34、お塩と魚料理とお義父さん
本日もよろしくお願いします。
お塩を造って商業ギルドに買い取って貰おうとしたら信用してくれなかった……少し悲しいです。
「どの口でそんな事を言えるのかね」
とりあえず、ギルド長室にお塩の入った瓶を置きましょう。
「この一度に大人を四人は塩漬けに出来そうな瓶の中が全部が塩だと? 」
サンプルとして置いた瓶に微妙なコメントが付きました。
「合計で八十人ほど塩漬けに出来そうな瓶があります」
瓶の数は合計で二十個あります、グライスさんは少し塩を掬い味見……
「ん、粒が揃っていて味も品質も悪く無い」
「味には苦労したんですよ? 不純物に味があるから完全に取り除かないで、程良く残るように微妙な手加減で分離したんです」
おかげでニガリも手に入ったので豆腐が作れますね。
「量が量だから計量に時間がかかる、代金は後で届けさせよう」
「後は生の魚とか貝や海藻を持って来たけど買い取ります?」
「生の魚に貝に海藻? 干物か塩漬けにでもするのか? 加工しても買い取りは安いぞ?」
せっかくの生なのに? 聞いてみるとこの辺りでは魚介類は干物位しかあまり食べられて無いみたいです。
それはちょっと勿体ないですね……
「判りました、魚料理を出しますので冒険者ギルドのステラさんを誘って今晩ドジョ・ドジョに来て下さい」
「……グライスさん、私はステラさんを誘ってと言ったのですが? 」
グライスさんの背後をチラチラと見ながら小声で……
「おお、ステラはちゃんと来ているぞ? 」
確かにステラさんは隣に立ってますけどね!
「何であの人まで居るんです? 今日は迎える支度を何もしてませんよ? 」
「俺だって知らんよ、何処から聞いたのか『俺にも食わせろ』って急に来たんだから」
暇かよ!
「しかもあの帽子とコート、あれで変装しているつもりですか? 隣で控えている執事さんでバレバレじゃないですか! 」
「言うな、俺だって対応に困ってんだから! 」
「お前ら普通に聞こえているからな? 」
半分聞こえるように言っているから良いのです。
「これはこれは領主様でしたか、気が付きませんで。見苦しい店内ですみません。今急いで支度しますんで……」
「わざとらしい挨拶はもう良い、美味い魚料理を食べれると聞いてな、つい来てしまった許せよ。室内もこのままで良い」
本当に誰から聞いたのです? まあ無礼講と勝手に解釈して始めちゃいましょう。
「今日の料理はシンプルに三点でいきます。先ずはスープ、クラムチャウダーです」
貝と野菜を炒め小麦粉と牛乳で伸ばした奴です。
「うむ、とろりとしたスープにプリプリの貝の身が良いな」
「次は海藻豆腐サラダです、野菜とは違う海藻の独特な風味と歯応えをお楽しみ下さい」
「コレは、美味いんだが……この海藻は好き嫌いが別れる味だな……この白いのがトウフと言う物か? 」
「豆腐とは豆を煮て絞って、海水塩を造る時に出た汁を混ぜ固めた物です。私の知る地域では美容と健康に良いと言われ女性に人気のサラダでした」
私がそう言うとステラさんがサラダを爆食いし始めました……領主様も居るのですから、もう少しお淑やかにお願いします。
「最後はムニエルです。魚の切り身に小麦粉を付けてバターで焼き上げました」
「外側がパリッとし中がシットリ、肉の代わりにメインを張れる食べ応えだな」
「以上三点で料理は終わりです」
「うむ、干した魚や塩漬けにした物と違い新鮮な物で造られた料理はやはり違うな」
「ミウちゃん、今日食べさせた料理と私達を呼んだ意味……新規雇用? 」
ステラさん、さすが良い勘をしてますね。
「魔石が出ない大ハズレと言われる海洋型ダンジョン、逆に言えば魔物が出ない安全なダンジョン。今日ミウちゃんが出した料理はその海洋型ダンジョンで採れる物ばかりよね? 海洋型を引き当てる手間はあるけど、それさえ解決出来れば……もしかして判ったの!? 」
「はい、一度判るとかなり単純でした。ただ誰にでも出来る方法でも無いので、後で識別用の道具を創っておきますね」
ほんと、正攻法で攻めていたら物凄い暇つぶしになる意地悪な識別でした。
「その方法を教えて貰える? 」
「私もシャロンさんに言われましたが、暇つぶしの宿題です。自分で調べて下さい」
鑑定は発動させたその瞬間を調べるモノでした。
ダンジョンは次々と切り替わっている、ならばその一部分を切り取って調べても駄目だ。
鑑定する魔法を創り、それを並列発動させ動画を撮影するかの様にダンジョンを連続鑑定してみた所……
鑑定文の文字が少しズレてる! しかも連続で見るとズレがウネウネと不規則に移動している!
