《状態異常:【魔結晶化】》
「どうかした?」
小町人形は上を見上げた。自分専用の椅子も用意され、久方ぶりに自分の手で書物のページを捲っていた。丸型のテーブルに置かれているルイボスティーを飲み、相手からの返答が無いため、再び質問する。
「いつまで、アホ面しているのよ?」
果たして質問なのか、この場で問う者は誰一人としていなかった。オフィが相手を小馬鹿にした言動したのには第三者でも理解していた。オフィの対面に立っている者たちは全員、オフィに対してしかめっ面していたのだ。
「取り敢えず、ユミナちゃんに与えたお遣いの一つは完了したみたいね」
スコーピオンだけ納得顔に切り替えている。
「最初は不服だったけど、慣れればコッチのモノね」
人形を思い通りに動かすオフィ。
「んで、全員揃って私に会いにきたのは......」
「謝罪し———『あーそういうの良いわ』!?」
星霊全員が驚く。
「今更なかったことにしたくないわ。理由はどうであれ、私は貴女たちを裏切った事に変わりはない。今まで恨んでいたんだから、永遠に貫き通りなさい。私も信念を曲げるつもりは一切ない」
「お前はそれで、良いのか?」
「勿論!」
オフィの真意を確認した星霊は告げる。
「分かった。私たちはユミナ様と一緒に戦う協力者。二度目の裏切りは許さない」
「そっくりお返しするわ」
私は星霊たちの談笑を遠くで眺めていた。
「良いな、友とは......」
「ケンバーにはいなかったの?」
悲しい表情を浮かべるエヴィリオン・ヴィクトール。
「居たわ。大切な二人の友達が......」
ケンバーが生きていた時代を考えると、もう二人は存命していないもんね〜
「私が友達になってあげようか」
「ふん! 弟子の分際で。友になるなど1万年早いわ!!」
私たちも笑い合っている時、図書館の大扉が開く。入ってきたのは——————
「カレッタ? 久しぶり......?」
慌てて入ってきたカレッタ。靴音が良く鳴る。いつもならヴィクトール家の第一王女としての振る舞いを見せるが、今のカレッタには余裕がない。
「良かったです。まだ生きていますね」
必死な声と意味深な発言。
「カレッタ。何が......!?」
大扉が開放されたことで聞こえてくる人々の声。歓声ではない。恐怖から排出された絶叫。
駆け足で外に出た。
「なに、これ......」
庭に居る人々が次々、結晶化されていく光景が広がっていた。外は騒然となっていた。足から徐々に上へ。最後は顔を結晶が覆い、内部に閉じ込められている人間は消滅。大地に残ったのは山なりの大きい結晶だけだった。一個二個の話ではない。逃げ惑う人々から無作為に結晶にされていく。形を変えられた者たちは声も動くことも出来ずにいた。
「聴けっっ!!!!!! 貴様らぁああああああ!!!!!!!!!」
怒号と凄まじい音が鳴り響く。声の震源は学園の天辺。佇立している時計塔。巨大な鐘が声の振動で反応し、鳴り続ける。まるで死のカウントダウンを告げるかのように。
強烈な音のダブルパンチを喰らう。
(頭が痛いっ)
時計塔に立っている牛の顔をもつ灰色もローブ姿の男性は言う。
「貴様らが助かる方法はただ一つ。ヴィクトール魔法学園の地下に存在する霊墓。そこに封印されている【賢者の石】を手にいれるしか『魔結晶化』からは逃れれない」
私の前にクエストの画面。私だけじゃない、ヴィクトール魔法学園に籍を置くプレイヤー全員に同じクエスト内容が表示されていた。
《ユニーククエスト:《地下に眠る深淵へ》を開始しますか? 【はい】・【いいえ】》
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ユニーククエスト
《地下に眠る深淵へ》
・ヴィクトール魔法学園の地下霊墓に眠る壺を発見せよ
※挑戦は一度のみ
※ヴィクトール魔法学園に在籍しているプレイヤーのみのクエストとなります。
※クエストクリアするまで、地下霊墓から脱出不可となります。
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私以外のプレイヤーは続々とクエストを受注し出す。何かに導かれるまま学園内へ駆けて行った。
プレイヤーなら突如出現したユニーククエストを受けない理由はない。それにあの牛男の言葉が真実なら【賢者の石】なる重要アイテムが入手できる......はずだ。真実なら......
何か、引っ掛かる......恐らく壺の中に【賢者の石】が隠されているかもしれない
だが、壺を見つける事だけでユニーククエスト案件? 何か奇妙だ......
奇妙なのは他にもある。
「この結晶は魔結晶って言うんだ」
《魔結晶は採掘対象外となっております》
元々原料が人間だから? それとも別の役割があるため......?
牛の男が落ちてきた。
「お前たちは合格ということだな」
”合格”?
「私の術に幾分か耐性があるようだ」
私たちに接近してくる。
「どういう意味よ」
「魔結晶に速攻成った生命は体内に宿る魔力量が少ない者だ」
MP量にとって状態異常の進行に差異があるのか。
「人よりも多少魔力量が多いからと言って安心は出来ぬぞ。術を解かぬ限り、魔結晶化は進む」
「術を解いてくれますか?」
「ならば地下霊墓に行くことをオススメする、貴様も魔法使いの端くれなら」
「随分ご丁寧ね。この騒動は貴方よね」
「YESでありNOでもある。私はただ主の意向に準じているだけ」
「『主』?」
「全ては闇の魔導士:ジニアス・ディアボリックの復活のために......」
「えぇ!?」
”ジニアス・ディアボリック”なる魔導士の名に反応を見せたのは、カレッタだけだった。
「カレッタ。知ってるの? ジニアス・ディアボリックという名前に」
「ジニアス・ディアボリックは......師匠、エヴィリオン・ヴィクトールの幼馴染です。そして嘗て魔法界を震撼させた最恐最悪の闇の魔法使いでもあります」
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《ジニアス・ディアボリックの悪魔》
??.???:悪魔の彫像:契約済
??.???:悪魔の彫像:契約済
??.???:悪魔の彫像:契約済
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