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狼王  作者: 海外のナラン
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第四話 理想と審問

 こうして、20号とヒルネはイノシシの肉をひとかたまり引きちぎると、周囲の喧騒から少し離れた、涼しい木陰へと移動してそれを口にし始めた。


 しかし、狼の群れの規律は非常に厳格だ。


 最下位の階級にあるヒルネは、本来であれば、格上の狼たちが食べ残した肉しか口にすることを許されない。


 そのため、多くの場合、最下位の狼たちにはしゃぶるための骨しか残されておらず、まともに腹を満たすことなど到底不可能なのが現実だった。


 だが、20号はその『ルールの盲点』を逆手に取っていた。


 彼は肉をほんの二口ほど、形式的に噛みちぎっただけで、まだ大部分が残っている肉の塊を「食べ残し」としてヒルネの前に差し出すのだ。


「さあ、食えよ」


 そう言って、何でもないことのように前足で肉を押し出す20号に、ヒルネは申し訳なさそうな視線を向けた。


 他の格上の狼たちの反発を買うことなど、ヒルネは少しも恐れていない。


 ただ、自分のために無理をして20号自身の食事が足りなくなっているのではないか――それだけが、何よりも心配でならなかったのだ。


「食べません。20号が、あと二口食べるまでは」


 ヒルネは頑なに肉に触れようとせず、まっすぐ20号を見つめた。


 その瞳には、普段の大人しさからは想像もつかないほど強い意志が宿っている。


「いや、俺なら大丈夫だ。もし本当に腹が減って我慢できなくなったら、その辺のモグラでも捕まえて食うさ。だからヒルネは――」


 20号はヒルネを安心させようと苦笑交じりに言ったが、ヒルネの微塵も揺るがない、確固たる視線に言葉を遮られた。


「……ハァ、分かったよ」


 これ以上言っても無駄だと悟り、20号は降伏するようにため息を漏らした。


 ヒルネの強い視線に負けて大人しく肉を口に運んだものの、それを飲み込むと、彼は急に真剣な表情を浮かべて深い沈黙へと沈み込んでいった。


 20号の頭を占めていたのは、ヒルネと共にこの群れから独立した後に待ち受ける、未知なる未来のことだ。


 それともう一つ――あの早朝、泥地の中でヒルネが静かに語ってくれた「人間」に関する話だった。


 そんな20号が隣で思慮にふけっている様子に、肉を食んでいたヒルネがすぐに気づいた。


 ヒルネは口を動かすのを止め、そっと寄り添うようにして彼の顔を覗き込む。


「どうしたのですか、20号。難しい顔をして……」


「いや、なんでもない。ただ、あの日にヒルネが話してくれた、人間のことを思い出していてな……ずっと考えていたんだ」


 20号は少しだけ言葉を区切ると、頭の中で疑問を整理するように間を置いてから、再び静かに、しかしどこか険しい声で語りかけた。


「なぜ、そんなバラバラな種類の獣たちが集まって、何の争いも起きないんだ? たとえ人間が作ったあの巨大な『家』の中で、頑丈な壁に遮られた別々の部屋に隔離されていたとしてもだ。野生の獣なら、同じ屋根の下に自分とは違う『異質の気配』があるだけで、その匂いや息遣い、壁の向こうの微かな足音で存在を敏感に察知するはずだろう。これほど逃げ場のない閉ざされた空間の中で、サトウという人間は、一体どうやってそれほどの数の獣たちを『支配』し、大人しく従わせていたんだ……」


