27、晩餐会の続きとお話し合い
本日三話目です。
「アスピックを気に入って頂きありがとうございます。お次は冷製スープ、当店自慢のビシソワーズです」
「これも味わい深い。材料は何なのだ? 」
「ジャガイモとネギを使っております」
火を通したジャガイモやネギにブイヨンを混ぜ裏漉ししてクリームで味を整えて完成です。
「添え付けのパンはアップルの天然酵母を利用したパンです」
「柔らかく甘い、パンは硬いものだと思っていたが此処まで柔らかく焼けるのか! 」
「冷製の肉料理は牛肉です、焼いた牛肉を調味液に漬け込んで冷やした物です」
いわゆる牛肉のたたきですね、おろしポン酢といきたい所でしたが流石に材料が足りないので柑橘系のソースを軽くかけました。
「これは良い、暑くて食欲の無くなる夏でも、脂がキツく無いから幾らでも食べれるな」
「お口直しとしてシャーベットを用意しました」
かき氷器が運ばれ、凍らせた砂糖入りの果汁をセットしガリガリと削っていく。
「フルーツの汁を凍らせて削っているのか! まるで雪のような軽さだな」
「サラダです、昨夜メイリン様がお食べになったサラダをただ冷蔵庫で冷やしただけです。温度が味を変えると殊更理解出来ると思います」
「これは本当に夕べ食べたサラダと同じ物なのか? 冷やすだけで此処まで違うのか! 」
「はい、ご主人様。うちの料理人がこの店で作った物です」
昼頃に来て作ってくれたのですよね、執事さんがフォローしてくれました。
「うーん、食前酒でも驚いたが、このサラダはもっと驚いた、このサラダの味だけでもレイゾウコが欲しくなる味だ。冷たいだけでこれほど変わるのか! 」
室温で放置された生温い生野菜サラダはあまり美味しくないですからねぇ。
「デザートはプリンです。牛乳と卵と砂糖をかき混ぜ焼いた後に冷やした物です」
「これ美味しいー」
お、やっぱりカロルちゃんが気に入りましたか。
アイスにするかプリンにするか悩んだんですよね。
「以上が冷製料理のコース仕立てです、ご賞味ありがとうございました。食後のお茶はアイスティーです。温かい紅茶より香りは落ちますが暑い日の水分補給には最適です」
「うーん、どの料理も美味しかった、この料理は流行るな。グライス、レイゾウコの販売はどうなっている? 」
「はい、なにぶん高価な品ですので……」
グライスさんが先日取り決めた貸し出し条件を伝えました。
「商業ギルドが借りた事にして、そこから個別に十台を貸し出し月々ミウに金貨を支払う……か。買い上げは考慮しなかったのか? 」
「なにぶん使っている材料が材料なので買い上げには色々と問題が……」
人目を考慮してかグライスさんが小声で伝えるも……
「はぁ? この店のレイゾウコは魔法石(☆8)を使っているだぁ!? 」
ジョエルさんが大声で暴露してしまいました。
ポーカーフェイスだった執事さんも流石に頬が引きつっていますね。
セイランさんは……白目むいてます、どうやら意識が無いようです、似た者夫婦ですね。
「ミウよ、おぬし何故魔法石(☆8)なぞ持って……いや、後十台と申したな……まさかまだ何個も持っておるのか? 」
おや、風向きが少し変わりましたか?
「今はまだ持ってませんね」
「今はまだ……か、入手する伝手があるのだな? 」
ジョエルさんが眼光鋭く聞いてきますね、
「はい、魔法石(☆8)を何百個ご入り用ですか? 現金一括払いなら何個でも融通しますよ? 」
「不思議な板で空を飛ぶ少女、初級ポーションの材料で上級ポーションを作る少女、杖も詠唱も無く強力な魔法を使う少女、数多のゴーレムを作り従える少女、レイゾウコなる新たな道具を作り見た事も無い料理を考案した少女、全部が一人の少女、ミウお前の事だな? 」
「調べたのですか? 多分私ですね」
「単刀直入に聞こう、誰の手の者だ? この街に何しに来た? 」
「誰と言われると、シャロンさんですかね? この街にはのんびり楽しみに来ました」
嘘は言ってないですよね?
