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24、ギジーさんの処罰

本日三話目です。

 ダンジョンを出た後、トニーさんはダンジョンの門で待ち構えていた衛兵に連れられ投獄されました。

ギジーさんが自分がダンジョンから戻れなかった場合に備え、トニーさん関係の犯罪資料を纏めギルドに提出していたようです。

後日、裁判とも言えない一方的な判決で極刑が決まります。


 ギジーさんは冒険者ギルドに呼び出されました。

聞いた話によると、トニーさんを捕まえた事で二割誉められ、小さな女の子を囮にした事で八割叱られたそうです。


 私はと言うと冒険者ギルドの応接間でステラさんと向き合ってます。

冒険者ギルド長が王都の会議に出席中の為に副ギルド長が会うと聞いたのですが……

まさか、前から色々とやっていた何でも屋ステラさんが、実は冒険者ギルドの副ギルド長だとは……

トップは不在、副は雑用……このギルド大丈夫なのでしょうか?


「ミウさん、この度はうちのギルド員が御迷惑をかけて大変申し訳ありませんでした」

ステラさんが深々と頭を下げて謝罪してきます。

「怪我もなく無事でしたので、気にしないで下さいよ。それにステラさんに畏まられて『さん』付けされると何かこそばゆくて……」

いつも通り緩くお願いします。


「そう? じゃあ戻すわ。ありがとうミウちゃん、それでギジーの処罰なのだけど……何か望みある? 」

処罰の望みとか言われましても……思わずステラさんの横の床をチラ見……

「トニーの犯罪を見破り捕獲した功績は認めるけど、そのやり方が問題でねギジーが罰を受ける事になったのよ」

確かに私じゃ無かったらどうなっていたか……いや、私だったから囮にしたとか?


「今ならミウちゃんを主人とした、一年間の期間奴隷として扱えるわよ? 」

「そうですか、ギジーさんついに奴隷落ちですか……」

ステラさんの横の床に直接座って、無言で泣いているオッサンを見てしまいます。

いい歳したオッサンがマジ泣きしているのは流石に引きますね。


「この酔っ払いは忘れてたみたいだけど、ミウちゃんは新人ダンジョン研修の最中だったからね」

あー、そんな事も言ってましたね。教官が研修員を不当に害すると奴隷落ちする位の厳しい罰則があるとか。


該当しちゃいましたか、まぁそうですよね。

強盗殺人犯を捕まえる為に、本人の同意なしに囮にしたんですもん。


「それで、被害者であるミウちゃんに判断を任せるか? との話にもなったのだけど……」

「自分で言うのも何ですが、妻子あるオッサンの身柄を預けるとか、十三歳の女の子に振る案件じゃないですよね? 」

「そうなのよねぇ……だから保留にしているのよ」


「それに、何かされたと言っても、やったのはトニーさんですし、それも足にロープ絡ませて逆さ吊りにされて、背負い袋を短剣で切り裂かれ、短剣で喉を突かれた程度ですから……」

「いや、それはそれで十分だと思うけどねぇ」


「そもそも奴隷とか貰ってもどう扱って良いのか判らないのですが? 」

「法に触れない範囲なら大抵の事をやらせられるわよ? 」

「例えば預かる一年間は断酒とか? 」

「毎日食事を与えるのは義務になるけど、お酒を自由に飲ませる主人は居ないわね」

床に座っているオッサンが今にも死にそうな顔色に変わりましたね。

どれだけ酒好きなのですか……


「ギジーさんに何かされたとか特に思ってないので、奴隷とかは許してあげて下さい」

「まぁ、被害者本人がそう言うのなら……」

死にそうな顔色が一転して喜びの顔に……面白いようにコロコロ顔色が変わりますね。


「所で、随分とギジーさんが大人しいのですが……」

床に座っているオッサン、ギジーさんがゆっくりした動きで自分の首に付いた首輪を指差していますが?

