0-36話 第一次降魔事変 その2
このエピソードは悪魔の自己紹介にあたるお話になるのかなと。本来はもっと早く主人公を出して、悪魔も出してガンガン戦わせる予定だったんですが、予定が遅れに遅れてしまって、主人公の登場がまだまだ遅れそうなので(主人公なのにw)せめて、敵役の悪魔だけでも出してあげようという意向です。本来収録するはずのなかった設定だけあったお話を書き起こしております。自分の中でなかなかイレギュラーな事なので無駄にドキドキしてます。一瞬の閃きもまた小説を書く醍醐味なのかなとも思ってます。それでは36話のはじまりはじまり~!
「悪魔!!貴様だけは……!!貴様だけは許せん!!!我が妻ソフィーと息子レオとシーザーの無念!!今こそここで晴らさせて貰うぞ!!おおおおおおおおお!!」
プルートゥの怒りのままにドラウグニィ―ルの巨体から繰り出される鋼鉄の豪椀が悪魔の顔面を捉えはじき飛ばす。派手に後方にはじけ飛んだかと思うとすぐさま体勢を整え、プルートゥが駆るドラウグニィ―ルを悪辣な表情で見据え睨みつける悪魔。雄叫びを上げながらそのまま拳とも手刀ともとれない一撃を豪快に勢いよく振り回してくる。
「遅い!!ただやみくもに力任せに振り回すだけか!!所詮はなんの知性もないただの化け物に過ぎない貴様に!!私の磨き抜かれた究道闘術が見切れるものかあああああああああああ!!」
ドラウグニィ―ルのコクピットの構造は従来のメタルスレイヴとは異なっていて、通常のグリップ・ギア式ではなく、身体にリンクした感応機器を通じ、身体を直接動かす事で機体も呼応して動くダイレクトモーションリンクシステムを搭載している。これは約半世紀、伝説の狂戦士として戦場の最前線を駆け抜けたプルートゥ・シュタインベックの肉体の強靭さ、及び、戦技、剛剣と一身一体になる格闘術・一子相伝の究道闘術・レギア・クォンタムの威力を最大限まで引き出す為であった。
悪魔の一撃を巧みに躱し、巨体ながらも軽快なフットワークで怒涛の拳の連打連撃を見舞うドラウグニィ―ル。100mの巨体とは思えないほどの凄まじいスピードだ。
グォアアアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
悪魔が力まかせに振リ回す一撃は一向に洗練を見ず、プルートゥのドラウグニィ―ルには掠りもしない。カウンターでドラウグニィ―ルの鋼鉄の拳が、人体におけるいわば急所といわれるおよその部位に容赦なく深く突き刺さっていく。それは明らかに明確な強い殺意が込められた生物を殺し尽す最上の選択肢とも捉える事ができた。
ギャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアス!!!
激しくのたうち回る悪魔、その姿が哀れで滑稽に見えたプルートゥは悪魔を怒鳴りつける。
「立て……!!わかるか?悪魔よ?それが痛みだ………!!貴様の今のその姿が、貴様が奪ってきた罪もない命に対しての贖罪であるらばまだ足りん……!!立てええええええええええええええええええええ!!!」
アガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
ふらふらと負傷した傷を庇うように立ち上がる悪魔
悪魔を見据えると、プルートゥの身体からドス黒いオーラが一気に弾け、プルートゥの表情が悪鬼羅刹の如く豹変する。
「一気に決めるぞ!!狂 戦 士 形 態(モ ー ド ・ ベ ル セ ル ク)!!!!おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