「いいえ、そうではありませんよ」


 ヒルネはくすっと小さく笑うと、20号の誤解を解くように優しく微笑んだ。


「サトウさんは支配するのではなく、怪我を負った者や、まだ森では生きていけない幼い動物たちを管理し、手厚くお世話をしていただけですのよ」


 20号は思わず首を傾げ、完全に呆然とした表情でヒルネを見つめた。


「ドウブツ……?」


「あ、それは『獣』と同じ意味の呼び方です。あの家にいた犬が、そこに運ばれてくるすべての生き物たちのことを、そう総称して教えてくれました」


 ヒルネはそっと目を細め、懐かしい記憶の糸を手繰るように静かに語りかけた。


「最初にあの場所へ連れて行かれたとき、私も他の動物たちと同じように、恐怖と不安でいっぱいでした。あの二本足の生き物――人間が、自分を食べてしまうのではないかと怯えていたのです。ですが、それは思い描いていた姿とは、全然違っていました。サトウさんは、まだ幼かった私の面倒を見てくださるだけでなく、毎日食べ物を運んでくださったのです。いつの間にか、その人間に、親しみを感じるようになっていきました」


 20号は、 その場所にいたヒルネが抱いていた心理の変化――恐怖や不安から、あの人間への親しみへと至るまでの軌跡に、どこか不思議な感覚を覚えずにはいられなかった。


「そうか……支配ではなく、管理、か……それに、獣どもに定期的に食料を分け与え続けるなんてな」


 20号はなおも思慮にふけるように低く呟いた。


「その人間は、まるで狼王のようだな」


 彼は遠い虚空を見つめながら、頭の中で二つの存在を重ね合わせていた――。


「ええ、その比喩はとても正しいと思います」


 ヒルネはそっと20号の横顔を見つめ、どこまでも澄んだ、温かい声を響かせた。


「私は今でも、あのサトウさんに対して、深い感謝と『敬意』を抱き続けているのです」


 20号は迷いを振り払うように顔を上げ、ヒルネの瞳をまっすぐに見つめ返した。


 その清徹な眼差しと、低く静かな声には、確固たる決意が満ちていた。


「よし、決めた。子供が生まれたら、俺はあの人間のやり方に倣って狼たちを管理する。狼王みたいに、威嚇で群れを支配するような真似はしたくないんだ。我が子たちには、心の底から俺に『敬意』を抱かせたい。群れが互いに支え合い。そして……」


 20号はうつむき、先ほどの14号と18号のことを思い浮かべた。


「差別もいじめもない群れを作りたい」


「いいですね。それなら、私はあなたを応援します」


 ヒルネは喜びを瞳に浮かべて深く頷き、20号の優しい理想と、まだ見ぬ未来へ思いを馳せた。


「あ、だがな! 先に言っておくが、階級制度そのものは残すからな! 俺の『狼王』って立場まで、勝手に無くされちゃ困るからな……」


「ふふ、はいはい。かしこまりました、狼王様」


 急に子供のように慌てて立場を主張し始めた20号がおかしかったのか、ヒルネはついに耐えきれず、楽しそうに笑い声をあげた。


「あんたたち、本当にくだらない妄想が得意だね」


 その時、二頭の幸せな笑い声を切り裂くように、すぐ近くの木陰から冷ややかな声が響いた。


 驚いて顔を上げた20号とヒルネの目に飛び込んできたのは、茂みの影からゆっくりと姿を現した、あの小柄な雌狼――18号の姿だった。


「18号……!  お前、ずっと盗み聞きしてやがったな……!」


 20号は瞬時にヒルネを背後にかばうように立ち上がり、鋭い警戒の視線を18号へと向けた。


「だったら何だって言うの?」


 18号は特に動じる様子もなく、少し気だるそうに前足を毛づくろいしながら、無感情な声で続けた。


「ええ、さっきから全部聞いてたよ。自分たちの手で差別もいじめもない『群れ』を起こすだって? すべての狼が互いに守り合う? ……ねえ、そんなメルヘンみたいなことが、本当にこの狼の世界で実現できると思ってるわけ? 呆れたね 」