「ああ、これは会話や素早い動きを制限して犯罪者を拘束する首輪なのよ。知らなかった? 」

手錠みたいな物ですか、それで黙って床に座ってたのですね……


「いやあ、一時はどうなるかと思ったぜ。お嬢ちゃんありがとうな! 」

拘束を解除され、やっと喋れるようになったギジーさんが御礼を言ってきます。

「貸し五つ目ですかね? 」

「ギジー、何でミウちゃんにそんなに貸しを作ってんの? 」

囮にされて、罠のロープを切って、トニーさんを捕まえて、ギジーさんの怪我を……、ステラさんに指折り数えて教えてあげる。


「ギジー? 『トニーの罠を颯爽と抜け出して華麗に捕獲した』とか言って無かった? 」

「随分と話を盛って……ギジーさん自分を美化し過ぎですよ? 」

「話を聞く限り何もしてないわね? もしかしてギジーの功績とか全く無し? 」

「いや、あの……その……娘に自慢したくて……」

奴隷落ちしかけていて何を言ってんだか……


「まぁ、奴隷落ちは無しにしても、ギルドとしては何かしらの罰を与えないと示しがつかないのよね。何かいいアイデアは無いかしら? 」

「そうですねぇ、……ギルドでウエイトレスでもさせますか? 」

「ここの酒場で働かせるの? ウエイターではなく? 」

私はニッコリ笑って、布と皮と木材と鉄を取り出して……


 冒険者ギルドのロビーには簡易な飲食所がある、冒険者達が待ち合わせに使ったり、仕事の打ち上げで軽く飲む場所である。

そこに一人のウエイトレスが短期就職した、その者はミニスカドレスを着てインラインスケートを履きギルド内を所狭しと走り回るギジーさんであった。


「ぎゃははは、ギジー似合ってるぞ! 」「ギジーお姉さん! コッチにもエールおかわり! 」「ほらほら、もっと愛想よく接客しろ! 」

「うるせぇコノヤロ!! くぅぅ、何で俺がこんな目に……」

「ほらほら言葉遣いが乱れてるぞ、その程度の罰で許して貰えているんだ。三ヶ月間しっかり働け! 」

「お待たせ致しましたぁ! 」(裏声)


私が提示した罰は女装してローラースケートを履いて裏声での給仕。

無いわー、自分でやらせといて何だけど、四十近いオッサンの女装姿とか無いわー。


「奥さんと娘さんに見せてあげたい勇姿ですよね」

「ミウちゃん、何気に酷い事を考えるのね……今度連れてくるわ! 」


「それにしても、インラインスケートとか初めての筈なのに器用に乗りこなしてますよね」

「昔からギジーは得意な物はないけど不得意な物もない器用貧乏な冒険者なのよ」

初めて履かせた時に何回か転んで、スカートの中の見たくない物を見せまくっていたけど、直ぐに動きに慣れ、今では片足で後ろ向きに走ったり、スピンを加えたりと上級者のレベルに近づいています。


「走る場所を選び過ぎるから、売り出しても一般ウケはしないかなあ……」

街中の石畳ではデコボコが酷すぎて、まともに走れないでしょうし。

「遊び場を込みで作らないと駄目ね、商業ギルドに話を通しておこうか?」

「いえ、ドジョ・ドジョの件で明日会いますから。その時に話をしておきますよ」

冷却板や加熱板も創っておきませんとね……


「じゃあ、ギジーさんまた明日! 街中に宣伝して貰って見世物にするからシッカリ働いてね? 」

「お前は鬼か! しかしまあ、ありがとうな……」

ギジーさんが少し照れた笑顔で御礼を言ってきますが、その姿では不気味なだけです。


 何だかんだでもう夕方です、いつもの鉄や魔石を補充して晩御飯をモフモフしましょうか。

「ヴィヴィアさん、オーブンの調子とメニューの進展はどんな感じです? 」

「おう、オーブンは問題ないな。今日は鳥を丸ごと焼いてみたんだがなぁ……」

ローストチキンですね、今までカットされた鶏肉にハーブをまぶしてフライパンで焼いてましたが、丸ごとオーブンで焼いてジューシーさを更に追加したのですね。


「でも、その分薄味に成りましたね。鳥の腹の中に香味野菜をもう少し詰めるか、野菜を敷き詰めた上に鳥を置いて焼くとかしても良いかも知れませんね」

「やっぱりそう思うか、焼け出てきた脂は上からかけたんだけどなぁ……」

皮のパリパリ感は増しているので悪くはない出来です。


「今までのハーブチキンとはまた別物の味わいですね、別メニューとして出すか、思い切って鳥を牛に替えてローストビーフにしちゃうのもアリですね」

「そうすると今度は料理の単価が……」

まだまだ試行錯誤は続きそうです。

此処まで読んで頂き、ありがとうございます。

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