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ディアボロス  作者: HEN
episode 1 イシュタリアの精霊王
58/71

0-49話  第一次降魔事変  その15 大聖堂の勇者像

更新です。なんかこんなくだらねー話外伝でいい気がするんですが、一応オルファンとグレンを繋ぐ貴重な?エピソードと言う事で本編に収録しました。回想の回想とかあんまりやりたくないんですが肩の力を抜いて読んでくだされば幸いです。

およそ1000年前。



かつての初代勇者アヴストゥーラこと若き日のグレンは、魔物から虐げられている人々を解放して回る戦いに明け暮れていた。



かつて栄えた大都市も、そこに住みし人々も魔物たちに蹂躙され、その被害は甚大な物があり、か弱き人々が生き延びるにはあまりにも過酷な環境であった。しかしそこに突如。彗星のように現れた勇者アヴストゥ-ラによって人々は確かに救われたのである。街の長がグレンに頭を垂れながら近づいてくる。




「アヴストゥ-ラ様!!!圧倒的感謝でございますっ………!!我々を救ってくれて本当にありがとうございます!!!これは少ないですけども……」




たくさんのお金や食料を若き日のグレンに贈ろうとするも。グレンはとびきりの笑顔で




「おやおや……。お構いなく。その気持ちだけでお腹一杯なんだぜ?それよりも誰か他の苦しんでる人々が俺を呼んでる声がする。行かなくちゃなんねえんだ」




と丁重に断ったのであった。あれだけの偉業を達成しておいて、一切の報酬を断る伝説の勇者の到来に人々の歓声の声は更に高まった。



しかしあれだけの功績に見合った報奨を用意できないとなると、街の沽券に関わると思った街の長は尚も食い下がる。



「では……、街一番の美女と名高い、私の娘の踊り子ターニャでございます。彼女を勇者様に献上致したい所存でございます。そしてなんとも差し出がましいのですが、無礼を承知でお願い致します!!ターニャに願わくば勇者様のご子孫を残して頂き、街の誇りとさせて頂きたいのです。何卒!!何卒お願い申し上げます!!」



月の光に照らされた花のような美女が、恥じらいながらグレンの前に現れた。ターニャはグレンに憧れの眼差しを向けながらもどこか物憂げな様子であった。



グレンはターニャの美しさに一瞬、目を奪われるも、どこか遠くを見ている物憂げなターニャの様子に気づく。グレンは笑いながらターニャの手を引く。



「うーん確かにいい女だな。だが、違う~。違う~。違うんだなあ。この娘が見ているのは俺じゃない。こいつなんだろ?」



武器屋の息子であり、いつか勇猛な戦士として名を馳せたいと思っていて、目下修行中の少年レリックの元にターニャを引き寄せるグレン。



驚きながら、レリックとターニャはお互いを見合わせ、目を潤ませながらやがて抱き合う。なんとお互い密かに想い合っていたのだ。



街の長はターニャにしどろもどろになりながら尋ねる。




「ターニャ……!!お前そうなのか!?そうだったのか!?」




ターニャはレリック抱きしめられながら小さく頷く。その仕草に目を細めて喜ぶグレン。いつか自慢の娘を名誉ある貴人に嫁がせようとしていた街の長は怒り心頭であり、怒鳴りつけようとするも、その頭をぽんと優しく振れるグレン。




「許さん!!なんて野暮な事言いなさんなよ?あの二人を見てみない。い~~い顔で笑ってら。こっちまで幸せになってくるよな。いいかい?長よ。こんな殺伐とした救いようのない残酷な世界でも人は人を愛する事ができるんだよ。これは決して神が望んだ奇跡じゃない。人間おれたちが望んだ奇跡だ。でな!!レリックはガキの頃の俺にそっくりだ。あいつはいずれデカい漢になる。俺が保証する。だからさ許してやんなよ」



