ディアボロス 外伝エピソード イシュタリアの精霊祭と後夜祭 6 魔術合戦
更新でーす。いつまでたっても外伝が終わらないというね。まあボチボチやりましょう。
さらにサラマンダーヌンチャクを高速で振り回しながらユリ―シアがなにやら奇怪なポーズを決める。
「貴方のォ~~♪今日の運勢は~♪大凶なの~~♪イシュタル様に変わって~~この燦爛の魔女ユリーちゃんが~♪お仕置きしちゃうゾ?」
一見、可愛らしい幼女がくるくると歌い踊りながらポージングを決める。なんとも間の抜けたというか、微笑ましい光景に見える。
しかし、そのポージングを見た獅子舞は真っ青になって恐怖に震えながら滝のような汗が噴き出している。
「あわわわ……!!あわわわわわわわわわわわ!!!あれはあの頃のユリーちゃんのF・O・P(フィ二ッシィング・オーバーキル・ポーズ)」
説明しよう。F・O・P(フィ二ッシィング・オーバーキル・ポーズ)とは、全盛期のユリ―シアが相手にトドメを刺す際に行う、無慈悲な処刑執行の儀式である。要約すると「あなたは最低のクズでゴミで生きる価値がないので、いまから私が最大魔力で跡形もなく今消し去ってあげるわ。アーユーレディ?」の意である。
様々なモンスター(今思えば、原種も幾種も存在したが、後半はモンスターを取り込み融合したペイルゼイン博士が作った発明品のレプリカントキメラだったわけだが)と戦い。その全てに打ち勝ってきた燦爛の魔女たるユリ―シアが強敵にトドメを刺す際には欠かす事のない自身にとって神聖な儀式なのである。討伐したモンスターの数はゆうに3万強を越える。
このF・O・Pを見て生き残った敵はいまだかつて誰もいない。例外などありえない。故に獅子舞は恐怖に震え上がっているのだ。
「こいつはヤベええエエエエエエエエエエエエエ!!逃げるぜええええええええええええええええええええええええ!!!!!!できるだけ遠くへ!!!!!!!!」
即座に逃亡を選択した獅子舞は賢明と言わざる得ない。獅子舞が空を翔け、猛烈な勢いで逃げ出そうとする。鋭い目つきでサラマンダーヌンチャクを勢いよくしならせるユリ―シア。
「逃がすか!!!こん外道!!!!あちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
サラマンダーヌンチャクは獅子舞の足に引っかかり、ぐいぐいと引き寄せられる。獅子舞は泣きながら絶叫する。
「嫌だあああああああああああああああ!!!死・に・た・く・な・いいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
「おーーーーーほっほっほっほっほっほっほ!!!そうよ!!!!泣きなさい!!!喚きなさい!!!!ブタは惨めたらしく命乞いするものよ!!!!オラオラオラオラああああああああああ!!!!」
獅子舞を完全に引き寄せてから縦横無尽にサラマンダーヌンチャクを高速で振り回し、獅子舞を思う存分しばき倒すユリ―シア。
最大限のバフとデバフが幾重にも何重層にも掛かっているので、サラマンダーヌンチャクの一撃一撃が、イ・ゼルディア史に残る大英雄が使った伝説級の武器に匹敵する類まれなる威力を誇り、全く持って洒落になっていない。余りの痛さに獅子舞はただただ泣いた。
「なにこれ無駄にいてええええええええええええええええ!!!!ふえーーーーーん!!!!!」
散々打ちのめされたが、瀕死の獅子舞は隙を見て飛行魔術で決死の空中バックステップを敢行し距離をとる。
「付き合ってられるかあああああああああああああ!!!!見せたる!!!俺のとっておきの超魔術守護結界防壁!!!精霊アルファスト!!ベータレイジ、ガンマローア!!現界召喚!!!配置につけ!!!!絶対守護領域!!!!どんな物理攻撃、魔術も絶対に通さない!!!!!ユリーちゃんこれで詰みってやつだぜ!!!!」
獅子舞は3種の特殊上位精霊を召喚し、3種の精霊が織りなす結界を形成する。ユリ―シアは急に、とととと、その結界に詰め寄り。笑顔で目を輝かせる。
「すっごーーーーい!!!初めて見た!!!!!素直にかんどーーーー!!!!精霊召喚と魔術による合体複合結界!!!すごい!!すごい!!ちゃんと3つの精霊の霊基配列と属性配置も事細かに計算されて結界を維持してある。この結界を維持するのに莫大な魔力、そして精神力を求められるはず、このアサイラムいやひょっとしてイ・ゼルディア全域でこれほど守護結界を結べるのはあなただけかもね。私の超魔術は勿論のこと、ザルアの火。戦術核攻撃の直撃だってこの結界の前ではかすり傷ひとつつかないわ!!!!」
