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39、馬車の改良と夏祭り

本日もよろしくお願いします。

 生き地獄の様な馬車を体験した後日、揺れない馬車を色々と試作してみる事にしました。

「馬車を一台貸して下さいな……壊しませんから……ホントに……多分? 」

借りれました。


 さて、本当に壊してしまうとまずいので……予備を創りましょう!

鑑定魔法とサーチ魔法とを組み合わせ、形状や構造や材質を調べて記録する魔法【スキャン】とその情報を記録させるUSBメモリースティック状の記録媒体、さらにそれを立体表示させるプレートを創造して借りた馬車を調べます。


 プレートには馬車の図面と必要な材料の一覧が表示されるのでそれらを用意し、建設魔法の【ハウジング】と連動させて……

指定した材料で図面通りの物を創る【3Dプリンター】の魔法を創造発動!


 地面に置かれた鉄や木材や布が消えていき、光の粒子が馬車を創り出していきます。

やがてそこには借りた馬車と寸分違わぬ、新たな馬車が姿を現します。

……ただ形を真似るだけで着色は無理でしたね。使った材料そのままの色です。

まぁ、これでも構造と装飾の目安にはなります。

忘れない内に、借りた馬車は返しておきましょう。


 先ほどのプレートを弄り馬車の土台となるパーツだけを選択して複製、ベアリングを幾つか創り、土台の車軸受け部分に装着。

……これだと振動が軽減されないので駄目ですね。


 失敗した土台を材料に新しく土台を複製、今度は土台の車軸受けを切り取ります。

切り取られた場所に、ベアリングやバネを組み合わせ新たな車軸受けを創り装着。

ゴムっぽい物を巻きつけた車輪を四つ創り、バネ付き車軸受けに接合します。


 何だかんだと製作と失敗を繰り返し、何とか完成に至りました。

今度は車輪を横一本の車軸で繋がず、各車輪が独立し車輪から馬車を吊り下げる方式ですね。

これにより、振動を軽減する試作馬車が完成しました。

目指すは静かで速い、しかも揺れない快適な馬車ですからね。


 それでは試走です……馬が居ませんね、代わりにセンちゃん……体長が邪魔ですね、弓子さんmarkⅡ……小さ過ぎます。

そんな訳で、馬型ゴーレムの馬子さん完成です。

改めて試走……うん、始めは良いのですが、一度揺れだしたらバネが止まりません!

バネの動きを制御する機構が必要なのですね……

紐では……ダメですね、ゴムでこう受け止め……いや、こうかな?


 結局、柔らかいゴム液をシリンダーに詰めて、その中のピストンが衝撃を吸収する方法で今度は何とかなりました。


 外装はエルダートレントの木材で借りた馬車の装飾を真似て創ります。

座る所にバネを並べ、ゴム液のクッションを置いて布を被せて完成です。

試運転がてらに街中を一回りして来ましょうか。


「うちの庭で何をやっているのかと思えば、馬車が出来ただと? 」

同じパーツを創り【合成】して、品質や強度を上げた馬車が完成したのでジョエルさんに報告です。

……そう言えば馬車を創っていたのは領主邸の庭でしたね。

借りたその場で創り出していたのを忘れてましたよ。


「この馬は? 」

「馬型ゴーレムのエミシ君とイルカ君です。馬を借りるの忘れてたので創りました」

お馬の父子です、どのみち馬を借りても私には扱えなかったでしょう。


「まあ良い、使えるのなら商業ギルドまで乗せてくれ。打ち合わせがあるんだ」

相手を呼びつける訳ではなく、此方から向かうのですか?

