第74話 だんごむし
生来の夜型人間なのでよく夜道のひとり歩きをするんですが、夏は路上にだんごむしをよく見かけましてね。おそらく同じ個体なのだと思います、それが同じ時間帯に同じ場所を這っていまして。
最初は偶然かと思っていたのですがどうも違う。何日か経っても、雨の次の日でも、なんなら年をまたいで次の夏も同じ場所を這っている。
年またぎはさすがに別個体であろうと思いますけどね。もちろん一個体だけでなく、数匹は見かけます。
安全かつ適度な湿り気のある快適な石の下を出て、危険がいっぱいの外敵が闊歩する路上を進む。謎なのが、どうもコンクリートやアスファルトの上を好んで歩いているようなのです、土の上ではなく。
不思議だなあ、どうしてだろうなあと想像してみて。
播種なのであろうと思いました。自分の血族を広範に撒く本能の行為。だとして、なぜ晴れた日に毎晩同じ時間帯に見かける?
産卵周期など存じませんが確率的にどうでしょう、あり得ないと思います。
おそらく播種の予想は合っていないのです。
播種ではない、だったら何?
普通に考えたら餌探しです。同じルートで餌を探して回っている。
普通です。普通すぎて面白くない。
それにアスファルトなどより土の上の方がよほど栄養がありそうです。日陰やそれこそ地中のほうがジメジメして、きっと食べ物が豊富にあるはず。
学者先生ならカチッとした答えをお持ちなのでしょうけども、ここはやはり素人ならではの、書き手ならではの詩的な暴論をぶち挙げたいと思います。
間違っていていいんです、これはお遊び。ピンク色した、お目目ぎょりゅんぎょるんのだんごむしのお話です。
農業であろうと思いました。
前日に、道すがらなんらかを通り道に分泌しておく。すると、その分泌液を好むなんらかの菌が増殖する。
夏の日差しを浴びてスクスク育ったその菌を、翌日収穫するかのように捕食する。
つまりは、お散歩しながらおやつを食べ、お散歩しながら種を蒔く。
これだったらいいなと思いました。
毎晩踏んづけないようにするのが大変ですよ。ずっと下を向いて歩かねばなりません。
冬はそこを首をすぼめて下を向きながら歩き、夏はだんごむしに気をつけて下を向き歩む。
同じに下を向いておりますが、不思議と夏の気持ちは上向きです。せっせと歩くだんごむしとおれごん。




