0-59話 第一次降魔事変 その25 円卓の騎士 2
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惑星イ・ゼルディアには、南西に位置する広大なアサイラム大陸の他に、中央に位置する広大なアサイラム大陸に比べ更に肥沃で雄大な大地であるフォルティバーハム大陸が存在する。
歴史はアサイラム大陸より古く、かつてフォルティバーハムで大きな戦乱を制し、混沌の世に終始符を打ち、イ・ゼルディアに人の世の規範と尊厳を求めた大英雄がいた。その人こそ、後に天帝と称されるキャスターヴ・アーデライトである。
若き日のキャスターヴは勇者アヴストゥ-ラにも決して引けをとらない勇猛果敢かつ公明正大な好漢であった。その覇気と勇猛さはとどまる事は知らず、血で血を洗う獣が闊歩する混沌の世を終わらせたイ・ゼルディア史においても破格の大英雄であった。
各地で小競り合いこそ起こっているものの、イ・ゼルディア全土が治世の時代を築けているのも、この天帝キャスターヴの存在が余りにも大きい。元々キャスターヴはフォルティバーハムの地でも、古の聖王として名高いグラハム・アーデライトの血を受け継いでいる名門出の騎士であった。
戦乱を終えて、グラハムに習い、キャスターヴを聖王を越える天帝と類を見ない称号と共にイ・ゼルディア全土の王として封じキャスターヴを始め、その側近である。キャスターヴを盛り立てた立役者達の家系を絶対王家ハイクキングダムという唯一無二の王政体系を敷いたのであった。
その絶対王家は、特殊な監視情報統制システムを使い、イ・ゼルディア全土を監視し、余りにも収拾がつかない程の大きな戦乱が起きようものなら国連と連携し、絶対王家が擁する最強の騎士軍団。天聖騎士団が打って出てくるのである。そしてその世界最強と謳われる頂点に立つべき騎士たちが円卓の騎士と呼ばれる騎士たちであった。それを束ねるのが天帝キャスターヴ・アーデライトである。
しかしこの長く治世の時代を護ってきた強力な体制も限界を迎えようとしていた。あの無敵かつ最強であったキャスターヴが逃れられない不治の病にかかったのである。あらゆる薬、魔術による治療、最先端の科学医療はまるで効果がなく、瞬く間に病魔はキャスターヴの全身を蝕んでいき、あの見惚れるばかりの美丈夫であった肉体は今や見る影もなくなっていた。病魔に蝕まれるほどに、職務はいつもより厳粛に正確にこなすキャスターヴの姿に、臣下たちは涙した。
そして更に頭の痛い問題があった。それはキャスターヴに世継ぎがいない事、子宝に恵まれなかったキャスターヴは長年の苦心の末ようやく、王妃マリーメイアの間に男児と女児を設けたが、絶対王家の恒久的な支配体制を心良く思わない者達のクーデターに巻き込まれ、男児と女児はその影響で行方不明となってしまった。
この行方不明というものも、キャスターヴの強い意向でこう公表しているのみであって、事実、生存は絶望的であると思われた。最悪、ふたりとも死亡している可能性の方が高い。その事件の直後、心身共に傷ついたキャスターヴに病魔の影が襲い掛かったのであった。
キャスターヴの強さ、人柄、求心力は他に類するものがなく、キャスターヴ亡き後は、絶対王家の権威は失墜し、イ・ゼルディア全土が再び混沌の世に逆戻りし大戦乱が巻き起こるのは誰の眼にも明らかであった。
深夜、キャスターヴは病魔の苦しみで眠れずに玉座に静かに座り、一人思惑する。
そこへ、円卓の騎士の一人である。勇猛なる炎獄帝、アヴァターラ・ギア。モルドレッドを操るドイルの父であるディアルド・ヴェイグランドが玉座に現れる。
「敬愛なる我が天帝様……。お身体に触ります。直ちにお休みなった方が……」
天帝キャスターヴは皮肉っぽく笑う。
「玉座とは不思議なものでね。病に犯された身にも関わらず、玉座に座ればもう一度かつての力が蘇ってくるような感覚に陥るのだよ。なあに息子と娘の事を考えていてな。フィガロとアナスタシアの事だ。この世の安寧の為に我が、民を護る剣となったというのに善性の神は何故我から最愛の子供達を奪ったのか考えていてな」
困惑し、目を伏せながらディアルドは応える。
「どこかで生きておいでなはずです…」
