0-54話 第一次降魔事変 その20 王の剣と槍
はーい。更新でーす。ぼちぼち話が一気に進む感じなので、これから目が離せない展開になるはずです。正直早く、本命である一番書きたいエピソード2に突入したいんですが、だからこそ苦しいところ、書きたくないところをじっくりできるだけ面白く丁寧に書くという事を心がけたいです。あとブクマが増えてますね!!こんなマイナーな作品をブクマしてくれて本当にありがとうございます!!これからも頑張ります!!
オルファンのソルレリアウス、プルートゥのドラウグ二ィ―ル、そしてヴィクトルのダークナイトメアは復活し更に凶悪な姿に変貌していく、悪魔を後退りながら見上げている。
ヴィクトルがオルファンに問いかける。
「オルファン!!奴をやってはいない!!やってはいないぞ!!それどころか更に、更に……くう……!!悪夢かこれは!?」
プルートゥが奥歯を噛みしめながら呟く。
「ソフィア……。レオ……。シーザー……。見守っていてくれ……。この闘い……!!私の命を捨てねばならん時が近づいてきたようだ……!!」
ガウディが半狂乱になりながら喚き散らす。
「確かに致命傷であった!!!だのに何故!!!??バカでかい心臓のような姿になったと思ったら更に強大かつ凶悪な恐ろしい姿に進化しよった!!!いや!!!いやいやいや!!!!蠢いておる……!!今も……!!この瞬間も……!!元生物学者の視点から見て、驚愕、驚嘆に値して、最早言葉はない!!!悪魔とは高次元生命体に他ならない!!!上位世界の使者……まさか……六賢者の言っていたことは本当だったとは……甘かった……!!全ては見積もりが甘かったんじゃ……!!」
オルファンはソルレリアウスのコクピットの中で今も尚、先ほど悪魔とは似てもつかぬ程、凶悪な姿に変貌していく様子に恐れをなしてガタガタと震えている。グレンを始め、歴代の先代勇者アヴストゥ-ラ達が言っている事はどうやらあながち全くの絵空事というわけではないらしい。
なにより、その証拠に、空を覆い尽くすような圧倒的な悪魔の闘気、禍々しいほど膨れ上がっていくこの魔力は最早冗談では済まされない。
オルファンは絶望に表情を曇らせる。
「こ……殺される……!!何か……、何か次の手を打たねえと……」
心ここに非ずといった様子でうろたえるオルファンを激しく叱咤するグレン。
「しっかりしやがれ!!!!お前は俺の血を引いてんだろ!!!」
いつになくグレンの真剣な面持ちから発される叱咤の声は、オルファンの闘志を蘇らせた。
「ハッ!!すまねえ……。みっともないところを見せちまった……!!少々腑抜けてたようだ。だがよお。こんな展開は聞いてないぜ……!?初代様とやら……!!」
グレンが頭を掻きながらオルファンに詫びるように言う。
「まあよ。想定外も想定外って奴だ。お前にゃ面倒をかけて済まねえと思ってる。オルファンよ。お前の勇者としての資質はピカイチだ。俺が本気で鍛えてやれば随一の腕利きになる事請け合いだ。史上最強とやらも夢じゃねえ。だが、今のお前がその魔神をまともに相手にすんのはざっと100年ははええんだ。いいか?奴はお前の終末魔導のダメージを半分はそのまま受けて、もう半分は体内にエネルギーとして吸収している。覚醒段階が進んでいたとしてもそのダメージはそのまま残っているし、見ろよ。奴め。さっきから大きくは動いていねえ。膨大なエネルギーを吸収して図体ばかりデカくなったものの、その意識は追いついていないかもしれない。窮地の中の好機とも言える。奴の動きをそのまま封じる術はあるか?」
オルファンはグレンに応える。
「ないことたあねえが……、正直、上手くいくかどうかわからねえ。悪魔の魔力のポテンシャルの底が全く見えなくなった……!ようやく思い知ったぜ……!!桁違いの相手と殴り合ってるってよ!!」
グレンは苦々しくオルファンに伝える。
