0-44話 第一次降魔事変 その10 ヴァルハラの勇者たち
ようやく長い外伝エピソードが終わり、本編に戻ってきました!長期休載という長い暗黒時代もあり、作者自身も二度と戻ってこれないと思っていたので嬉しいです。実はですね。このオルファンを主軸としたエピソードは本来の想定した物語とは不本意ながら二転三転も紆余曲折したものになってしまっています。そしてここからは実はフラグが立っておりまして、通常のエピソードとは異なるゲームで言うと隠しルートにあたるものになります。本来こんなに早く物語の舞台裏の一部を明かすつもりはなくギリギリまで伏せてようかと思っていたのですが、ここまで来たら公開しようということで隠しルートのフラグが立つ条件は長期休載と外伝エピの読破だったりします。せめてものお詫びに。
戦乙女たちが正しき行いを為した誇り高き猛き英雄たちの魂を天界へと導く。
ここは英霊の園ヴァルハラ。来るべき、神々と人との終末戦争の再来に備え、
英雄の魂をエインへリアルとすべく、戦乙女たちは死せる魂を求め今日も下界に舞い降りる。
ヴァルハラにひときわ強力な英霊達がいる。その首魁とおぼしき若い男が下界を覗き見していた。その首魁とおぼしき男の風体は、ボサボサの寝癖だらけの髪に現代風のTシャツと短パンにサンダルというなんともラフな格好をしていた。
「もう始まってる。こいつはおもしれえ事になってんな。フィオナちゃん!こっちこっちポップコーンとコーラくれる?はやくう~~!」
フィオナと呼ばれた美しい姫騎士風な美少女は、余惑いながらも首魁の男に促されたポップコーンとコーラを手渡す。
「もお~~!!私達は今や英霊の身なんですよお!!なんでそう死んでまで大喰らいなんですか!!グレンさま!!」
グレンと呼ばれた男は頭を掻き、手渡されたポップコーンを美味しそうに頬張り、寝そべりながら面倒臭そうに答える。
「おもしれえもん見る時にはポップコーンにコーラって相場が困ってんの!英霊だって腹が減る時は減る。必ずしも血肉にはなんねえかもだが、美味いもんは美味い!だから喰う時は大いに喰らう!!結構な事じゃねえの。あ……あれ?待てよ?こいつは参った。コーラじゃ酔えねえな……。ビールやラム酒にするか?いや、長年親しんだポップコーンにコーラっていう様式美には個人的にこだわりてえ。あ!コーラに酒を混ぜてコーラカクテルにすれば万事解決なんじゃねーか!?冴えてんな~俺!つーわけでフィオナちゃんありったけの酒持ってきて。コーラに一番合う酒をこの場で究明しちゃうゾ!」
フィオナはグレンに顔を近づけて顔を膨らませながら憤慨する。
「究明しちゃうゾ!?じゃありませんよお!!グレンさまのお遊びには付き合ってられません!!今日は何の用ですか!?今日は私は大事な用事があるんですの!!そう何度も何度も事あるごとに呼び出されてはたまったものではありません!!」
「その通りだ。親父よ」
異様な闘気を放つ浪人風の男がいつの間にか傍に立っている。
「いやはや、久しぶりだねえ。初代様よ。元気してたか?で、今日は一体全体何の会合なんだい?」
今度は仰々しい近代風の武装を施した大柄な男が浪人風の男と後ろに佇んでいる。
フィオナは驚いた表情を浮かべ。
「嘘……!!オウガさま……ヴィルフレアさま……!!」
グレンは片目を瞑りながらオウガとヴィルフレアと呼ばれた男に語り掛ける。
「はっはー!!お前らが来てくれるとはな。遂に引きこもり卒業ってか!?息子や曾孫が独り立ちして俺は嬉しいぜ!」
オウガはグレンを軽く睨みつけながら言い放つ。
「ふん。無窮の絶界で武を磨いていた。親父。アンタを越えるためにな」
ヴィルフレアはおどけた表情で明るく答える。
「俺は冥界の屍鬼どもと一戦交えてたってわけだ!!丁度、御使いに駆り出されてな。全く人使いが荒いったらないぜ」
「アタイらもいるよん!?初代様も元気そうで何よりさね」
大樹の上の大きな木の枝に腰かけている天真爛漫な海賊風の女、寝そべっているやる気のなさそうな軽装の剣士風の男、実直な忍者風の男。
Tシャツに短パンを穿いた現代風な男グレンに寄り添う姫騎士風の女、フィオナが叫ぶ。
