30、冷蔵庫とドレスと遊覧飛行
本日三話目です。
カタリナさんの監修により、それなりに見れる装飾が付いた冷蔵庫をグライスさんと領主邸に運びます。
私がこの街に入った門から見て奥に在ったあの屋敷が領主のお屋敷だったようですね。
お屋敷に着くと既に話が通っていたようで直ぐにも調理場に案内されました。
調理場には領主のジョエルさんと、丸っこい髭面の筋肉質な達磨が居ました。
「レイゾウコが届くというので見に来たぞ」
領主の仕事は無いのですか? そうですか。
「私が当家で料理長をしているディルマアだ」
この方が料理長さんですか、名前が少し惜しいですね。
「ミウです、よろしくお願いします」
早速、冷蔵庫を指定された場所に設置します。
「冷蔵庫の使用者設定はどうしましょうか? 」
「物が物だからな、料理をしないが一番が俺で二番が料理長だな」
ではその様に、グライスさんも居るので貸出用の冷蔵庫の順位も付けちゃいましょう。
収納にしまい込んだ冷蔵庫を出しジョエルさんとグライスさんを順次登録していきます。
「このレイゾウコ全てに魔法石(☆8)が付いていると思うと……な」
「えぇ……」
ジョエルさんとグライスさんが何やら感慨深く語っています。
「此処での登録はこれで終わりです、後は各店舗での登録ですね」
「そうか、すまんな。店の選考にはもう少しかかりそうだ」
料理長のディルマアさんに冷蔵庫の使い方や注意点を説明していると、領主の奥様のマドレリアさんが直接やって来ました。
「アナタ、もう終わったのでしたらミウさんを借りていきますわよ」
ジョエルさんの返答を待たず、マドレリアさんに連行されてしまいました。
連れられた先はお屋敷の二階にある衣装部屋ですか……
部屋の中には侍女の方が三人待機してますね。
「あの食堂の奥さんのドレスをアナタが繕ったと聞いてね、是非とも私にも繕って欲しいのよ」
「あのマーメイドラインのドレスを奥様向けにですか? 」
「ええ、あれはマーメイドラインと言うのね? あのドレスの他にこの様なドレスもお願いしたいわ」
そう言ってマドレリアさんはテーブルの上に紙の束を置き始める。
見るとドレスのデザイン画の様です、これを全部創るのでしょうか?
貴族の奥様を何度も剥く訳にもいきませんから、先ずは手持ちのトレントと鉄で針金トルソーを創りましょう。
トルソーと言うのはあれですね、上半身だけのマネキン。
侍女さんに手伝って貰いマドレリアさんの採寸してから鉄を取り出し針金にして、ウニウニグネグネ、木の支柱を創り先ほどの針金を巻きつけながら……
え? 此処はもう少し細く? コッチは厚みを? 大丈夫です? はい、侍女さんのオッケーを出たので完成です。
「ミウさん何だか凄いスキルを持って居るのね! 」
針金や木が蠢いて形作るのは、確かに初めて見たら驚きますよね。
後は試作用の布でドレスを創りトルソーに着せます。
「サイズやデザインの修正が終わったら本番の布で創りますね」
マドレリアさんや侍女さんがドレスに取り付き、ここがこう、コッチがこう……流石は貴族のドレスです、注文が細かく来ます。
変更点を考慮しつつ、本番の布で二着創り【合成】して上質なドレスに変えました。
「凄いわ! こんな上質な布になるなんて! 」
侍女さんは勿論、マドレリアさんも目を剥いて驚いております。
「ミウさん、刺繍は出来ないかしら? 」
マドレリアさんから無茶ぶりの一言が出ました、刺繍ですか……そうですよね貴族ですものね。
「刺繍まで錬金術で入れるのは難しいかな、出来上がったドレスに後から縫い付けるしかないかと」
「それだと次の夜会に間に合わないのよ……」
うーん、そうなるとやっぱり創るしか無いですね……刺繍ミシン。
いつものゴーレムコアを創り出し、【プログラミング】で針の動きや糸の送りを設定して布を張りつつ動かして……ボビンも無いのですね、ボビンを創り刺繍糸をボビンに巻きつける装置も付けます。
刺繍のデザインを読み取る目を付けて……魔法石に書き込むには容量が足りませんね、もう二つ使いましょう。