「やってみる価値はあんだろ?上手くいけばお慰みってやつだな。言いたかねえが、全く歯が立たないようであれば、一時撤退、イシュタリアの王都を背に籠城に持ち込むという策も視野に入れろ。時間を稼ぐには最も効果的な策だ」
オルファンがグレンの提案に憤る。
「ふざけてんのか!?初代様よ?俺は、俺達はあのデカブツ野郎をイシュタリアに行かせない為にこの身を挺して進路を防いでいるのよ。王である俺がここで下がっちまったら誰がイシュタリアの民を護るんだ!?」
「ふん。小僧が言うじゃねえか。志は買ってやるが、やぶれかぶれで凌げる相手でもない。代わりの策はあるんだろうな?」
「まあよ。ただでは死なねえ。俺が勇者の力を捨てて新たに得た力がある。それが精霊王の力さ。精霊界の99の試練を乗り越えてこの力を得た。この力を得た時に不思議に思っていた。明らかに俺が出会ってきた今までの敵や悪意に対して想定されたものではなかったんだ。だから使わなかった今まで。もっと大きな何かに対して抑止力としてこの力はそこにあった。今ならわかる。アイツだ。あの悪魔だ。アイツを倒すために存在する力だったんだ……!!今こそこの力の封印を解いてやる……!!」
「オーケー!!オーケー!!それが正真正銘最後のお前の奥の手ってやつだな。恐れ入ったぜ。八百万の精霊を手足のように使役する精霊王の力。話には聞いていたし、その力を宿した者と昔戦った事もある。勇者の系譜とはまるで対極、いやさ別次元の力を俺の子孫が持つとは数奇な運命だな。だがこの期に及んでまだまともな選択肢があるのはいいことだ。往生際の悪い事で。ふふふふふふ」
「いきなり何だよ?突然笑いやがって、気持ち悪ィな。俺おかしなこと言ったか?」
「いやなに、昔を思い出してよ。俺には昔何をするのも一緒の相棒がいてな。フェイタル・ロウって言ってな。自分で言うのもなんだが、俺も相当に破天荒なタイプだが、ロウは更に屈託がなくすべてにおいてぶっ飛んでてな。俺もつええが、ロウも半端じゃなく強かった。俺以上につええ奴がいる事にまずビビったし、何物にも従わないそいつの圧倒的な強さと自由奔放さに憧れていた。俺とそいつは天使や悪魔連中相手に派手に暴れ回ってて実の所負け知らずでよ。あいつとバカやってるあの頃が最高に楽しかったぜ……!!オルファン。お前はなんとなくロウに似てるよ。お前と話してるとなんつーかこう、懐かしさと切なさとあの頃の熱い思いが蘇ってくんだよ。これ何だと思う?」
「知らねーーーよ!!でもフェイタル・ロウって、人形劇の大喰らいの剛腕ロウの事?絵本にもなったアレ?闘神フェイタル・ロウの大冒険。うちの娘のラピスが大好きで大ファンだぞ。あいつがちっちゃい頃俺もユリーちゃんも死ぬほど絵本読まされて大変だったわ。フェイタル・ロウって闘神大戦の立役者で大英雄だったらしいが、それを立証する確固たる資料がなさ過ぎて、実在する人物じゃないって結論だったはずだけど?」
「はははははは!!勇者アヴストゥ-ラ伝説だって似たようなもんだろ?実際に俺もお前も実在したが、日々あくせくと働き生活していく人々にとっちゃあやっぱりどこまでいっても御伽話なのさ。ロウは確かに実在している。今もな」
「今もって……」
「まあその話はおいおい酒でも飲みながらしようや?」
「あんた死んでんだろうが!!」
「まあいいや。んでその精霊王の力、どんなもんかさっそく拝みてえもんだ。勿体つけてねーで早いとこやっちまえよ!!あのボケ魔神がのたうちまわるところが見てえんだ」
「それがよ……。聞いてくれ初代様……。絶大な魔力を集中させ、物質界と精霊界のチャンネルを繋ぎ、精霊界の巫女ヴェスティアードと交信して799の精霊の契約を一括更新しなくちゃいけねえ。無論その間は俺とソルレリアスは無防備になる……」
「だあああああ!!ちょっと待てよ?魔神の覚醒は進んでいるんだぜ?今まさに襲いかかってこようとしているさなかだ!そんな中無防備な姿を晒してみろ!!あっという間にとって喰われちまあ!!なんだよ!!期待したのにオルファン!!お前にゃあがっかりだぜ!!そんなんじゃあ絵にかいた餠だわ!!」