「ルイジアナさま!!ミューラーさま!!ジライヤさま!! アヴストゥ-ラ六強がここに揃うなんて!!」
すると、どこからともなく声が響いてくる。
「いやはやまさかの全員集合ですか……。いつ以来でしょうか?歴代アヴストゥ-ラが一堂に会するなんて」
眼鏡をした書生風の男と、やたら豪華絢爛なドレスを纏った令嬢風な女、アイドル然とした風体の女、格闘家風の男が続々とやってきた。
姫騎士風の女、フィオナが皆を見渡して声高に言ってのける。
「アルフォンス!!ローズマリー!!ティアナ!!トリガー!!グレン様……!!み……みなさん……!!今日は一体何の用でこんな……」
絶対勇者アヴストゥ―ラ。古き神代から現代に続き、人類の災厄と戦い続けるイ・ゼルディア史に燦爛と輝く伝説的英雄である。永きイ・ゼルディア史に名を残した猛き英雄達は多くいるが、歴史から隠蔽されつつある人類の最終兵器。究極の戦闘力を持つ鋼鉄の闘神フェイタル・ロウを除けば勇者アヴストゥ-ラこそが歴史上の人類が為し得る最大の戦力を秘めし英雄達の頂点ともいえる存在であった。
あらゆる超常の悪意と戦い、打ち破ることが可能である人類の突然変異ともいえる傑作を目の当たりにした人々は、アヴストゥ-ラの血を、勇者の血と定め、後の世に絶やすことなく世襲させ代々に受け継させる事であらゆる災厄を退けてきのだ。
歴史上確認できるのは14人のアヴストゥ-ラたち。既に11人のアヴストゥ-ラは生ける現世で使命を全うし、肉体は滅び、戦乙女にヴァルハラに召され英霊の身となっている。この中でも特に、神代の時代、あらゆる神々や悪魔や天使といった上位世界の高次元知的生命体と人の身でありながら戦い、打ち破る事ができた異常なまでの戦闘力を秘めた初代から六代目の六人のアヴストゥ-ラたちをアヴストゥ-ラ六強と呼ぶ。
オウガがグレンに戒めるように告げる。
「また下界を覗き見か。あまりいい趣味とは言えんぞ?親父よ。今日は修練を切り上げてわざわざきてやったんだ。くだらん用事であったらただじゃおかん」
グレンはおどけた顔でオウガに応える。
「ひい~~!おっかねえ。つうか何でお前は俺の息子の癖にそう血の気が多いのよ?もっと肩の力抜けっての。何事も骨の髄まで楽しんでけ。アヴストゥ-ラの血を正当に受け継いで勇者として覚醒したのが息子の中でも一番血の気が多いお前だけとはなあ。あのな。お互いもう死んでるけど、人生っつーのは強さだけをひたすら求めてもダメなんだよお。虚しくなっちゃうだろ?色んな可愛い女の子を口説くテクや、近所の牛丼屋やラーメン屋のメシを3、4割値切って喰いまくる話術ってやつが意外にも重要でな?あらゆることを心から楽しみ泰然自若で事に臨む事、これが勇者としてのたしなみってやつに繋がってくんだよ。まあ、いいや。お前らを呼んだのは他でもねえ。これを見てみな」
ポップコーンを宙に飛ばして口でキャッチしてもぐもぐと咀嚼してコーラでごくごくと飲んで流しこむ。
下界に今或るのは、元勇者アヴストゥ-ラにしてイシュタリアの王であるオルファンと正体不明の悪魔の熾烈な激戦が繰り広げていた。グレンは天界もといヴァルハラの園からこの光景をまさに見守っていたのだ。
「こいつはオルファン。何を隠そう俺達アヴストゥ-ラの血を受け継ぐ14代目の勇者だ。色々あってな。今は勇者の力を失ってる。で、オルファンと戦ってるやつは誰だと思う?」
アヴストゥ-ラ六強と呼ばれている勇者たちの顔が瞬く間に青ざめる。
「まさか……!!!」
グレンの額に汗がつたう。
「そう……。姿形は変わっているが、気配でわかる。ア イ ツ だ。信じられねえが、生きてやがった。神と人々の終末戦争を逃げ延びやがった。奴はこの事を知ってるのか?俺とロウとお前たちでぶっ倒したはずだったんだがな……。嫌になるぜ。あのバカには散々煮え湯を飲まされたクソみてえな記憶しかねえ。俺が出て行っていますぐぶん殴りにいきてえが生憎と俺はヴァルハラに召かかえられた英霊の身だ。どうにもならねえ。何の因果か俺の子孫とあいつが対峙することになるとは、これも運命なのかねえ?」
書生風の勇者、アルファオンスが冷や汗を流しながら呟く。
