第143話 三猿
「お、宝箱があるな」
宝箱を見つけたアレックスが声を上げる。
ながい地下への階段を下り、辿り着いたのは巨大なドーム状の空間だった。
そして階段側から見たら奥の方に、宝箱が3つあった。
3つも一気にくれるとか、太っ腹である。
流石Sランクの隠し通路だ。
ただ気になるのが――
「大きな像がありますね。それも3体も」
―—宝箱の周囲に、3体の巨大な猿の像がある点だ。
猿はそれぞれ、両眼を手で押さえるもの。
耳を押さえる像。
そして口を押えている像がある。
その3体の猿の像から連想されるのは――
「三猿像みたいですね」
――そう、三猿像だ。
三猿像は確か宗教的な何かだったと思うけど、俺は詳しくは知らない。
取りあえず、見んな、しゃべんな、聞くなって事ぐらいだ。
知っているのは。
「これだけあからさまにアピールしているんだ。まず間違いなく動き出すんだろうな」
「だよねー」
「これで動かなかったら逆にびっくりです」
竜崎の言葉に、天魔と大城光が同意する。
まあ俺も一緒だ。
間違いなくこの3体がボスで、宝箱を開けた瞬間動き出すんだろうと思われる。
あ、因みに……この空間は転移不可になっている。
更にいうなら、宝箱を開けたら瞬間逃走経路も潰される仕様だ。
要は持ち逃げは駄目よって事である。
ボス戦不可避。
だからこそ俺も助っ人を頼んだって訳である。
しかしなんで猿なんだ?
ここ恐竜ダンジョンなのに?
まあ細かい事はどうでもいいか。
「取り合えず……戦闘準備はしとこっか。いつ襲い掛かって来るか分からないし」
天魔の言葉に、その場にいた全員が戦闘態勢に入る。
たぶん動き出すのは宝箱を開けた瞬間だとは思うが、近づいただけでって可能性もあるからな。
警戒しておくにこした事はない。
「取り合えず、宝箱を開ける前に鑑定しておく」
宝箱を開ける前にまずは鑑定だ。
色々と情報が乗ってたりするからな。
なので、ある程度警戒しながら近付いた所で、まずは宝箱に鑑定を使ったのだが――
「——っ!?」
宝箱に鑑定を掛けた瞬間、猿の巨像が鈍い音を立てて動いた。
見ると、それぞれが抑えていた部位から手がどけられ、その部分が赤く光っている。
だがそれだけだ。
それ以上の動きは見られない。
一体なんだってんだ。
「なんだ!?急に何も見えなくなったぞ!」
アレックスが叫ぶ。
「わ、私も……」
「俺もだ」
その言葉に、大城恵と竜崎守が同意する。
「——」
デバフか。
そう言おうとして、声が出ない事に気づく。
声が出せない。
まさか……
「耳が聞こえなくなってる」
聖が耳を人差し指でつつきながら俺にそう言って来る。
ああ、これは間違いない。
見ざる言わざる聞かざる。
それがデバフとして俺達にかかっているのだ。
宝箱の鑑定結果を慌てて確認すると――
『宝箱に触れた時点で見猿、言わ猿、聞か猿の呪いがランダムで発動。宝箱を開けなければ動かないが、三猿を倒せない限り呪いは永続的に続く。3人以下だと呪いは1人で複数受ける事になる』
―—とか言う、とんでもない説明が。
戦わず逃げたら一生の十字架になるとか……
勇気が震えたので腕に視線をやると――
『1人で来なくてよかったですね』
―—と表示される。
うん。
俺一人で三つとも喰らったら確実に死んでたわ。
勇気がいる?
片方は目が見えないんだぜ?
しかも声が出せないと聞こえないの呪いもある訳だから、連携すら出来ないっての。
ボスの強さだって相当なものだろうし、そんな状態でクリアできるかよ。
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