VS 機械生命体 ④
スラカイト大陸:サングリエ周辺の森林。1体の機械生命体が不時着したが、街の外装が風圧で剥がれ、建物が半壊している箇所もあった。
「なんか、少し前に類似のモンスターを狩った記憶があります」
サジタリウスは目前の機械生命体を見ていた。サジタリウスとレオが機械生命体を発見した時には既に混戦状態だった。
多くのプレイヤーと戦っている機械生命体は全身が武器の装いをしていた。大剣、双剣などの刀剣系武器種、槍や鎌などの長柄系武器種、ハンマー、斧などの打撃系武器。さまざまな武器の形が機械生命体の身体中に生やしていた。ただのファッションでは無い。プレイヤーの接近を確認すると、自動的に攻撃モーションが入る。全てが巨人サイズの武器が問答無用でプレイヤーを狩る。
「今更、全身武器ロボットに驚かねぇ〜けど」
レオは装備している星希の皇望剣と星未の戦来斧。片手剣と斧モチーフの武器ではある獅子座専用武器。プレイヤーでは決して製作できない類の代物。が、今は持っているだけで唯の置物と同じである。
「まさか、奴が吸収した武器と同系統は一切攻撃がはいらねぇ〜とはな」
サジタリウスとレオが戦っている機械生命体。【トマナス・カトレ】は武器を吸収することで、自身の装甲を強化出来る。加えて【トマナス・カトレ】が吸収した武器種を持つ者が一定領域内に存在すると、所持している者は【トマナス・カトレ】に対してダメージがゼロになる。無力化とも言う。【トマナス・カトレ】に剣が吸収されれば、大剣や片手剣で攻撃しても【トマナス・カトレ】にダメージは入らない。【トマナス・カトレ】の身体に剥き出しになっている武器は破壊されても、解除されない。
「あっ!? 弓も吸収されました」
サジタリウスが射った矢は機械生命体に直撃したが、カスダメも入らない。直前で弓が吸収されたのが要因となる。
「残っているのは......」
拳、素手だけ。武器を装備しているないプレイヤーには【トマナス・カトレ】の能力は対象外。有効性がある攻撃。初めから素手のみのプレイヤーは歓喜しながら戦い、武器を封印された大多数のプレイヤーは、己のSTR値を確認しつつ、突貫していった。ゲームのイベントで登場した機械生命体。討伐推奨レベルは100。プレイヤーが最後に到着する人間の街、サングリエ。サングリエ内で発生するレベル上限解放イベントをクリアしているプレイヤーなら、余裕。が、急場の攻撃は機械生命体には効かない。
巨大な腕に薙ぎ払われるプレイヤー。
「弱い」
武器と一緒に吸収したプレイヤーを取り込んだ影響で、惑星オニキスの言語を習得した【トマナス・カトレ】。思わず漏れてしまった苦言。敵を攻略する上で、敵の武器を解析し、無力化するのは戦争では有り得る手段。数多くの惑星で行ってきた手段を惑星オニキスでも用いた。素手を無力化しなかったのは、する意味がないからだ。機械生命体の金属ボディをその場で素手のみで破壊される事は数多の惑星での戦争で得たデータで証明されている。
多少、素手攻撃を強化する術を所持している者が少なからずいたが、機械生命体には決定打になっていない。
「俺は、お前らを回収する任務も貰ってる」
【トマナス・カトレ】は自分に攻撃している非力な人間たちに興味を無くなっていた。【トマナス・カトレ】の矛先はサジタリウスとレオに向けられていた。
「貴様らも武器を失っては、棒立ちするしかないか」
愉快な機械音が鳴る。勝ち誇ったニヤケ顔。二人を捕獲する手が迫る。【トマナス・カトレ】の掌に二人の突き出された拳が触れる。
声にならない叫びが周囲を染める。サジタリウスとレオではない。辺りにいるプレイヤーでもない。腕が破壊された【トマナス・カトレ】から発せられた機械音だった。
切断された腕は地面に着く。機械生命体は核を破壊しない限り、死なない。部位が吹っ飛んでも、元に戻る。粉々になった【トマナス・カトレ】は修復されていく。
「......何しやがった」
焦る声。数秒前の自信は【トマナス・カトレ】の中から消え去っていた。【トマナス・カトレ】の身体が唯の素手によるパンチ攻撃で壊れる程、柔な身体ではない。数多の惑星で戦った現住民との戦闘データでも証明されている。機械生命体の身体に損傷が出るのは、必ず、武器による攻撃。
【トマナス・カトレ】の、機械生命体の計画では計り知れないものがあった。星霊に選ばれる者は、初めから持っているモノがある。
「コイツ、素手だけダメージ入るな」
「急でしたので、脚を変更する暇ありませんでした。今から変えましょう」
サジタリウスの脚が人間の脚に変化する。
「良しっ! これで多少は動きやすくなります」
拳の手指をポキポキと鳴らすレオ。
「武器がなくても、戦えるのが俺らだからな!」
星霊に選ばれる者たちは、初めから持ち、当たり前に己の身体に宿している。生身での純粋な戦闘能力。素手攻撃も例外ではない。世界を崩壊させる戦闘力は序の口となる。
「核が露出するまで、殴り続けるか」
【トマナス・カトレ】は初めての感情を生み落としたかもしれない。初めて敵に恐怖を抱いた。絶対的王に並ぶ、否、超える可能性があった絶望が。