「わかりました、どうぞお乗り下さい」

馬車のドアを開け、領主のジョエルさんと執事のニコラハムさんを乗せ、私も相席してドアを閉めます。


「妙にフワフワする椅子だな、中身は何なのだ? 」

「特別な樹液と鉄の紐を丸めたバネと言う物です」

ジョエルさんは座り心地を確かめる名目で子供の様に椅子で跳ね遊んでます。


「旦那様、ミウ様。まだ御者を呼んでませんが? 」

「あぁ、御者は居なくても大丈夫ですよ」

私は懐からハンズフリーのレシーバーを取り出して……

「エミシ君イルカ君、商業ギルドまで安全運転でお願いね」

私は馬を扱えないし、あれはゴーレムだし、外に居たら馬車の中を確認出来ないし……で、音声入力による自動運転を可能にしました。


「一度あの子達を連れて行き名前を付けて登録しておけば、次から御者が居なくても行き先を言えば勝手に向かってくれます」

「よくまぁそんな物を考えつく……しかし、この馬車は本当に揺れも少なく静かだな」

二人に簡単に馬車の足まわりの説明をします。


「車軸がなくて四輪が独立した馬車、それを考えていた者が昔おりましたな。技術も材料の強度も足りなく大変に難儀な馬車でした」

ニコラハムさんが過去に同じ事を考えていた人がいた事を教えてくれました。

ただ歪み易く壊れ易くと、手間とコストがかかり過ぎるので採用は見送られたそうです。


 馬車が止まりました。商業ギルドに到着したみたいですね。

私だけ降り、ギルドの人に伝えると皆さん外に並び領主様を出迎えます。

「ミウ、この後に予定が無いなら参加していけ」

普段ならココちゃんをモフると言う最重要な予定があるのですが……

「議題しだいでしょうか? 」

今はお義母様が怖いのです。

「何、難しい話をする訳ではない。夏祭りの打ち合わせなだけだ」

夏のお祭りですか、こちらでも盆踊りみたいな事をするのですか?

私はまた屋台を出しましょうかね? お祭りと言えば、たこ焼き、お好み焼き、リンゴ飴……何を作りましょうか。


 商業ギルドの会議室に入ると見知らぬ人達が沢山居ます。

……いえ、一人知っている人が居ますね。

「ナルスお婆ちゃん、久しぶりです。腰は大丈夫ですか? 」

冒険者ギルドの依頼でポーションを作りに行った以来ですね。


「おや、お嬢ちゃんも来たのかい。そう言えばお店を出したんだってね。儲かってるかい? 」

「ボチボチでんなぁ……。趣味の店ですからね、採算度外視ですが薄利多売で何とかやってます」

「相変わらず欲が無いねぇ、またポーションでも作りに来るかい? 」

また低品質の素材で最上級のポーションを作って欲しいのでしょう、適当に言葉を濁して空いている席に座ります。


「では、ジョエル様がいらっしゃったので夏祭りの運営者会議を始めます」

司会の人は商業ギルドの受付の奥から、私の顔を見ると即グライスさんの所に案内するいつもの女性ですね。


 話の内容的は、祭りの開催場所……街中の大通りに面した所全てですか、私の店の前も範囲に入りますね。

開催期間は四日間で朝の鐘から夕方の鐘まで……

壊れやすい物など通りには出さずしまい込むようにと通達。

救護所を神殿前に設置して、ナルスお婆ちゃんやスタッフが待機……

スタッフ用のローブを配布するので、着ている人は戦闘に参加しないように……戦闘?


「すみません、お祭りと聞いたのですが、戦闘するのですか? 」

「あぁ、ミウさんは初めての参加でしたね。この街では夏に入る前に女神シャロン様を讃え街中で泥水や泥団子を掛け合いぶつけ合う祭りをしているんです」

酷い奇祭でした……

「えっと……何故に泥水や泥団子を? 」

「おや? 女神様の使徒ですのに知らなかったのですか? 」

司会の女性が不思議な顔をして聞き返して来ますが、私は使徒じゃありませんから!


「今の若いのは知らんだろうけどな、昔は土塊を浴びせて埋めてたんじゃよ」

ナルスお婆ちゃんが更にとんでもない事を言い出しました。

「土に埋まりそこから這い出る事で生と死を表現しシャロン様を讃えていたんじゃ。近年は黄泉の河を渡るとの意味合いも込めて、泥水や泥団子に変えたんじゃな」

表現する前に死にますよね? それ?


「あぁ、それで泥水だとミウさんが判らなかったのですね? 」

いえ、土塊だともっと訳判りません。

「シャロン様の眷族としての活躍を期待しています」

いつの間にかグレードアップしてます! 使徒でも眷族でもありません!


此処まで読んで頂き、ありがとうございます。

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