 そんな容赦のない言葉を聞いた瞬間、ヒルネは慌てて二頭の間に割って入ると、必死に声を張り上げて弁明した。


「できます、18号さん! だって、私はあの家にいた犬と、本当に仲良く暮らしていましたから……!」


 しかし、その弁明は18号の冷酷な一言によって、無慈悲に遮られた。


「ふーん、なるほどね。あんたがあの犬と仲良くなれたのなんて、ただ『人間が間にいたから』じゃないの?」


 18号は前足を動かすのを止め、死んだ魚のような、しかし冷徹な瞳でヒルネを射抜いた。


「もし、あんたの言うその犬がこの領地に迷い込んできたら、どうなると思う? ……生きてここを出られるわけがないじゃない。あんた、本当に分かってて言ってるの?」


「それは……」


 ヒルネは言葉に詰まり、耳をシュンと寝かせて立ち尽くした。


 野生の法則を突きつけられ、反論の言葉が喉に引っかかったのだ。


「おい、言いすぎだろ? 18号」


 それまでヒルネを背後にかばっていた20号が、ついに低く唸るような声を出し、一歩前に踏み出した。


「なに? 文句でもあるの?」


 18号もまた恐れることなく一歩前に踏み出し、20号と正面から対峙した。


 自分よりも遥かに体格が大きく、不満と怒りを露わにする雄狼を目の前にしても、彼女の瞳には微塵の恐怖も浮かんでいない。


「お前ら、ずいぶん楽しそうだな」


 ――だが、これほどまでに張り詰めた空気を無慈悲に踏み潰すような、地を走る重低音の唸り声が響いた。


 二頭の間に割って入るように、闇に溶け込むように姿を現したのは、この群れの絶対的な統治者――狼王だ。


 さらにその背後の陰からは、巨体を揺らす沈黙の黒狼ゼロ、そしてどこか気まずそうな11号が、静かに付き従うように現れた。


「ろ、狼王様……!」


 その圧倒的な威圧感と、すべてを見透かすような覇気の籠もった視線に、不敵に立ち回っていた18号は、まるで落雷に怯える子犬のように瞬時に縮こまり、慌てて脇へと退いた。


「そういえば、最近、毎朝のように鼻を突く泥の臭いが漂ってきてな。その匂いは……今、お前と、その最下位の雌狼から放たれているものと、全く同じだな」


 狼王は意図的に声を低くし、冷徹な双眸で20号をじっと射抜いたが、20号はこうして問い詰められることを疾うに予期していた。


 骨の髄まで凍るような威圧を正面から浴びながらも、その内心には、恐怖など一ミリも生じてはいない。


「狼王様、これは……」


 20号が淀みなく言い訳を口にしようとした。――だが、その言葉が最後まで紡がれるよりも早く、地鳴りのような咆哮がそれを遮った。


「お前は黙れ!」


 狼王の氷のように冷たい一言に無慈悲にねじ伏せられたものの、20号の眼光は未だ衰えず、狼王の動向を油断なく見据えていた。


 すっと移されたその視線は、背後に控える11号へと冷酷な一瞥をくれた。


「11号。確か、この泥の臭いは以前、お前の体からも漂っていたな。何か内情を知っているのではないか」


 その地鳴りのような問いかけに、11号は内心の焦りを押し殺し、背筋を正して狼王の前に一歩出た。


 彼はこの群れの絶対的なルールを弁えている。


 狼王の前では、言葉遣い一つ、語尾一つとっても無礼は許されないのだ。


「はい、狼王様。数日前、私は20号、そして最下位のヒルネを伴い、あの泥地へと赴いてまいりました」


 11号は淀みのない丁寧な敬語で、事実のほんの一部を口にした。


 だが、狼王の冷徹な一言が、さらに深く11号を問い詰める。


「ほう、何のためにわざわざそいつらをあの泥地に連れて行った?」


 11号は無意識のうちにヒルネへと視線を向けた。


 その眼差しは、言葉にならない謝罪の念を必死に訴えかけているようだったが、すぐに目を伏せて地面へと視線を戻した。


 そんな彼の目を、ヒルネは決して目を背けなかった。


 それどころか、どこまでも穏やかで、最上の優しさを湛えた瞳で、11号の謝罪を包み込むようにそっと応えたのだ。


「20号が普段使っている泥地の臭いが薄くなり、自身の足跡や行方を隠しきれなくなっていたためです。それで、私の使う泥地へ案内してほしいと20号に乞われました。最下位のヒルネは、その折にちょうど居合わせたまでにございます……」


