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プロローグ 悪王の最期は
一人の人間の一生が、どれだけ世界に影響を与えるのか。
それは、自分で判断するなど不可能に近いだろう。
だが、思う。
きっと、我ほど人に恵まれておきながら。
「しがらみ」などという安い言葉で括られるものに縛られながら。
富、権力、肉体、容姿、人間が求める形を、すべて生まれながらに持ち得ながら。
それをすべて私欲で投げ捨て、多くの人間に『意図的に』不幸にした者。
それを、我、ディルクレウスという。
燃え盛る火、血が抜ける体、命が抜ける感触。
すべて、慣れたものだ。
我を刺したもの、我を貫いたもの、我を死に至らしめたもの。
お前たちから見た、我は、なんであるか。
考えるまでもない。
人は、我をこう呼ぶ。
『史上最悪の悪王』と。
だが、あえて言うのであれば。
我は今、喜びに満ちている。
我が待ち望んだ死が、ようやく訪れたのだから。
「すべては、我の願いのために」
それが叶うのであれば、どんな悪名も悪くはない。
すべて、本物なのだから。
ようやくお前に会える。
もう目覚めることがなくとも、それこそが幸福。
これが、哀れな男の生涯最後の戦いとなる。
何人たりともわかりえない孤独、策略、感情、失望。
ここに、この手に、すべてをこめて。




