VS 機械生命体 ⑤
森の中から、無数の赤い鎖が飛び出す。まるで生き物のように蠢いていた。
「あれって......リブラの」
今、機械生命体を相手にする訳にはいかない。急いで森の中へ入った。
走っている前からリブラが後退してきた。私が静止し、リブラは着地した。息遣いが荒いリブラ。
「主様!?」
「手短に」
「あの機械生命体がキャンサーたちをハッキングしました」
ぞろぞろと出現する女型機械人形。全員の瞳は、闇の様に真っ黒に染まっていた。無表情で武器を構えていた。
「機械生命体は一旦、旅人たちに任せて、此方はキャンサーたちを捕獲に」
リブラの背中に浮かぶ異空間。【ヘルズ・ゲート】と呼ばれる監獄。リブラが捕まえた者は【ヘルズ・ゲート】に収監され、リブラの許可なしでは外に出ることは出来ない。
「今、500人の収監が完了しました」
女型機械人形は1000人いる。残り半分ね。
「確証はありませんが、あの機械生命体を倒せば、皆正気に戻るかと」
「分かったわ。そっちは私が対処する。リブラはこのまま皆の捕獲に専念して」
「畏まりました、主様」
「この子達は、好きに使って」
魔術本24冊全開放。1冊毎に大量のMPを注いだので、大型サイズの使い魔が現れた。
「感謝します!」
「皆、リブラのサポート、お願い」
私の命令に答えるように、それぞれ鳴く。
後ろに気配。私を追ってきた機械生命体の分身体だった。数は5。
ウィンドウを開き、武器を変更。賊藍御前。
「どうやら、解禁だね」
賊藍御前は男性特化武器。男、オス、男性型の人やモンスターにしか攻撃できない縛りがある。機械生命体に性別があるのか。疑問しかなかった。どうやら、システムは理解しているようだ。敵が男性だと。
双薙刀を回す。地面に刺す。
「キル数をお前らで稼ぐ」
地面を蹴り、機械生命体へ攻撃を仕掛けた。
街は機械生命体の分身体で溢れかえっていた。元々いたプレイヤーが応戦。時間が経つに連れて、続々と応援に駆けつけたプレイヤーたちも機械生命体と戦い始める。
次々と襲いかかる機械生命体の分身体と戦闘を繰り広げる。分身体は壊れ、再生され、攻撃する。この繰り返し。
プレイヤーの中には機械生命体本体の核を壊さない限り、機械生命体が死ぬことを知らない。残る機械生命体は1体。【ウィルナナ・キバンソン】は自身の力をフルに稼働させた。プレイヤーもまた、圧倒的な戦力差に苦戦しながらも、全力で機械生命体の分身体を叩いていた。
一部の分身体が集める。他の分身体よりも一回り大きい身体。本体だ。
「会いたかったわ」
【ウィルナナ・キバンソン】は聞き覚えのある声に反応。右手に細長い武器、左手には分身体の頭部が握られていた。
「返す」
私は持っていた分身体の頭部を放り投げた。金属の頭は【ウィルナナ・キバンソン】に吸収された。
【ウィルナナ・キバンソン】の胴体部分が崩れる。中から拘束されたキャンサーがいた。キャンサーは抵抗せず、眠っているような姿勢だった。
「コイツは非常に良いな」
他の機械生命体の任務もそうだった。なら、この機械生命体も同じ任務を受けているはず。
「お前を倒せば、ハッキングは解除されるのか」
「”出来る”と言えば、見逃してくれるのか」
賊藍御前を分離。濃藍の矛、鉄藍の刀に別れた。
【ウィルナナ・キバンソン】の不気味な笑みに対抗して、私も笑みを浮かべ告げた。
「後悔させてあげる」
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〜装備欄〜
頭:沈黙の古代帽子
上半身:幽天深綺の魅姫・エクシード
下半身:幽天深綺の魅姫・エクシード
足:転輪の翠蹴
右武器:濃藍の矛
左武器:鉄藍の刀
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他プレイヤーと交戦していた分身体が私に向かう。スキル:大地理を起動。宙に透明の足場を生成。跳躍し、足場に着地。再度真上にジャンプ。
宙を舞いながら、分身体を次々、薙ぎ払う。予め装備変更していた【転輪の翠蹴】の踵落としで分身体の頭部を何体か砕いた。
地面に着地後、私を覆う様にジャンプしてきた分身体を避けつつ、濃藍の矛と鉄藍の刀で一撃で倒した。
鉄藍の刀を投擲。投擲された鉄藍の刀の軌道上にいた分身体数体は胸を刺された。手に持っている濃藍の矛の持ち手に設置されているトリガーを引く。自動で動く鉄藍の刀は装備者の元へ戻ろうとする。
途中、戻る鉄藍の刀に切断される分身体もいた。濃藍の矛と合体。くるくる回し、端の鋭利な武器に分身体は斬られた。
「ヘェ〜 お前らにも【憤怒】が付着するんだ」
外宇宙の生命体だから、オニキス産の【怒り】が適用されるか不安だったけど、どうやら有効みたいだ。その証拠に、分身体の身体が高熱を帯びていた。
あれがきっと機械生命体が状態異常に掛かるエフェクトなんだろう。【転輪の翠蹴】の攻撃を受けてから100秒は過ぎている。
本来なら【憤激】も発動中で、【憤怒】の感染が広まっていると思ったけど、【憤激】は有機物専用みたいだ。
ロボットで意思疎通できる種族であっても、有機物じゃない。だから、【憤激】は対象外か。ま、【転輪の翠蹴】で一体ずつ確実に仕留めれば問題はない。
濃藍の矛と鉄藍の刀専用ウィンドウが展開。
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・濃藍の矛、鉄藍の刀
《【魔魂封醒】:発動条件達成》
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「魔魂封醒、起動」
機械音が唸る。濃藍の矛、鉄藍の刀の刀身が青く輝く。
「速朱の流!!!」
吹き荒れる斬撃。振り下ろされた斬撃は、無数の分身体を細切れにする。刃状の斬撃は絶え間なく降り注ぐ。壊れては、本体に吸収され、分身体が復元される。
このローテーションは徐々に力を失いつつあった。時間が足りないのだ。容赦なく切り刻まれる分身体。本体の【ウィルナナ・キバンソン】にも速朱の流の攻撃を浴びる。
速朱の流の広範囲斬撃攻撃に成す術がない【ウィルナナ・キバンソン】。分身体を復元する行動を止め、自身の防御力を高めるために行動を変更する【ウィルナナ・キバンソン】。
が、それも無駄な行動だった。速朱の流の攻撃の方が【ウィルナナ・キバンソン】が本来持つ金属装甲を容易く超えていた。加えて防御に力を入れても、速朱の流の攻撃キャンセルはない。
【転輪の翠蹴】は100秒経過したので、特別なウィンドウが表示された。
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・転輪の翠蹴
《拡張武装:【不死領域】が解放されました》
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不死領域によるジェット噴射。【ウィルナナ・キバンソン】に肉薄する。
「良いのかぁああ!!!! 俺自身を攻撃すれば、内部にいる星霊もただじゃ済まない」
苦し紛れの脅し。
「生憎、力調整は習っていないのよ!!」
濃藍の矛、鉄藍の刀が胴体に触れる。【ウィルナナ・キバンソン】は身体を硬直させた。
「さ・よ・う・な・ら」
再チャージされている。もう一度、魔魂封醒を起動しようとした時——————
リブラ、一人で1000人を相手しているのか......
しかも不殺手段。