怒りの精霊ドゥバグの力を得て狂戦士と化したプルートゥ。そしてドラウグニィ―ルの外部装甲が展開し、文字通り狂戦士形態という禍々しいフォルムに変形していった。間違いなく現存するメタルスレイヴ史上最強のパワーを秘めた悪魔殺し(デビルバスター)ドラウグニィ―ル・ベルセルクの誕生の瞬間である。その時、プル―トゥがいるコクピット内に無線が入る。ガウディからの無線であった。
「プルートゥ!!!!狂化が進みすぎている!!危険だ!!!そして今はまだ悪魔に手を出してはいかあああああああああああああああああああああん!!」
プルートゥは怒りの表情で言い捨てて無線を切る。
「黙れ!!ガウディ!!!この千載一遇の勝機を逃してなるものかああああああああああああああああ!!!悪魔!!貴様を穿つは我がレギア・クォンタム最大の奥義!!喰らうがいいいいいいいい!!!!闘舞!!虚空無円!!」
100m級の超大型の機動兵器とは思えない凄まじいスピードで、悪魔の死角へ一瞬にして潜り込み、強烈な掌打を叩き込み、次々に拳、蹴り、肘打ち、手刀を打ち込んでいく。人体を模した人型である機動兵器がいかに凶器であるか、今のプルートゥと一心一体となったドラウグニィ―ルを見れば誰の目からも火を見るよりも明らかであった。その非道にも見える息をつかせぬ連続攻撃は速度と強度を増しながら、悪魔を中心に死角へ死角へ徐々に独特の反時計周りの円を描く。100m級の大型機には到底不可能であり、軽量級の現存するほぼ全てのメタルスレイヴの最大戦速をも遥かに凌駕する尋常ではないスピードの猛攻の乱舞を次々と叩き込んでいく。
相手が倒れる事を決して許さない永久に続くこの無限地獄のような闘舞。闘争心に溢れる勇ましさと同時に、心優しい穏やかさも兼ねていたプルートゥはこの技で奪うつもりのない大切な強敵と言える好敵手の命を奪った事を大いに嘆き悲しみ、この技を禁じ手としていた。だが、妻と子を悪魔に殺されたプルートゥは休む事なく筆舌に尽くしがたい鍛錬を経てこの技を対悪魔の必殺の一手として解禁したのである。苦戦必至である紛れもない最強の敵、悪魔を一方的に叩きのめすその様子を見たオルファンとヴィクトルは悪鬼羅刹の如きプルートゥの無慈悲な猛攻に心底奮え上がった。
オルファンがヴィクトルに恐る恐る話かける。
「あ……あれは………まさか……こ……虚空無円……!!レギア・クォンタムの最大奥義……!!噂には聞いていたがよ……!!え……えげつねえ……!!一方的すぎてちっとばっかし悪魔ちゃんに同情しちまうぜ。普通に考えてありゃもう死んでんだろ……?やっぱ俺の勘は当たってたぜ……!!一番恐ろしいのは悪魔なんかじゃなくてブッチ切れた時のプルートゥなんだって!おっかねえ……!ああなっちまうともう誰にもあいつは止められねえよ!!」
ヴィクトルも額に汗を浮かべながらオルファンに答える。
「狂戦士形態で人体と機体ともども潜在能力を限界以上に引き出しているとはいえ……!!パワーは勿論の事、スピードすらリミッターを解除した我がダークナイトメアを越えつつある。奴め……!!一体どんなふざけた鍛錬を積めばあの境地に辿り着けるんだ……?」
オルファンとヴィクトルがひきつった表情で密やかな対話をしている間に、プルートゥ駆るドラウグニィ―ルの虚空無円は更に速度と威力を増し遂にトップギアに入った。最早全ての攻撃が一撃必殺の威力を秘め、悪魔にの意識と命を刈り取れるほどの猛撃と化していた。そして……。
レギア・クォンタムの極意は、狂戦士の最大の剛剣撃による一刀を敵の急所に叩き込むためにある。実はこの必殺の闘舞すら、プルートゥにとってはその本命の一刀を叩き込むための伏線であった。地上における怒涛の闘舞で敵の注意を完全に地に引きつけたその瞬間、天高くプルートゥのドラウグニィ―ルが肩に穿いた身の丈を越す100m以上の超弩級霊機対艦震動大剣、ヴァルムンクを抜刀し、舞い上がる。