「これが……神代の魔神の一柱……。ゴクリ……。途方もない戦闘力を感じます……。ポテンシャルの底がまるで見えない……。僕の代はこんな桁違いの化け物は存在していませんでした。生まれた時代が良かったのかも……。ははは……はは」
グレンがじどろもどろのアルフォンスに告げる。
「ハッ!オイオイ?どうした?こんなもんじゃねえよ。むしろこの程度であってたまるかってんだ!いいか?アル。魔神ってのは魔の眷属の頂点を究めし、高次元知的生命体だ。未だ本来の力に覚醒していない。つうか、記憶を失ってやがるな。今やこいつは赤ん坊同然だ。自分が誰で、どんな宿命を帯びていて、神と人々の終末戦争で散々バカやらかした事すら覚えてない。勿論力の使い方もな。本能の赴くままに暴れ回っているだけだ。だからこそ俺の子孫。アヴストゥ-ラ14世。オルファンもどうにかこうにか戦えてるってわけだ」
姫騎士風の勇者、フィオナが恐る恐るグレンに問う。
「私たちの子孫であるオ……オルファンくんは……こ……この魔神に勝てるんでしょうか?」
苦い顔で率直な感想を言い辛そうにしているグレンに変わって浪人風の勇者オウガがフィオナに告げる。
「奴が魔神本来の力を取り戻したらこのオルファンとかいう小僧に万に一つも勝ち目はないだろう。要は短期決戦だ。奴が本来の力を取り戻す前に一気に決着をつける必要がある」
皇帝風の勇者ヴィルフレアが口笛を吹きながら言う。
「ヒュ~~♪時を越えた勇者対記憶を失ったかつての魔神の闘いか!面白い!!こりゃあ確かに見ものだわな。しかしこんなデカブツがよく御使いどもに見つからなかったもんだ」
グレンが答える。
「神と人々の終末戦争で天使側も悪魔側も被害は甚大で共倒れに近かった。俺達も封印されたロウを除きほぼ人類連合軍も壊滅状態だった。定期的に悪魔の残党狩りをやってるみたいだが、追手を大々的に差し向ける余裕があまりないんだろうさ。今や無法地帯だ。アイツが生き延びていたなんて想定外にも程があるぜ……。奴につけられた傷が疼きやがる……」
グレンの背中にはくっきりと大きな爪痕が残されている。それはかつて魔神の座にいた悪魔からつけられたものであった。
海賊風の女勇者ルイジアナが皮肉っぽく笑う。
「状況はわかった!!面白くなってきたじゃないのさ!!でさ。アタイらはどうすんのさ?まさか只の物見遊山気分で全員呼んだんじゃあないだろうねえ?」
忍者風の勇者ジライヤがものもしく呟く。
「敵、極めて強力無比なる魑魅魍魎。今すぐ一計を案ずる必要あり」
グレンが大笑いする。
「だっはっはっはっは!!!イイ勘してんじゃあねえか!!ルイジアナ!!ジライヤ!!そうだ。オウガが言ったように。総合的に見てこの勝負オルファンが相当不利だ。おまけにオルファンは訳あって今は勇者の力を失ってる。俺はオルファンに是が非でも勝たせてやりてえんだよ!俺ら歴代アヴストゥ-ラの力をここから貸してやろうと思ってな。んでもってオルファンを真の勇者に覚醒させる。勇者の神器を具現化し、絶対勇者領域(ゾーン・オブ・アヴストゥ-ラ)を使えばあの魔神のクソ野郎を跡形もなく消し去れるはずだ。そこまで俺達で導く」
アルフォンスが血相を変えてグレンに抗議する。
「ちょ……ちょっと待ってください!!我々は今やヴァルハラの園に召された英霊の身ですよ!!現世への不用意な干渉はヴァルハラの園の戒律に違反しています!!戦乙女や御使いや果てはあのお方が黙っていません!!彼らの怒りに触れると、英霊たちは魂の起源を完全に抹消され、輪廻転生の機会すら永久に喪われると言います!!リスクが高すぎますよ!!」
グレンは平然とした顔でアルフォンスに言ってのける。
「そんなもんなあ。うっとおしい事ぐだぐだ言ってきたら俺が全員ぶっ倒せば済む話じゃねーか?確かにここヴァルハラはそれなりに居心地は悪くねえ楽園だったが、そろそろマジで飽きてきたし身体が訛ってきてな。ぶっちゃけぼちぼち思いっきり暴れてーってのが本音だったりするんだな。これが」
軽装の剣士風の勇者ミューラーが木の枝で寝そべりながら大笑いをする。
「わはははははははははははははは!!!!同感♪悪魔も天使を好き放題ぶち殺し回っていた時代が懐かしいなあ?大将よ」
オルファンとフィオナは声を合わせて弱々しい声で呟く。