「わかってるよ!!!俺はちゃんと餠は美味しく喰う主義なんだよ!!初代様だが元祖様だが知らねえがちっと黙っててくんねえか!?あんたに喚かれると思考が萎びてしょうがねえんだ!!」
「ちっ!!こうしていてもどうにもなんねえか。いいか。もうしばらくだ。もうしばらく保たせれば俺達の力を送って、お前を真の勇者アブストゥ-ラに覚醒してやれる。それまで何としても生き延びるんだ!!」
いまだ、進化を続け肉体がおぞましく変容していく悪魔を横目に、オルファンのソルレリアスが一歩前に出て、プルートゥ、ヴィクトル、ガウディに話しかける。
「さあてと作戦会議ってやつに洒落こもうか?兄弟たちよ。テーマはこの絶望的な状況をどうやってひっくり返すか?」
プルートゥがオルファンに苦々しい表情を浮かべながら提言する。
「王よ。無念かとは思いますが……、これほどまでに悪魔の戦力と我々の戦力に決定的な差があるとは想定外でした。この戦いは悪魔の真の力を計るという意味では一定の成果を上げたと言えましょう。ここは一時撤退、悪魔の襲撃前にイシュタリアの民を早急に避難させ、被害を最小限に抑え、別の拠点を設け、次の攻勢に繋ぐ、短期決戦ではなくあくまで長期持久戦に舵を切るべきなのかもしれません。苦渋の決断でしょうが、これが今の所最上の策かと……」
オルファンがプルートゥの冷静な献策を素直に称賛する。
「冷静になったな。よく言ったぞプルートゥ。最愛の家族を悪魔に目の前で殺されたお前こそが今ここで真っ先に悪魔を打ち滅ぼしたい気持ちで一杯だろうに……」
プルートゥは眼を伏せて悔しさを滲ませながら言う。
「全てはイシュタリアの大義の為でございます……。英雄戦争で流した血を決して無駄にはできませぬ。オルファン王。王さえご存命であればいかようなりともイシュタリアは巻きかえせます!!王よ。今こそご決断を!」
プルートゥの進言に憤りながら割って入るヴィクトル。
「正気か!?プルートゥ!?何を弱気な事を言っている!?確かに悪魔は以前に比べ遥かに力を増したようにも見える。だが、明らかに先程のダメージが残っている!!手負いも手負いだ!!その証拠に苦悶の表情を浮かべ、未だに襲い掛かってこないではないか!?あのダメージは俺達の奥義とオルファンの終末魔導の威力を完全に吸収し我がものにできなかったのだ!!逆に言えばいまこそ勝機だ!!この機を逃せば全て後手に回ってしまう!!思い出して見ろ!!やっとこの悪魔の居所を捉えたのだ!!ここまで来るのにどれほどの労力を費やしたか!!ひとたび、悪魔が行方をくらませば、最新のレーダーだって奴の居場所を全く検知できなくなる!!その間何人もの罪もない人々があの悪魔に殺され無惨にも喰われてしまうんだぞ!!そんなことは俺は断じて我慢ならん!!今ここでなんとしても仕留めなければ!!」
ヴィクトルの怒声に怯えながらも、恐る恐る無線でオルファンに意見するガウディ。
「……それになあ。今しがた特殊な電波通信周波数を検知した。ごく一部の優れた科学者や特権階級の権力者にしか使用を許されてない極秘回線じゃ……。六賢者じゃ……。イシュタリアの六賢者。そしてその闇の結社、アークエネミー。奴等、我らと悪魔の闘いを密かにモニタリングしとる……。イシュタリアのいやさ世界の危機だというのに奴等は援軍も寄越さず高みの見物か……。腐っておるのォ……。恐らく悪魔の力のデータを採取し、ゆくゆくはその力を自分たちの意のままに利用しようというのじゃろう。共倒れの漁夫の利を狙っておるのかもしれん。しかし見てわからんか。悪魔の力なんざ人間がどうこうできるレベルを遥かに超えとる。それにイシュタリアの民に危機を知らせるのも六賢者の例の忌々しい、記憶改竄装置シェスターの妨害がある。世論や民意は奴等の思うままじゃ。状況はどっちにしろ厳しいのう……。ぬううう!!まだまだ悪魔の力は膨れ上がっていくぞい!!一体奴の正体は何なんじゃ……!!皆目見当がつかん!!」