顔を紅潮させながらぱちぱちぱちと拍手をして、獅子舞の結んだ守護結界を褒めちぎるユリ―シア。いきなり褒められるとは思っていなかったらしく照れる獅子舞。
「えへへへへへ……。そ……そう?それほどでもあるかも……」
しかしユリ―シアは天使のような明るい笑顔から悪魔のような微笑みに変わる。
「でもねー!!詰めが甘ーい!!自分が最強の魔導士って驕ってるでしょー!?その慢心が透けて見えてるわよ。相手が自分と同等やそれ以上の魔導士相手であることを想定できてないのね?守護結界の術式やら属性やら初めから全てを見せすぎよ!!術式反転……!!」
獅子舞は慌てて身を翻す。
「しまった!!!3つの精霊の霊基配列を即座に変更!!!属性配置を魔術妨害!!隠さなねえと!!!!」
「もう遅いわ!!!全部覚えた!!!!術式は蓬郷連陣の型。3つの精霊の属性は蒼炎、霧氷、紫電。位置はこことこことここ!!!!反属性守護結界展開中和全解除(アンチイージス・エポト―シア・フルディスペル)!!!!!」
ユリ―シアは守護結界を結ぶ要の3つの精霊に結界を維持する魔力と同等の威力かつ、逆の属性の魔力を直接流し込み、印を結んだ。これは守護結界を構成する術式や属性が分かればそれと同等の威力かつ逆の属性の魔力を注入すると、どんなに強固な守護結界も中和できるという一部の魔導士しか知らない、或いは実行できない守護結界の超高等解除技術である。
要は相手と同等の魔力かつ逆の属性の守護結界を作り、相手の守護結界を中和させるというイメージに近い(同魔力の炎と氷が溶けあい無になる)しかしこの解除方法は、相手の守護結界の術式、属性を完全に理解でき自分の物に出来る確かな見識と、相手と同等の魔力かつ反属性の守護結界を瞬時に形成できる熟練の魔導士でなければ決して出来ない事であり、術式、属性を読み違えている。あるいは魔力が足りない。多すぎる。反属性守護結界を形成する時間が遅いなどちょっとしたズレが生じると、相手の守護結界
は単なる攻撃と認識し全ての魔術が無効になる。或いは反射型の守護結界であれば全てが自分に跳ね返って甚大な被害を被るであろう。かつて燦爛の魔女という唯一無二の座にあったユリ―シアだからできた事である。
獅子舞が苦労して結んだ守護結界は瞬く間に無散してしまった。途方に暮れる獅子舞。
「そ……そんな……バカな……!!!こいつを破れる奴なんて今までだだだだだ誰一人として……!!!」
ユリ―シアは奇妙なポーズを決め恍惚の表情を浮かべる。するといまだかつない強大な魔力がユリ―シアに集中する。
「はい!獅子舞さん!これでチェックメイトよ♪かつての史上最強の勇者も大したことないんじゃな~い?全開でいくわ!!燦爛たる高貴な光と魔力の絶頂!!!!」
まばゆい光のオーラに包まれるユリ―シア。尋常ではない魔力の集中に大気が震える。空が嵐を呼び、地が裂ける。その異常な様相に再び畏れ慄く獅子舞。
「洒落になってねえ!!け……桁違いの魔力だ!!!!!!イシュタリアいや!!アサイラムそのものを吹きとばせるほどの!!!!これは……俺と同等の……!!認めたくねえがそれ以上の魔力だ!!!!こいつはこえええええええええええええええ!!!!味方だった頃は頼もしかったが、敵に回すとこれほど恐ろしいことになるとは!!!!」
ユリ―シアの掌から究極の魔術が放たれようとしている。
「うふふふふふふふふ!!!あなたが勇者として私と旅して、英雄戦争の後ね。新しく覚えた魔術があるの!!!女王の座について戦線を退いてから、初めて思い切り使えて私とっても嬉しいわ!!あなた相手なら手加減はいらないわよね!?禁呪を自己流にアレンジした私特性の究極魔術!!!今こそぶちかますわ!!!竜殺しの女王の進撃!!!!!!」
「(あ。今、走馬灯が浮かんだ。禁呪って言ったよね?俺これ喰らったら確実に死ぬやつだ)さざめく時流の海より来たり時の神の名を冠する裁定者クロノスよ。過去を慈しみ、現在を憂い、未来に馳せる、時の流れは幾星霜。人の命もこれ永遠也。我は求め訴える。今こそ時を越え、時を隔たり、時を支配する。
ウル・バシータ・パジュ・メイルダ―ム……」
