0-53話 第一次降魔事変 その19 理想と現実
体調が非常に悪いです。しかし小説は更新する!!何もかも嫌になって逃げだして長期休載したあの頃と比べて精神的に強くなっている事を証明したい気持ちがあります。でも一方でのんびり不定期更新でもいいんじゃないかなあとも思っています。どちらにせよ。不人気で打ち切りがないのはネット小説のありがたいところです。自分のペースで更新して参りましょう。
涙ぐみながらオルファンは過去を回想していた。
「うんうん……あの頃は良かったなあ……。勇者としてみんなと旅してた時が一番楽しかったよなあ。俺の青春ってやつだねえ……。ああもう二度と戻ってこない懐かしきあの日々…」
感慨深そうにしているオルファンに突っ込みを入れるグレン。
「なんか……、お前の回想以外にも余計なもんが混じってた気がするが……、まあ……、いいとするか」
その突っ込みで回想から我に返るオルファン。キッとグレンのビジョンを睨みつけながら。
「そうだった!!俺の回想でもあったように!!勇者像とお前の顔が全然違いすぎるんじゃい!!!それで初代アヴストゥ-ラを名乗るのは流石に無理があるってばよ!!」
ざわつく歴代アヴストゥ-ラ陣営。アルフォンスとフィオナがグレンに問いかける。
「た、確かに!!初代様を祀ったディアノート大聖堂の勇者像は僕も見たことがあります!!初代様とは似ても似つかぬ出来でした。あれは一体誰をモチーフにしたものだったのでしょう?」
「グレンさま!!オルファンくんが不審がっているじゃありませんか。これは一体どういう事なのでしょう?説明を求めます!!」
グレンは苦い顔で頭を掻きながら
「(バッチリ思い出したぜ。あっちゃあ。ありゃあ流石にやりすぎたあ……。あまりのモテたさについ像を美化しすぎ捏造しすぎてしもうた……。若気の至りってやつだわ)」
「「そこんとこどーなの!?どーなの!?」」
オルファンと他の勇者達に詰め寄られる、腕組みをしながら眼を閉じて考え込むグレン。
「むむむむむむ……!!…」
「むむむむむじゃなくてはっきり言え!!!あれはどーいう事なんだよ!?」
意を決して眼を見開いて叫ぶグレン。
「うるせえ!!!モ テ た か っ た ん だ よ!!!一回像を美化したり捏造すると、なんかもう止まらなくなるんだよ!!!オルファンよ……。現実はいつも過酷で厳しいもんなんだ。理想だけを追うのではなく、現実を知り、それを乗り越える事こそが勇者には肝要なんだぜ?」
グレンのなんともくだらない主張と叫びにオルファンと他の勇者はたまらず絶句する。辺りがしーーーんと静まり返る。
オルファンが苦虫を噛み潰したような顔で、グレンに問いかける。
「んじゃあ。実物とは異なる嘘の像を建てたって事ォ!?しかも動機が女にモテたいだけって……!!なんて不純な野郎だ!!勇者アヴストゥ-ラを騙る偽物め!!そこに直れ!!俺の鉄拳をお見舞いしてやる!!」
更に疑いの眼を向けいきりたつオルファンを叱咤するグレン。
「馬鹿者ォォォォォォォォォォォ!!!動機なんて不純な方が人はより強くなれるもんなのさ。そして勇者像なんてプロパガンダはな。多少ハッタリをぶちかました方が流行るってもんなんだよ。大衆は常に浪漫を求めている。それに応えるのがエンターテイナーってもんでしょうが君ィィィィィィィ!!!!」
懸命に言い返すオルファン。
「言うに事欠いて開き直りやがって!!もう絶対に信用しねー!!」
「じゃあ何かオルファンよ。お前は勇者である前にひとりの男じゃないのか?女の子に本当にモテたくないのか!?そういうの一切無視して100%善意で世界を救ってみせてみるって今!!ここで!!言ってごらんよ!?」
