第17話 薬屋ギルドでの一騒動
ノエル達がスティルツで遊んでいる頃、
奏はセントラルコリナの薬屋ギルドへ向かっていた。
「ちょっと早いけど……そろそろ納品しにいこかな。
そういえば……」
ゲームではセントラルコリナは序盤の街だったため、
ハイポーション以上のアイテムは売っていなかった。
「ハイポーション売ったらどうなるんやろ?
でも……目立ちそうやし、やめとこ」
そう呟きながら薬屋ギルドに入った――その瞬間だった。
奏が受付の女性の視界に入った途端、
受付がカウンターから飛び出そうとして盛大に躓いた。
「あいたっ……!」
それを見た奏が慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですか? どうかしました?」
受付の女性は体勢を整え、座りながら奏の手を握った。
「だ、大丈夫です。カナデさん……いえ、
カナデ様、ようこそいらっしゃいました。
お待ちしておりました!」
「えぇっ……?」
「ここでは何ですので、どうぞこちらにお入りください」
それはカウンターの内側にある、
“関係者以外立ち入り禁止”の扉だった。
「えっ……でも」
「どうか……どうか……お願いします!」
「はい……わかりました」
受付の勢いと熱意に押され、
奏は流されるまま案内に従った。
扉の先にある階段を上ると、すぐ部屋へと繋がっていた。
部屋の中には執務机があり、テーブルを挟んで
三人掛けのソファが二つ置かれている。
何となく、学生の頃に見た校長室を思い出した。
「どうぞ、お座りください。
ただいま、ギルド長をお呼びしております」
そう言って、奏の前にお茶が置かれる。
胸の中が不安でいっぱいになる。
自分は何かしてしまったのだろうか。
「あっ……はい」
しばらくすると、階段を上る足音が聞こえた。
やってきたのは、温和そうな表情に白髪まじりの頭髪をした
初老の男性だった。
「お待たせしてすまない。
いや、座ったままで結構です」
奏が立ち上がろうとするも、手で制される。
男性は目の前のソファに座り、
その隣には受付の女性が腰を下ろした。
「初めまして、カナデさん。
私は薬屋ギルドの長をしている、メイスンと申します」
「挨拶が遅れて申し訳ありません。
私は受付や傘下の薬屋との仲介などを担当している、アグネアです」
「あ……カナデです。よろしくお願いします。
えっと……」
メイスンが奏の様子を見て、アグネアを睨む。
「アグネア君、もしかして……
この場に呼んだ理由を説明していない?」
「あっ……はい……すみません」
「はぁ……君ね、何の説明もなしに
こんな所に連れてこられたら不安になるだろう?
重ね重ね、うちの者が不手際をしてすまないね、カナデさん。
決して、あなたを追及したり、責めたりする場ではないんだ。
なので、安心して……緊張を解いてほしい」
そして、メイスンが続ける。
「結論から申し上げると、先日カナデさんから買取した
ポーションの査定が間違っておりました。
薬屋ギルドとして恥ずべき行為です。
深くお詫び申し上げます」
「はぁ……そうなのですか……?」
アグネアが申し訳なさそうに説明を続けた。
「はい……あの後、販売を行ったところ
『グレードAでは説明できない回復量だった』と、
一部の冒険者から報告がありまして。
そこで錬金術ギルドから、最も鑑定が得意な職員に来てもらい、
カナデさんから買取したポーションを鑑定した結果――
グレードAではなく……グレードSと出ました。
すみません、私の鑑定では“グレードA以上”となっていたため、
見落としてしまいました」
(あ……やっぱり、そうなんや?
ゲームではグレードSやったし、違和感あったんやけど……
ホテルの価格差と似たようなもんかと思って流してたわ)
「あぁ……いえ、気にしていないですよ。
そうですか、グレードSだったのですね」
「いえ……そんなわけにはいきません!
先日、間違って出した査定分の差額を
お支払いさせて頂きます。
とはいえ……グレードSなんて何分初めてのことで……
ギルド長、いかがいたしましょう?」
メイスンが腕を組み、視線を中空に向ける。
「そうだねぇ……確かポーションのグレードBが500リル、
グレードAが750リルだったかな?」
「はい、左様でございます」
奏も頭の中でゲームでの効果を思い出していた。
(グレードBで最大HPの10%、Aで15%、Sで20%やったっけ。
一度使ったらインターバルがあるから、
“連続でBを使えばええやん”とはならんのよね)
メイスンの考えがまとまったらしく、
アグネアと奏の顔を見る。
「よし、グレードSは1,500リルにしよう」
アグネアの目が見開く。
「せ……1,500リルですか?!
グレードAの二倍ですよ?!」
「命が掛かった戦闘中で使う道具なんだ。
それくらいの価値はあると思うよ。
カナデさんも、それでいいかな?」
「はい、異論はありません。お任せいたします」
「うん、よかった。これで話は決まったね。
アグネア君、それでは差額をカナデさんにお支払いして」
「かしこまりました!
えっと……既にお支払いした査定分となりますから、
前回はグレードAの買い取り価格、375リルで計算しておりました。
グレードSの買い取り価格は750リルですから、50個分の差額は18,750リルになります。」
「アグネア君。お詫びを込めて……30,000リルだ」
「はい、それでは用意して参ります」
奏はアグネアが持ってきた30,000リルを受け取った。
(どうしよう……予定していた納品を
せんでもよくなってもうた。
今日はこのまま帰ろうかな)
「ありがとうございます。えっと、ご用件は以上でしょうか?
でしたら、私は今日のところはこれで……」
奏が立ち上がろうとした瞬間、メイスンに呼び止められた。
「奏さん、もう少しだけお時間を頂いてもよろしいでしょうか?
あなたに、折り入ってお願いしたい事がありまして」
「……はい、構いません」
奏は、一刻も早くこの場から離れて帰りたい気持ちを抑え、
座り直すとメイスンの次の言葉を待った。
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次の話を執筆する活力になります。
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