聞きなれない呪文に驚くユリ―シア。
「は?なにこの呪文!?古代魔術!?原生魔術!?幻獣種言語魔術?幻想魔術!?違う!!聞いたことない!!!こんな呪文の言語、魔導を極めた私ですら聞いた事がない!!!!!私の歴戦のキャリアに基づく、本能と直感が警告を告げてるわ!!嫌な予感がする!!!!!すごく嫌な……!!もういいわ!!!ここでぶっ放す!!!いけええええ!!」
神々しく光り輝く獅子舞。
「時の回帰!!!!!」
魔力が集中した掌を掲げたまま、虚空で静止するユリ―シア。表情はビデオを一時停止をしたかのように動かない。ユリ―シアどころか、鳥も小動物も空気も全て、静止している。
最早疑いようがない。時 が 止 ま っ て い る。
獅子舞の中の人が頭を掻きながら顔を出す。
「ふううう!!!よもやこいつを使う事になるとはなあ……。はははっ!凄まじい勢いで魔力を消費していきやがんの。止められる時間はざっと数十秒強ってとこか。こいつは奥の手も奥の手、絶対使わないって約束だったのに……すまん。ヴェステア―ド……。精霊っつうのは所説あるがかつて上位世界に存在したといわれる神、或いは神霊の残滓なわけだ。その強大な精霊たちを繋ぎ合わせ、然るべき膨大な魔力と神言で補完してやれば、一瞬だけ神もしくは神霊の権能を再現できるんだなあ。精霊祭の前夜祭でイシュタルを再現させた。アレと同じ原理。最もイシュタルは神の中でもかなり権能の強い神で、精霊祭の際に呼んだのはイシュタル本物ではなくて、それと親和性のある神霊のひとつにイシュタルをトレースをしてもらったんだけどな。まあいいや。今回呼んだのは時を司る神霊クロノス。代償はでかいが、効果も折り紙つきだ。しっかし、全盛期のユリーちゃんってここまで無茶苦茶な強さしてたっけ?冗談じゃないぜ……。全くよお……!!イシュタリアで戦ってたらイシュタリアが丸ごと崩壊してたわ!!おっかない!!完全に見積もりが甘かった。何が怖いって正体が俺ってわかっても一切手心を加えずに絶対に殺しにくるとことろが人間味を感じない。長年連れ添った旦那相手に最大バフとデバフで禁呪アレンジの究極魔法ぶちかますかあ?普通よお?流石の俺も死にますよ。嫌われてんのかねえ?」
自身の愛妻の恐るべき強さに愚痴を言いながら、静止しているユリーシアの顔を獅子舞の中の人が近づいてしげしげと見つめた後、顔をほころばせる。
「しかし……。なんだ……。性格はアレだけどやっぱ若い頃のユリーちゃんは……こうなんというか。かわいいなあ!!性格はアレだけど!性格はアレだけど!顔だけはかわいい!うーーむ。一度やってみかった事があるんだよねえ。よし!!やっちゃう!!んちゅ!!!」
突然、静止しているユリ―シアの唇に熱烈なキスをするエロ獅子舞。時が止まっているので当然ユリ―シアは無抵抗極まりないのである。哀れ。再びエロ獅子舞の毒牙にかかってしまったのであった。
ちゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる。
どうやら、獅子舞の中の人は唇からユリ―シアの魔力を吸い取っているらしい。
「うっはあ!!口内魔力補給、俺からは初めてやってみたけど!!こんな濃い極上の魔力味わった事がないわ!!!流石燦爛の魔女ユリーちゃんの魔力だ~~!!!なんか美味すぎて段々酔っぱらってきたぞ。あと口移しだから心が無駄にときめいてドキドキする。ユリーちゃんと初めて会った事のこと思い出すなあ。あの時も殺されかけたんけどな!!女の子の魔術師が好きな魔法戦士の男の子とかへの口内魔力補給にこだわるの、アホか、って思ってたけど、今はなんかわかるわ~全部MP頂いちまおう!!」
ちゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる。
ユリ―シアの全ての魔力が獅子舞の中の人に吸い取られてしまった。
「ここまでだな。十分に距離を取ってと、時は刻み始める」
時が再び動き出した。掌から膨大な魔力の放出が瞬く間に消えていた。それどころか。魔力大覚醒で10代前半に若返ったユリ―シアは獅子舞に魔力を全て吸い取られてしまって、年相応の姿(それでもなかなかに美しい)戻った。事態の急転に頭が追いつかないユリ―シア。
