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ディアボロス  作者: HEN
episode 1 イシュタリアの精霊王
32/71

0-32話  バウンティディヴィジョン  ヴァナティック邸の攻防  その31

はい。32話更新です。誠に勝手ながらマイペースな不定期更新を続けさせて頂いております。以前はストレスでどうにかなりそうでしたか、今はほとんどストレスを感じず楽しく更新できています。更新頻度は非常にゆっくりで申し訳ないのですが、完結まで必ず書き上げますので読者の皆さまものんびりとお付き合い頂ければと幸いでございます。あと新たに評価してくださった方、本当にありがとうございます!!これからもお互い頑張っていけたら嬉しいです!それでは32話のはじまりはじまり~。

ドイルは得意気にポーズを取り勝ち誇る。


「スコアカウンターオープン!!うははははははははは!!俺様の撃墜スコアはこれで200機突破だ!!おらああああ!!流石俺様だぜ!!どうだあああああ!?調子コイて敵の策にドハマりして無様にやられちまって満身創痍の貧弱エリートメガネくんよお!! 本当のコードの力って何の事ぉ?お前のコードってそうやって末期の病に犯された病人患者みたいに這いつくばって死にかける事なのかい?そいつはお似合いだぜ!?ぶわっははははははは!!本当のコードってのはこう使うのさ!こりゃあ王手だな!残念だなあ。クソメガネ。俺様の勝ちはもう揺るがない。安心しろ。お前の分の飯も俺様がぜえんぶ喰ってやるよ??ありがたく思えよ?あーーーん?」


グレイヴ機のメインモニターに映し出されるドイルの非常に傲慢かつ、挑発的な態度と、小憎らしい顔芸を散々見せつけられ、額に血管が浮き出るほど怒り狂うグレイヴ。


「ドイルゥゥゥゥゥゥウウ!!!貴様あああああああ!!ちょっとばかし貴様のチンケな魔術(フォースが上手くいったからって調子に乗りやがってええええええ!!!この勝負まだ俺は負けたわけじゃないぞ!!」


モニター越しに怒り狂うグレイヴの表情が、思いのほか滑稽で楽しくてしょうがないドイルは更に増長して挑発する。


「ぎゃははははははははははははははははははははははは!!!!いやいやいやいやいや負けたわけじゃないぞって……!!!メガネくんよ。今の状況わかって言ってんのオ!?お前の機体、装甲材全部剥がされて、左腕と右足が跡形もなく吹っ飛んでるんだぜ!??天下のデスペラードが無様なもんだぜ……!!オラよ!ふらついてんじゃねえか。満身創痍の負け犬は引っ込んでな!!後は全部俺様が頂く。さっきは魔力を一気に消耗しちまったが、癖になるな!これがレベルアップってやつなのか?奴等を殺れば殺るほど更にデカい魔力が!力が!俺の身体に集まってくる!今度はあんな小手先だけのみみっちいミサイルなんかじゃあねえぞ?もっともっと凄い事をやってみせてやるぜ!!!!」



「俺の……デスペラードが……どうしたって?ファクター3567827。シーケンス0カウント。リバースコードマニファクチュア。ワーズ&ワース、創生真呪文代入。"其れ即ち原子の心、吹きすさぶ分子の風、魂が還る場所、母なる宇宙(ソラの呼び声" コード 復元魂魄(リヴァイヴァ・アソート)



「はあ!?」



グレイヴがコードの詠唱を唱え終わると、みるみるうちに失われたグレイヴ機の左腕と右足がにょきにょきと生えてきた。機械のような無機物の作りではなく。筋肉繊維が一本一本見えるような人間の人体のような作りである。そしてそのフォルム、造形は女性……?の腕と足のような繊細な形を形成していた。グレイヴはドイルに向かってモニター越しに指を差し、吐き捨てるように言って聞かせる。


