33、ハッタリと我が家と海岸で
本日三話目です。
使徒とか大げさなものに思われてしまいました、崇められたくないので適当にでっち上げて話を逸しますかね。
「ニコラハムさん、私が女神様から託された使命は『好き勝手に楽しく暮らせ』です」
「『楽しく暮らす』が使命……ですか? 」
「はい、崇められるのは私には『楽しく無い』のでお止め下さい」
「それは……はい、判りました」
納得がいかない顔をしながらも、やっと祈りの姿勢を解いてくれました。
「それに生きている者すべてが生まれる前に女神様に会い、女神様から使命を受けこの世に生まれました」
「私も神に会い使命が? 」
「はい、皆さん忘れていたり勘違いしているだけです。私は女神様と会った事を忘れずに覚えてた、だから知り合いと言ったのです」
何故だか人がどんどん集まってます、どうしましょう……このままハッタリで押し通すべきでしょうか?
「なので私が使徒ならば皆さんも使徒なのです、私を崇めず神を崇めて下さい」
「私達も使徒……あの、自分の使命を知る方法は無いのですか?」
「それは私には判りません、ただ他人を迫害する使命を神は与えません、何故ならその人も使徒なのですから……」
その後もハッタリ説法をしばらく続ける事となり神殿から出れたのは夕方になってしまいました。
「我が使命はココちゃんをモフモフする事と見つけたり! 」
ドジョ・ドジョに戻り早速モフパラダイス、あぁこのモフが私の心を癒やします。
「相変わらず訳の判らん事を……」
神殿でシャロンさんと話した数日後、商業ギルドから住む土地の候補を見に来てくれと使いの方が来ました。
候補地は商業区と住宅区とスラム街、スラムと言っても退廃と混沌の坩堝ではなく、それほどお金の無い人向けの集合住宅が並んでいる治安以外はちゃんとしている所だそうです。
……その治安が一番大事だと思うのですがねぇ。
因みに街の中央のダンジョン周辺が商業区で少し外側が住宅区、外壁に近い所がスラム街となっているみたいです。
他にも大通り沿いは……と色々区分があるみたいですけどね。
今のドジョ・ドジョは住宅区と商業区の境目で木造住宅、今回の手柄で大通り沿いの商業区に石造りの店舗として移転許可が出ました。
商売をしていると引っ越しするにも許可申請が必要だと言うのも凄いですね。
そんな訳で、私の家は商業区に決まりました。
いや閑静な住宅街も良かったのですが、商業区だと新ドジョ・ドジョの横だったのですよ!
こんな物件を出されたら他の選択肢は見えません即決即断です。
「ですので、コレからはお隣さんになります」
何時ものランチをモフモフしながらヴィヴィアさんに報告をするも。
「移転の許可が出てるが、まだしばらくは引っ越さないぞ? 」
何ですと!
「いくら費用の大半を商業ギルドが出してくれるとは言えこちらが出す分も安くはねぇ、それに石材の発注や建設に何十いや何百日かかるか」
「それで、何となく予想はつくけど俺が何故ここに呼ばれたんだ? 」
昼食の混雑も終わった昼下がり、商業ギルドの長であるグライスさんを逆ナンしてドジョ・ドジョに連れ出しました。
席にはヴィヴィアさんにセイランさん、グライスさんと建設担当官と並んでいます。
「駆け引き無しで簡潔に言えば、私の家と新ドジョ・ドジョを私が建てようと思いまして」
私のその発言に皆さんは……やたら反応が無いですね?
「だってなあ……」「隣に住むと聞いた時にはねぇ……」「自分で建てると言っておったしなあ……」「ギルド長だから言ったじゃないですか、賭けに成らないって……」
初顔合わせの筈の建設担当官さんにまで言われました……
何でしょう、私の行いはそんなに有名なのでしょうか?
「あ、私は商業ギルドで建設を担当しているグレインです、ギルド長のグライスの息子でもあります。ミウさんのご活躍は父が晩酌の時に悪酔いするほどに良く聞いております」
グライスさん、お酒は程々にした方が健康の為だと思いますよ?