散々に打ちのめされた悪魔は既に蟲の息で、プルートゥのドラウグニィ―ルが天空にあり、今まさにヴァルムンクを自身に向かって渾身の力で振りかざそうとも気づきもしない。
プルートゥの怒号が響き渡る。
「どこを見ている!?私はここだああああああああああああああああああああ!!!悪魔!!!貴様の命運を今ここで断つ!!!!壱の太刀!!龍牙凄皇烈斬!!!!」
悪魔の脳天からヴァルムンクを突き立て龍の覇気を模したどんなものでも瞬く間に斬滅する必殺の剣技で真っ二つに両断するプルートゥのドラウグ二ィ―ル。そしてその程度ではプルートゥの怒りは収まらず更に加えて。
「まだだあああああああああああああああああああ!!弐の太刀!!滅壊修羅光華閃!!!!」
次は大きく横に半回転してして全バーニアの出力を全開に横一文字にヴァルムンクで縦に両断された悪魔を閃光のような剣戟で薙ぎ払う。十文字に斬り裂かれ肢体が無惨にもバラバラになる悪魔
アギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
この世の物とは思えぬ断末魔が響き渡った。しばしの沈黙が流れる。悪魔打倒の悲願を成就したプルートゥのドラウグニィ―ルは力を使い果たしたのかヴァルムンクを地に突き刺し、膝をついた。プルートゥは声を震わせながら大粒の涙を流し天を仰ぐ。
「長かった……!!本当に長かった……!!ソフィー!レオ!シーザー!仇は討ったぞ!!!お前たちの無念は私がこの手で今晴らした!!私もいずれ……みんなの所に……逝くから……待っててくれ……!!これでイシュタリアいやアサイラムも救われるはず……!!」
オルファンは初めはプルートゥが悪魔を倒した事態が信じられず、恐る恐る、そして勝利を確信して飛び跳ねながら喜びの声を上げる。
「マ……マジで……や……やりやがった……。本当にひとりでやっちまいやがったよおおおおおおおおお!!!プルートゥ!!つええええええええええええええ!!お前!!やっぱ超すげえよ!!!年甲斐もなく感動しちゃったぜ!!!うわ!うわ!涙出てきた!」
ヴィクトルも圧倒的なプルートゥの底知れぬ強さにただただ驚愕していた。そして想定を遥かに超えるプルートゥとドラウグ二ィ―ルの恐るべき強さに最早乾いた笑いしか出てこなかった。
「あの野郎……!!お……俺と戦ったあの時は全く本気じゃなかったっていうのか……!?ふふふふふ………あっはははははははははは!!あのバカ一体どこまで強くなれば気が済むんだ……!?」
急いでプルートゥに近づき、みんなで胴上げでもしてあげようと目論むオルファンのソルレリアスとヴィクトルのダークナイトメアは、寄り添い腕を組み頭をひっつけながら密かに談笑する。
「なははははは、あいつさえいれば俺もお前もいらなかったなあ。こういう展開になるとはちょっと拍子抜けだぜ。こちとら俺もソルレリアスも結構気合い入れてきたんだぜ?最終決戦仕様ってやつだ!100年ぶりに本気出すつもりだったのによお」
「ふふふふ。そいつは残念だったな。強すぎるプルートゥが悪い」
「そーだ!!強すぎるあいつが悪い!!美味しいとこ全部持っていきやがって!!あんにゃろー!!ヴィクトルよぉ。もう一緒に酒の席でプルートゥの事煽ったり、こバカにすんのやめない?あいつあのテンションでキレれられて暴れられでもしてみろ?多分俺ら殺されちまわあ。おっかねえ」
「最もだ。あいつのバカ力がこれほどまでとはな。笑えん冗談だぜ。奴を怒らせないように今度から静かに酒場の片隅でちびちびと飲もうか?」
オルファンとヴィクトルの親友同士の小粋な冗談がお互いツボに入ったのか。ふたりは徐々に肩を震わせ、しまいには大笑いをする。
「今までちびちび飲んだ試しなんかねえだろうが!!」
