ケモサーガ第2章ビヨンドゴッドアンドエビル
時間はまだまだあるので一度宝物庫の入り口まで撤退。エアバイクの荷台に簡易な椅子を設置して梅蜂の長男坊を固定して走る。道中、ゼリータイプの携行食料を少しずつ舐めさせる。頑丈な獣人だから出来た事で、只人だったら貴重なナノマシン注射の後、医療室で栄養点滴のお世話になっていただろう。
「梅チー、職業なにー∞」
「マジシャンでぇす」
「え、魔術使えるの☆スゴ」
「いえ、手品師の方でぇす」
「使えねー☆」
「すみませぇん」
この長男坊、名を梅鉢千代古IIという血の通わない名前だったのであだ名を付けて呼ぶことにした。弟はⅢかと聞いたら、梅鉢ああああ、だったらしい。
ふざけた名前にすることで魔除けにする文化は獣人にもあるし、僕のように只人の世界観で生活していた側からみたら獣人なんてどいつもこいつも変な名前のやつばっかりなんだが、それにしても酷いネーミングらしい。
子ども心に、何か政治的な意図でもあるのかと思っていら、真実どうでも良かったから彼らはそんな名前だったのだと、この地で思い知らされたわけだ。
「親なんてそんなもんだよ☆アチキなんてパパ公認で龍帝の子種でママが孕んで出来たぜ☆」
「しかも、お父さんの指示で女装してらしたのでしょう?そんな、血が繋がってないからって育ての息子に、な、なんて淫靡な。すごい。艶本読んでるみたぁい」
「それは誤解だよ☆」
なんかいかがわしい妄想の餌食になった。
ああ、僕は両親に愛されていた。それはわかる。でも、この全く恵まれてない子には申し訳ないことだが、叶うなら、あの変だが善良な両親の、血の繋がった実の子だったらどんなに良かったか、と思ってしまう。政略結婚でなく恋愛結婚だった癖に、色んな思惑のもとに僕を生みやがって。
「ギリギリまでここで鍛えるよ☆2人がかりなら完全攻略も出来るかも知れないし、そしたら大人たちに一矢報いれるぜ☆」
「一矢だけでぇすか」
「無理無理☆大人舐めんな☆」
この子も獣人にしてはだいぶ小さい。母親が皇族なのだろう。あの家系だけは、只人と比べても小さく幼いまま一生を終える。ダンジョンに発生する宝物庫群は、元々は彼ら一族の為のものなのかもしれない。
「あ、しっぽ無いならパワードスーツ着れるじゃん☆ホントに完全攻略できるカモ☆」
「お、お役に立てぇますかボク」
「うん☆ちょっと、脊髄に拡張パーツ生成ナノマシンをたくさん注射するケド、梅チー根性あるから大丈夫☆」
「あ、ボク、耐えられそうです?なら安心でぇす」
「うん☆ちょっと、存在しない部位の感覚が生まれて幻肢痛のヒドイ版みたいなので苦しむケド、只人の子でも3割は耐えるから大丈夫☆」
「うぅん、まあでも、一回死んだようなもんだし、頑張ります。耐えられなさそうなら麻酔漬けにしてください。この宝物庫の攻略まで保てば、メロウさんの収支はプラスですよね?そこまで動けぇば良いです」
「カッコいい」
「何かおっしゃいました?風の音で聞こえづらくて。まだ耳筋痺れててそっちに向けぇない」
「ううん☆なんデモ☆梅チー、許嫁とかいる∞居ないならアチキの子とか将来どうよ☆オミナエシと同盟むすべるぜ☆遠交近攻だネ☆」
「メロウさんとの子?ひゃあ、そんな、まだ出会って1日、30分も経ってないのに。ぶ、文通からでお願いいたぁします」
「それは誤解だよ☆」
大物だな。本当にこの子。