「これで文句はあるまい……!!魔力が高まってるのはお前だけじゃないんだぜ……!?」



でたらめなグレイヴの魔術(フォースを使った機体の再生力に呆れ果てた表情で呟くドイル。



「あ そ 相も変わらず化け物なのはお互い様かよ……」



一方ドイル機の悪夢のようなミサイル攻撃で本陣が陥落してしまったサンダース率いるBF隊はというと大混乱が起こっていた。



「うわああああああああああああああ!!!悪夢だ!!!もう嫌だあああああああ!!金なんかいらない!!!もういらない!!!!!」



「あんなのに初めから勝てっこなかったんだ!!俺には家族がいる!!妻や子供がいる!!!もうこんな得体のしれない連中相手に命を張るのはやめだあああああ!!」



「どけよ!!!どけどけどけ!!!!死にたくない!!!死にたくない!!!死にたくない!!!!そこをどけえええええええ!!」




サンダースは次々と逃げ惑うBF隊の隊員達を満足に引き留められずにいた。静かに眼を瞑り唇を噛みしめる。本陣が陥落し、自軍の兵の半数以上を失いった。ミゲルに託された必勝の策の全てが水泡に帰そうとしているのだ。どう見てもこの時点からの逆転の目は薄い。事実、ドイル、グレイヴ両名が駆るデスペラードの魔術(フォース)の力はサンダースの想像を絶するものがあった。



ピピピピ……ガガガガガガ……!!!



耳障りな妙な駆動音、機械音が聞こえる。なんとその正体は完全なるAIであるコマンダードール達がサンダースの命令を無視し撤退する用意を初めていたのであった。その信号、そのシグナルはまさに恐怖そのものであり、サンダースはその厳然たる事実に真っ青になり改めて絶望する。機械制御の完全なAIであるコマンダードール達も震え上げさせる恐怖とは如何なるものか?それ即ちこの世の物ではない魔術の未知の、超常の力に他ならない。しかしサンダースは知っていた。


負け戦にも矜持はあると。撤退には撤退を成功させるための戦いがあるのだ。ただ尻尾を巻いて敵に後ろを見せるという安易な行為は即、全滅に繋がるいかに危険な事かサンダースは知っていた。


周囲に鬼か悪魔か厳かな声が響き渡った。グレイヴの声である。



「逃がすと思うのか?俺は言ったはずだ!!一兵たりとも逃さんと!!貴様らはここで終わりだあああああ!!うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」



グレイヴ機に再びとてつもない魔力が集まり始める。空間が歪み、大気が震え、特殊な力場を形成しだす。ラッキーが恐る恐るドイルに提言する。



「め……メガネ兄ちゃんの……魔力がどんどん上がって……!!!3000IMG!!!4500IMG!!6500IMG!!な……なんてことだ!!まだ上がるぞ!!」



ドイルはグレイヴの魔力を確かに超えてたはずだった。しかし更に高まっていくグレイヴに苛立ちと悔しさを隠し切れない。



「オイオイオイオイ……!!今の俺ならあのバカが出してる魔力が肌でわかるぜ……!!あの野郎おおおおおおおおおおおおおおお!!!なんてえ魔力だよ!!!!!あの時さっさとくたばってりゃよかったのによ!!!」




魔力を極限まで高めたグレイヴの眼がひときわ紅く光る。



「ファクター00000045。シーケンス0カウント。リバースコードマニファクチュア。ワーズ&ワース、大業創生真呪文詠唱!!"空に託す我が天命、雲に響く我が声雷、風が逆巻く我が探求!ジィオー・ニーズ・リーヴァ・ル・デリス・ファラ・ヴォム・フラド!!大蒼天嵐コール・ストーム・ヴェストリア!!!!!!」



グレイブ機はひときわ強い光のオーラを発しながら天高く舞い上がる。世界の理すら変えるほどのグレイヴの大魔術が顕現し始める。


サンダースは逃げ惑うBF隊員達を一喝する。


「うろたえるなあああああああああああああ!!!!我々はまだ負けてはおらん!!!!!!奴等はあれほどの大魔術を行使しているのだ!!!何らかの代償があるはずだ!!!この世にあれほどの超常の力をもたらす事が、なんらノーリスクで行えるなどありえんのだ!!代償がないはずがなああああああああああああい!!やつらはもう既に限界を迎えつつある!!今に!!今に!!今にいいいいいいいいいいいいいい訪れるはずだ!!! 魔力、エネルギーを使いすぎたガス欠状態!!冷却期間!!いや!!そんな生易しいものではない致命的なペナルティがデスペラードに!!今にいいいいいいいいいいいいい!!!!そうであるな!!ケイジィィィィィィィィィィィィ!!!!!????」