ディアルドを困らせてしまった事を後悔し詫びるキャスターヴ。
「すまない。ディアルド。むしろ我に話があるのは卿の方ではないのか?知っているぞ。最近の卿は妙に慌ただしく動いている」
「ハッ!!何もかもお見通しでございましたか。天帝の御名において私と炎獄帝モルドレッドの出撃の許可を頂きたく存じます!!」
「非公式の円卓の出撃とは……穏やかではないなあ…。ディアルドよ。さては例の悪魔か……?」
「混沌の闇より出でし人類に仇名す災厄と見定めました。我が剣クラレントが今までないほどに猛っています」
「ならん……。危険すぎる。アレは上位世界からの破滅の使者。今は触れてはいかんものだ。イ・ゼルディアはようやく文治の世に入った。今この地でラストアルマゲドンの続きを引き起こしてしまっていいのか?最終覚醒形態に至った魔神級は円卓は勿論、余のペンドラゴンをもってしても勝てるかどうかはわからぬ。そしてアレの裏には奴等が絡んでいる。動いてはならん」
「誠に失敬ながら、ここからは戦友、いや友として申し上げる!!キャスターヴ陛下……!!今、アサイラムのイシュタリア近辺に悪魔がいます!!闘っているのは誰だとお思いですか!?あのオルファンとプルートゥとヴィクトルです!!英雄戦争の時、俺と義兄弟の契りを結んだあいつ等です!!あのままじゃあ殺されちまう!!!キャスターヴ陛下!!!頼みます!!!!出撃許可を!!!」
眼に涙を溜めて、ひれ伏すディアルド。その様を見て眼を細め笑うも、急にせき込むキャスターヴ。
「ふふふ……ゲホッ!!ゲホッ!!評議会の決定を待たずに私情で円卓を動かすとなるとこれは事だぞ。ヴェテルギア機関とアルビレオが黙っておらん。しかしディアルドの激情に駆られるままに吐き出す友への熱き想い。我にとって最も好ましい物に違いないな」
ディアルドは更に提言する。
「恐縮です!!キャスターヴ陛下!!こたびの出撃お許しいただけたならば、魔神を屠ることと、もうひとつ我がハイクキングダムに悠久の繁栄をもたらす望外の秘策がございます!!」
「ふふふふふ……!!ディアルド。卿は我を恐れずに自分の思ったままを進言する。受け入れなければ当然の如く死を覚悟している。面白そうだ。聞かせよ」
「ははっ!!ご子息、フィガロ様、ご息女、アナスタシア様は捜索中であるものの、依然行方は知れませぬ。誠に無礼ながら殿下は病に犯されております。ここは、2代目天帝としての名代を置くのです。キャスターヴ殿下の後をその者が一時継ぎ、そしてフィガロ様、アナスタシア様が見つかり次第、正統な後継者となって頂くのです!!」
笑いをこらえるのに必死なキャスターヴ。
「ふふふふ……!!して其の者の名は……?」
胸を張って瞳を輝かせながら堂々とディアルドは名乗り出る。
「その勇気と覇気はアサイラムいやイ・ゼルディア全土を包み、この世に仁の世を創設せんとする男です。元勇者アブストゥーラにしてイシュタリアの現王である英雄戦争を制したオルファン・ジェクシアム!!キャスターヴ殿下の後を継ぐものはこの者をおいて他におりません!!オルファンこそ天下の器の持ち主です!!次代の天帝にふさわしい人物です!!」
遂に大声を出して笑ってしまうキャスターヴ。
「ははははははははははは!!!卿に面白い事を教えてやろうか?ディアルド」
きょとんとした表情をするディアルド。
「は?」
「ここだけの話。私は勇者アヴストゥ-ラの大ファンでな。幼い頃。自分は勇者アヴストゥ-ラの生まれ変わりだと信じて疑わずに剣を振るっていたんだよ。ガッカリしたんだぜ?勇者アヴストゥ-ラの生まれ変わりじゃなかった事が分かった時は。見果てぬ少年の夢というところかな。勿論彼の闘いは全てヴェーダローアで拝見させて貰っている。まさかエクスカリバーはおろか、真のエクスカリバーまで使えるとは恐れいったよ……!!あれは我がアーデライト家だけに伝わる三位一体の秘伝だぞ?」
「はっ!!だからこそここで絶対に死なせていけない男なのです!!炎獄帝の封印を即座に解いて頂きたい!!」
ディアルドの熱き懇願に心情的には答えてやりたいが、ここで円卓を動かし、悪魔と全面的に戦うリスクは大きいらしく、顧問軍師に助言を求めるキャスターヴ。