グレンの叱咤を聞くなり、両手の人差し指を合わせて急にしおらしくなるオルファン。
「ううう……そりは……」
オルファンのその姿を見たグレンは得意げに語る。
「ほら見ろ!!な~んだ~よ!!!お前だってモテたいんじゃん!?そうだ。それが男の子ってもんだ。そしてそれでこそ勇者の資質ありだ。世界を救い。苦しんでる人々を助ける。そして女の子にモテまくる。何にも悪い事はしちゃいねえ!!勇者の使命と男の浪漫は両立できるのさ。つうかむしろそれが自然な姿じゃね?この期に及んで何を恥ずかしがっているんだ。心オープンよ?オルファン」
「ううう……なんか騙されてる気がする……。だ……ダメだダメだ!!依然信用できねー!!あんたやっぱり新手の魔術霊感詐欺商法の業者だろ!?高価な壺とか買いませんのでお引き取りを!!つうか今忙しいんだよ!!帰れ!!かえーーーれーー!!ハイ!!かーえーれー!!」
「ぬうううう。ここへきて帰れコールの応酬か……。これだけ言っても信じねーなんて。なんて頑固ちゃんなんだ。人を信じる事を忘れてしまった悲しい子め」
そこでその押し問答に業を煮やした女海賊勇者ルイジアナが割って入る。
「あーもう!!初代様がまくしたてるから、オルファンの坊やが不審がってるじゃないのさ!!いいかい?こっちのケチな浪人が2代目アヴストゥ-ラのオウガ、んでこっちの武闘派の貧乏皇帝が3代目のヴィルフレア、でこっちのチャラい能天気剣士が4代目のミューラー。んで5代目がアタシで、6代目が、最近スマホにハマり始めたジ=パング一の忍者火影ジライヤ。オルファン。こいつらを見た率直な感想を聞かせてくれるかい?」
オルファンはルイジアナに紹介された勇者達のビジョンをマジマジと見る。そして圧倒される。オルファンは勇者の力を捨てた後に英雄戦争という戦いに身を投じた経験がある。栄光のアルクレヴァレン解放軍。オルファンはその旗頭であり、頭目であり君主でもあった。なので実際にさまざまな英雄達と好敵手として剣を直に交えた事もあるし、一軍を預かる司令官としてさまざま英雄達を値踏み検分し、引き抜いてきた経験もある。なのでオルファンの将を見る目は常人より遥かに磨き抜かれていたのだ。
歴代の勇者達の威容は、オルファンが今まで遭遇してきたどんな英雄よりも遥かに威厳があり、迫力があった。歴戦の戦士という言葉ではとても足りない風格が備わっていたのだ。オルファンは圧倒されしどろもどろになりながら口を開く。
「すげえ……。分かる……。分かるぞ……。そこがあの世で天界っつーことは信用できないが、遥か遠くにいるんだろうな。闘気は感じられない。だが、その威風。威容。群を抜いてる。俺が今まで出会ってきた英雄・豪傑を遥かに上回っている……。歴戦の猛者とかそういう言葉じゃ言い表せないスケール感を感じる。まるで何度も世界を救ってきたような……。そして俺と同じものを感じる……。本当にあんたらが、先代の勇者アヴストゥ-ラだってのか!!」
ようやくオルファンから求めていた回答を引き出せて、安堵のため息を吐き出すルイジアナ。
「はーーーやっと信じてくれたかい?よかったよかった。よくお聞き。今あんたが対峙している悪魔ってやつは、あんたが自分で思っている以上にヤバい相手なのさ。本来はアタシらが出ていくべきなんだけどさ。既に死んでて肉体がないのよ。魂だけの身になっちまってるからこっちは色々めんどくさい誓約があるのさ。で、ここの番人でもある天使達がアタシらを見張ってるときたもんだ。今現在の勇者アヴストゥ-ラと過去の先代の勇者アヴストゥ-ラたちが力を合わせてあの化け物をぶっ倒そうってわけ。今からアタシらの力をあんたに送る。でも、さっきも言ったように天界、ヴァルハラの園は、色々制約があってあんたに全て力を送るのにどうしても時間がかかっちまう。それまで保たせな!!できるかい?ぼうや?」