ズレが同じような位置に来た時に入ったら同じタイプのダンジョンでした……こんなの判るか!
お茶目な鑑定文を書いているかと思えば、こんな細かいネタを放り込んで……シャロンさん絶対遊んでますよね?
「それほど暇じゃないのだけど、宿題かぁ……」
「それで話を戻しますが、ダンジョンの区別が付くので戦闘が苦手な方も海洋型ダンジョンに行き稼ぐ事が可能です」
子供とかだと溺れたりして危険なので引率者が必要になるでしょうけど……
「そして、その魚介類を商業ギルドで買い取ったり魚料理のレシピを広め消費を促したりして欲しいと? 」
「そして小遣い稼ぎをしたい冒険者をその人達の引率に使うのね? 怪我や老いで引退を余儀無くなった冒険者の再就職先にも使えるかな? 」
お二人とも話しが早くて助かります。
「ふむ、新たな稼ぎ場で貧困層が減れば治安も良くなる、新商品の開発や流通で街が活気づく、悪い話では無いな。それに、海洋を狙えるなら他のタイプも狙えるのだろ? ダンジョン関係の法律を少し見直す必要があるな」
ギルド側から根回しして貰うつもりで呼んで無かったのですが、結果的に来てくれてて良かったですね。
さて塩は売ったし、魚介類は振る舞ったし……
「後は砂浜の砂で創ったガラスですかね? 」
収納から一抱えあるガラス玉を出し床に置いて見せます。
「そうよね」「だろうな」「だから信用しないと言ったんだ」
何か最近のリアクション酷くありません?
「今度建てる家の窓にガラスを張ろうと思って創ったんですよ、沢山あるのでお裾分けしようかと」
ガラス玉を変形させて切り取り板ガラスにして、銀貨から不純物を抜き取り板ガラスと接合。
後はトレント木材で縁と柄を創り手鏡の完成です。
「とりあえず手鏡を創ってみました。本日の献上品に兼ねた賄賂です」
「自分で言うか……先程の話は此方にも利益があると言うのに」
そう言いながらも鏡を手に、頭を動かし顎に手を当てたりとポーズを付けてたりします。
「綺麗に映るな、コレもギルドに売るのか? 」
「新しい家の一階でお店を開くのも検討しているんですよね……」
ニッチな層を狙ったオママゴト的なお店を、アニメとかのワンシーンにある子供店主の雑貨屋みたいなイメージで……
「営業許可証は原則的に未成年を相手には発行しないのだが……」
何ですと!? ジョエル様からまさかのダメ出し。
「しかし、ミウちゃんは未成年ながらもこの街にかなり貢献しているので、特例で発行しても……」
「それでも成人の身元引受を追記しないと……」
ステラさんグッジョブ! グライスさん身元引受人が必要ですか?
「居たな」「居ますね」「居るじゃないか」
「そこで何で俺が?! 」
目を付けられたのは……そう、ヴィヴィアさんです。
「一番の適任だと思うのだが? 」
「同じ建物ですしねぇ」
「他の誰よりも親しいのでは? ミウさんがお義父さんと呼んでいるとの報告を受けているぞ? 」
三人がそれぞれ言い合う中で……
「ヴィヴィアお義父さん、引き受けてくれないの? 」
私もトドメにヴィヴィアさんに媚びを売ってみます。
「お前もここぞとばかりに! 」
結局、領主様の前では強く出れず。ヴィヴィアお義父さん陥落……
ココちゃん奪還作戦の強靭な包囲網が完成した瞬間です!
「店の話しでココは関係ないだろ! それに何で俺が悪者なんだよ?! 」
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。




