23、ごめんなさい
本日二話目です。
トニーさんの罠に掛かり宙吊りになった私とギジーさん。
そこに裏切ったトニーさんが短剣でギジーさんの右手首を切断左足にもナイフを突き刺した。
トニーさんの目的は私の持つアーティファクトだった!
「二人には悪いけど此処で死んで貰うよ? 」
「あー、その前に一つ言わせて貰っていいですか? 」
「なんだい? ミウさん、遺言なら伝えておくよ」
「いえ遺言と言うより、その金属板は偽物なのですけど」
「え? 」
トニーさんが金属板に魔力を流すも金属板は何も反応しない。
適当に創った板ですから当然ですよね。
「どう言う事だ! どこに隠した!? そうか、収納スキルか! ならミウさんを殺せば中身が」
「何と言うか……ごめんなさい、あれ実は私の魔法です」
「この期に及んで嘘をつくな、あんな魔法など聞いた事が無い! 」
「世間に出回ってない魔法だから、つい嘘をついてました……ごめんなさい」
「くそ! しかし、どの道生かしてはおけない! 」
「トニー、俺からも聞いていいか? お前これが最低でも三回目だな? 」
おや、もしかして常習犯な方でしたか。
「ちっ、ギルドに内偵されてたか。ああ端金だったがな、今回は探索の魔法板で稼げると思ったが……まあいい、あの大量のゴーレムコアだけでも一生遊んでられる」
「あの子達は強いですよ? トニーさんだけで大丈夫ですかね? 」
「ああん? どんなに強くったって所詮はゴーレムだろ、司令のお前が死ねば動きは止まるさ」
いえ、自動防衛でかなりエグイ抵抗しますが……今言う事でも無いですね。
「お嬢ちゃん、あいつは生かしたまま連行するからな? 」
「はっ! 足は怪我してるし右手は無い、ロープからも抜け出せない、そんな態勢で何を言ってる! 」
もとより私は人を殺す気とかありませんからね?
それにしても、自分を縛るロープが切れなくて諦めていたと思いましたがギジーさん強気ですね?
「トニー、このお嬢ちゃんの戦闘力試験の時に居なかったからお前は知らなかったのだろうけど、実はこのお嬢ちゃん魔法使いなんだ」
そう言いながらギジーさんが足に絡みつくロープを左手の指で差します。
あぁ、そうですか……人任せ過ぎませんかね?
「錬金術師じゃない? だがそれがどうした? 杖を持ってないそんな体勢じゃ大した魔法など撃てないだろ! 」
「トニーさん、ごめんなさい……杖も飾りなんです」
私はギジーさんの足に絡むロープを指差して……【ウインドカッター】をピチュン
ロープが切れて落下する身体を空中で素早く身を立て直し、軽業師のようにギジーさんが着地します。
普段の酔っ払い姿からは想像も出来ない、相変わらずの高スペックさんですね。
「しかも、凄腕の魔法使いなんだよ」
「そんな……あの鋼線入りのロープが簡単に……」
何だかギジーさんが格好つけて調子に乗ってますが、切ったのは私ですよ?
「ちっ! ならば此処で死んで貰うしか! 」
「嬢ちゃん! 止めろトニー! 」
トニーさんが舌打ちして飛びかかりナイフの刃が私の首を撫でる。
「トニーてめえ! 」
ギジーさんが怒髪衝天にトニーさんに飛びかかりますが、傷めた足では素早く動けず難なく避けられ、足払いで逆に転がされてしまいます。
「ミウさんゴメンね、どのみち収納の中の物も頂くつもりだったし……あれ? 」
トニーさんが私の持つ収納物が一向に落ちて来ない事を不思議に思い私を見上げます。
「ギジーさん、怒ってくれるのはありがたいですが、あまり怒ると血が全部流れ出ちゃいますよ? 」
「何で……確かに斬った筈なのに! 」
「お嬢ちゃん無事だったかい……」
「何度も言うけど、ごめんなさい。防御の魔法をかけてあるからナイフ程度では私を斬れないんです」
常時発動していた【障壁】が役にたちましたね。
ギジーさんみたいな真似は私には出来ないので、収納から空飛ぶ畳を取り出して身体の下に敷いてからロープを……ピチュン
「空飛ぶ板! そんなアーティファクトまであったのか?! 」
ごめんなさい、これも魔法です。
「さあ、もう逃がさないぞ。大人しく連行されろ」
「ちっ! 捕まるかよ! 」
トニーさんが走り逃げようとしますが……【スワンプ】
突然足元に出来た沼に落ちて肩まで埋まります、そのまま固めましょう。
「なっ! 何だこれは? 落とし穴? 罠師の俺が気がつかない内に罠を仕掛けていただと?! 」
急に身動きが取れなくなって、トニーさんが慌てております。
ごめんなさい、それもやっぱり魔法です。
トニーさんの周囲の固めた土ごと切り取って【念動力】で持ち上げ【ストーンウォール】で頭だけ出した石棺にしておきます。
「ははは、お嬢ちゃんの力を甘く見たな! 」
何故そこでギジーさんが胸を張って勝ち誇るんですか?