サンダースの一喝に準じるようにケイジも自身の分析結果をここぞとばかりに述べる。


「は……はい!!い……今までのデスペラードが発現した魔術兵器の数々を分析してみた結果、発生したエネルギー換算だけでも、400000RGDレギュレイド)をゆうに超えています!!このエネルギーは大型空母十数隻分を動かせるほどの計算になります!!このような甚大なエネルギーを17m級のスレイヴがいつまでも賄えるとは到底思えません!!お……恐らく永久機関といわれるフォースエーテルリアクターを過剰にオーバーロードさせて、莫大なエネルギーを発生させ、デスペラード内部にある動力源のコアに直結させる事で発揮している非常に危険極まりないエネルギーだと思われます!!それだけでは400000RGDに達する計算になりませんが、未知の領域が多すぎます!!しかしデスペラードの設計上の限界をゆうに超えた危険な力だと思われる事と、リミットが訪れると恐らく機体はオーバーロードに巻き込まれ大破同然になる可能性は非常に高いと思われます!!」



「聞いたか!!!皆の者!!!!今は確かに我が軍、最大の苦境である!!しかし敵も既に限界が見えているのだああああああああああああ!!!!今こそ奮起せよ!!ブラッディファントムよ!!!!逃げて守れる誇りなどありはしないのだあああああああああああああああああああああああ!!!!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


サンダースのここ一番の激が功を奏し、再び士気が上がるBF隊。サンダースがいよいよ最後の攻撃に出る。



「工作班!!!用意は出来たか!!!」



サンダースの叫びに呼応するようにおびただしい数のコマンダードール達が駆るスレイヴらが一斉に整列する。その全機の機体の後背部には先ほど猛威を振るったプラズマディウス陽子爆弾がしっかりと組み込まれていた。


「これぞオペレーション!ファイナル・カミカゼ!!グレイヴ!!そしてもうひとりの小僧よ!!この地を貴様らの墓標とする!!!ん??な……なんだ!?雨……だと??」



天高く舞い上がり、空中で静止しているグレイヴ機に更に魔力が集中する。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!



大空が唸りをあげ、快晴に近かった空が急に曇り、突如雨が降ってきた。露骨に嫌な顔をするドイル。



「おいおい!ラッキー!!雨が振ってきやがったぜ!まいったなあ!さっきまでお天道さんが見えて気ン持ちのいい快晴だったのによ!!雨の戦場って俺ァ、あんまし好きじゃあねえんだよなあ」



突然の雨の到来を怪訝に思うラッキー。



「雨だって?待って!アニキ!今日の降水確率は0%なはずだぜ?」



「そらあ確率だからな。天気予報が外れることもあるんじゃねえの?」



「いやいや戦術式量子コンピューターを搭載したディヴィジョンの超高性能AIのオイラが言ってるんだぜ?目まぐるしく変わる戦況に対応できるようになってんだからオイラのAIの気象予測は天気予報なんてチャチなシロモノじゃねえもん」



「てことは?」



「うん。今日は絶対雨なんか降らないはずだ」



雨が降ったと思えば途端に暴風が吹き荒れ、更に雨の勢いが増す、瞬く間に視界を覆い尽くす豪雨に変わり、異常な天候の変化に驚くドイルとラッキー。



「おいおいおいおいおいおいおいおいおい!!!こりゃどういうこった!!!すげえ雨で前が全く見えねえぞ!!!ラッキー!!フロントモニターのクリーナー出せ!!クリーナー!!しかもこの吹き飛ばれそうな勢いの風はなんだよ!!立ってんのがやっとだぜ!!今日の天気は一体全体どうなってんだ!?」



「あ……明らかに異常だよ!!そして尋常じゃない魔力の高まりを感じる!まさかこれってメガネ兄ちゃんの魔術なんじゃ?」



「うはははははははははは!!!そいつはいいや!!雨降らして風吹かすだけのちゃっちい魔術なんてあいつにお似合いだぜ!あいつ顔に似合わず家庭菜園が趣味つってたから野菜育てるにはいいんじゃあねえの?雨降らせるからさ!」



