【見たけりゃ】お面の下、見たいんだっけ【見せてやる】
陣形を整えて待つこと数分。スタンピードの魔物たちがとうとうこの上層1層まで上がってきたようだ。それも数はかなりいるか?聞こえてくる足元からして一回で10~20前後は来てそうだ。
「皆!敵の匂いしてきたからそろそろ来るよー!構えろー!」
「皆さん!黒狐ちゃんの鼻はかなり正確です!戦闘準備を!作戦通り行きますよ!」
「「「「おー!!」」」」
葵も敵に気付いたようだ。ま、ここの魔物は獣系というか動物系しかいないから独特の獣臭は分かりやすいだろうな。足音を消すようなこともないから俺も探知はできる。それも最初だけだろうけど。
(戦闘が始まれば聴覚に集中する暇はないからの~。幸いここはダンジョン内。敵の死体は残らず血も出ない。故に葵の鼻が使えなくなる事態だけは訪れない。敵の探知は葵に任せても問題なかろう。)
「聞いたねお前ら。俺にも敵の足音聞こえてる。来るよ」
:ぜんっぜん分からん!
:いや、黒狐ちゃんが何か喋ってるっぽいのはギリ聞き取れたけど……
:俺何も聞こえなかったよ…?なんで↑のニキは分かるん…?
:本当にイカレてるよこの兄妹の感覚
:応援しかできんけど、皆頑張ってくれ!
@狐のヒロイン:情報提供助かる
なんか俺が中心になっちまったよな。まぁ、一番耳が良いからな。聖徳太子みたいなことができるとは思わないけど、右翼、左翼、どちらでもなにか異変があれば聞き取れるからな。青銀の羽への連絡はイーシャさんが戦いつつ俺の配信は垂れ流しにしてるらしいのでヨシ。葵たちにはうちの子を飛ばすのでとりあえずヨシ。
そして魔物どもの姿が見え始めた。あ、そういや開戦の合図は俺がやるんだっけ?麗奈からもド派手に頼むって言われたっけな。じゃ、いっちょかまそうか。【憑依】モエ。
:おっ、一発目はモエちゃん憑依か
:それ大丈夫?森林火災にならん?
:それよか施設の心配をすべきなんだよなぁ……
:それに関しては管理人さんに施設壊したら全額弁償するって白狐さん言ったからね。管理人さんもそれで納得したし。
:動物たちは管理さんの陰に避難済みだしな
普通のスキルが生えないっていうのこういう時にはありがたいよな。スキルあったらその通りにしか魔法使えないけど、俺の場合は魔力の属性さえ合わせてイメージできるなら再現だけじゃなく自由に魔法モドキ使えるからな。
(相応に魔力は使うがの。普通の魔法の1.5倍は使っておるぞ?しかし真白の魔力量は馬鹿げておるからの)
さー、ショーの始まりだ。俺達がお客様に提供するのは全力のおもてなし。対価にはお客様のお命頂戴いたします。ってね。
「お前ら、派手に行く。魔法の再現してくよ」
:なーんか軽いんだよ言い方が!w
@受付お姉さん:魔法の再現って物言いに突っ込んだ方が良いと思うわよ…?
@友人A:今更っスよw
:っぱ白狐さんは白狐さんやな!こんな状況でも変わらへんやんw
:確かに!ここには白狐さんも青銀の羽もいる!途轍もない蹂躙劇でしかないなww
俺は手を地面につけて魔力を流す。今回はド派手にやれって麗奈から言われてるし普段やらない上級魔法の再現をやろう!火属性上級魔法爆裂火柱。
その魔力は地響きと共に天まで焦がす大きな火柱となって敵を襲う。ただそれでも敵の出てくる速度の方が早いし第一陣すら殲滅は出来なかったと。まぁ、問題ないね。
(むしろ今ので第一陣殲滅しておったら他の者共の出番まで喰ってしまうからのぅ)
ん。それは悪いよね。せっかくやる気見せてんだから。
@狐のヒロイン:ナイスド派手
@天音ch:開戦了解です!
@受付お姉さん:皆さん無理だけはしないように…!