街の長は震えながら言う。



「ターニャは、ターニャは母親を亡くしてから、一度も笑った事がありません。初めて見ました……。あんな幸せそうな笑顔を……。ははは……。私は父親失格ですねえ……」



「んな事あるかい。ターニャはお前さんにとっても感謝してるよ?ターニャがあんなに美しく育ったのは一体誰のおかげだい?感謝してるからこその今の飛び切りの笑顔があんだよ。あんたたちを救えて本当に良かった。んじゃ!!そろそろお暇すっかねえ!!世話んなった!!楽しかったぜ!!」




街の長、ターニャとレリックそして街の人々は大粒の涙を流しながら、初代勇者アヴストゥ-ラを見送る。



「アヴストゥ-ラ様あああああああああああ!!ありがとうございましたあああああああああああああ!!!!!この御恩は一生忘れません!!!!」



「(忘れていいんだけどナー)」



グレンの傷ついた心と身体が癒えていく。人々の歓喜の声が、幸せが、勇者アヴストゥ-ラを最強足らしめんとする確かな原動力なのだ。


大事を為して、多くを望まず。偉大なる初代勇者アヴストゥ-ラの伝説としてはまさに完璧である。



そ う こ こ ま で は。




街の大工町が感極まってグレンに叫ぶ。




「お……俺……!!アヴストゥ-ラ様の超人的な強さと素晴らしい戦いぶりに感動しましたッ!!!この街にアヴストゥ-ラ様の銅像をおっ建てようと思っています!!!」




もう街を出て魔物とエンカウントしそうなところまで去って行っていた。グレンは耳をダンボのように膨らませ、ちょっと頬を赤らめながら全速力で大工町の元に帰ってきて、だらしない笑顔を浮かべながら




「そいつあ名案だあ。旦那!!」




「ですよね!!!!俺もなんとかして偉大な勇者様のお力になりたくて!!!!是非作らせて下さい!!!!」




「いいですとも!!!!!!!」




「それでですね。もしよろしければ勇者様直々に銅像の監修をして頂きたいのです!!!!」




「監修とな!!!!????よろしかろう!!!!やはり勇者の事は勇者に聞けという格言が我が故郷にあってだな。お任せあれ!!むしろドンと来いっての!!」





「頼もしいです!!!勇者様!!!勇者様公認だあああああああ!!いいかみんな!!勇者様本人のお墨付きを貰ったぞおおおお!!これはかつてないほどのデカい仕事になるぞおおおおおおおおおおおお!!みんなあああああああああああ!!この街に勇者様の銅像を建てるぞおおおおおおおおおおおおおおおお!!」




街の人々と職人達は大いに歓声を上げる。皆一丸となって勇者の銅像作りに早速取り掛かっていく。グレンはキリッとした顔をしながら腕を組んで、その様子を厳かなに見守っていたが実の所、内心ほくそえんでいた。




「(いやはや……ついに俺様も銅像が建てられるレベルになったかあ!!!なんかもう来るとこまで来たって感じだなあ。実を言うとターニャの件めちゃくちゃ無理していたんだなあ。本音を言うとあの場でむしゃぶりつきたいくらいの俺好みの美人だったの!!でも、昨日の夜、レリックとターニャが泣きながら抱き合ってるの見ちゃったからさあ。あんなの見たら無理だもん……。ここで俺がターニャを寝取っていったらふたりが余りにもかわいそうじゃん……。つうか俺もぼちぼち女が欲しいぞ!!切実に欲しい!!女の子にモテたくて始めた魔物退治もなんか強くなりすぎてしまって最早銅像が建つレベルになるとはなあ。しかしここでカッコいい銅像を建てれば更にモテ度アップじゃね??これは勇者として決して避けて通れない一大イベントである!!)」






聞こえましたか?彼の心の声が。台無しである。最低である。子孫のオルファンも無類の女好きではあるが、グレンほどではない。そうグレンは史上最強の勇者にして、オルファンを更に俗ぽっくした性格をしているのだ。このグレンという男は後に初代勇者アヴストゥ-ラとして盟友である人類の最終兵器、闘神フェイタル・ロウと手を組み、人類連合軍を率い、人類の存続を賭けた人と悪魔と天使と神々の終末戦争即ちラストアルマゲドンを戦い抜く筆頭株となっていく数奇な運命を辿る事となる。事実、彼も歳をとっていくと、それ相応の宿命を背負い、ただのモテたいだけの男とは一線を画する大いなる信念と志を持つようになるにはなるのだが、人類の英雄達の頂点ともいえる存在の初代絶対勇者アヴストゥ-ラの闘うきっかけが悪い奴をぶっ倒して世界を救ってただ女の子達にモテまくりたかっただけという、肩の力、いや肩の力どころか、全身の力が抜けるなんとも言えない絶妙に軽い理由であったのだ。