 11号は平然とした様子でその経緯を語ったが、その表情には、どうしても隠しきれない後ろめたさが滲んでいた。


 それと同時に、彼は己の信念をも裏切っていたのだ。


「お前、嘘は吐いていないな」


 11号の顔を値踏みするように射抜く狼王の疑心の眼差しに、背筋を凍らせながらも、彼は必死に声を絞り出して最高敬語で応えた。


「は、はい……! 一切、ただいま申し上げた通りでございます」


「妙だな……嘘みたいな顔をして、嘘ではないと言った」


 狼王が獲物を狙う猛獣のようにゆっくりと11号の周囲を回り、いたぶるかのように一ミリたりともその双眸を外さないその圧倒的な覇気の前には、誰もが息をすることすら忘れ、ただの一頭として声を出す者はなく、全野が完全に静まり返っていた。


「そうだ。別の話がある」


 狼王は重々しく口を開くと、静かに、しかし地響きのような声で語り出した。


「昔、別の群れで最下位の狼だった頃の話だ。狩りを終えたばかりの立派な鹿が、晩餐となった。当然、狼王が満腹になるまでその鹿に近づくことすら許され。だが、当時の私はあまりにも飢えていた。だから、奴が鹿の肉からほんの短時間だけ離れた隙を突き、密かにその脚を一本引きちぎると、肉を咥えて遥か遠くの僻地へと逃げ延びたのだ」


 狼王の視線が、20号をじっと値踏みするように動く。


「だが、その脚はあまりにも巨大で、独りでは到底喰らい尽くせぬ代物だった。そこで浅くも深くもない穴を地面に掘り、食べ残しを、近くに生えていたひときわ匂いの強いドクダミと一緒に土の中へと埋めたのだ。……奴は激怒し、肉を盗んだ不届き者を四方八方探し回った。連中がその場所に差し掛かった時、漂うドクダミの強烈な臭気を可笑しく思ったのだろうな。鼻を近づけて嗅ぎ回り、その土盛りの上に、私の微かな残香を感じ取ったのだ」