「最近、酒に溺れないと辛い案件が多くてな」
「お仕事が大変なのですね」
「全くだよ……」
睨まれてしまいました。
そして私の区画とドジョ・ドジョの区画を繋げた二区画で石造り五階建ての店舗にする話しが纏まりました。
私の【ハウジング】魔法と連動出来るCADプレートを創りグレインさんに渡しヴィヴィアさんやセイランさんの意見を取り入れた建物を組み上げていきます。
「この魔法道具があると建物の設計図作りが捗りますね、父が深酒する理由がよく判りますよ」
もともと設計図を描く素質があったからか、グレインさんは愚痴りながらもCADにすぐ順応しました。
「このままだとミウさんの住居部分がだいぶ小さいですけど、良いのですか? 」
一つの建物に組み込まれているけど、私の家は一階と二階だけ、上の三階から五階は隣りから伸びて来たドジョ・ドジョの宿泊施設です。
なお壁で区切られているので私の家からドジョ・ドジョには外の玄関を通らないと行けません、ちょっと残念です。
「荷物は全部収納にありますから、寝る所があるだけで十分ですから」
小さいとは言えそれでも六部屋はあります、一人暮らしには多すぎますよ。
建物の設計図も描き終わり、私は材料集めに三度目のダンジョンに一人で潜ります。
シャロンさんはダンジョンの見分け方があると言ってましたが……何度鑑定をしても書いてないんですよねぇ。
しばらくダンジョンの観察を続け、冒険者の方々が通り抜ける所も観察し……
どんなダンジョンだったのかを聞いて見比べて……判りません。
せめていつ切り替わっているのかが……そうですよ、切り替わってるんですよ!
判別方法を思いつき実行……まさかコレですか? こんなオチですか?
確認の為に四回ほど潜り直して、判別方法が判りました!
シャロンさんのお茶目なイタズラに気落ちしたので、憂さ晴らしに目的の素材、ごっそりと頂く事にしましょう。
潜った先に広がる光景は、青い空に白い砂浜そして海!
此処は海と砂浜と申し訳程度の椰子の木モドキしかない稼げ無いダンジョンで、冒険者たちの評価は大ハズレと言われています。
あ、誰も居ない海で一人で水着になるとか虚しいだけなので服のままです。
水着は皆で遊びに来た時に着るものです。
今回、ココちゃんを誘ったけどセイランお義母さんの承諾を得られなかったのも虚しい原因の一つですけどね。
さて、海と言えば魚介類です。
椰子の木の根元の土を集めてシャチ型ゴーレムのオル君を創り海に放ちます。
仕留めた魚が捌かれ切り身になって収納に入って来ますが……アラが無いですね? 自動解体スキルは便利なのですが、可食部位の設定が無いのですか?
そう言えばゴブリンを倒した時も魔石と耳だけ残して消えましたね、残りの部分は何処に消えたのでしょう。
まぁ、深く考えてもしょうがないので次の工程に進みます。
そうそうオル君、海藻や貝もお願いしますね。
次は海洋型ダンジョンに来た理由である、海砂を片端から分解してガラス創りです。
家の窓にはやはりガラスが欲しいですよね。
此処の砂の成分が貝や珊瑚に由来してなくて良かったです、普通にガラスが創れます。
後で板ガラスにするので此処ではガラス玉にするだけにしておきます。
両手で抱えるサイズのガラス玉が沢山出来たのでガラス創りは一時中止です。
何より来た時は綺麗だった砂浜も今は爆撃でもされた様な見るも無惨な有り様です。
最後に土を固めて巨大な瓶を創り、海水を分解して塩を取ります。
メイリンの街は岩塩を別の街から輸入しているらしく、少しお高めな価格なので海水塩を商業ギルドに卸してみようと思います。
さて塩も大量に造れたのでオル君を回収してダンジョンを出ます。
「ダンジョンの海水から塩を造ったので買い取って下さい! 」
「だから何で俺なんだよ! これでもギルド長なんだぞ? 塩くらい受付に言えよ! 」
いつも通り、商業ギルドのグライスさんに塩を押し付けようとしたらキレられましたよ。
「いえ、最初は受付に並んだのですが……職員の方が私の顔を見た途端に……貴方の専属担当は此方です! と、この部屋に通されました」
「アイツら俺に押し付けて逃げやがったな……」
グライスさんが何やら両手を握りしめ突っ伏し震えてますが……日頃の教育の賜物ですよね。
「まぁ、以前に大きいネタばかり持ち込むな! とか言ってましたし、ちょうど良いかと? 」
「お主のちょうど良いなんて台詞、全く信用でき無いけどな」
それは酷くありません?
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。




