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29、商業ギルドに納品

本日二話目です。

 さて、朝です。

今日は商業ギルドに冷蔵庫の納品と、領主の奥方様のドレスを仕立て、カロルちゃんとココちゃんの遊覧飛行に、シャロンさんの神殿へ礼拝ですか?

……やる事が多すぎですよ。


 今朝は柔らかいパンと焼いた腸詰め肉とスープですね、ヴィヴィアさんのゲッソリした顔色と、セイランさんの艶やかな顔色が妙に気になりますが、ココちゃんと一緒に朝食を頂きましょうか。


 ヴィヴィアさんも柔らかいパンを作れる様になったので、トマトケチャップやマスタードがあればホットドッグが作れそうですね。

手軽な軽食にぴったりなので、食べ終わったら提案しておきましょう。


 食後はいつもの森のいつもの場所で警報機付き冷蔵庫を創りましょう。

一度創った物なのでサクサク創れます。

しかし、貴族に渡すのに石の箱だけでは味気ないので、少しばかり手を加えますか。


 領主邸に渡す冷蔵庫にはエルダートレントを、商業ギルドに渡す二台の冷蔵庫にはラージトレントの木材を外装に使いましょう。

無駄に耽美な彫り物、がに股の脚を付け。なんちゃってロココ様式の冷蔵庫が完成です。


 次は空を飛ぶ畳ですが……安全面はどうしましょうか?

とりあえず畳を二枚並べて、直に座らせられないので三人掛けのベンチシートを二列、ジェットコースターみたいな安全バーを背後から回して身体を固定……ですかね?


 これもゴーレム化させて安全バーと風の障壁と念動力を担当させ、操作は手綱の形をした操縦桿とフットペダル、それと口頭でも可能にいたしましょうか。

障害物や地面にぶつからない様に設定して、魔力が無くなる前に自動で着陸する……と。

名前はどうしますか、飛ぶから飛び子……魚卵ですね、板子……口寄せでもしそうですね、浮くから浮子にしましょう……釣りの道具と言われそうですが大丈夫でしょう。

さて、こんなもんですかね? 後は試運転がてら商業ギルドに向かいます。


「お疲れ様です」

「いやいやいや、ちょっと待て! 何だソレは?! 」

地面から五十センチほど浮いた板に乗った少女を、門番さんは見逃してくれませんでした。


「試作品の馬車……ですかね? 」

「何故、疑問符が付く? 行き先と目的を言って貰おうか」

冒険者カードだけでは通らせて貰えなさそうです。



「……それで俺が呼び出されたと? 」

門番さんの待機室に軟禁された私をグライスさんが解放してくれました。

「いやー、普通に入れると思ったのですが……」

「あんな怪しいのに乗った者を門番が通すとは思えんがな」

「でも、おかげでギルドでグライスさんを呼ぶ手間が省けたので良しとしましょう! 」

物事は前向きに行きましょう!

「その分俺の手間が増えてるじゃないか! それにもう少し穏便に会う方法が有るだろうに……まあ良い、ついでだからその板に乗せてけ」


 メイリンの街中を少女とオッサンを乗せた板が飛んでいる姿は流石に注目を浴びます。

「いや、俺が居るからまだマシな方だと思うぞ? 」

そんなもんですかね?