「結局、ギジーさんは何もしてませんよね? 」
「そう言うなよ、ハッタリでも余裕を見せないとコッチのペースに持ってけないだろ? 」
ギジーさんは止血をしながら傷口にポーションをかけてます。
「しかし、防御魔法があったのか。どうりで肝が据わってると思ったよ、度胸あるお嬢ちゃんだな」
「まあ、障壁があったし。即死しない限りは魔法で何とかなると思ってました。あと茂みの中には弓子さんmarkⅡ達が居ましたからね……」
弓子さんmarkⅡは手加減出来ないから、あまり人を撃ちたくは無いんですけどね……
ポーションの効果かギジーさんの右手の傷が塞がりましたが……
「はぁ、俺もとうとう冒険者を引退か」
無くなってしまった右手を見ながらギジーさんが黄昏始めました。
「冒険者を辞めちゃうんですか? 」
「この手じゃ、武器が持てないからな。所帯もあるし、練習場の指導教官でもして酒代を稼ぐよ」
酒を辞めると言う選択肢は無いのですか?
「所で、その手……痛くないんです? 」
余りにも平気な顔をしているから、思わず傷口を突っつきたくなります。
「触んなよ! メッチャ痛てぇんだから! 」
座ったまま後退りして私の手から逃げるギジーさん、格好つける為の痩せ我慢だったのですか?
「良かったです、ギジーさんにも人並みには痛覚が有ったんですね? 」
「あるよ! 俺はちゃんと人間してるよ! 」
「でもまぁ、そんな事言わずにちょっと貸して下さいよ。ギジーさんならもしかしたらくっ付くかも知れないじゃないですか! 」
「付かねえよ! 人間だって言ってるだろ! 」
逃げるギジーさんの右手首を思いっきり握ります。
失われてしまった部位を身体の記憶から再構成する魔法を創造【再生】
「痛ぇぇぇ……え? 痛くない? 」
押さえつけていた私の手を振り解き傷口を見ると……
「え? 右手がある? 」
ギジーさんの右手が立派に再生しました。
「わー手が生えてる、ギジーさんそれでも本当に人間ですか? 」(棒)
ギジーさんは暫くの間、自分の右手と私を何度も交互に見て……
「……実は俺の先祖にトカゲが居たんだ」(棒)
「そうですか、先祖帰りして生えてきて良かったですね」(棒)
二人してアハハと乾いた笑いをして場を収めます。
「いやいやいや、生える訳無いでしょ! ギジーもミウさんも、何なんですかそれは!? 」
石棺から頭だけ出したトニーさんが空気を読まないツッコミをしてきます。
「トニーさん、此処は笑って流す場面ですよ? 」
「トニー、こういうのは気にしちゃ駄目だぞ? そうだお嬢ちゃん、トニーにもトカゲの先祖が居なかったか、目玉か耳を切り取って確認してみるか? 」
短剣を弄りながらギジーさんがトニーさんに近寄って行きます。
「居ないから! 俺にはトカゲの先祖とかは居ないから! 」
「トニーさん、良い機会ですから試してみたらどうです? 」
ギジーさんがトニーさんの頬を短剣でペチペチ叩いております。
あ……ついに気絶したみたいですよ。思ったより根性が無かった様です。
「ギジーさん、この後トニーさんはどうなるのです? 」
派遣していたゴーレム達を回収しながら今後を聞いてみます。
「奴隷落ちなら御の字、でもまぁ極刑だろうな……」
私が持っていると思わせていた、高価なアイテム目当てで犯行に及んだと思うと少し心苦しいですね。
「お嬢ちゃん気にすんな、コイツは調べてあるだけでも最低二件、推定六人は金目当てに消されている。お嬢ちゃんと会わなかったら、今度は別の誰かが犠牲になっていたさ」
何処かの誰かを助けたんだと思っておけ、ギジーさんはそんな感じに慰めてくれます。
「ギジーさんはその証拠集めをしていたのですね? 」
「ああ、二年前に俺の友人が消えてな、独自に調査していたんだ。トニーが怪しい迄は行き着いたんだが、決定的な証拠が無くてな」
「そこで、高価なゴーレムである、弓子さんを持ってた私を囮にして証拠を手に入れた……と? 」
「いっ! ……いや、その……何だ……えっと……すまん! 」
「貸し四つですね」
囮になって、ロープを切って、捕獲して、右手も治した。
「うぅぅ…」
さて、何をして返して貰いましょうか?
「ごめんなさい、禁酒だけは勘弁して下さい、死んでしまいます」
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。