オルファンはルイジアナの言葉に力強く頷く。
「合点でさあ!!姉さん!!っと言いたいところだが……。なんかあんたにぼうやって呼ばれると、懐かしい感じがするよ(ブラッドベリー姐さん元気かなあ……)ていうかさ。今まで見てたんなら姉さん。人が悪いぜ?俺の終末魔導の力は自慢じゃねえが半端じゃねえ。何せ、属性は禁断の対消滅だ。アレを喰らったらどんな相手もひとたまりもねえ。折角の申し出だが、あんたらの力はいらねえ。気持ちだけありがたく受け取っておくよ。このまま俺一人の力でぶっ飛ばす!!」
眼帯をした浪人風のオウガがオルファンを叱咤する。
「それが未熟というのだ。莫迦が。お前は一体あの悪魔との闘いで何を学んだ?あの悪魔の今の戦力が奴の全力とでも?お前が戦った相手はほんの魔神の一部の力を発揮したのに過ぎない。徐々に覚醒が進み、やがて手に負えない世界を滅ぼす災厄そのものに成長していく。オルファンとかいう小僧よ。その実感を感じられん時点でお前は勇者いや戦士失格だ。さきほどのお前とあの悪魔の闘いは俺から言わせれば、奴に力の使い方を覚えさせる為の手助けをしているにすぎない。今のお前に圧倒的に足りないのは危機感だ。お前はまだ自分が本当に死なないとでも思っているのか?」
「な……何を藪から棒に……!!現に圧倒的だったろうが!!何も心配いらねーって……。つうかさっきから悪魔とか天使とか……さっぱり意味がわからねー!!そんなもんがこの世に実在するとでもいうのか!?」
ヴィルフレアがオルファンの問いに戸惑いながらも応える。
「信じられんよなあ?未だに俺も信じられん。なんでも上位世界を司る真元素記号を象った存在らしい。意味はよくわからんが、俺らの世界の物質世界の上に、上位の精神概念世界があり。そこで唯一の神と、多神の神々、天使や悪魔なんてふざけたもんが血で血で洗う争い合いをしてて、それに人間が巻き込まれた形になってなあ。杓子定規の進化を促す存在と、想定外の進化を成し遂げる種、そしてそれを阻むべき者……。まあその話はおいおいするとして今は勇者の血を秘めし少年。この窮地をいかに脱するべきかだな。おじさんのとびきりの闘気を送ってやるからそこで待ってなさい。限界を越えた強制爆速レベルアップってやつだ。痺れるぞ~!!」
ヴィルフレアの言っている言葉が全く理解できないオルファン。
「何を言ってるかさっぱりわからねえ。言葉通りにはとてもじゃねえが鵜呑みにできねえよ……」
ヴィルフレアも頭を掻きながら答える。
「だーから言ったろ?俺も未だに信じられねえって。だが、オルファン。勇者アヴストゥ-ラとしてお前が最後の希望であるのには間違いない。生還しろ。きっちり務めを果たして生きて帰って来い」
「ああ……わかったよ……。とりあえずこの戦いを切り抜け……ってアレ……何だよ??」
ヴァルハラの園のすみっこで体操座りで、ひとりいじけているグレンがいた。それを指差すオルファン。
「へへへっ。いーーーんだ。いーーーんだ。俺だけ勇者っぽくないですよーだ!!威厳なんかないでーーすよーーー!!俺をのけ者にしてお前らで勝手に勇者ごっこでもやってりゃいいのさ。ふん!!」
半泣きになってひとりクダを巻いている哀れな初代勇者。そこにフィオナが来て、グレンの頭を優しく撫でて慰めようとする。
「はーーい。グレンさま~~。泣かないでくださいね~。意見がすれ違うのはよくある事で~~す。よしよしよしよし」
フィオナの豊満な胸元に泣きつくグレン。
「びえええええええええええええ!!フィオナちゃーーーーん!!屈辱極まりないよーーーー!!」
