんと腰掛けていた。身長が50センチくらいしかないので、白ピンクの綺麗な髪と、爛々とした目の部分だけが机の上からひょこっと覗いている状態だ。


突然の姉御の出現に、ヴィクトールはガタガタッと椅子を派手に転がしながら、反射的にリプレを背中に庇うようにして立ち上がった。

「いつの間にッ……! 」


背後に隠されたリプレは、あまりの出来事に目を丸くして戸惑っている。

「えっ……何? その……何?」


一方、アミューは野生の勘が危険信号を最大出力で鳴らしているのか、ガチガチに固まっていた。

「あ……あ、姉御……」


一体全体、姉御はどうやってこの俺の厳重な隠れ家に無断侵入してきたのだろうか。ハッチのロックは掛け直していたはずだが……まあ、姉御は大体なんでもありの人物だと俺は理解している。

俺のプライベートが完全に消失した、あの瞬間にな!


「今回も見てたんだな、姉御……いや、見るって、ゴザルの様子なら現地をリアルタイムで…なんやかんやして見てたんじゃないのか?」

「見てないんですよ、実は! あえて後のお楽しみにしてたんですよね。私って面白いものが大好きですから。ほら、これ! ポップコーンですよ! こういう映像を観る時の定番ってやつです!」


やけにテンションアゲアゲの姉御が、白い粒がたくさん詰まった紙箱をこれみよがしに俺に見せびらかしてくる。香ばしい匂いが隠れ家に広がった。


「ったく……当然、俺の分もあるんだろうなぁ」

「もちろんありますよ。はい、どうぞ!」


俺は姉御の隣に新しい椅子を持ってきてドサリと座る。姉御が機嫌よく小さな指をパチンと振ると、まるで手品のように、俺の目の前にも山盛りのポップコーンが現れた。凄いな、まるで魔法みたいだ。


ヴィクトールとアミューは、まだ冷や汗を流しながら姉御を警戒している。2人がガチガチになっているせいで、リプレが完全に置いてけぼりで困った感じになってるぞ。とりあえず、リプレは姉御と初対面だし紹介してやるか。


「リプレ、この人は『姉御』だ。俺達のトップ。まぁ、一番偉いやつな? 敵じゃねぇから安心しろ」

「どうも、みんなの姉御さんです。よろしくお願いしますね?」

姉御が机の上から小さな手を可愛らしく振る。

「ああ……ええ……はい……。どうも……」

リプレは完全に毒気を抜かれた顔で、ペコリとぎこちなく頭を下げた。


「アミューも、いい加減姉御に慣れないとなぁ。ってかお前、ビビりすぎだろ…初対面じゃないだろうに」


俺が言うと、アミューは涙目で俺の服の裾をぎゅっと握りしめて身を寄せた。

「う……うん……」


「ふふっ、アミューちゃんにはちょっと『刺激』が強かったから大変かもですね。そして相変わらずサインはにぶすぎです」


姉御がクスクス笑いながら再び指を振ると、ヴィクトール、アミュー、そしてリプレの席の前にもポップコーンの箱がポン、ポンと置かれた。俺はそれを一口放り込んでみる。――おおっ! 程よくしょっぱい! なかなか、いけるなこれ。


リプレを守るように冷や汗をかいて立っていたヴィクトールも、これ以上警戒するのが虚しくなったのか、深いため息をつきながら転がした椅子を戻してドカッと座り直した。


「はぁ……これじゃあ、必死に警戒してる俺がただのバカみてぇじゃねぇか……」

「実際バカですよ。今の私は、ただの面白いものが大好きな無害な女の子です! さあサイン! 早く再生しなさい!」

「はいはい、わかりましたよっと」


俺は手元の端末の再生ボタンを押した。

隠れ家の照明が暗くなる寸前、隣に座るリプレの、消え入りそうな呟きが聞こえてきた。

「あれ……? 私……今日、何しにここに来たんだっけ……」









軽快な和風のBGMと共に、画面にゴザルが映し出された。


刀を手にぶら下げ、もの凄くショボくれた顔で荒涼とした荒野をトボトボと歩いている。

すると、スピーカーからゴザルの重苦しい声――モノローグ(心の声)が流れ始めた。えっ? モノローグ?


『拙者の名前はゴザル! 拙者は今! 悪の組織のトップ【キテレツちびっこドS魔女】の手によって、機械兵器の陣営に強制的に放り込まれているところでござる! 「機械兵器の陣営に加わって、生物兵器と戦ってこい」? 頭がおかしいでござるっ! 可哀想な拙者は、終戦期のヤバすぎる前線に、たった一人で赴くハメになったでござ……』


なんだ……この映像、サンノハの技術…のなのか?ゴザルの『リアルタイムな心の声』まで音声データとしてバッチリ入ってやがるな。


「ふふふ、心の中だから言いたい放題してますねぇ、ゴザルは後で、きっちりとしばきますね♪」


姉御がポップコーンを口に放り込みながら、暗い笑顔を浮かべる。


「心の中くらいは自由にしてやれよ……っていうか魔女って姉御のことか……確かに指振って食べ物出すのは魔法みたいだったな」


俺は隣でジト目をしている姉御に呆れつつ、その姉御が怖すぎて、俺の右腕に抱きついて震えているアミューの頭を「よしよし」とナデナデしながら、再びスクリーンに視線を戻した。


あれかな?前は姉御と席の距離が遠かったから良かったけど、今回は隣でキツイ…とか?






