真実の蛇遣い座
~NPC視点~
ユミナがオフィ改造計画を行っている同時期。ボルス城にて———
「なんじゃこれはぁぁあああああああああ!!!!!!!!!!!」
ロリババアから放たれた絶叫。声の主はアイリス・イニティウム・シルヴァ・ティマンドラ・ルーナ。吸血鬼の始祖であり娘に王位を継がせ、今は隠居の身。元々ボルス城はアイリスの持ち物。色々紆余曲折を経てユミナに所有権を譲った。所有権がユミナに変わったのでユミナ自身が自分の城を住みやすい環境にするのは至極当然の行動。アイリスも十分理解している。が、それでも状況を理解するのに頭が追いつかないでいた。
外観はそのまま。内部構造が魔改造されているボルス城を歩くアイリスのメイド二人。
「少し間が空いてから随分、様変わりしましたね」
「お姉。ここに飾っていた絵画、消えたね〜」
「代わりにユミナ様の自画像が置かれるとは......しかも特大サイズ」
「妾が長年かき集めた......名画たちが......」
『アイリスのコレクションはみんな、地下に保管してるぜ』
アイリス、ラグーン、ベイがタウロスの声に反応。タウロスの方へ目を向けていた。
「いらっしゃい」
「タウロス。改修工事しすぎです」
「そうか? お嬢の生活を快適になるように行なったんだがな〜 ってか総指揮はキャンサーだぞ。アイツ、細部まで拘る性分だから」
「やりすぎです!」
「見て見て。あるじ〜 屍状態で倒れ込んだ。責任取って〜」
床に気絶に近い形で伏せているアイリス。
「これから案内する施設を見せたら、昇天するかもな」
目を覚ますアイリス。肉眼で自分が見ている光景を確認した。明らかに未知の風景だった。超発展した内装という感想しかアイリスは出なかった。
「おぉ!! 起きたか」
アイリスは現在、タウロスの腕の中。気絶している間に移動していた。
「ここは......どこじゃ?」
「ボルス城を囲む湖。その下だ」
アイリスは困惑しか感情を出せずにいた。
「うん? 二人は?」
「アイツらなら研究所を散策してるぞ」
タウロスの後ろでラグーンとベイは研究所の内部をテーマパークを楽しむ少女の様なはしゃぎぶりを披露していた。
「あの二人にとっては昔に戻ったみたいで嬉しんだろうぜ」
「妾には分からん」
たどり着いた部屋。『星霊以外立ち入り禁止』の張り紙が扉に掛かっていた。
「それでは、アイリス様」
「またね〜 あるじ〜」
「のぉ〜 妾は何をすれば良いのだ?」
未知らぬ施設で一人ポツン。
「身体のケアでもやってこれば」
アイリスの背後に音もなく整列していたエルフたち。
「技術は保証するからな」
なんたってアクエリアス直伝の技だから、とタウロスが言い終えることにはアイリスはエルフたちに連行されていた。
「お待たせ〜」
部屋には牡牛座、双子座。そして蛇遣い座以外の星霊が入室していた。
「じゃあ、まずは皆集まってくれてありがとう」
スコーピオンが笑顔で挨拶を始めた。
「早速本題に入るわ! 先ほどタウロスと一緒に【自我が消滅した静かなる殺戮者】を制御する装置を一応、完成させたわ」
驚きを歓喜が部屋中に満ちる。
「”一応”とは?」
全く詳細を知らないラグーンがスコーピオンに質問した。
「制御装置———超新星の王冠と銀河の女王冠は完成であり未完成なのよ」
「職務怠慢」
「ちがいます〜 まだパーツが揃わないのよ。失礼しちゃうわ」
頬を膨らませ、ベイの言葉に反論を見せたスコーピオン。
「で、現物は何処ですか? 見てみたいです!」
「タウロスに預けてあるわ」
全員の視線がタウロスに向けられた。対するタウロスはお茶目な顔で言う。
「お嬢に渡しちゃった⭐︎」
「今日の夕食、牛のフルコースにしません」
アリエスの言葉にヴァルゴが研いだばかりの包丁を取り出し、準備万端の姿勢を見せた。
慌てるタウロスは弁解を始める。
「待て! あれはお嬢のモンだし、早めに渡した方が良いと思ったから......」
段々声のハリが薄れ、後半聞き取れない者もいた。
「ハァ〜 私の評価ダダ下がり確定ね」
「ちゃんと発動条件を説明したから、よっぽどのことが無い限り、お嬢は使わないだろうぜ」
「お前はお嬢様が一度でも、”よっぽどのことが無い限り”を守ったことあるか」
