閑話
計香は夢を見ていた。
嫌な夢・・・という訳では無いが、最近常に思考を占領していた「劣等感」が五感に訴えて来た。
「・・・」
気がついたら既に目が覚めていた。
外はもう既にに日が沈み真っ暗になり、校舎・機関施設の1部の照明が窓から漏れている。
「ん・・・?」
長い時間動かなかった様だ、身体のあちこちの筋肉が凝り固まっている。少し身体を動かそうと腕を伸ばそうとした。
だがその細く白い腕にはチューブが繋がれていた。
よく見ると点滴以外にも外敵の攻撃を食らった腹部にも大きな湿布が貼られていた。
「やめておこう」
首のストレッチだけ軽くすると、病室の隅から隅まで目線が動く。
掛布団に包まれた自分の身体。
整頓された机。
ケミカルな造形の花。
よく磨かれた窓。
木製の時計、今は23時。変な時間に起きてしまった。
消灯しほんの少しオレンジ色の光を漏らすシーリングライト。
また机。
机の上に置かれたモデルガンの雑誌。
机に伏して寝息を立てる勇理。
「いるし」
いつから居るのだろうか。
仄暗い密室の中で予測に無い自分以外の生命体を見つけたら今までの計香は飛んで跳ねて叫んでいただろう。
だが、今は何故か落ち着いて居られる。
「勇理も最近様子がおかしい時あるし・・・」
もしかしなくても剣の影響だろう。
そもそも我々が振る「剣」とは?
外敵はなぜ、どこから?
なぜ「剣」と信頼し合えない?
使われているのは「どちら側」だ?
深く考え込んでいると、どこからともなく声が聞こえて来た。
『計香!起きたのね!』
「あ、うん」
『良かった!ごめーん!私の力不足だった!』
今回の戦闘の事だろう。
「いや、思い切って身体貸しちゃえば良かったかもね」
『も〜それはダメって言われてるでしょ?』
「でもワーテルは私を奪ったりしないでしょ?」
そうだ、そうに決まってる。
私はこの剣を信頼しているし、信頼されたい。
『・・・ノーコメントかな〜』
「ッ!どうして!」
『あのね、私達剣の生への執着は凄まじいの。誰かから恨まれようとどうでもいいくらいにね』
「ならなんでそんなに執着するのか、ちゃんと1から説明すればきっと解決策が───
『必要ないんだよ』
一蹴
「・・・え?」
『身体を奪ってしまえばこちらの物。「死人に口なし」って言うでしょ?』
死人?
『100%奪われた人間の意識はもう戻らないの』
『死ぬのよ』
だから文句も言えない、と。
話し合う必要すら元より無い、と。
『とにかく今は休んで?体育祭は出たいでしょ?』
「あ、うん・・・それはまぁ」
そのまま寝かしつけられてしまった。