「此処で女神の名を出すか……まぁ良い、今は信じよう」
おや、信じてくれるのですか?
「少なくとも、他の貴族や隣の帝国でミウに関連する話を聞いた事が無い。今まで秘密だった存在をこんな所であっさりバラすとは思えんしな、何よりも魔法石(☆8)を何個も手放せる裕福な貴族や国など在るものか」
そう思わせる手口かも知れませんが……
「それに料理と言うのはその国その地方に根差す物だ。今日の料理は聞いた事も無い物ばかり、なら俺の知らないほど遠くから来た者と考えられる。それでいて一つの国に数個しか無いと言われてる魔法石(☆8)を大量に入手する伝手があると言う、ならばそういう事なのだろう」
てっきり投獄されて拷問でもされるかと思いましたが大丈夫そうですね。
「さて、話が幾分逸れたな、戻すとしよう。レイゾウコの件はメイリン家もかませて貰う、二位に我が家、三位に商業ギルド、四位に料理店だ。兵士の巡回や詰め所への警報機の設置を許可する、貸し出し店舗が見つかり次第連絡するように」
グライスさんが畏み了承します。
「それとセイラン、この店の移転と石造りへの立て直しを許可する、義務は飯と宿だ他は特例で免除する、そのぶん冷製料理の研鑽に励め。グライス、良い土地を確保しとけ。予算は俺が無利子で融資する」
「かしこまりました」
グライスさんが頷きますが……はい、セイランさんはまだ意識が戻ってませんよ。
……そう言えばステラさんもマホマホすら言わず……何と言うか、驚き過ぎじゃないですかね?
「ローラースケートの件は見送りだな、場所もそうだがローラースケートを作れる職人が複数人育たないと街中に流行らせれん」
ベアリングすら研究段階ですからね、もう少しかかりそうです。
「そしてミウ、この度の料理は大変に美味しかった、これを広められればこの街も更なる発展をしよう。よって褒美に何か欲しい物が有るなら申してみよ、可能な限り叶えようぞ」
んー、これと言って欲しいものは……あぁそうだ。
「自分の住む家を建てたいので、門の外の森の中の土地を少し貰えればと思います」
いつもの錬金場所ですが、勝手に建てるより許可を貰っていた方が面倒が少なさそうだし。
「ん? 街に家を建てて住む許可を……と言う方が良くないか? 」
いや、確かにそうなんだけど。
「この街に来て僅かな私には不相応かと思いまして……」
「気にするな、レイゾウコの件も含めればそれだけの成果は出している。グライス、ミウの住む所の土地の選定も任せる」
「貰ってばかりでは悪いので、貸出とは別に冷蔵庫を三台ほど提供いたします。一台は領主様、二台は商業ギルドで良いですかね? 場所探しの足しにでもして下さい」
領主様の家でも冷蔵庫が欲しいでしょうし。
「ははっ、礼の礼返しとか本来は受け取らんが、それがレイゾウコだと魅力的すぎて断れんな。ありがたく頂こう」
「それと内密な話があるのですが宜しいでしょうか? 」
「良いだろう、ニコラハム皆さんをあちらへ」
ニコラハムと呼ばれた執事の人がジョエルさんと私を残し少し離れた所に連れて行く。
「ありがとうございます。簡潔に言わせて貰いますと、いま命を狙われてますよね? 」
「なっ! 何処からそんな情報を? 」
街道でゴブリンや盗賊や狼に襲われていた事を細かく話しました。
「あの空飛ぶ板の時にそんな事が……」
やっぱり気が付いてなかったのですか。
「そして、今日も馬車を走らせていた御者もグルですね」
魔物寄せの小箱を見せて御者が捨てていた事を告げます。
「あの時に車軸が折れたのも仕組まれたものだと? 」
「はい、私はそう思っています」
身を守る手助けをいたしましょうか。
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。




