VS 機械生命体④→⑤
星霊に選ばれる者たちは、初めから持ち、当たり前に己の身体に宿している。生身での純粋な戦闘能力。素手攻撃も例外ではない。世界を崩壊させる戦闘力は序の口となる。
「核が露出するまで、殴り続けるか」
【トマナス・カトレ】は初めての感情を生み落としたかもしれない。初めて敵に恐怖を抱いた。絶対的王に並ぶ、否、超える可能性があった絶望が。
「......遅かったか」
私はレオとサジタリウス、【トマナス・カトレ】を後方から扉を盾にして観察した。
サジタリウスが拳攻撃するのは私には新鮮だった。いつもは弓で訓練していたから。レオは私にあらゆる武器種を使い方から実践まで叩き込んだ教官係。
当然レオと拳で語り合った時もある。経験から言って、レオの拳をマトモに喰らうと死の一歩手前まで到達してしまう。三途の川のゴールテープは切らせないぞ......
ま、何百回とデスされたけど......気持ちいいくらいに拳一つで私の身体に穴が空き放題。拳に爆弾を搭載しているじゃないわよね。
【トマナス・カトレ】にそこまで苦戦してないっぽいから、戦闘も時期に終わるだろう。さぁ、ここで更なる問題に直面してしまう。同率1位が多い件だ。
残る1体の機械生命体はヴィクトール魔法学園の周辺に不時着したと情報が出回っている。正直、ヴィクトール魔法学園まで到達したプレイヤーでは機械生命体討伐は無理。
ヴィクトール魔法学園のクエストで残っている高レベルプレイヤーが入れば、話は変わるかもだけど、それでも、五分五分な戦闘と予想。
で、十中八九私の従者も向かっている事だろう。もしかしたら、もう討伐寸前かもしれない。そうなれば、私が1位になり、『子作り』イベント無効化計画が実現出来なくなる。
「一応、様子だけ観に行くか」
転移先を決め、再度『異空間転送の把手』を使用した。向かう先、スラカイト大陸、セルパン。
ヴィクトール魔法学園、周辺の森は荒れ果てていた。
「酷いな...」
ヴィクトール魔法学園にはなくてはならないエリア。学園専用クエストや魔法アイテム生成に必要な素材は全てこの森で獲得できる。最深部に進むに連れて、レアリティの高い素材が入手可能。が、暫くは素材採取はできないだろう。それだけ甚大な被害が出ていた。
視線を後ろに移す。ヴィクトール魔法学園の校舎、大図書館が破損していた。暫く校舎を眺めていると、爆発音が街の方から鳴った。
セルパンの街は大混乱していた。機械生命体が街で暴れていた。食い止めるプレイヤー。恐れ慄き逃げ惑うNPCたち。
見境なく街を破壊続けている機械生命体。ヴィクトール魔法学園が近いと言うことで魔法使いプレイヤーが多い。魔法弾を放ち、機械生命体に立ち向かう。
突進を繰り返す機械生命体、ウィルナナ・キバンソン。人々の悲鳴は【ウィルナナ・キバンソン】には届かない。たんに聞こえないのも理由だが、単純に小さい虫けらの悲鳴など【ウィルナナ・キバンソン】には興味がなかった。
魔法を放つプレイヤーに向かう【ウィルナナ・キバンソン】。空から飛んできた少女が【ウィルナナ・キバンソン】の顔面を殴った。
よろめく【ウィルナナ・キバンソン】は、即座に体勢を整える。自分を殴った虫けらに攻撃を仕掛け始める。近くにあった建物だった瓦礫を持ち上げて、投げつけた。
捕食者の影爪で殴り返す。同時に前へジャンプ。瓦礫を砕く【ウィルナナ・キバンソン】。砕かれた瓦礫の影響で視界が広がる。が、すぐに視界は暗がりを見せた。
二度目の顔面クリーンヒット。今度は体勢を整える時間はなく、倒れ込む。
おかしい......
周囲を確認する。私の従者が誰もいない事実。
「お前、やるな」
立ち上がる【ウィルナナ・キバンソン】。その口調は愉快だった。
「さっきの小型ロボットたちと同等だな」
小型ロボットたち? キャンサーと女型機械人形の事?
「彼女たちはどうした」
「時期に分かるぞ」
雄叫びを上げ、襲いかかる。
「......だから、」
捕食者の影爪の拳と【ウィルナナ・キバンソン】の金属の巨拳がぶつかり合う。
「私の従者たちは何処だァアアア!!!!!!」
【ウィルナナ・キバンソン】が吹っ飛んだ。
別の爆音が鳴る。
森の中から、無数の赤い鎖が飛び出す。まるで生き物のように蠢いていた。
「あれって......リブラの」