【ゴザル視点(映像)】

「えっと……ここでござるか」


拙者は指定された待ち合わせ場所より、あえて数十メートルほど離れた場所に立った。ここから一歩でも先は『終戦期に入る=死』という狂気の前線エリアだ。怖くてこれ以上は足が進まないでござる……。


しかし、その待ち合わせ場所の境界線には、すでに機械兵器――小綺麗なアンドロイドの女の子が立っており、拙者に向かって大きく手を振っていた。


「ゴザルさぁん! こっちですぅー! 待ってましたよぉー」

バカデカい声で拙者を呼んでいる。

笑顔で手を振るその風景は、さながら『三途の川の向こう岸から、故人が手招きして声をかけてきている』かのような……

ああ、そうか。ここは三途の川でござるか。なら、生きている拙者は渡らなくていいでござるな! よし、帰るでござる!!


踵を返そうとした瞬間、少女アンドロイドの追撃の声が飛んできた。

「早く来ないと、魔女(姉御)に言いつけますからねーーー!」

「……はい。今行くでござる」


拙者は涙目で大人しくそのアンドロイドの元までトコトコと移動した。


「では改めまして自己紹介を。私は女型アンドロイド機械兵器『イチノハ』と申します。よろしくお願い致します、ゴザルさん」

「あっ……はい……ゴザルでござる……よろしくでござる……」

「すぐにお迎えの『乗り物』が来ますからね。少しここでお待ちください」


直後、ゴゴゴゴゴ……と地面が激しく揺れ始めた。

何が来るでござるか……

身構える拙者の視線の先、地平線の彼方に、何か山のような超巨大なシルエットが見えてきた。

……違う。山じゃない。あれは拙者が昔、旧文明の侍映画で見たことのある――『お城』でござるか!!


それがズシン!!ズシン!!と凄まじい地響きと共に拙者の目の前まで迫り、ピタッと止まった。

もはや限界まで見上げても、てっぺんが見えないでござ……


「これが、これからゴザルさんの住む拠点にもなります。移動要塞『エド城』ですね。さぁ、こちらの城門からお入りください」

「……拙者! これから! 一体どうなっちゃうでござーーーーーっ!?」

「早くしてください、ゴザルさん。早く来ないと他の人間に目撃されてしまいます」


拙者はほぼ無理矢理この動く『エド城』の内部へと押し込まれ、イチノハの後ろを付いて案内されることとなった。


「ここがゴザルさんのお部屋ですね。普段、生き物のお客様が来ることを全く想定していないお部屋なので、ベッドなどの寝具が無くて申し訳ありません」

「あいや……気にしなくていいでござるよ……」


通された拙者の部屋は、ある意味で凄まじかった。

備え付けの机! 角の角度、ジャスト90度! 椅子! 角の角度、ジャスト90度!

どこを見渡しても鋭角なスチール製の角だらけ。そして、壁には申し訳程度に「なんかそれっぽい侍風の壁紙」がガタガタに貼られている。これ、転んで頭を打ったらワンチャン即死するやつでござる……


「では、すぐにオイルを持ってきますね?」

「……あの、拙者は人間なので、オイルは飲めないでござるよ?」


ハハッ……機械兵器とはいえ、さすがは客人をもてなす給仕用アンドロイド…かどうかはわからないけど。ジョークもお手の物ってことでござるな。

しかし、イチノハは拙者の顔を、一切の感情を排した機械の目でマジマジと見つめ――


「……え? 冗談、ですよね?」

「…………ガチで飲めないでござるよ」


イチノハは無言のまま、拙者の部屋の重厚な鉄扉をピシャリと閉じて、足早に去っていった。

そして数分後、すぐに戻ってきた。その手には、不気味に虹色にギラギラと輝く謎の液体が入ったコップが握られている。


「……どうぞ?(圧)」

「だから! 飲めないと言っているでござる! 何をそんな『粗茶ですがどうぞ……』みたいな涼しい顔して差し出してきているんでござるか! 死ぬ! 拙者死ぬでござる!」

「えっ……本当に飲めないの? どうしよう、人間の食事ってそういえばよく知らないわ……」


……もう嫌だ。お家に帰りたいでござぁーーーーーーっ!!!





【ここまでの各々の感想】

サイン

「ハハハハ! ああーおもれぇ。ゴザルは本当に、どこに行ってもこういう可哀想な扱いになるんだな」


アミュー

「……うぅ、姉御がここに【飛んで来た】余波で震えが止まらないよ…映像も全然頭に入ってこない……」


姉御

(笑いながらポップコーンを食べている)


ヴィクトール

「……何がどうなったら、機械兵器の陣営に“お客様”として招待されることになんだよ」


リプレ:

「……私は今、ここで一体何をしているんだろう? あれ? 外の世界の危険な映像を観るって話じゃ……? 外の知識は? え……?」

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