俺の開戦の合図を認識した右翼、左翼共に攻撃を開始した。右翼側は天音ちゃんと葵、葵が呼んだファースとレイ(このダンジョンに前回来た時に家族になったフェンリル親子)が攻撃しつつ他の探索者が攻撃できるように誘導をしている。
そして左翼側の青銀の羽は……
(ほほー、ド派手にいっとるのぅ)
だね。リーダーのエッケバルトさんのユニークスキルの【立ち向かうもの】で仲間を強化し、その強化した分だけ自身の強化率が上昇する。そして空間さえも切り裂ける彼のもう一つのユニークスキル【天翔斬】で敵をバッタバッタと切り伏せている。すごい威力だな。あれでエッケバルトさんの意志に応じて
範囲、斬るものとを任意に分けたりできるって言うんだから格差を感じるね。
***
「まだかかるのか…!きりがねぇ…」「くっ…体力が……」
「消耗した人は一旦下がって休憩を!動ける人は――」
「私が出るわ。動けないものは結界の内側で休息を取りなさい。」
「怪我した人ー!私の狐ちゃんの治療受けてねー!そこだファース!レイも良いよー!」
右翼側は体力の限界迎えつつあるか。それでも麗奈が出たからもうしばらくは戦線崩壊は免れるだろうが……それでも厳しいものはある。かれこれもう50分近くは戦ってるからな。敵も上層の魔物は片付きつつあるのか出てくる魔物もどんどん中層の魔物へとシフトしていっている。
(ダンジョンも本気で魔物どもを吐き出しに来ておるのぅ。いかに烏合の衆であろうとも数が数だけに戦線は苦しくなる一方じゃ。)
そうだね。俺もばかすか魔力使ってるしね。中層の魔物もどんどんフロアを覆いつくすレベルで湧いて出てきているから憑依だけじゃやってられないとライとフウを召喚して敵に対処してもらっているけど。
「敵の数が多すぎるな……しかも普段の探索と違うから結構神経使うぜ。」
「ぐぬぬ…動きすぎて白狐さニウムが切れそう……補充したいぃぃ……」
「気持ちは分かるが、白狐さんを見るんだ。彼はまだ弱音を吐いていない。そしてマーレも。結界の維持をしながら出来うるサポートをしてくれている。今ここで我々が折れれば後ろに居る人たちはどうなる?白狐さんや白雪殿の信頼は?我々に期待し、応援してくれている人たちの想いは?」
「ふぇっ⁉私ですかー⁉戦えないから申し訳ないとは思っているんですよ!」
「へへっ……俺らの中で一番働いてるリーダーも結界の維持に全力を尽くしてるマーレも弱音吐いてねぇんだ…!こんなところで折れたら……大炎上待ったなしだぜ」
「分かってる。言ってみただけ。これで限界じゃ、SSランクの名が廃る。軽い冗談はおしまい」
青銀の羽も消耗が見られるな。自分たちがミスればその瞬間後ろで守っている一般人まで死ぬと思えば相応のプレッシャーもかかるよな。
@受付お姉さん:白狐さん!そろそろ下層のモンスターも出てき始めるわ!もう少しよ!
:もうひと踏ん張りだ!頑張れ白狐さん!
@友人A:ヘイへ~イ?白狐さんよぉ~?ちょっと疲れてきてるんじゃねぇの~?
:青銀の羽はまだまだ諦めてないぜ~?
「んー……なんかめんどくさくなってきた。」
:はぁ!?
:エッケバルトさんは白狐さんが弱音吐いてないからまだ頑張るって言ってるのにその言葉を聞いたらどう思うでしょう?
:まさか諦めるのか⁉ここまでやっておいて⁉無責任かー!!
@友人A:ブーブー!
「お前らなんか勘違いしてる。面倒だから諦める?なわけ。終わらせる。」
:お、おう…?
:流石にこんな状況で面倒とか言われると不安になるだるぉー⁉
:でも…状況はぶっちゃけ膠着してるぜ…?
ご先祖。俺の言いたいこと分かるでしょ。
(うむ!任せるのじゃ真白。わっちは凄いのじゃと、お主にも葵にも、そして全世界にも見せつけてくれようぞ。)
じゃあご先祖任せにする前に一言エッケバルトさん達に断り入れとかないとな。右翼側は……まぁ、葵がいるんだ。俺がこれから何をするのか察するだろ。
「フウ、ライ、ちょっとここお願い。」「「こーん」」
:え、どこ行くん?
:急にどした?
:流石に守備の要が勝手に抜けるのどうかと思うんですけど…?
@受付お姉さん:白狐さん…?
フウとライに少し戦線の維持をお願いして俺は(当然敵を倒すのは忘れずに)青銀の羽の元へ向かう。
「エッケバルトさん。」
「ん?白狐さんか。何か、問題かなっ?」
「いや。ちょっともう面倒になったんで……本気、出そうかなと。」
「ほ、本気だって…?白狐さん、君は全力で戦ってはなかったというのかい?」
「はい。今出せる全力は出してましたけど本気はまた別なんで。ですんで十数秒程時間稼いでいただけないかなと。」
:本気…?
@友人A:あーそういう…コイツ覚悟決まってんな?
:何をするんだ一体……
:教えてくれ友人Aニキ!
@友人A:すぐ分かるよ
「……分かった。白狐さん、君の事を信じよう。何秒必要かな?」
「30秒、稼いでもらえます?」
「任されよう!」
「ありがとうございます。」
:30秒?大技か?
:でもまだモンスター来るんだろ?一発じゃガス欠ならんか?
それから俺は振り返ってこう言う。
「そうだ。イーシャさん、それにお前らも。」
「どうしたの」
:おっ、なんだなんだ?
:俺、この戦いが終わったら結婚しますってか?
:死亡フラグじゃねぇか⁉
:でも流れが最後の遺言言う流れなんだよなァ……
:俺は推しの死を看取りたくねぇぞ⁉
「お面の下。見たいんだよな?んじゃ、見たけりゃ見せてやる」
「…………え?」
:ハァ!?今ァ⁉
:いやいやいや本当に遺言の流れか⁉
:天音ちゃんも黒狐ちゃんも泣くぞお前ェ⁉
じゃあ、ご先祖。あとは……よろしくさん。
(おうとも!任せるのじゃ我が子孫。では汝の体を借り受けようぞ)
「【憑依】九尾の狐、玉藻の前」
そして俺の体は光出す。