ひとしきり、フィオナの胸で甘えた後、地べたに寝っ転がり、ぐねぐねと身体を動かしながら大声で愚痴を言い続けるグレン。
「あああああああああああああああ!!もうやる気失せたああああああああああああ!!!もう何もかもどうでもいいかもしんねええええええええええええ!!!」
オルファンはその勇者にあるまじきグレンの姿に絶句する。
「あんたらが先代の勇者ってのは分かったんだが……、あの不届き者は一体……なに?何者なの??」
オルファンの素朴な問いかけに対してルイジアナは豪快に笑う。
「あっはっはっはっはっはっは!!!あんたが信じられないのも無理はないねえ。初代様が一番世間一般の勇者のイメージとはかけ離れているからねえ。でもね。オルファンのぼうや。初代様はねえ。要は強すぎるのさ。この世界の常識をいともかんたんに捻じ曲げてしまう。チートの塊。人類の、いや、英雄の頂点に君臨する勇者の突然変異種。この人が本気になると悪魔や天使。いやさ神々だって道を開ける。泣く子も黙る力の根源であり、その象徴。それが絶対勇者王。初代アヴストゥ-ラ・グレン・ニルヴァーナなのさ。あの究極の闘神、フェイタル・ロウとサシで殴り合えるのもこの人だけだよ。こんな浮浪者みたいな恰好をしてるのはねえ。余りにも強すぎて神々もろとも世界を滅ぼしかねないってんで、伝説の勇者の武具と天聖機をみーんな封印されて隠されちまったのさ。人としては尊敬できないかもしれないが、こと強さに関してはこの人の右に出るものはいないよ!!」
オルファンはぐねぐねと寝そべりながらいじけているグレンに目をやって青い顔で一言。
「……とてもそうは思えねえよ……」
更に大笑いをするルイジアナ。
「ぷふふふ、あっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!正直でよろしい!!あんたと初代様は顔も人となりもそっくりだ!!!!もしかすると初代様の遺伝子を最も色濃く受け継いだのがオルファン。あんたかもね!!」
「「冗談じゃねえ!!!!!」」
オルファンとグレン2人とも同時に全否定する。その様子がおかしかったのかまた大笑いをするルイジアナ。
一方、現実世界では悪魔の巨大な心臓がビクンビクンと大きく脈を打って、姿形が変容する。すると、元の姿に戻っていき、更に巨大かつ凶悪な悪魔の恐ろしい容貌に変化した。
グゥゥゥゥゥゥウウウウウウアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
グレンが立ち上がってオルファンに強い口調で告げる。
「だああああああああああ!!!無駄話をして千載一遇のチャンスをふいにしちまうとは勿体ねえ!!ちっ!!いいかオルファン、俺達の力がお前の身体と魂に注がれるまでなんとか耐えろ!!いいな!!時間を稼げ!!逃げ回れ!!まともにやりあおうとするな!!!」
更に更に巨大になっておぞましく変貌していく悪魔の姿。それを目の当たりにしたオルファンは恐怖で足がすくみ、表情が凍り付く。
「ちょっと待て……!!!聞いてないぜ……!!アレが今まで俺が戦った悪魔なのかよ??さっきと闘気と魔力の桁が……違う……!!どんどん膨れ上がっていって…」
グレンは絶えずオルファンに言葉を投げかける。
「いいか!!逃げるんだ!!!まともに戦ったらお前が死ぬ!!!オルファン!!!オルファン聞いてるのか!!?」
オウガがグレンを制する。
「親父。無駄だ。オルファンの小僧。怯えて切ってやがる」
オルファンの戦意が喪失していく。この窮地果たして本当に乗り越えられるのか?
つづく
読んで下さってありがとうございました。