しかしイ・ゼルディア史に於いてもグレンの武才は異常なほど凄まじく、一言で言うと限界がまるで設定されてない絶えず成長し、膨張する宇宙のような測定不能の強さを誇る。闘神フェイタル・ロウと共に神々とサシで殴り合える数少ない人間であり。間違いなくグレンの強さは人類史上最強の一角に数えられほどであった。この世界を構成する神も皮肉屋というか気まぐれではある。大いなる大義や義憤を背負っても尚、力が一歩及ばなかった故に悲劇の最後を遂げた英雄は山ほどいるのにも関わらず、ただきっかけは女の子にモテたかっただけの能天気な男に異常なまでの天賦の武才を与えるとは運命とはわからないものだ。



事実グレンはその性格が災い(幸い?)して、冒険の際、非常に数多くの美女と逢瀬を繰り返し、それぞれに子を為している。英雄色を好むというが、流石にたらしこんだ女性の数が多すぎて、勇者としての品格を疑われるべきなのではないかとも思うし、ここで非難のひとつでも大っぴらにしてやりたいのだが、グレンの子孫達こそが後に勇者アヴストゥ-ラを名を受け継ぎ、グレン譲りの超人的な力を発揮し世界を幾度となく救ってきた功績を考えるとそれもできず、なんというか複雑な心境である。



また正当な勇者アヴストゥ-ラの力に覚醒しなかったグレンの子孫たちも、次代の勇者にこそならなかったものの、政治、軍時、経済、商業、芸能、あらゆる方面で今も尚、目覚ましい活躍を遂げている。幸いな事はグレンの子孫たちにはグレンほど病的な女好きはいなかったという事に尽きる。実はグレンに一番良く似てるオルファンにも無類の女好きの傾向にあったのだが、オルファンの妻であるユリ―シアは、異常なまでに嫉妬深く、一度オルファンの浮気に気付いてオルファンを禁呪のオンパレードで殺しかけた事があったのである。



それ以来すっかり怯え切ったオルファンは借りてきた猫のように一切浮気をしない理想の父親になったそうな。その話を聞かされて「何それ?オルファン。お前の嫁超こええじゃん……」



とグレンに怯えながら同情される羽目になるのだが、それはまた後の話。





数日後、自身の銅像作りに精を出す街の人々、大工長はグレンを見るなり満面の笑顔で駆け寄ってくる。



「勇者様~~!!!おはようございます!!!今日もみんな元気に勇者様の銅像作りに精を出しています!!!!」



グレンも嬉しそうに応える。



「すげえええええええええ!!!もう形になってる!!!精がでますなー!!こんなん作って貰って俺は幸せだ~~!!街の人々に感謝感謝!!!!」




嬉しそうなグレンの様子に一瞬、満足げに微笑むも、すぐさま真剣な表情になって銅像をコンセプトを説明する大工長。




「ありがとうございます!!勇者様!!いいでしょうか?コンセプトはですね。"英雄は、勇者は確かにここにいる"です!!この大都市の中心に位置するディアノート大聖堂に大きな勇者様の銅像を建てて大々的に広告を打って宣伝していくんです!!今も尚、魔物たちから虐げられてる人々がたくさんいます。その人達の確固たる希望になるようにと、祈りと願いと可能性を込めて作っているんです!!」




