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アルティメイト ~最凶な世界でもエンジョイライフ~  作者: ちょばい


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第三章 0.プロローグ

【リプレ視点】


私の父さんはウォーカーに殺された。

直接、銃弾を撃ち込まれて死んだわけじゃない。


『なんでっ! なんで父さんがシェルターから追い出されないといけないのよっ、ヴィクトールっ!』

『……ッ! ……すまん、本当にすまん……』


ずっと前、父さんは賞金兵器を撃破した際の報酬の支払いを渋った。それが「スカベンジズの正しい在り方を汚した」と見なされ、シェルターを追放されてしまったのだ。

そして数日後……外の世界で野垂れ死んだと聞いた。


父さんはハメられたんだ。あのクソみたいな外の人間……ウォーカーに。


私はそれから、自分を鍛えた。鍛えに、鍛えまくった。いつか外の世界へ出て、父さんをハメたウォーカーをこの手でぶっ殺すために。


そして私は――。


「ようこそリプレ。俺の部隊へ」

「ヴィクトール隊長、よろしくお願いします」


父の友人だったヴィクトールさんが率いる、シェルター最強のスカベンジズ部隊へと配属された。


「リプレ……やはり、スカベンジズに入ったか」

「はい! あのゴミウォーカー共をこの手で始末するために……」


配属初日、私はヴィクトールさんに執務室へと呼び出されていた。


「……スカベンジズは人殺しの集団じゃない。そこを理解しているか?」

「はい」

「……外の人間を見かけたら今すぐにでも銃を向けそうな殺気を滲ませて言われても、微塵も説得力がないぞ」


ヴィクトールさんはめんどくさそうに、自分の髪をボリボリとかいた。


「でも実際、ヴィクトールさんだって外の人間が嫌いですよね?」

「ああ、嫌いだな。そこはお前と同じだ。ただ、こちらにも付き合いというものがある。全員が全員、お前の……いや、俺達の敵じゃないということだけは理解しておけ」

「付き……合い………?」


あのシェルター最強の男ヴィクトールが、クソウォーカーなんかとつるんでいる……? そんな話、聞いたこともない!


「ヴィクトールっ! あなた、あのゴミ共とつるんでるのっ!?」

「……一応、俺はお前の上官だぞ。隊長とは呼ばなくてもいいが、呼び捨てはやめろ。ただ、まあ……つるんでいるというのは事実だ」

「……っ!」


怒りで頭の血管が千切れそうだった。

この人は、父の……ウォーカーのせいで亡くなった父の友人ではなかったのか!


「お前はまだ新米だから知らないだろうが、このシェルターの運営はウォーカーの協力があってこそ成り立っているんだぞ」

「あのゴミ拾いどもが拾ってくるゴミが、何の……一体何の役に立っているっていうのよ!」

「例えば『灰胞子アッシュポア』の治療薬。これは外のウォーカーからの提供だ。シェルターの技術では作れん」

「ウ……ウソっ!」


アッシュポア。外で戦う生物兵器の死骸に湧いた菌糸が空気中を漂い、人間の肺に入るとたちまち増殖する奇病。皮膚がカチカチになり、内臓不全を引き起こして死に至る。薬が無ければ間違いなく死ぬ恐ろしい病気だ。


「それから……『人類最強の剣豪ゴザル』。アレもウォーカーだぞ」

「……ヴィクトールさんの方が強いのでは?」

「俺など彼の足元にも及ばんよ」

「確かに映画では人間離れした活躍をしていますが、あれは誇張されたフィクションでしょう?」

「事実だ。あと、やめろその思考は。お前の父さんと同じだぞ。ウォーカー嫌いなのは構わんが、事実に目を……っ!」


父さんのことを引き合いに出され、我慢の限界を迎えた私はヴィクトールさんに殴りかかった。しかし、攻撃は簡単にいなされ、そのまま床に押し倒されてしまう。


「やれやれ、やはり我慢ができないか」

「ーーーー! ーーー!」


声が出ない。肺を的確に圧迫され、文句を言いたいのに息ができない……!


「ウォーカーを妄信的に下に見ると死ぬぞ。これはマジの忠告だ、外ではな。先にこちらから攻撃を仕掛けた場合、向こうの反撃で死んでも罪には問えない。お前と同じようにウォーカーを下に見ていた新米が、外でウォーカーに絡んで……殺された。だが、そのウォーカーは見逃すしかないんだよ。こっちが先に喧嘩を売ったんだからな、外とはそういう世界だ。そして……お前程度、いや、俺程度の力ではどうにもならん奴らがゴロゴロいる。……そろそろ息が限界か」


ヴィクトールが私を解放した。途端に酸素がなだれ込み、激しく咳き込みながら呼吸を整えるだけで精一杯になる。


「他にも何か言いたいことがあるか? 息が整うのを待ってやる」

「ふぅ……ふぅ……。少し、考えさせてください」

「もちろん、構わんよ」


私は必死に頭を働かせた。怒りに任せて考えずに行動してしまったのは、確かに良くないことだった。本当に復讐を遂げたいのなら、まずは外の世界の真実を知らなければならない。


ヴィクトール………さんの言葉を整理してみる。

『アッシュポアの治療薬』をウォーカーに提供してもらっているという話。これが事実なら、確かに安易にウォーカーと敵対するわけにはいかない。アッシュポアは割と頻繁に発症する病気だ。今までは薬があるからこそ「どうとでもなる病気」だと思っていたけれど、もし薬の提供が止まれば、シェルターは一瞬で地獄と化す。