「え!?え!?え!?頭が痛い!!!ガンガンする!!!これは……!!!MP切れ特有の頭痛!!!!私のMPがいつの間にか0に!!!!!なにこれええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」
獅子舞は手を合わせて丁寧に深々とお辞儀をした。
「魔力ゴチになりました。流石は燦爛の魔女さまですね。大変美味しゅうございました」
怒りの表情で獅子舞を睨みつけるユリ―シア。
「あ……あんた……!!まさか……!!私のMP全部……全部……!!吸い取ったのねええええええええええええええええええええ!!!!」
獅子舞は縦横無尽に動き回りながらこれみよがしにシャドーボクシングをする。身体から溢れんばかりの魔力のオーラがオーラがほどばしり、余りの動きのキレの良さに残像を残すほどの速度ではしゃぎまわっている。
「見て見て!!超元気!!!!この動きのキレ!!!!素敵な魔力をありがとう。ユリーちゃん。ちなみに僭越ながら口内から魔力を摂取させて頂きました。テへ」
恥ずかしそうにもじもじしながら顔を赤らめて言う獅子舞。仰天の告白を受けてショックで涙を流し、絶望の表情を浮かべながら、唇を拭うユリーシア。
「あああああああああああああ!!!!けがらわしい!!きたならしい!!けがらわしい!!!きならしい!!!けがわらしい!!!」
余りのユリ―シアの嫌悪っぷりにしょんぼりする獅子舞。
「きたならしいとけがらわしいは同じ意味ね……。そないに露骨に嫌がらんでもいいじゃないすか……。奥さん。俺らはもう夫婦なんだし…。ほんと昔に戻ってんだな」
髪を振り乱しながら怒りの形相で叫ぶユリ―シア。
「納得できない!!!!私の第三の眼や360度張り巡らせた霊子感応領域に何ひとつ反応がなかったわ!!!!!私が全く反応できないなんて絶対に絶対に絶対にありえない!!私が先手を打たれるなんてう……う……生まれて……はじ……はじめてだわ!!!そこのエロ獅子舞!!!納得いくように説明しなさーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!」
獅子舞は神妙な顔つきで告げる。
「聞きたいですか?」
ぷっくりとリスのように頬を膨らませながら怒り詰め寄るユリ―シア。
「教えなさいよお~~!!!!」
すっと指を前に出して獅子舞は告げる。
「それはヒミツです」
眼が点になるユリ―シア。
「なにそれ」
獅子舞はけたけたと笑い転げながらのたまう。
「まあ!!どっかの田舎の酒場でヘッタクソな歌と踊り踊ってた自称魔女とかほざいてる売れない踊り巫女にゃ到底無理な芸当ってやつよお!!天才にしか出来ない事ってあってだな。魔術を一から学び直した方がいいじゃないのお?あっひゃっひゃひゃひゃひゃひひゃひゃひゃ!!!!何なら俺が手取り足取り教えてやってもいいよお?先生と呼びなさい。いやこの場合師匠の方がより上下関係がはっきりしていいかもな」
握りこぶしを固めながら激しく憤るユリ―シア。余りの怒りに変な笑いまでこみ上げる始末である。
「んふふふふふ!!!絶ッッッッッッ対殺すわ!!!!このエセ勇者!!!!!!」
獅子舞はしげしげとユリ―シアを見つめながら状況を整理する。
「読者の方々は気づいているでしょーか?さきほどから私、獅子舞と、この幼女先輩とは魔術による激しい空中戦を繰り広げているわけですが、空中に浮遊し自在に動くのも結構な魔力を消費するものなんですよ?魔力にいまだ目覚めていない。いずれ目覚めるかもしれない読者諸君様にわかりやすく言いますとですね。海を泳ぐ感じ?にちょっと似ているかもしれません。クロ―ルしたり、平泳ぎしたり、あんな感じのしんどさが付きまとうのです。魔力が豊富にあり、空中浮遊に慣れている方はなんてことはないんですが、MPが尽きかけている人にとってみればそれはそれは大変な大惨事になります……。チラ」
ユリ―シアは顔を真っ青にして空中に浮遊している今の現状を鑑みる。空中浮遊に回すMPがもう既にないのだ。
「え?え?え?きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!落ちるううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!」
真っ逆さまに空中から転落するユリ―シア。
魔女と獅子舞、勝敗の行方は如何に?
つづく
読んで下さってありがとうございました。




