第37話 西の森での鍛錬(後)
ブーンという羽音、そしてカチカチと顎を鳴らしながら現れたのは、
お師匠様の顔と同じくらいの大きさで、黄色と黒の網模様をした大きな蜂だった。
「お師匠様、これが次のモンスターでしょうか?」
お師匠様は頭上を旋回するように飛び回る蜂を見上げる。
「正解。ジャイアント・ビーって言うねん。
しっぽに毒針があるから、こいつはメスやね」
「メスということは、オスもいるのですか?」
「うん。でもオスのジャイアント・ビーはレアやし、毒針も持ってないんやけどね。
さて、それじゃノエル君……」
お師匠様が頭上を飛び回るジャイアント・ビーを指差す。
「やってみよっか?」
「はい、わかりました!」
僕はお師匠様の頭上にいるジャイアント・ビーを斬り上げようとした。
しかし――
「届かない……」
次にできるだけ跳躍して斬ろうとしたけど、
ジャイアント・ビーは攻撃を察知すると、さらに高く舞い上がってしまう。
「ノエル君、どうすればええと思う?」
お師匠様の言葉を聞いて、僕は倒し方を考える。
攻撃しようとすると飛んで逃げられる。
それなら――
そう考えた瞬間、身体が勝手に動いた。
「飛燕!」
僕は剣に纏わせた魔力をジャイアント・ビーの羽に向かって
飛び道具のように飛ばす。
すると、ジャイアント・ビーは羽が切り裂かれ、地面に墜落した。
「二連斬!」
僕はそのまま、地面に落ちたジャイアント・ビーの胴体を真っ二つにした。
「お師匠様、やりました!」
「うん、上手に倒せたね」
お師匠様がそう言って僕の頭を撫でてくれた。
「ジャイアント・ビーの毒針は、ホーンワームの毒角と同じで
錬金術の素材になるから回収せんとあかんよ」
「お師匠様、わかりました!
もしかして、毒角と毒針を錬金するのでしょうか?」
「ノエル君、鋭いね。
そうやねん。とは言っても成功率が低いから、
もうちょっと倒して集めたら試してみよか」
僕はお師匠様の言葉に従って、
ホーンワームとジャイアント・ビーを倒し続けた。
何度か斬ってしまったりもして、
最終的に毒角が7本、毒針が5本になった。
「今日は鍛錬はこの辺にして。
帰る前に毒角と毒針を錬金してみよっか。
毒角1本と毒針1本が材料になるから、5回まで挑戦できるね」
僕はお師匠様から貰った錬金釜に毒角と毒針を入れて魔力を込める。
3回目までは失敗して、4回目で成功した。
そして錬金釜から出てきたのは――
「お師匠様、ナイフが出てきました」
「成功したみたいやね。これは毒のナイフで、
攻撃が当たった相手を、一定の確率で毒状態にできるんよ。」
「お師匠様、もしかしてかなり危ないものですか?」
お師匠様は腕を組み、首を傾げて呟き始めた。
「うーん、そやねぇ……。
7歳のノエル君に渡していいもんではない気はするんやけど、
成長剣を渡してるから今さらといえば今さらやし……。
うん、とりあえずアイテムバッグにしまっとこっか」
「わかりました」
まだ僕には意味がちゃんと理解できなかったけど、
お師匠様が言うには、身体が硬かったり体力が多い敵は
毒が効けば、相手の体力に応じて少しずつ減っていくから便利ということだった。
「それじゃ、今日は帰ろっか」
僕はお師匠様と手を繋ぎ、森の入り口に向かって歩き始めた。
すると――草を揺らし、枝が折れる音を鳴らしながら、
茂みの奥から何かが現れた。
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