正体
計香は救護車で搬送後すぐに検査が行われた。
命に別状は無く、すぐに目を覚ますとの事。
その病室には彼女の親友、勇理が居た。
「・・・」
勇理は帰投直後に搬送される計香を見て慌てて駆け寄り彼女の名を何度か呼びかけた。しかし反応は無くそのまま病室に運ばれてしまった。
勇理はその晩、ほとんど眠れなかった。当然といえば当然である。
「・・・計香」
「・・・」
最近になって妙に避けられている気がして、下校や放課後、休憩時間に気軽に声を掛けずらくなっていた。
・・・思い当たる節が無い。いつの間にか彼女を傷つけていないか?無意識に彼女の居場所を踏み荒らしてはいないか?自分は善意だと思っていても彼女にとっては迷惑だった事は?
じっくり話し合う機会も無く、疑念と桎梏だけが間に残り自身を猜疑する。
「・・・言いたい事があるなら僕はちゃんと聞くからさ、起きたら話し合おう?」
問う
返事は無い
──────────────────
彼女は気がついたらそこに立っていた。
真っ白な空間、壁も無く天井も無い目がおかしくなりそうなただひたすら白い空間。
ここは何処だろうか、呼吸は出来るし目も手足も動く。
追いかけなきゃ
何故かそんな思考が反復し、自分のり少し前の人影らしき何かに向かい、白い床を蹴る。
追いつかなきゃ
少しずつ、少しずつ。
少しずつ人影との距離を縮め、もう少しで手が届く、その時
少女の背中には青い光の翼が宿り、人影を一気に追い抜かした。
やった、やってやった。
身体が軽い、このまま一気に引き離してやろう、そう思い更に加速した。
しかし──
少女の頭上を何かが通った
遅れて背後から爆音が轟いた
驚いて振り向くが、そこには砕けた未知の素材で形成された地面と燻煙のみ。追い越したはずの人影が見当たらない。
まさか
慌てて前に向き直り「それ」を探す。
見つけた、見つけたが───
その「銀色の彗星」は既に遥か遠くを飛行していた。
少女はただ立ち尽くすのみであった。
───────────────────
─ 情報管理室 ─
「・・・」
明美は昨日の戦闘前に計香と話した勇理の素性についての捜査を初めていた。
「管理室の情報なんてたかが知れてるか・・・」
すると、管理室の扉が開きフレンが入って来た。
「あ?あんたも調べ物か?」
「あぁ、明美か。まぁそんな所だ・・・ってその資料は?」
明美が開いていた資料に目を付けた。
「これか?まぁ・・・何だ、その・・・」
「らしくないぞ、はっきりしないか」
迷っている。
現在行っている調査は同隊員の素性調査。フレンが賛同してくれるかどうか分からない。
「フレンは何調べに来たん?」
「私は、小鳥遊について少しな」
「あ!?」
驚いた。しかし、何故フレンまで彼女について調べるのか、そこが分からない。
「な、なんだよ・・・お前今日おかしいぞ?」
「すまん。ウチも今アレについて調べとんねん」
「何だって?」
資料を机に大きく広げた。
「やけど、ここにある情報はせいぜい本人の名前や住所、測定の結果グラフ、クラスの担任から見た大まかな性格と趣味・・・ぐらいしか無いで?」
「だいたい私達でも知っている事しか書いて無いな」
それ以上はプライバシーに関わる事だからな、と付け足す。
「性格は極度に臆病、だが義務は必ず果たす真面目さもある・・・」
「いや、待て、趣味「FPS・サバイバルゲーム」だと?」
「男みたいな趣味やな、珍しっ」
「絶対におかしい」
「いやそこまで言わんでも・・・」
「そうじゃない」
彼女は昨日の戦闘時、外敵にとどめを刺すのに手間取っていた、フレンは弾痕を見て違和感を感じていたが、繋がった。
「昨日の戦闘で外敵にとどめを刺す時あいつは・・・急所に当てるのに5・6発は撃っていた」
「ん?銃の扱いには長けてるはずやけど?」
「そう、銃を触った事の無い私や明美ならともかく、勇理が動かない至近距離の大的を外すのは不自然だ」
「実弾を撃った事は無いんじゃ?」
銃を所持出来ない日本人なら有り得る。
だが、もしそうだとすると別の疑問が出てくるのだ。
「いや、外敵自体には外していなかった」
「というと?」
「急所は外れていたが、外敵の腕や脚の関節等には当たってたんだ」
「・・・!!」
明美は察した、いや察してしまった。そして戦慄した。ゾッとした。
人型の外敵の急所、頭部を1発で撃ち抜けないのに更に小さい関節には全弾命中、おかしな話だ。そこから導き出される答えは
「「嬲り殺した・・・」」
嫌な汗が止まらない、寒気がする、鳥肌が立っている。
「・・・ッ」
「・・・あぁ、あと」
「まだなんかあるんか!?」
確か、帰投中にあいつは・・・
「帰投中、鼻歌を────
「嫌やああああ!!聞きとうない!言わんでいい!言わんでいい!」
両手を振り回し首を横に激しく振る明美。
フレンはガシガシと頭をかくと資料を片付け扉に向かった。
「明美」
「なんやねんもぅ・・・」
涙目で机にに伏す明美に声を掛けた。
「後輩、しっかり護ってやるんだぞ?」
そう言い残しフレンは管理室を出た。
そうだ、今はそっちの方が心配だ。
「・・・せや、臆病僕っ娘サイコパスにビビっとる場合ちゃう。どっちも大切な後輩や」
護らんと。
先輩の分まで────