その瞬間ドイルのデスペラ―ド目がけて轟音と共に矢のような雷が降り注ぐ、慌てて身を翻し躱すドイル機。



「おわっちゃあ!?」



かつてドイル機が陣取っていた地面に穴が開き、黒こげになっている。青ざめた顔でゾッとしお互い顔を見合わせるドイルとラッキー。



「ラッキー……。これってよ……」



「ま……まさかメガネ兄ちゃんは……。天候を……。天候そのものを操ってるっていうのか??そんなことが……」



「そ……そんなバカな事があるわけねえだろ……?いくら魔術たってそこまで無茶苦茶な事できるわけねえよ……。ははは」



一方サンダースもこの異常な状態に危機感を感じていた。



「早い!!天候が急激な変化を起こす事はままありえること!!しかし、雨から豪雨になり!風から暴風が吹き荒れ!雷が鳴り響く!この展開があまりにも早い!!よ……よもや……この現象も……グレイヴのデスペラードの魔術が為せる業ではないのか!?なんにせよ嫌な予感がする!!とても嫌な予感がする!!!

逆転の勝利を掴み取るには最早一刻の猶予もない!!!我が僕コマンダードール達よおおおおおおおおおおおおおおお!!!BFの狂気を刻めええええええええええええええええい!!オペレーション!!!ファイナル・カミカゼえええええええええええええ!!!始動おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!これが正真正銘我が軍の最後の攻撃である!!!!!!」




サンダースの号令と共に、おびただしい数のスレイヴ達が勢いよくグレイヴ機に次々ととりつく。全くの無防備な状態でそれらを受けるグレイヴ機。とりつくスレイヴ達の数が多すぎて、もみくちゃになり、グレイヴ機の全容がおぞましく跋扈網羅するスレイヴ達の姿で全く見えなくなってしまった。


スレイヴ達1機1機の後背部にはしっかりとプラズマディウス陽子爆弾が組み込まれている。サンダースは思いのほか自身の策が上手くいった事にほくそ笑む。



「うわっはっはっはっは!!!何をするかと思えばまさかの無防備とは恐れ入ったぞ!!!このおびただしい数のプラズマディウス陽子爆弾を見て恐れをなしたと見えるなあ!!! その判断は正しい!!潔し!!グレイヴ!!そしてデスペラードよ!!最期に褒めておこうか!貴様らはよく戦った!!!素晴らしい強さだったぞ!!間違いなく歴代最強の敵だった!心静かに散るがいいいいいい!!!起爆スイッチ点……!!うん?なんだ?これは……雪……!?」



ピタリと豪雨が止み、今度は雪がちらつき始める。ラッキーは確信を持って言い放つ。



「今は7月の真夏日だぜ!!雪なんて絶対振らねえ!!振るわけねえよ!!間違いねえ。メガネ兄ちゃんは魔術によって天候を制御している!!アニキ!!やっぱりあいつ只者じゃねえって!!」



「いや……あのバカがそんな大それた事しでかすなんて生意気もいいとこなんだがよお……。お……お……俺……寒いのマジでダメなんだ……!!ラ……ラッキー!!た……頼む……!!暖房だ!!暖房を効かせてくれ!!」



「お……おしきた!!!任せとけい!!」



季節外れもいいところの雪の到来に、デスペラードのエアコンを冷房から暖房に切り替えるラッキー。



雪がちらついたと思った瞬間、豪雪が暴風と共に吹き荒れる猛烈な吹雪となって周囲に襲い掛かる。ドイルのみならず今度はラッキーまで震え出す。



「寒い……!!なんて寒さだ!!瞬く間に雪が積もっていく……!!今、気温は何度になってんだ??……う……嘘だろ……マイナス100℃以下だって……!!アニキィィィィ!!このままじゃあマズいよ!!!凍っちまう!!!!」



「あ……あうう……あ……ああ……ラッキー……!!つかねえんだ!!暖房が凍りついちまってつかねえんだ……!!デスペラードの間接も雪で埋まっちまって身動きとれねえ……!」