「完成しました、試作型刺繍ミシンのヌックンです! 」
縫い物をする"縫う君"ですね……。
「え? 今なにしてたの? ミシン? この鉄の道具は……ヌックン? 」
「ミシンと言うのは縫い物をする道具の事です、ヌックンはこの子の名前です」
侍女さんから試運転用に刺繍の入ったハンカチを借り、先程の試作ドレスをミシンにセット。
ヌックンにハンカチの刺繍を見せながら、ドレスの何処にどのサイズで刺繍するかを指定して開始。
ゴーレム製の針が上下に激しく動き、ドレスを持つアームが前後左右に動きハンカチと同じ刺繍がドレスに縫い付けられていきます。
「何この速さ! この模様をこんなにも素早く……」
「ヌックンに見せる刺繍の図柄は刺繍の現物か丁寧に描かれた絵が必要です。見せた物と同じ図柄を量産する道具だと思って下さい」
自己判断で図柄を手直しする知能は流石に無理でした。
試し縫いさせて修正しての繰り返しになるだろうと伝えるも。
「この速さで刺繍が出来るならば大した手間じゃないわよ」
刺繍は手縫いで何日もかけるのが普通でしたからね。
「ミウさん、このミシンと言う道具を売る気はない? 」
「ジョエルさんやグライスさんが何と言うか……次第ですね」
何となく想像がつきますが……
「このミシンに使っている魔法石がレイゾウコ三台分……」
「もう驚かなくなった自分の慣れが怖いですよ……」
「必要魔力より、工程が複雑で容量が足りなかったんですよね」
予想通り、ミシンを前に呆れ顔の二人……ミシンはお財布に厳しい道具です。
今私の目の前では侍女さんが連れて来たジョエルさんとグライスさんの二人を相手に、マドレリアさんがミシンの有用性を熱心に語っております。
しかし、刺繍需要の少なさ・布の供給量の面からいい返事が貰えてません。
「刺繍の需要はともかく、布の供給は作付けの問題ですか? 」
「それもあるが、他にも糸にしたり布に織るのが……」
私の質問に何故こちらを見ながら言い淀んでいるのですか?
「いや、お主に話してしまうと問題を解決しそうな道具を出して来そうで……」
私は何処かの青い狸ですかね? 何でしたら濁声で道具を出しましょうか?
「あるんかよ……」
日も暮れ始めているのでカロルちゃんと明日の朝に約束して帰宅します。
翌朝、カロルちゃんがジョエルさんと執事さんを連れてドジョ・ドジョに来ました。
馬車の御者さんは別の人になってますね。
「執事さんまでは理解出来ますが、何故ジョエル様まで? 」
「自分の街を空から視察するためだ」
……何やら執事さんがジト目でジョエルさんを見てますが?
「いいじゃないか! 俺だって飛んでみたいんだよ! 」
領主様は未だに少年の心をお持ちでした……
門の外に出て収納から改良型空飛ぶ畳を取り出し皆で乗り込みます。
前列中央に操縦する私、前列右にココちゃん、左に執事さん。
後列右にカロルちゃん、左にジョエルさんと言う配置で安全バーをロックし発進です。
「わわわ! 凄い、お空飛んでる! 」
「おうち、ちいさい、すごい! 」
「おお、これが空から見たメイリンか……」
ジョエルさんだけ取り繕った物言いしてますが今更ですよ?
一通り飛び回った後、ジョエルさんが操縦したいと言うので着陸して座る位置を入れ替えします。
今度は後列真ん中に執事さん、後列左右にカロルちゃんとココちゃん、前列右に私です。
「飛んだ! 飛んだぞ! カロルどうだ俺が飛ばしているんだぞ! 」
「お父様凄いです! 」
右に左に上に下に飛び回り、まるで子供が一人増えた気分です。
まぁ、多少の無茶をしても浮子さんが補助してくれるので安全ですけどね。
仮に危険な事態になったら浮子さんが警告を出してくれます。
ピー! ピー! ピー!
そうそう、こんな音と共に……あれ?
警告音と共に周囲で火球が弾け、何十もの矢が飛んで来て障壁に跳ね返されてます。
「ジョエル様、ちょっと狙われ過ぎじゃありません? 何をやらかしたのですか? 」
「俺が知るか! 」
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。




