クモ女がやって来た!?
私は砂漠エリアへ向かう。森を駆ける。ウルウルの脚の速度が落ちる。最後にはその場で静止。
前方へ警戒の威嚇。陰から姿を表したのは人型の蜘蛛だった。蜘蛛の身体に人間の上半身がくっついていた。全体は紫色と黒色の配色がされている。細くて艶やかな八本の脚、脚の真ん中から先端は金色に輝いていた。
二つの人間の眼と額には四つの瞳が私を凝視していた。
「アナタ、人間?」
首を傾げて私に問いている? 発音は質問に近いけど、不慣れな感じ。
「人間だよ」
肘まで覆うレースの手袋で拍手のポーズを取る。上機嫌の笑顔。待ち侘びた様な表情は次第に怪しげな笑みへ変わる。
「この子たちと、一緒ネ」
木の葉から出された人間。全部で40人くらいいる。全員プレイヤーで蜘蛛の糸で拘束されていた。拘束状態のプレイヤーはもがくことも一切せず、黙って宙吊りされていた。手を後ろに回され胴体に糸が巻きつかれている者、逆さ吊りの者、首吊りされている者など様々な拘束方法でプレイヤーは捕獲されていた。恐らく彼らは私同様砂漠エリアに出現した機械生命体へ向かう途中で、蜘蛛女の攻撃を喰らったのだろう。動かない所、毒か麻痺されていると予想される。
「アナタも、狩るネ」
薄紫色の髪の毛を手で靡かせる。揺れる髪の毛は形を変え、私に攻撃してくる。ウルウルを魔術本に仕舞い、後退する。髪の毛を蜘蛛の糸に変えて拘束か......
蜘蛛の腹部から糸の檻が発射。婥約水月剣を装備。切り刻んだ。
「アナタから悪魔の匂いがする、複数」
えぇ!? そんな匂い付いてる!?
良いな! 蜘蛛女さんみたいな特殊機能があれば......妄想は自由だからね!
「悪魔を知ってる蜘蛛って......」
「私、アラクネ。昆蟲種の蜘蛛族、長やってる」
このアラクネって女蜘蛛さん、船で戦ったカマキリのマンテラーと同じか......マンテラーも悪魔契約して人型を得た。なら、アラクネも悪魔契約を完了しているはず。に、しても......上半身は人間な訳だけど......凄いわね。
ほぼ裸。服は着ているけど、胸の半分と首周りだけしかない服って存在するんだ......胸デカいな〜
「うん? 何か感じる? 敵意に似た感情」
な、バレた!?
昆蟲種に構っている暇はない......胸デカいな〜
「急に攻撃の速度が増した!?」
アラクネはかろうじて回避できた。冷や汗が出いていた。
ちっ、反応良いわね......胸デカいな〜
「アラクネさん。アナタも人間狩り?」
「昆蟲種の王にならないと、蜘蛛族、滅びる」
そう言い終えたアラクネ。が、首を傾げ始める。
「でも、不思議。アナタに、殺す感情が湧かない」
アラクネは自分でもらしくない感情を出していた。ユミナに対して一目惚れだと気付くのはもっと、後になる。
鋭利な脚が襲いかかる。婥約水月剣でいなす。うん!? 蜘蛛の脚を間近で見たけど......意外と綺麗ね。私の脚、アラクネみたいにモデルみたいな細い脚じゃない。羨ましい!! 私にはない者を持っている、美しくも......正直言うとエロい。私、脚フェチじゃないけど、脚フェチの人の気持ちが少しだけ分かった気がする。なんか、ずっと触っていた衝動に駆られる。
「アナタ、妙」
気付けば、星王の創造は起動。【パンドラ】でアラクネを地に拘束させていた。動けないアラクネの脚を頬擦りしていた。胸、何それ......?
「アラクネさん。もっと自分を誇って良いわよ」
「この状況で、歓喜は、できない」
「それは......ごめんなさい」
薄く笑うアラクネ。
「アナタ、面白い。アイツらと同じ、人間とは、思えないネ」
指さされた拘束されているプレイヤーたち。彼らはきっとアラクネを倒して、素材ゲットとか考えていたのかなぁ〜 当初は私も過った。でも、今はどうでも良いかな。マンテラーは武士気質な面があったから、戦いに応じたけど......もしかしたら、昆蟲種とも仲を深めれるかもしれない。
「もっと、アナタを、観察したい」
「『観察』?」
「人間を狩る事は、一旦、止める。代わりに、アナタを観させて」
「? よく分からないけど、見る分には良いよ」
私は拘束を解いた。手をアラクネに伸ばした。どういう意図か分からないアラクネ。
「握手。これから、一緒に居ようって意味と受け取って」
「了解。では、アナタ、よろしく」
私たちは握手を交わした。
「私の名前、ユミナ。アラクネ、これからよろしく」
「ユミナ、私も、よろしく」
蜘蛛族の女王に、気に入られました。
うん? ゲーム内アナウンス......何々......あー砂漠の不時着した機械生命体、討伐されたか。今回討伐者の名前は公開されてないみたいだから、要らぬ考えをしてしまう。討伐は嬉しい事だけど、討伐者は誰かは知りたい。プレイヤーなのか、私の従者なのかだけでも知れたい。そうだ、砂漠エリアに行ったのはアリエスとカプリコーンの筈。なら......婥約水月剣を外す。星刻の錫杖を押す。が、押せなかった———
「どうした、ユミナ」
『宇宙最大の大いなる意志』なら、現状の状況がリアルタイムで伝わる。本人たちと直接、会話できるからね。でも......そのためには星刻の錫杖を装備するしかない。
「何でもない。ちょっと遠出するから、気分が落ちてね」
「ならば、私に、乗れ」
恐る恐るアラクネに乗る。腕を腰に回して振り回されない様にした。
「何処に、向かう」
「とりあえず砂漠まで移動かな」
「分かった、しっかり掴んでネ」
「えぇ———ぎゃあああああああ!?!?!?!?」
アラクネの身体は飛ぶ。木々に蜘蛛の糸を付着させ、ターザンスイングの動きで飛び回る。