「「わっはははははははははははははははははははははははははははは!!!」」
プルートゥのドラウグ二ィ―ルに近づいて抱き着こうとするオルファンのソルレリアスとヴィクトルのダークナイトメア。オルファンか歓喜の声を上げる。
「やったぜ!!プルートゥ!!!大金星だ!!反逆の狂戦士は伊達じゃねえってか!!すぐさま悪魔討伐の宴をやるぞおおおおおおおおおおおおおお!!!主役は勿論お前だあああああああああああああ!!逃げんなよ!!今夜は朝まで飲むぜええええええええええ!!」
眉間にしわを寄せたプルートゥが険しい顔で近づくオルファンと、ヴィクトルを制止、警告する。
「待て!!!!な……なんだ……この妖気は………!!???」
DBC本部の特務コントロール調整機関室からドラウグ二ィ―ルの出力調整及び、悪魔の生態調査を兼務しているガウディが呟く。
「悪魔は……し……死んではおらん……!!なんという事だ……。奴め、細胞レベルの再生能力を有しているのか……!!??」
ヴィクトルがオルファンに声をかける。
「お……オイ!!アレを見ろ!!」
「い!!??」
ヴィクトルの指し示す方向に目をやるとオルファンはぎょっとする。
ズルリ……。ズルリ……。ズルリ……。ズルリ……。ズルリ……。ズルリ……。と
十文字に四肢断裂したはずの悪魔のそれぞれの身体が部位が、蠢いて徐々に寄り合っている。そして各部位は混ざって溶けあっていく。プルートゥが渾身の力で断裂したはずの悪魔の身体が信じられない方法で見事に修復してしまった。しかし少々奇妙な形ではある。
オルファンは目の前で起こった事をにわかには信じられずに、指をさしながら悪魔自身にその違和感を恐る恐る問いかけてみた。
「あ……あのよお……。悪魔さんよお? ふ……ふざけた……再生能力ってのはわかったんだけどさあ。あ……頭と足、逆になってんだけど。それ……いいの?」
そう、断裂した部位が寄り合って修復したはいいが、本来の身体の形成とは違う。頭が足の部分に誤って配置され、足が頭の部分に誤って配置されてしまっていた。悪魔はおどけたように舌を出しと思ったら、ピョンと小さく飛び跳ねると悪魔の身体がぐにゃり、ぐにゃりと変化し、元の身体に戻っていった。
その一連の異常ともいえる出来事に、プルートゥ、オルファン、ヴィクトルは見てはいけない物を見てしまったかのように顔面蒼白になって絶句した。
そして悪魔はおもむろに構えを取る。今まで天衣無縫の野生の赴くままの本能のみの攻撃だったのだが、なんとここで初めて武術の構えのような行動を取ったのだ。その構えに一番驚愕したのは何を隠そうプルートゥだった。かつてのプルートゥのドラウグ二ィ―ルと鏡写しのような同じ構え。
「ま……まさか……!!その構えは……!!私の……レギア・クォンタム、天地陰陽の構え!!バカな……!!!」
そして、悪魔はその構えから驚くべき攻撃の手段に出た。プルートゥのドラグ二ィ―ルの死角に一瞬で潜り込み、痛烈な掌打を叩き込み。超高速な動きでドラウグ二ィ―ルを中心に徐々に円を描きだしながら、拳、蹴り、手刀、あらゆる肉弾攻撃を繰り出してくる。虚を突かれたプルートゥはその猛攻を防ぎ切れない。その尋常ならざるダメージを負って確信したプルートゥが絶叫する。
「間違いない!!!これは闘舞・虚空無円!!!!先刻の動きを見て覚えたというのか!!!!そんなことは!!そんなことはああああ断じてありえない!!!がああああああああああああ!!!」
オルファンは悪魔の異常な生態に、顔面蒼白になったまま小さく呟く。
「こいつ………。知性があるぞ……!!……戦い方を……学んでやがるのか……!?」
本当の地獄はこれから始まる。
つづく
読んでくださってありがとうございました!! 次回もお楽しみに!! 尚ディアボロスは不定期更新です。