オルファンはそれぞれの意見を聞いて覚悟を決める。
「引くも地獄……。闘うも地獄か……。ならば答えはひとつ……。俺もまだ半信半疑なんだがよ。悪魔ってのは昔、人間と悪魔と天使と神々の大きな戦争があったらしくて、その生き残りのくたばりぞこないの魔神って話らしいぜ。全く迷惑極まりないって話だよなあ」
ガウディたちは目を丸くしてオルファンに聞き返す。
「そ……それはまことか!?オルファン!?一体誰から聞いた!?」
オルファンは皮肉っぽく笑いながら答える。
「初代勇者アヴストゥ-ラ。信じられるか?こんな話」
ガウディはあまりの突拍子のない内容に思わずせき込む。
「はあ!?オルファン!!それは一体どういう!?」
「まあまあいいじゃねえか。その話はあいつをぶっ倒した後でゆっくりとすることにしよう。いいか?プルートゥには悪いが、一時撤退の策はなしだ。ここはヴィクトルの強硬策を取る。ここで奴を仕留める。そして、俺にも秘策がある。正真正銘、最後の奥の手だ。精霊王の力を解放する。精霊王の力の封印を解くのに、しばらく魔力を集中させる必要があり、その間俺は全くの無防備になる。そこでだ。酷な話なのは承知してるが、プルートゥ。ヴィクトル。その間、悪魔の動きを推しとどめてくれるか!?」
プルートゥとヴィクトルは少年のような屈託ない笑みで応える。
「お任せあれ!!我が王よ!!大義の為にこの身いくらでも捧げましょう!!イシュタリアに栄光あれ!!」
「いよいよ!!あの力を使うんだな!?オルファン!!いや、我が王よ!!聞きしに勝る精霊王の圧倒的な力、この眼でしかと見届けさせて貰いますぞ!!その果てに我らの勝利があるのであればこの命全く以って惜しくはない!!」
生きるか死ぬかのこの期に及んでなんという心地よい返答だろうか。オルファンの眼から一筋の涙が流れる。
「すまない……。お前たちには苦労をかける。この闘いが終わったらさ。めい一杯飲もうな!!五大要素全体補助魔術全能力向上!!!」
プルートゥのドラウグ二ィ―ルとヴィクトルのダークナイトメアにオルファンの補助魔術が発揮される。莫大な闘志と勇気がプルートゥとヴィクトルの体内に駆けめげる。
オルファンは人なつこっく笑いながら
「せめてもの餞別だ。しっかりやってこい。死ぬなよ。兄弟」
プルートゥとヴィクトルもオルファンに笑いかける。この3人は出会った頃のあの日のままである。親友であり、義兄弟のまま、大義を為し、国を背負った。
この固い絆が何よりもこの3人の武器であった。
グォォォォォォォォォォォォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
その時、悪魔の覚醒による変化、変貌が一段落し、一応の終息をみる。
以前の姿とは似てもつかぬ凶悪かつおぞましき風貌。とても以前の悪魔とは同一の生命体とは思えない変わりようであった。
ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
張り裂けそうな叫び声を上げる悪魔
その怒号にひるまずにプルートゥとヴィクトルが一斉に叫ぶ。
「御意にござる!!王のこの温情、この言葉こそ我が身に余る最高の栄誉!!有り難き幸せよ!!ここが死地なり!!反逆の狂戦士!!プルートゥ・シュタインベック!!!吶喊せしめん!!」
「承ったああああああああああああ!!我が王よ!!イシュタリア初代皇帝オルファンよ!!ご照覧あれえええ!!我が武勇!!漆黒の騎士王!!ヴィクトル・スト―ム!!!!推して参る!!!!!
変貌した悪魔に正面から果敢に戦いを挑む。プルートゥのドラウグ二ィ―ルとヴィクトルのダークナイトメアであった。
オルファンは静かに魔力と精神を集中させ、精霊界のチャンネルを開き精霊王の力の封印を解く準備にかかった。
つづく。
読んで下さってありがとうございました!!