「と、我が熱き復讐の騎士ディアルド・ヴェイグランドが申しておるが、軍師殿はどうお考えなのかな?メルリヌス」
玉座の後方から眩い光が灯ったかと思うとフードを被った魔術師然とした美少年とも美少女ともとれる中世的な人物が颯爽と出てきてけたたましく笑う。
「はははははは!!ディアルド卿ったらこやつめこやつめ~!!評議会とヴェテルギア機関の承認がなければ円卓は動かせません。動かしてはなりませんとも!!ええはい!!そもそもハイクキングダムは人類の繁栄と存在を護るために創設された理想実現都市。そこらへんの悪魔や天使を相手にするならまだしも魔神級を全面的に相手にするには準備がまだまだ足りません。今は決してその時ではないと!!ええはい!!」
憤りながらハイクキングダムの軍師メルリヌスにくってかかるディアルド。
「ならば悪魔の今まさに犠牲になっている人々は見殺しか!!!なんための人類存続理念なのか!!ここで力を振るわなければ円卓の騎士としての我が名が廃る!!」
メルリヌスは口早に返答する。
「あの魔神を刺激しすぎると、恐らくは先のラストアルマゲドンで封印された悪魔や天使が目覚め始めるきっかけになりかねません。いくらペンドラゴンや円卓が対悪魔、天使、超常の神々と相対する為に作られたメタルスレイヴを遥かに超えた機動兵器。アヴァターラ・ギアだとしても、魔神級の最終覚醒かつ最終形態に至った戦闘力はいまだ未知数。恐らく円卓でも歯が立たないかと。そして私の独断と偏見なのですがあの悪魔いささか妙です。普通の魔神とは異なる種の可能性があります」
悔しさに歯ぎしりをするディアルド。キャスターヴは興味本位にメルリヌスに問いかける。
「我がペンドラゴンならどうだ?メルリヌス勝算を教えろ」
メルリヌスは恐る恐る応える。
「キャスターヴ殿下の乗る覚醒形態のプロヴィディンス・ペンドラゴンなら最終形態に進化した魔神級でも勝算は約65、5%……」
思わず少年のような笑顔を浮かべるキャスターヴ。
「ほう!!悪くないないじゃないか!!燃える数字だ。流石我とペンドラゴン。向かう所敵なしだが、流石に古の魔神相手には苦戦は必至か。胸躍る戦いになりそうだ」
闘いたくてウズウズしているキャスターヴ。慌てて訂正するメルリヌス。
「で……殿下~~!!この数値は殿下がご健勝だった頃の数値です。病に犯された殿下のお身体であれば覚醒形態どころかにまともにペンドラゴンを起動できるかどうか……」
それを聞いて物凄く悲しそうないじけた顔をするキャスターヴ。しかし次の瞬間意を決した表情をし
「うむ……。病に侵されたこの身が憎いよ……。それはそうとして!!ディアルド!!我が許す。行って来い!!オルファンたちを救ってこい!!!しっかりな!!!」
メルリヌスはディアルドを制止する。
「ななななななりません!!はぐれ魔神に干渉し、ラストアルマゲドンを巻き起こし破滅をもたらす時を早めてはいけません!!奴等を人類が相手にするにはまだ……ディアルド卿!!戻ってください!!」
ディアルドは深々と頭を下げ。キャスターヴに礼を言ってモルドレッドが封印されし円卓の格納庫へと走る。追いかけようとするメルリヌスを
ぐいと引き留めるキャスターヴ。
「案ずるな軍師殿。必要とあれば我が直接評議会やぺテルギア機関に大義を問いにいく。はぐれとはいえ、この世を喰い尽くさんとする魔神。放っておけんよ」
ハイクキングダムの政治や基礎システムの中枢は、ハイクキングダム評議会の、称号を持っている特別議員たちと古来から、神々が住まう上位世界との交信を主とするヴェテルギア機関が担っていた。天帝キャスターヴと円卓の騎士達をハイクキングダムの表の支配者かつ執行者とすると、影でその権勢を振るっているのが評議会とヴェテルギア機関であった。
イシュタリアの元老院の六賢者達が組織する影の秘密結社アークレギオンの前身は何を隠そうこのヴェテルギア機関からの派生組織である。
メルリヌスは物憂げにキャスターヴに問いかける。
「評議会とヴェテルギア機関を敵に回したらただでは済みませんよ……」
キャスターヴはあっけらかんと笑う。
