31、盗賊退治と巨大芋虫
本日もよろしくお願いします。
お空を飛んでいたら襲われました、フラグって怖いですね。
「何を言っているのか良く判らんが、この障壁とやらは大丈夫なのか? 」
ジョエルさんが軽くパニクってますね、あからさまに襲われた事があまりないのですね。
「この程度の矢とか魔法なら何日でも大丈夫ですよ」
私が障壁を重ねがけすればそれこそ何年でも……まあ先に餓死しますけどね。
「こちらからの攻撃は可能か? 」
「私は出来ますが……人を殺すのはちょっと……」
「生け捕りで構わん、むしろ尋問の為に殺さず拿捕だ! 行くぞ! 」
そう言うとジョエルさんは浮子さんを操り森の中から矢を放っている一人に突撃します。
「安全と判った途端に無茶しますね……」
浮子さんのサポートがあるとは言え、森の木々を左右に避けながら高速で飛び回る度胸に感服です。
おかげで警告音が少しうるさいですよ。
私も私で周囲の敵性存在を【サーチ】します、かなり散らばってますね。
「センちゃん、暴徒鎮圧モード! 散開! 」
収納から大百足型ゴーレムのセンちゃんを五体出し散開させます。
クロスボウの矢を撃つ弓子さんmarkⅡと違い、魔法で弾丸を成形するセンちゃんは事前のモード変更で状況に応じた対応が可能となってます。
今回は当たるとかなり痛い、固めた泥団子を高速で叩きつけるモードです。
骨くらいは折れるかも知れません。
私は私で見える範囲の賊を片端から【スワンプ】で沈め固めていきます。
ほーら、隠れてセンちゃんに攻撃されるより私の方が痛く無いよ。賊さん達出ておいで!
「お主は魔法まで規格外の面白さだな! 」
それは誉められ……ているのですかね?
時折木の上から剣を構えて飛びかかって来る猛者が居ますが、障壁に阻まれ跳ね飛ばされました。あの方達は大丈夫ですかね?
後部座席からはカロルちゃんとココちゃんの悲鳴が何度も聞こえて来てます。
前言撤回です、ココちゃんを怖がらせる者は万死に値します!
賊ども埋まりなさい! 飛ばされなさい!
「みぅ、おねいちゃんが、こわい」
ココちゃん待って! 私は怖くないよ? ……無いよね?
私が塞ぎ込んでいる間にジョエルさんは浮子さんを巧みに操り、賊にドンドン体当たりをしていきます。
「ははは、逃げても無駄だぁ! ほらほらほら! 」
アカンです、この人ハンドル握ると性格が豹変するタイプの人です。
「坊ちゃんは昔から馬に乗った時も早駆けで暴れておりましたなぁ……」
いや、執事さん。そんな達観した目で遠くを見ないで下さい困ります。
「お父様そこです! いっけー! 」
こちらではカロルちゃんが気勢を上げてジョエルさんを応援してますよ……教育間違えてません?
「おいたわしい……」
「ふう、これで片付いたか? しかし、この乗り物は楽しいな欲しくなったぞ」
「色々と危ないので、流石に売れませんよ? 」
賊の攻撃が一通り止んだのでジョエルさんも落ち着いたようですね。
軍事どうのより、ハンドル持つと性格変わる人に持たせて良い道具ではありませんよ……
痛みで蠢いている賊の方々をいつも通り首だけ出した石棺で固めて集めます。
ちなみに安全の為、四人とも障壁が張られた浮子さんに乗ったままなので私一人で集めました。
「何人か逃げて取りこぼしたかも知れませんが、この周辺に転がっていたのはこれで全部ですね」
舌を噛み自害しないようにロープを噛ませながらジョエルさんにそう報告します。
「それでも三十五人か、盗賊にしては多すぎるな」
前回はこれの三倍でしたけどね……
「おい、娘。俺達に雇われないか? 今なら金貨百枚出すぞ! 」
猿ぐつわをしようとした最後の一人に何やらスカウトされました。
「自分が払える状態なのかを理解してから交渉しましょうよ? このまま連れて行って、死体になってから荷物を漁れば丸儲けですよね? 」
「此処には持ってきて無い、アジトに帰ったら渡そう」
「相手は領主様ですよ? 百枚では大した助力は出来ませんよ? 助命嘆願が良いとこです」
男は悩んだ末に絞り出すように声を出した。
「わかった! この戒めを解いてジョエルを殺せば千枚だ! 金貨千枚出そう! 」
おお、千枚来ました! 私はおもむろに振り返りジョエルさんに宣言する。
「ふふふ、ジョエルさん、貴方をヤレば金貨千枚は私の物……」
「昨日、合計で金貨一千万枚以上の物を納品しといて何を言っている? 」
「そうなんですよねぇ……私は手持ちの現金は少ないけど資産は無駄に有るんですよね、そもそも人を殺めるとか好きじゃないんですよ、そんな訳でやっぱり諦めて下さい」
ジョエルさんの尤もな指摘に再び振り返り、男に猿ぐつわを噛ませます。
「しかしミウよ、金がないなら色々と売れば良いだろうに」
「道具を創り使いはするけども、ほとんど売って無いんですよねぇ……収納の片隅に転がっているウサギや狼の皮でも売りましょうかね? 」
ちゃんと売ったのは、ステラさんに魔法石を売った位でしょうか?
