6 初戦闘
出発準備が整ったのでまずは南西に向って進んでいった。出発時には同行する3人の少女たちが馬や地竜が引かないのに何故荷車や馬車が動くかと驚いていたのは何かほほえましかった(なごむな)。彼女たちにはこの世界の常識など教えてもらわなくてはどこでヘマするかわからない。それに可愛い少女がいる方が精神衛生上好ましいと思う。隣のエルザ嬢が何か睨んでいるような、気のせい気のせい。
隊列は先頭にSdkfz251、続いてSdkfz222・Sdkfz251/3・オペルブリッツ群・
Sdkfz251、殿にSdkfz222となった。地形が信用できないので1列で進んだため
300m以上にもなる長い車列となった。先頭のハーフトラックにはシュプリンガー
SS少佐、道案内のためにイエーネが乗り込んだ。私・エルザ、ベアトリスとクララ
はSdkfz251/3に乗車してもらった。所どころ小さい林があるものの見渡す限りの
平原が続いていた。たまに双眼鏡に背の低い緑色の人間のような物が見えたが、
ひょっとしてゴブリンかな。まあ、近づかないなら無視、無視。
イレーネは楽しんでいた。
「とてもいい乗り心地ですね。話をしても舌を噛まないし、お尻も痛くありませ
ん。が、少しうるさいのと匂いが気になります。けどやはり快適ですね」
「そうか? 乗り心地は悪い方のはずだが」
少佐は決してこの世界の馬車には乗るまいと心に固くちかった。
「もう少し行くとこの地方で一番東にある南北街道に出ます」
「そうか、そこからは街道を南下してどこかの村と交渉だな」
予定通り街道を南下して行くが今の所すれ違う馬車もいない。道幅は馬車
2頭分の幅で思ったより狭が、こちらが避ければすれ違えるだろう。街道とういこ
とで先ほどの平原と比べればスピードがアップしたように感じられる。しばらくすると、先頭の車長が注意を促した。
『前方ニ黒煙ヲ発見』
「停車せよ」
少佐から命令で先頭から順に停車して隊列は150mほどに縮まった。前方の
ハーフトラックから無線通信が入った。
「ルーファー、こちらザーゲ、どうぞ」
「了解、こちらルーファー、どうぞ」
「了解、前方に火災とおぼしき煙を発見しました。装甲車2両で偵察に行きます。
ルーファーはここで警戒待機願います。それと後方の(Sdkfz)222を前方に
回してください。どうぞ」
「了解、交渉が必要な場合に備えて、そのままイエーネをつれて行ってください。
イエーネにこの車は弓や剣では破られないからと、伝えてください。では、お願
いします。どうぞ」
「了解」
「トラックは円陣を組み歩兵は下車して警戒せよ」
Sdkfz251は、Sdkfz222を従え前進していった。後方からもう1台が街道脇
を進んできた。私のSdkfz251/3は前方でSdkfz222の後ろにつき、後方では街道
を離れトラックが円陣を組みはじめていた。
燃えているのは数台の荷馬車だった。1台の後ろの開口部からは3,4人の
冒険者らしき人物が折り重なるように倒れていた。奇襲を受けたのだろう、街道の
右側からボロを纏った汚い男たちが盛んに攻め立てており、馬車列の防御側が
劣勢に見えた。ドーン、右側雑木林の中から飛んできた火玉の命中によってまた
一人護衛とおぼしき男が倒れた。
「あれが火魔法か、弾薬にでも直撃さなければ何とかなるか。このまま80mまで
接近して下車。222は右側雑木林への射撃準備」
80mに近づいてOtMが降車するころには盗賊だろう者はほぼ護衛を制圧し
たのか多くの者がこちらを向いていた。
「お前たちは何者だ、さっさと立ち去れ。さもないと皆殺しにするぞ ……これから略奪するという時にうっとおしい」
これで、立場がはっきりとした。やつらは盗賊だ。
「盗賊がなにを言う!我々は商隊に助成する。武器を捨てて降伏しろ」
「なにをふざけた事を、望み通り皆殺しにしてやる。野郎ドモ殺ちまえ!」
30人ほどのむさ苦しい男たちが時の声を上げて走りだし、雑木林の近い所
から火玉も飛んできたこれを見たイレーネは恐怖で悲鳴をあげた。
「キャー!」
「イレーネ心配するな、すぐ終わらせる。222は射撃後盗賊の退路を断て。
フォイヤー」
小銃とMG34の射撃音が響き渡り、盗賊の男たちは血に塗れてバタバタと倒
れていき、彼らの武器の間合いに達することはできなかった。Sdkfz222は魔法の
発射地点とおぼしき所に20mmの榴弾を何発か叩き込んで、加速して突進した。
「歩兵前進」
盗賊の頭はSdkfz222の想像外のスピードによって逃げ遅れてしまい、先ほ
どまで絶対的に有利であったはずが、生き残りは自分と取り巻きだけになってし
まった。
『少佐、戦闘ニヨル負傷者ハイマセン。捕虜ハ3名デス』
「歩兵分隊は盗賊を拘束後、商隊負傷者の救護に当たれ。装甲車のクルーは
周囲を警戒せよ。負傷者救護のため、ルーファーに来られるよう要請してくれ。
さ、イレーネ仕事だ、行くぞ」
頷いたイレーネと共に降車し商人に近づいていった。あっけに取られた商人
たちは立ちすくんでいたが、気を取り直して商人スマイルを向けてきた。
「危険な所をありがとうございました。私はスクレー辺境伯領の領都マルモの商人
で、今回の隊商の代表レオナールと申します」
「我々は傭兵団“ヴリッツ”で、私は先遣隊隊長のシュプリンガーです。偶然煙を
発見して、我隊が先行して来ました。皆さん、お怪我はありませんか。負傷され
た方の救助支援を本隊に要請しましたので、もうすぐ到着するでしょう」
「重ね重ねありがとうございます。ところで、皆様がたはどちらからいらっしやい ましたか」
商人はOtMを見て不思議そうな顔をしていたが、それには触れずに聞いて
きた。
「ラリヤクから来ました」
イレーネがさらりと答えたが、それは貴女たちだけでしょと少佐は思ったが黙
っていた。
「獣人地域からですか、商人として、あまり聞かない名前でしたので気になりまし
て」
レオナールの言葉使いと表情が乖離していることに、少佐は気付いたがそ知
らぬ顔で答えた。
「いや~、新参者でして、これから有名にはなりたいと思います」
誤字脱字等おしらせくだされば幸いです。




