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25、商業ギルドでお話し合い

本日もよろしくお願いします。

 夕べは遅くまで料理のアイデアを出し合い、寝不足になりましたが何とか形になりました。

後は食材の手配をするだけです。

商業ギルドの中に入ると受付の方に案内され、応接間に通されました。


「これが当日の朝に欲しい食材の一覧です」

考案した料理に使う食材の品目と量を書いた紙を商業ギルドの長であるグライスさんに渡し確認して貰います。

「うむ、さっそく手配させて貰う」

一覧に軽く目を通し隣の秘書さんがその紙を持って部屋を出て行きました。


「晩餐で出した料理のレシピは後日にでもグライスさんに差し上げますね。ヴィヴィアさんの許可も取ってます」

「新しいレシピまでくれるのか! 」

「知ったからと簡単に真似出来る物でも無いですし、名物料理として売り出すなら知っておいた方が宜しいかと? 」

冷蔵庫か製氷機がないと出来ない料理が多いですからね。


「そう言えば、オーブンまで作ったらしいな? 」

「まだオーブンと判るような料理を作ってない筈なのに耳が早いですね」

「厨房から鐘の音が聞こえていて、うちの者が主人に聞いたらしい」

レンジのベル! 活用していましたか。あの音は目立ちますからね。

グライスさんにスチームオーブンレンジの原理と構造を軽く教えておきましょう。


「うーむ、一つのオーブンにそこまでの機能を詰め込んだのか。……まさかまた魔法石を? 」

声には出さず、にこやかに微笑み返して……

「もう、あそこの厨房だけで貴族の屋敷が買えるんじゃないかな……」


「そうそう、お土産にこの板を差し上げます」

取り出したのは、昨夜遅くに創った五十センチ四方の加熱板と冷却板です。

「魔石が付いた……魔法付与された板? これは……まさかレイゾウコの!? おい! 技術部長のワイズを大至急ここに呼べ! 」

そんなに急がなくても板は逃げませんって。


 程なくして生え際がかなり逝ったお爺さんが息を切らせてやって来ました。

「レ……レイゾウコの基板ががが……ゲホゲホ! 」

はいはいお爺さん落ち着いて、落ち着いて。


「この様な魔法がこの密度で……うーん」

ワイズと言うお爺さんが加熱板と冷却板を食い入るように眺め唸り出す。

「ワイズどうだ? お前なら出来そうか? 」

「グライス……こいつは複製が精一杯だな、手を加えたり新規に書くのは俺には無理だ。拡大して書き写す事も出来るが、それだと消費魔力が……」

見ただけで良く判りますね、鑑定スキルとかでは無さそうですが、本職な人は勘が鋭いです。


「お主がこの板を持って来たのか? 是非とも作った人を紹介して欲しい! 」

ワイズさんが聞いてきますが、グライスさんは教えて無かったのですかね?