そのコンセプトに大いに感激して、大工長と固い握手をがっちりと交わすグレン。




「勇者とは、英雄とは何かをそこまで理解しているとは!!!完璧だよ!!!君イイイイイ!!!あ、ヤバい。感動してちょっと泣きそうになっちゃった」




作りかけの大きな銅像を笑顔で見守っていたグレンだが、何か気づく事があったのか。




「およ?大工長さん。大工長さん。つかぬことをお聞きしますがね。間違ってたらごめんなさいなんだけど、あの銅像の眼ってちょっと実物の俺よりも小さく見えないですか?」




なんと、遂に銅像のクオリティにいちゃもんをつけだす勇者グレン。この男、喧嘩は異常に強いが、人間が小さい。客観的に言って、そんなことはまるでなく、実物と変らない眼の大きさでちゃんと作られている。が、大工長に向かっていつも以上に目をばっちりと見開くグレン。この大工長。先の闘いで最愛の妻と4人の子供の命を救われていてすっかり勇者アヴストゥ-ラの信者と化してしまっていたのだ。大工町は満面の笑みでグレンに応える。



「これはこれは申し訳ございません!!勇者様!!失礼をば致しました!!!おーーい!!!勇者様直々のオーダーだぞーー!!Bの23をもっと広角に掘って、瞳にアレキサンドライトとダイヤをはめ込むんだ!!!」



すると瞬く間に、銅像の瞳が更に大きく見目麗しくなったのである。グレンは職人達の仕事の速さに感激しながら



「いやあ。ごめんなさいね~。やっぱりいつも鏡で見てる顔だからさあ。妥協はちょっと許せなくて~」



「その気持ちすごくわかります!!俺も勇者様にはいつまでも最高にカッコよく美しくあってほしいのです!!それに勇者様直々にオーダーを頂けるなんて身に余る光栄です!!!」



「そんなに持ち上げられるとちょっと照れちゃいますなあ~。でも本当に感謝してるんだよ。これで希望を持ってくれる人が増えれば……。あれ?ちょっと待って……?鼻も……実物より低いような……?」



勿論、全く以ってそんなことはない。記念すべき銅像を実物より美化して作りただモテたいだけの勇者の若さにかまけた虚栄心である。合掌。



しかし、それに反してグレンから発注が入る度に大工長のテンションは上がっていく。



「はい!!よろこんで~~!!!かしこまり~~!!!」




「股下……、足も……、顔の大きさも……」



「お任せあれ~!!!いますぐ直させて頂きます~~!!」


一度気になり出すと全てに手を加えて文字通り加工していくグレン。気がつくと、なんというかもうこれ誰だよ?と言わんばかりの実物のグレンとは全く別人の絶世の美男子の銅像が出来上がっていた。




あ~あ~。とても残念な気持ちになりますね。しかし、街中の人々が勇者アヴストゥ-ラ・グレンに救われた身であり、文字通り圧倒的感謝の気持ちを持ち続けているが故に、この実物とはかけ離れて異常に美化された勇者像に疑問を持つ者はなんと一切いなく、むしろそれが妥当であり、望ましいという人々ばかりであった。集団催眠ってとても怖いんですよ。



遂に完成した銅像を見てグレンは満足気に




「素晴らしい出来栄えだー!!!勇者の精神が形になったようだ!!!!まさに俺そのもの!!!」



本当にそう思うのか?お前は?と思わず小1一時間問いただしたくなるが、悔しいが出来上がってしまったものは仕方ない。職人たちの類まれなる努力に免じてこの像の存在そのものを認めないわけには流石にいくまい。



銅像が完成した暁に、大工長を始め、職人たちが感極まって突如グレンを取り囲んでグレンを胴上げする。




「勇者様ばんざーーーい!!!勇者像完成ばんざーーーい!!!」




グレンも驚きながらも嬉しく思い。高く高く胴上げされるのであった。




「んもう!!突然なんだよ!!こいつらったらーーー!!!ありがとよーーーーーーーー!!!勇者像に栄光あれー!!!」




なんだこれ。




完全に茶番である。偉大なる初代勇者アヴストゥ-ラ・グレン・ニルヴァーナの銅像がこんな茶番によって創り上げられていたとはオルファンは露ほどにも思っていなかったのである。さて、グレンの過去を少し語ったが、今度は銅像に出会った勇者時代の若きオルファンの過去にも少し触れてみようと思う。






つづく






読んで下さってありがとうございました!!

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