 ゆっくりと歩を進め、20号の目の前へと立ち塞がった。


「奴は何の躊躇いもなく、一直線に私の元へと歩み寄り、極めて威嚇的な口調でこう問い詰めた。――『お前、何を隠した?』と。……さて、20号」


 その瞳をじっと見つめ、低く、冷酷な微笑みが浮かんだ。


「今の俺なら、あの時の言葉を少し変えてこう問いかけるな。――お前、何か隠し事をしているんじゃないのか?」


 狼王の圧倒的な威圧感を前にしても、20号の瞳に微かな動揺すら浮かばない。


 ただ、射抜くような視線で狼王をじっと見つめ返していた。


「今すぐ話さなくとも構わん。遅かれ早かれ、お前が話す機会すら二度と訪れぬようにしてやるからな」


 そう言い残すと、狼王は眼光でゼロに合図を送り、共にその場を立ち去ろうとした。


 だが、背を向けてほんの数歩歩みを進めたその時、背後から20号の静かな、しかし凛とした声が突き刺さった。


「それで……?  そのお話はその後、一体どうなったというのでしょうか?」


 不意の問いかけに、狼王の身体が微かに硬直した。


 それはまるで、20号が己に対して明確な「抵抗の意志」を示したかのような、不敵な響きを帯びていたからだ。


 傍で見守っていた18号の瞳に驚愕が走る。


 今の20号の行動は、暴君の逆鱗に触れる自殺行為そのものだった。


「お前、いい度胸だな……」


 狼王は20号を改めて値踏みするように見つめ直すと、すぐさま軽蔑に満ちた眼光で射抜き、さらに言葉を続けた。


「よかろう、教えてやる。俺は嘘を吐いた。最初から、肉を土に埋めてなどいない。独りでは喰らい尽くせぬあの鹿の脚を、俺は当時、同じ階級にいた同僚の元へと放り投げた。そして『これは狼王様から俺が賜った肉だ。食いきれぬからお前に分けてやる』と騙したのだ。……あの愚か者は大喜びで肉を貪り食っていたよ。奴が、そいつの目の前に現れるその瞬間までな」


 狼王はわざと言葉を止めると、過去の悪行を心から楽しむような、おぞましくも邪悪な笑みを浮かべた。


「当然、そいつは必死になって俺の罪を告発しようとした。だが、いかなる釈明を並べ立てようとも、奴の目には、己の罪を逃れるために俺を陥れようとする醜い『責任転嫁』にしか映らん。……結局、その同僚は、その場で奴に首根っこを噛みちぎられて果てた」


 話はそこで終わった。その語りに先ほどのような圧迫感はなかったが、まるで別の仮面に付け替えたかのように剥き出しにされた「邪悪」は、その場にいたすべての狼たちを芯から戦慄させるに十分であった。


 だが……このおぞましい「本性」すらも、すべては狼王の「偽装」に過ぎなかった。


    *


「あー、疲れた……」


 夕暮れ時、木陰を離れてゼロと共に岩洞へと戻った狼王は、その瞬間にただの腑抜けたオヤジへと変貌し、まるで風船の空気が抜けたかのように地面へとへたり込んだ。


 そしてこの姿こそが、狼王の隠された「本当の姿」であった。


(なんじ)は優しくなったな」


 透き通るような清らかな声が響く。


 それと同時に、ゼロの巨大で漆黒の影が、地面に突っ伏した狼王の傍らへと歩み寄った。


「はぁ?  俺はいつも優しいだろ」


 狼王は顔を伏せたまま、不機嫌そうに片目をそっと開けた。


「以前なら、汝は疾うにあの子と噛み合いになっていただろう」


 ゼロは問いかけるように言った。


「無理だ。あの野郎、本気で俺に牙を剥くつもりだった。しかも11号だけでなく、18号までもが少し揺らぎ始めていた。あの状況で、もし俺が本当に噛みつきに行ってたら、確実に負けていた」


 狼王はひどく不機嫌そうに、しかしそれでもなお、冷静にそう判断を下した。


「確か、あの子は立派な狼だと思った。だが、汝がわざと見逃すはずもないか」


 ゼロがそう問いかけると、狼王はゼロをチラリと一瞥し、それからゆっくりと身体を起こした。


「お前、俺を誰だと思ってんだ。クソ野郎、噛みつくぞ」


 言葉が終わるや否や、狼王はゼロの頭をガブリと甘噛みしたが、ゼロは微塵も動じることはなかった。


われは暴力を嫌う。だが、汝が必要とするのなら……」


 ゼロがそう暗示を投げかけると、狼王もまたその言葉の裏にある真意を汲み取った。


 目の前の巨大な黒狼が、今の己に狼群を守る力があるのかどうか、その信頼に動揺を覚え始めていた。


「悪い、兄弟。心配をかけた。この件は俺が必ずケリをつける」


 狼王は表情を引き締め、先ほどまでの冴えないオヤジの姿を完全に霧散させた。


「なら、どんな処分を?」


「無論、死刑だ」


 狼王は確固たる眼差しで、20号とヒルネに対する最も残酷な判決を下した。


 だがその時、傍らにいたゼロが、狼王の顔へと自身の鼻先をそっと近づけた。


「どんな死刑か?」


「うっ……」

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