そして『人類最強の剣豪ゴザル』。

映画の中のゴザルは、自身の数倍もある生物兵器の首を一撃で斬り落とし、機械兵器が放つ高速の砲弾を真っ二つに叩き切っていた。あれがフィクションではなく、現実だというのか? ヴィクトールさんの真剣な目を見る限り、ふざけているようには見えない。つまり、本当なのだ。


「……わかったわ。誰彼構わずウォーカーだからって下に見て、喧嘩を売ったりはしない」

「ああ、お前が聡明な奴で助かったよ」

「でも、これだけは教えて。……父さんをハメたウォーカーは、まだ生きてるの?」


これが私にとって一番大切なことだ。父さんを罠にハメたウォーカー。コイツだけは絶対に許せない。私の手でぶち殺す。


「生きてる。俺はこの前、直接会った」

「会った? ……会ったの!? なんで野放しにしてるのよ! なんで……なんでその場で殺さなかったの!?」


また頭が沸騰しそうになったが、今回はなんとか踏みとどまって声を絞り出した。


「理由は単純だ。そいつが俺よりも遥かに、バケモンみたいに強いからだ。戦ったら俺も、お前も、1秒経たずに頭に風穴が開く」

「……証拠は?」

「ある。会ったと言ったろ? そいつが賞金兵器を討伐したログを、またシェルターに持ってきたんだ。これがそのデータだ。この拳銃を持ってる男が、お前の父さんをハメたウォーカーだ」


私はヴィクトールさんから手渡された情報端末のログを凝視した。

画面の中では、一人の人間が巨大な生物兵器に向かって拳銃を乱射し、その動きを完全に止めている。拳銃で……? トドメこそ別の者が刺したようだが、拳銃程度の武器でやってのけていい芸当じゃない。


「ちなみにそいつは……ウォーカーの薬の提供者の『仲間』でもあることが判明している」

「はぁ!?……コイツの名前、なんていうの?」

「『ロウ』。ゴザルに並ぶ、外の怪物だ。年齢はもう100歳を超えているが現役バリバリだ。100歳でこれだぞ?ありねぇだろ… 今の俺達じゃ、どんな武器を持っていったところで逆立ちしても勝てねぇんだよ」

「……私達は、そんなにも弱いのね」

「そうだ。俺もシェルターじゃ『最強』ともてはやされているが……外に出れば、普通なんだよ」


ヴィクトールさんの悔しそうな横顔を見れば、それが紛れもない本音だと分かった。でも、外でかろうじて生きてるような連中が…シェルターにゴミを運んでくる人間が…そんなに強そうには見えなかったけど。

……いや、恐らく。


「本当に強いウォーカーは…シェルターを頼らずに外だけで生きている……ってこと?」

「その通りだよ。よくわかったな」

「……外にいる連中と私たち……一体何が違うのかしら」

「…………実はな、俺の部隊では休暇を取らせ秘密裏に、外の世界へ何人かを派遣しているんだ。さっきも言ったろ? 個人的な付き合いのあるウォーカーがいると。まあ、そいつは最近色々と忙しかったみたいだから、別の信頼できる奴を紹介してもらって、今はそっちに部下を派遣しているんだが……そいつが最近暇になったと聞いた…お前も行くか?外の世界のことがよく理解できるぞ」

「……ええ、行くわ」

「わかった。最初は俺もついていこう。そいつはウォーカーの中では割と性格がマシなヤツだ。お前が平静を装えれば問題はない……いや、心の底から『敵意』さえ向けなければな」

「……どういうこと?」

「そのウォーカー本人にはバレないだろうが……そいつにくっついている『相棒』の勘が、異常なまでに鋭い。一瞬でも敵意を持った瞬間に、お前は殺されるかもしれん」





【サイン視点】


ウォーカーたるもの、戦利品の扱い方で揉めるのは世の常だ。誰に報酬をどのように分配するか、どのように使うか……俺の仲間達はその辺の理解が深いので交渉も楽なのだが、今、俺はその仲間――いや、最愛の家族と、絶対に譲れない熱い戦いを繰り広げていた!


「ダメだダメだ! アミューのあの格好良さを120%活かすなら、絶対に四足歩行タイプの異形パワーアーマーがいいっ!」

「違う! サインは全然わかってない! 私はサインたちと同じような、人間の形のパワーアーマーが欲しいのっ!」


このアミューのわからず屋め……! アミューは自分の持つポテンシャルというものを全く理解していない! 俺はもう、あの時見たカッチョイイアミューの虜なんだよ! 人間の形をしていない異形のメカメカしさがあった方が、ロマンがあって良いに決まっているだろうが!


……いや、不満げに頬をぷくーっと膨らませているアミューを見ていると、人間の姿のパワーアーマーもそれはそれで……いやいや、ここで折れるわけにはいかない………あれ?っていうか……。


「……なぁアミュー、これ両方作れば解決じゃね?」

「あっ! そっか、それもそうだね!」


俺の家には、まだ山のようにダンゴロムシの甲殻が残っている。トラック1台分の半分くらいとはいえ、等身大サイズなら余裕で2着分は作れるなカゴ一箱分くらいで…ついでに俺のパワーアーマーも強化するか。

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