「創ったのも私ですけど? 」

「何じゃと!? こんな子供がこの板を! 信じられん……是非、一度でよい見せてくれんか? 頼む」

ワイズさんが魔石やら鉄やら色々な材料を机に並べ始めて、私に付与の方法を見せてくれと頼んできます。


「我が家の秘伝ですから製法は教えられませんし、見てても多分判りませんよ? 」

そもそも私自身がどうやっているのか良く判ってないのですから。

「それでも良い、一度で良いから見せてくれ! 」

それじゃあ、片手に水魔石、もう一方に鉄のインゴット。

これを混ぜ合わせると……はい、箱型の冷却板が完成です。

「……確かに見てても全然わからん……なんじゃその速度は!? 」

材料がそちら持ちだし、この箱もグライスさんに差し上げます。


「そのサイズの箱で水が凍るか凍らないかの冷たさを維持するのに一日で魔石☆4が一つですかね? 」

少し大きめな卓上冷蔵庫って感じですね。


「それはそれで凄いのだけど、店で使うには小さ過ぎるな」

「しかし、倍の大きさだから消費も倍で済むと言う物でも無いからのう」

二人が小型冷蔵庫の使い道を話し合っている中、私は箱の内側にピッタリ合う寸胴鍋を創りはめ込み。

「この様にして数を揃えれば、スープ専門としてなら使えますかね? 」

「スープ専用か、屋台ほどの規模で出す分なら使えるな」


「それと、お店に置く大型の冷蔵庫ですが。最大の問題は予算ですよね? 」

「そうなんだよな、払える店もあるだろうがレイゾウコの代金を稼ぐのに何年かかる事か……」

費用対効果とか減価償却の事ですね……。


「そこで私から商業ギルドに一台につき三十日で金貨一枚、最大十台まで貸し出しましょうか? 」

「そんなに格安で良いのか? 」

「ええ、代わりにヴィヴィアさんの所と違い、所有権の最上位が私、二位が商業ギルドで三位が貸し出し先として、勝手な又貸しをしない事が条件になりますが」

「借りる身としては、妥当な条件だな。後は盗難対策だが……」


「盗難の問題を解決する方法として、考えられるのは警報機ですかね? 」

「警報機? 」

再び魔石と鉄を手に取り、一枚の板を創り出しそれを三等分にする。

「この一枚目をコアに、二枚目を床に置いて、コアに異変があったり本体が移動すると三枚目のこの板に連絡が行く装置です」

試しに応接間の椅子に装置を取り付けて実演します。

椅子が動かされたり板を剥がされると手元の板が光り音が鳴ります。


「これで警報が鳴ったら大急ぎでその店に行けば何とかなりませんかね? 」

「領主様に相談して憲兵隊の詰め所に設置出来るなら可能だな」

ならばその為にも晩餐会は成功させないとね?

「あの新型オーブンの方は貸し出せるのか? 」

「貸せはしますが、それをすると今のオーブンを作っている所と軋轢を生みません? 」

そう言うとグライスさんはまた頭を抱えて悩みだしました。

利権とか面倒ですよね……


「んー、他に伝えとく事は……冒険者ギルドのギジーさんを見ましたか? 」

「あぁ、あの女装して床を滑っている奴だな。あの靴を作ったのもお前さんなのか」


「ローラースケートと言う遊具ですね。滑る場所の整備が必要なので、それを承知で売り出すなら権利を手放しますよ? 」

ローラースケートを使ったレースや試合、演劇の話をしたらグライスさんがまた溜め息混じりに少し悩み出しました。

「規模もそうだしカジノにも繋がる事を考えると……これも領主様に相談する必要があるな……」


「しかし、何でお前さんはそんなに大きなネタを出して来るんだ。もう少しこう……ギルドだけで出来そうな物とか……」

「商業ギルドの一番偉い人が目の前に居るなら一番大きなネタを投げ込むべきでしょう? 細かいネタは部下さんの手柄に譲ってあげなさいよ」

それに部下さんに大きなネタを話しても、結局はグライスさんに廻ってくるのですから二度手間ですよね。

「まあ、晩餐会で会えるのですから。食後の話題にでも使って下さい」


 それにしても小さなネタですか……。

「どんなネタなら小さいんですかねぇ? 」

「俺に聞くなよ。そうだな、街にいる職人が作れて、庶民が買える程度の安さで、画期的で便利になる物かな」

なんとも無茶な要求をしてきますね……。


 とりあえず手持ちの材料でローラースケートを創り並べておきましょうか。

「この街に何が在って何が無いとか知りませんし、職人の腕前も知らないのでこの程度しか思いつきません」

次は低燃費の小型卓上扇風機を創り出します。


「このローラー部分には、軽く回転させる為にベアリングと言う物を使ってます。此方の扇風機にもですね、ご存じでしたか?」

ベアリング部分だけを創り出してグライスさんに見せますが、ベアリングを知らないらしくグライスさんは首を振ります。


「馬車や荷車の車軸受けにも使える技術ですね。それとローラーは樹液を集めて固めた樹脂です、適度な固さと軟らかさを両立させているので板張りの床で滑っても傷が少なくなります」

森林ダンジョンでゴムモドキの木が拾えたので錬金術で分解・抽出していました。


「このベアリングと樹脂を小さなネタとして提案します」

グライスさんは暫くの間、ローラーを触りベアリングを回しながら唸っていました。

「どこが小さなネタだよ、十分にデカいネタじゃねえか! 」

喜んで貰えて何よりです。

此処まで読んで頂き、ありがとうございます。

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