「暴れたいってそんな単純な理由で……」
グレンはその二人に顔を近づけて大仰に言ってのける。
「神々と人々の終末戦争を経験してねーからお前らはピンと来ねーだろうが、結果は天使側と悪魔側は引き分けに終わったんだよ。時を経ていずれ、神々と人々の終末戦争の続きが起こる。その時俺ら英霊は天使側の尖兵エインへリアルとして駆り出されるってわけだ。これは天使どもの陰謀だよ?チミ?普通の英雄ならまだしも、俺らはその中でも最強を誇る勇者アヴストゥ-ラだぞ?いつまでもいけ好かねえ天使どもの言いなりになってたまるかってーの!!」
格闘家の風の勇者トリガーが猛烈な勢いで走ってきて早口で捲し立てる。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!こいつは燃える展開だあああああああああああ!!!初代様あああああああ!!俺は今猛烈に感動していますううう!!漢に生まれたからにはあああああ!!勇者に生まれたからにはああああああああ!!譲れねえ信念ってもんがありますよねえええええええ!!!」
顔を異常に近づけるトリガーに苦言を呈すグレン。
「うおおおおおおお!!トリガー!!相変わらず暑苦しいったらねえなお前は!!!!顔が近い!!顔がああああ!!言ってる事はまあまあ合ってるけどさあ」
令嬢風の女勇者ローズマリーが仰々しくエレガントなポーズを決めながら叫び出す。
「また初代様のお戯れが始まっちゃったわ!!そう!!今度は命がけのね!!これもアヴストゥ-ラの宿命かしら!!ああ……また激動の時代が始まるのね!!」
アイドル風の女勇者ティアナがウキウキしながら笑顔になる。
「天使様の歌はとってもとっても素敵なんだナ~~♪あたしの歌と天使様の歌どっちが上手いと思う~?試してみたいなあ」
アヴストゥ-ラ六強を皮きりにグレンの言葉に盛り上がるも、冗談ではないという表情でアルフォンスとフィオナが訴える。
「冗談じゃないです!!!!僕は以前、天使たちの悪魔の残党狩りを見ました!!人智を越えた桁違いの恐るべき力を持っていました!!しかも、途方もない数の軍勢!!これで、まだ戦力の大半が人々の終末戦争の影響で眠っているんですよ!!僕たちは例え一騎当千の勇者アヴストゥ-ラだとしても、数が!!規模が!!違いすぎます!!!勝算なんかあるわけないですよ!!!」
「グレンさま……。お考えを改めて下さいませ……。ヴァルハラの園での造反はいずれ天使様の耳に入り、果ては大神様に伝わります。そうなれば粛正は免れません。私は英霊の身になっても良くしてくだっている天使様をお慕い申し上げております……」
アルフォンスは更に続ける。
「初代様たちアヴストゥ-ラ六強の方々はともかく、神代の時代に生を受けなかった僕らなんかとてもかないっこないですよ……」
グレンは悪戯っぽく笑う。
「そうかなあ~~?昔に比べて今はそんな事はないと思うけどなあ~~?」
アルフォンスとフィオナは小首をかしげる。
「は?」
グレンはにやりと笑う。
「今までの俺の戯れが、本当にまるで何の意味も持ってないとお思いかね?」
「ま……まさか………!!」
「そう!!俺が発案した初代アヴストゥ-ラ式、修練の儀よ!!遊びに見せかけた勇者育成方法。よく遊ぶ子はよく育つ!!今ではお前らも御使いどもと渡り合えるほどの強くなっているはずだぜ!!」
アルフォンスとフィオナはお互いを見合わせる。
「たしかに……。今まで気づかなかった……」
「私の魔力がこれほどまでに増大していたなんて……」
少し笑顔になったが、すぐ眉間にしわを寄せてアルフォンスはグレンに声高に告げる。
「で……でもですよ!? 僕らをもう既に死んでいます!!肉体はとうの昔に消滅していますし!今更蘇りなんて無理として、英霊として現世に受肉し闘うとしても、触媒や術者は!? そもそも僕ら英霊の頂点たる歴代アヴストゥ-ラ11人を召喚し使いこなせる程とてつもない魔力を秘めた英霊召喚師なんてイ・ゼルディア史を見渡しても存在するかどうか!!」
グレンは笑いながら答える。
「オルファンがその資質を持っているとしたら?」
つづく
読んで下さってありがとうございます!なおディアボロスは不定期連載です!