「アニキィィィィィィ!!諦めるんじゃねえ!!!なんか方法があるはずだ!!」



「あ……あんの野郎おおおおお!!……ふ……ふざ……ふざけた真似しやがって……!!メ……メガネのくせにいいいいいい!!と……凍死したら絶対化けて出て祟り殺してやる……!!ラッキー!!もうこの手しか残ってないんだぜ!?」



「なんだよ??って、うわっ!!!」



ドイルは振るえる手でラッキーを抱きかかえそのままぎゅうと抱きしめる。ドイルは涙を流し恍惚の表情を浮かべながら呟く。悲しいかなその流した涙までも凍っていく惨状である。



「モフモフしてあったけえ……!本当にお前が俺のサポートAIでよかった……!」



超高性能AIである自分の身が、湯たんぽ代わりにされているラッキーは、心底不満そうな顔つきでふてくされる。



「そいつはどーーーも!」



ドイルはラッキーを抱きしめつつ、虚ろな表情で訴えかける。



「ね……眠い……!な……なんか急に猛烈に眠くなってきたぞ……!!ラッキー!!ざ……残念!!お……俺の旅はここでおわ……おわ……おわ……」



その訴えを聞いた途端ラッキーは激昂して、ドイルの顔面に噛みつき、頬をバシバシと平手打ちをする。



「アニキ!!!!寝るなああああああああああああああああああああああ!!!!寝たら死んじまうぞおおおおおおおおおおおおおおおお!!!あ……ありゃ……?オ…オイラもなんだか急に眠気が……」



ラッキーまで猛烈な眠気に襲われ虚ろな表情になっていく。そのラッキーの頬をぎゅううと限界まで引っ張るドイル。



「バ……バッカやろう……!お前が寝てどーすんだ!!お…俺とお前はコンビなんじゃなかったのか!!俺とお前で泪橋を逆に渡って悪魔(ディアボロス)をぶっ倒すって誓ったじゃあねえか!!」



「あううう……そ……そんな約束したっけ??ふぎぎぎ……寒いいいいいい!!寒すぎるううううう!!」



更に気温が急速に下がり、冷たい冷気がコクピット内を吹きつける。ドイルとラッキーの身体が本格的に凍りづけになっていく。ふたり抱き合いながら声を揃えて叫ぶ。


「「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!ヤバい!!ヤバい!!ヤバい!!!」」


ドイルの表情が引き締まり、意を決したように言い放つ。ドイルの瞳が蒼く光る。


「唇まで凍りつく前にデスペラードよ!!いっちょやってみっか!?ファクター425348。シーケンス0カウント。リバースコードマニファクチュア。ワーズ&ワース、定型疑似呪文。"傷心に苛まれ、孤高に彷徨う旅人よ、暖を取り英気を養え" コード 寒防暖気灯!!(マルクト・カンテラ)」



ドイルがコードの詠唱を唱え終わると、デスペラードの機体の身体とコクピットを優しく暖かい光が包む。徐々に冷気で凍りついた箇所が溶け出し、暖かく優しい風が吹き込んでくる。



凍死寸前だったドイルとラッキーは抱き合いながら涙を流し声を揃えて歓喜の声を上げる。



「「あったけえええええええええええええ!!!」」



「死ぬかと思ったぜ!!生き返った気分だ!!あの野郎!!こんな無茶苦茶な魔術ぶちかましやがって今からあいつんとこいって思いっきりぶん殴ってやるぜ!!」



「うっはあ!!アニキ!!外見てよ!!!外!!!!」



「外だあ!?ゲッ!!!???」



ラッキーに言われて外の景色を見たドイルはぎょっとする。太陽の照り付ける真夏の荒野だったヴァナティッテク邸の庭園が辺り一面、豪雪や氷河で覆われた異様な雪景色に豹変している。違う意味で寒気を覚えるドイル。


「流石に引くぜ……この有り様は!!……あいつ……!!一体全体何をしようってんだ!!!」



一方猛烈な吹雪に圧倒されているサンダースは困惑していた。



「ぬおおおおおおおおおおおおお!!!今は真夏だぞ!!!このような猛烈な吹雪に見舞われようとは!!!紛れもなくこれはグレイヴの魔術が構成する世界だ!!!!ぐうううう!!!機体が凍りついて満足に動かなくなる前に………!!決着をつける!!グレイヴの狙いは恐らく、吹雪や豪雪でプラズマディウス陽子爆弾を不発弾に仕立てあげるつもりだろうが!!核にも匹敵するプラズマディウス陽子爆弾は甘くはないぞおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!オペレーション・ファイナル・カミカゼえええええええ!!!点火あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」