「揺れずに静かに移動出来るのはよいな。それで、この板はどの位の速さと高さを飛べるのだ? 」

「んー、結構高い木の上を早足の馬の速度で飛べる位ですね」

距離や高さの単位が今一つ判らないので曖昧な表現になってしまいます。


「それは……お前こんなの量産したら軍事バランスが壊れるぞ……」

あー、空飛ぶ畳の編隊飛行……確かに戦争に使われたら大変ですね。

「一品物の再現不能なアーティファクトという事にしておきます」

「荷馬車代わりに欲しい所だが、流石にこれを売り出すのは駄目だな」

親でも売り飛ばすのが商人だと思ってましたが、


「一方的な戦争だと儲けが少ないじゃないか、双方からギリギリまで搾り取るのが商売だろ」

うわ、グライスさん思ったより黒いですよ。

「冗談だ、こんなの売り出したら死ぬまで幽閉されて作らされるだけだぞ? 」

ですよねぇ……それにしても……


「ところでグライスさん、私……商業ギルドの場所を知りませんでした! 」

「そう言うのは早く言えよ! なぜ同じ所をグルグル回っているのかと思ったら知らなかったのかよ! 一度来た事があっただろ! 」

いやぁ、安全運転と会話ですっかり。適当に走っていれば何とかなるかと思ったのですが……きっと視界が低かったからですよ。

「ちなみに、商業ギルドの前を三回は通り過ぎたからな? 」

何という事でしょう……


 そして無事に商業ギルドに着きました。

グライスさんが何か言いたそうですが、無事に着きました!

「とりあえず商業ギルド分の冷蔵庫を渡しますが、何処に出しますか? 」

「ギルドの食堂に置いて欲しい、それと領主様の所には使いを出してある」


 商業ギルドの食堂はかなり広い空間でした、何でもギルド員の食事の他に料理や食材の研究や訓練もしているとか……、料理教室みたいな感じですね。

そんな調理場の一角に商業ギルド用の冷蔵庫を二台並べます。


「命令の最優先をグライスさんに設定します、後で使わせたい人を追加登録して下さい」

「判ったそっちは俺がやっておこう」

グライスさんがそう返事をしながら冷蔵庫の装飾を調べてますね。


「これはラージトレントの装飾? 随時とイメージが変わったが、同じ物なのか? 」

「中身は同じですよ? 少しばかりイメチェンしてみました」

このロココ調は我ながらなかなか良い出来だと思います。

「いい腕なのに、デザイン面がなぁ……。うちのデザイン部で修業するか? 」

またか! また私のデザインが否定されてます!


「……まさか、領主邸に届けるレイゾウコにも同じ装飾を?! 」

思わず目を逸らし……

「おい、急いでデザイン部のカタリナを呼べ! ミウ、ちょっとそのレイゾウコを此処に出せ! 」

グライスさんの勢いに負けおずおずと冷蔵庫を床に置きます。


「あぁ、やっぱり……」

取り出した冷蔵庫を見てガックリとうなだれるグライスさん……

そんなに落ち込まれると私でも流石にヘコみますよ?

「あら、急いで来いと言うから来たけど。随時と独創的なデザインの箱ねぇ……」


 背後から女の人の声がしたので振り向くと妙齢の女性が頬に手をあてて難しい顔をしています。

「何を言わんとしているかは判るけど、表現方法がちょっと無骨ね。基礎を疎かにして物だけ知っているって感じ? 」


「カタリナ、早速だがこれから届けるこの箱の装飾を手直ししたい。案を出してくれ! 領主様向けだ」

「この装飾を領主向けに? わーお、物凄い難題ね! 」

カタリナさんは言い終わる前に紙の束を取り出し、冷蔵庫の装飾を物凄い勢いで模写していきます。


 いえ、模写だけではありませんね。模写しつつも修正箇所を新しいデザインで描き足してました。

程なく新デザインを描き終わっています。これがデザインのプロですか? 私には真似できない凄さですね。


「ミウさんでしたっけ? この修正したデザインでお願いします」

え? 私がやるんですか?

「こんなに硬い木材、お主以外の誰がやれるんだ? 」

……そうでした、冷蔵庫はゴーレム化しているので通常のエルダートレントより遥かに硬くなってました。


 カタリナさんの描いたデザイン画を見ながら……此処を切り落として……此処に継ぎ足して……

「ミウさん、この葉っぱをもう少しぷっくりと……そうそう、そんな感じです」

付きっ切りの監修を受けて装飾を【変形】と【接合】させていきます。

……うぅ、凄く気を使う……


「ん、完成です! これなら領主邸でも見劣りしません! 」

何度もリテイクを出されながらも、やっと終わりました。

私が創った装飾と違い何というか優雅さを感じる造りです。


「さあ、休んでいる暇は無いぞ? 次は領主邸にレイゾウコを設置して冷製レシピの指導だ! 」

マジですかい?


此処まで読んで頂き、ありがとうございます。

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