「時には現場の判断が正しい時もあるという事さ。いざという時は我が名に於いて勅命を発する。それで十分であろう?そして何より奴等を敵に回しても渡り合えるように軍師殿を傍に置いているのだよ。なあ?最果ての魔術師殿?その気になれば貴公とアンブローズは無敵であろう?そなたの天才的な軍略とそなたしか扱えぬ幻想魔術があれば奴等など実はとるに足らんのではないか?」
メルリヌスは苦笑いをする。
「じょ冗談が過ぎます……。なんか内輪揉めで本当に死んじゃいそうなんですが……。天帝さまには敵いませんなあ」
子供のように瞳を輝かせ、息を弾ませながら格納庫にあるモルドレッドを求め走るディアルド。
「(また乗れる!!!モルドレッドに乗れる!!!俺の魂が、身体が猛っている!!!)」
アヴァターラ・ギア。それぞれが50m~200m級の巨大機動兵器で、メタルスレイヴ及び、ハイメタルスレイヴとはそもそも規格そのものがまるで違う別物である。イ・ゼルディア史におけるアヴァターラ・ギアの初出は、闘神大戦の頃、鋼鉄の闘神フェイタル・ロウが乗ったと言われるインフィ二ティ・ヴァ―ミリオンである。ただでさえ生身でも手がつけられない桁違いの強さを誇るフェイタル・ロウが超巨大な機動兵器インフィニティ・ヴァ―ミリオンと融合することで破壊神に匹敵する異次元の強さで暴れ回ったという伝説がある。
それもそのはず。アヴァターラ・ギアは悪魔や天使の身体の一部を素材として直接加工して作っているからだ。まさに人間が悪魔や天使に対抗する為に作られた機動兵器と呼んでも過言ではない。インフィ二ティ・ヴァ―ミリオンを祖とし、様々な系譜を経て、イ・ゼルディア全域の王である天帝のみが搭乗できる最強の機動兵器プロヴィディンス・ペンドラゴン。そしてそのペンドラゴンをモデルに試作量産型として作られたのが円卓の騎士である。どちらも世界のあらゆる厄災に立ち向かう為に作れたもので、勇者アヴストゥ-ラとは全く別系統の人類を存続させる確かな信念と超常の力がここにも脈々と息づいていたのである。
モルドレットのコクピットに飛び乗るディアルド。
騎士の心技体を如実に表現、体現する為に、コクピットはダイレクトリンクモーションシステムが採用されている。あらゆる機器がディアルドの肉体に突き刺さり、鮮血が飛び散る。
「ぐぼああ!!!」
しかし滴り落ちる鮮血にも眼もくれず、笑みを浮かべるディアルド。ディアルドの闘気が爆発する。
「さあ!!目覚めよ!!復讐の炎獄帝!!モルドレッドオオオオオオオオ!!!!融合!!!!!」
モルドレットの眼光が眩く光り、機動する。
「円卓の騎士、ディアルド・ヴェイグランド!! モルドレッド出撃するぞ!!!!ハッチ開けろオオオオ!!!」
しかし、一向にカタパルトのハッチは開かなかった。
訝し気に軍師メルリヌウスに問いかけるキャスターヴ。
「軍師殿?これは一体どういう事かな?」
「ヴェテルギア機関からの強制停止命令です…。アルビレオ殿は耳が早い。円卓は我が国家機密なので私情で動かしたとなると……」
「ふふん。悪魔を倒し友を想いその命を救おうとするディアルドの義憤は」
「はい?」
「ただひたすらに気高く美しい。ディアルドはとまらんよ」
ディアルドの怒号が響く。
「笑止!!我を阻むものは最早なし!!!」
モルドレットの剛腕がハッチをぶち抜き強引にこじ開けて、凄まじい勢いで飛び去っていった。
無邪気な笑顔で笑いかけるキャスターヴ。
「な?」
その屈託な笑顔に困惑した表情を浮かべるメルリヌス。
「な?じゃありませんよ!!うわわわわわ。今後が大変だ~~あれ?今度は浮かない顔をして天帝様一体どうされたんですか?」
「うん……ちょっとな。オルファンとやらに嫉妬してなあ……。ディアルドのあんな表情は見たことなくてな。普段から余り他人に興味を示すことがないディアルドにあんなに慕われるなんてオルファン。羨ましい奴よ。実際はどんな男なんだろうか?会ってみたくはあるなあ」
機動兵器の常識を超えた恐るべきスピードで、悪魔とオルファンたちの決戦の孤島に迫るディアルドとモルドレッド。
「ふはははははははは!!!悪魔何するものぞ!!!待ってろよ!!オルファン!!プルートゥ!!ヴィクトル!!!今助けにいくからな!!!!!」
瞬く間にモルドレッドは流星のような速度で雲間に消えていった。
つづく
読んでくださってありがとうございました!!なおディアボロスは不定期更新です。