凍りつき始める指先を強引に動かし、点火スイッチを押すサンダース。ありったけの爆弾をぶつけたのだ。爆発の余波の影響は計り知れない。



「全軍退避ィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!」



全軍に退避命令を出しつつ、ブースターを全開に吹かし、後方に下がるサンダース機。プラズマディウス陽子爆弾は悪夢のような鮮やかな大爆発を次々と起こした。


グレイヴの声が鋭く響く。


「二度も同じ手が通用すると思うなよ!?核に匹敵する爆弾でさえ今の俺には触れることさえ許されない!!コール・ストーム・ジェライド(吹きすさべ氷河!!)


が、しかし、その瞬間、グレイヴの瞳がよりいっそう赤く光り、グレイヴ機の周囲に強烈な冷気が集中し、大気が絶対零度近く一気に氷結する。プラズマディウス陽子爆弾らの大爆発は確かに起こった。しかし爆炎の軌跡は描いてるものの、その爆炎の軌跡そのものが圧倒的な冷気によって悉く完全に氷結してしまっていた。肝心のグレイヴ機にプラズマディウス陽子爆弾のダメージは一切届いていない。


サンダースは信じがたいこの光景に絶望し唖然とする。


「ま……まさか……!!まさか……こんな事がああああああああああああああああ!!!!」


グレイヴ機はプラズマディウス陽子爆弾が爆発し凍りついて形どった爆炎の軌跡の数々をハルバードで一気に薙ぎ払う。一斉に氷の結晶と化した爆炎の軌跡が砕け散り、辺り一面に散らばる。その在り様は非常に美しく、幻想的なある種の芸術美の域に達していた。


魔力が絶頂に達している鬼のような形相をしたグレイヴが唸るように呟く。



「今……俺 に 何 か し た か ?」



この奇跡のような所業と人間を越えた何者かになろうとしているグレイヴの表情に心底震えあがったサンダースは悟った。



「か……核だぞ!!核に匹敵するアサイラム最強の兵器が……こ……こうもあっさりと!!も……最早これまでか……!!!これ以上は全滅は必至!!!全軍!!!!撤退だああああああああ!!撤退ィィィィィィィィィィィィ!!!」



鬼気迫る表情のグレイヴがサンダースの撤退命令を遮るように言い放つ。



「言わなかったか?1人も逃がさないと?待たせたな。こいつを呼ぶの少々に時間がかかってしまった。味わせてやるぞ。俺とデスペラードの真の恐ろしさをな!!はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


限界を越えて更に魔力を上昇させるグレイヴ機。


プラズマディウス陽子爆弾の爆炎を凍りつかせて完封する信じられない所業を目の当たりにしたドイルは思わず感嘆の声を上げる。


「すっげ……!!いやいやいやいやいや!!あのくらい俺だってできらい!!!」


顔面蒼白になったラッキーがドイルに警鐘を鳴らす。


「ア……アニキ……!!い……今すぐ逃げて!!!できるだけ遠くへ!!遠くへ逃げるんだ!!あ……ありえねえよ……!!故障だろこれ?……故障じゃないのか!?メガネ兄ちゃんの魔力 5 6 0 0 0 IMGを越えてる……!!!5 8 0 0 0!!ま……まだ上昇している!!そしてオイラの天候予測に猛烈な反応があったんだ!!とてつもなくデカい嵐がこっちに近づいている!!!デカい!!デカすぎる!!この辺り一面吹き飛ばすほどのデカい嵐だ!!ま…まさかこの嵐!!メガネ兄ちゃんが呼んだってのか!?アニキ!!い……今すぐ逃げるんだあああああああああああああああああ!!!」



「あんにゃろう」



ラッキーの決死の報告を聞いて、怯えるどころかニヤリと笑い、逆に闘志がメラメラと体中に湧いてくるドイルであった。



つづく




























読んでくださってありがとうございましたー!!評価、感想待ってまーす!!


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