それにしても、ゴーレムとか冷蔵庫とかオーブンとかミシンとか簡単に売れないレベルの物が有り過ぎます。
「今度ほど良く稼げる普通の物でも創りますかねぇ? 」
「はぁ……、盗賊退治の特別褒賞を出すから今はそれで我慢してくれ」
「ああ、それなんですが。この人を鑑定したらミシャク帝国のベラト=フラップって男爵らしいですよ? 盗賊では無さそうです」
猿ぐつわされた男が驚愕の表情で私を見てきます。
人間も鑑定出来たのですね、もっとも名前・所属(階級)・犯罪の有無くらいしか判りませんでしたけど。
「何だと! 隣国の男爵!? ニコラ知ってるか? 」
「フラップ家は帝国の軍閥の一角として名を馳せた名家でしたが、息子に継がせたら失態が続きかなり勢力を落としたとも聞きますな」
現在進行形で没落中の貴族さんでしたか。
「今ここに居る中では爵位を持ってるのはベラトさんだけですね、後は普通の兵士や犯罪者ばかりです」
「ミウよ、最悪ベラトだけでも良いのだが……何とか全員を連れて帰れないか? 」
この石棺の群れを連れ帰るのですか……
「サラッと無茶振りかまして来ますよね……」
石で固めた体格の良い大人の男が三十五人、ここから街まで何キロ有るのでしょうか?
台車だと車輪が埋まりそうですし無限軌道とかパーツが面倒です、足生やして歩かせますかね?
横幅は街道などで邪魔にならない二人分で良いですね、代わりに後ろに長く伸ばして十八人分……曲がれませんね?
曲がる為にフレキシブルな柔軟性を持たせまして、耐久性とパワフルを追求した短足で多脚……
「そんな訳で、多脚連結式資材輸送用ゴーレムの完成です! 」
さっそく背中に石棺を並べて試運転といきましょう。
ウネウネ、ポテポテ……はい、大丈夫ですね?
「さぁ、準備が出来ました。ジョエルさん、街に帰りましょうか? 」
振り向くと二人して目頭を摘まみ渋い顔をしています。
「お主はそんな物まで簡単に作り出せるのか、と言うか……なんだソレは? 」
「ジャイアントキャタピラー……ですなぁ」
「キャタピラー型の輸送用ゴーレム、イモちゃんです」
巨大な芋虫の頭部から突き出たY字型のセンサーがチャームポイントです。
無限軌道だから芋虫とか、この世界に元ネタが判る人は居ませんね。
帰りは執事のニコラハムさんが浮子さんを操縦してます。
流石に領主自ら操縦して街中を走れませんからね。
当然ですが、体面よりも通行人の身の安全の為ですよ?
地面から少し浮いた高さをイモちゃんのペースに合わせゆっくりと飛びます。
「ニコラハムさん初めて操縦したのに上手ですよね、揺れが感じられません」
真っ直ぐ平坦な道でなく、上り下りや曲がり道もあるのに一定の速度で優雅に進んでいます。
「いやいや、浮子さんが素直で良い子ですからのぅ」
やがて街の門が見えてきました、私達を見つけた門番さんが鐘を鳴らし数十人の兵隊さんが走り寄って来ます。
領主様のお出迎えと盗賊の確保ですね。
「民間人がジャイアントキャタピラーに襲われている! 総員展開! 一番隊は右翼から、二番隊は左翼。三番隊は民間人の保護! 背の上の人質に注意し、かかれ! 」
……え?
「ちょ! ちょっと待ってぇぇ! 」
「さあ、こっちだよ、大丈夫、もう大丈夫だから! 安心して! 」
三番隊の方に保護された私の叫びも虚しく、反撃の術を持たないイモちゃんは討伐されてしまいました……
「まあ、こうなるよな」
「ですな」
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