全員が『無いな』と断言した。きっと今頃検証や実験と称して『超新星の王冠』をおもちゃにしているだろう。
「はいはい! 道を戻すわよ。今日集まってくれたのは、その『超新星の王冠』の発動条件に関わること」
「タウロスから軽く聞きましたが、『十三人の禁断協調』を活用すると」
「出来るの? だって———」
「皆の気持ちも十分理解しているし、中にはある仮説を立てている者が居るのは知ってるわ」
スコーピオンの言葉に反応したのはヴァルゴ、レオ、キャンサー、カプリコーン、リブラだった。
「私もあるわ! と言うか気づかない方が可笑しかったのよ」
一瞬、沈黙に包まれた。
「私たちは......オフィュキュースに助けられた。厳密には”生かされた”と言い換えた方が正しいかな」
「どういう事かしら? ”助けられた”? ”生かされた”とは?」
「アクエリアスは考えなかった? どうしてオフィが裏切ったのか」
「勿論、考えたわ。でも......唐突だっただし、悪神を倒した直後だったから整理が追いつかなかった」
「アハハッ!! あれは傑作だったよね。過去一強敵の悪神と呼ばれたレユゴリを倒した、一瞬の隙に一人ずつ石化されたんだから。私含めて全員消耗が激しい状態だったから抵抗出来なかったわ〜」
「だったら分かるだろ。アイツは裏切った。それが真実......」
「ピスケス。なら何故オレらは今生きてるんだ?」
「石化され無防備の私たち。直ぐ石像を破壊すれば障害は無くなる。ヴァルゴですら内部から解呪出来なかった時点で星霊は詰んだ」
「今なら出来ます!!」
「無理しなくても良いぞ」
「私たちの石像は一つも欠けず、ましてや、破損する事なく保存状態も良好のままだった」
「それに裏切るタイミングが遅い。悪神が倒された後に活動を始めた。多分色々と工作して悪神との戦闘を不利にしていたみたいですが、どれも星霊の日常レベル。不可解な点が多いですね」
「聞いたわよ、カプリコーン。図書館でいきなりレイピアを抜いて攻撃を仕掛けたらしいじゃない」
「ご主人様のお陰で日記を壊さずに済みました」
「ま、オフィにはその未来も観測してたみたいだけど」
信じられない顔をする者、冷静に受け止める者など様々な感情が部屋に蠢いていた。
「アイツ、未来を知っている風なのよね〜」
「元占星術師ですし」
「一般占星術師なら星霊に選ばれていないわ」
「”未来が視える”ですか?」
「そう言えば、アイツの言ってた何気ない予言。100%的中していたな」
「競馬場で大儲けした記憶があるな〜」
「大バカが居るぞ、ここに」
「予言に関して本人は、『偶然よ〜』と否定していたわね」
「”未来が視える”が正解よ。きっと私たちが集まっているこの光景も視ているはず」
「うんなバカな......」
「何が正しいのかは、本人しか分からないでしょうね......でも、自分が裏切った事で視えた景色が現在なんじゃないかな」
沈黙が戻った。
「それで、」
「オフィは紛れも無く私たちの仲間。一緒にユミナちゃんを助けましょう!」
全員が一同に頷く。何かを思い出したかのように挙手をするサジタリウス。
「あの〜 それで、私たちが”生かされた”理由とは?」
「それも簡単よ。リリス様が歴代最強と称してくれた私たち。オフィが現代まで生かしてくれた訳」
確信を突いた一言を放った。
「悪神レユゴリが現代に復活を果たす。私たちがやらないと惑星オニキスが滅亡するわ」
ボルス城地下、湖中に浮かぶ【研究施設:コスモス】から遠く離れたヴィクトール魔法学園、大図書館。ユミナの肩に座っている小町人形はため息を吐いた。
「どうしたの?」
「どうやら、皆答えは一つみたい」
意味深な言葉。
「ねぇ、ユミナちゃん......仲間って良いわね」
儚い声色。哀しみではなく心の底から待ち焦がれた瞬間を表す声だった。オフィは顔を見上げた。
が、ユミナの顔はこの世のモノとは思えない生物を見た直後の渋い表情をオフィに対して浮かべていた。
「カグヤ、ヒメノ......やっぱりオフィ改造計画、失敗したみたい」
カグヤは、ヒメノと顔を見合わせた。ユミナ含め3人で脱力して四つん這い状態を披露したのだった。
オフィは笑顔になり、ポツリと呟いた。
「ば〜か! ふふん♡」
良かったね




