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拉致(episode317)

もちろんアニメ化はおろか、書籍化の話すら来ていません。まあ細々やってます。

 目を覚ましたら両手両足を縛られて猿轡なのかなんなのか分からないがなんか布を噛まされている。生憎目にもなんか巻き付いていて視界も見えない。なんか揺られているからどこかに運ばれているんだと思う。私、どうなっちゃうの!?


 いや、真面目な話。詠唱というか魔法の構築が上手くいかなくてそのまま捕らえられちゃった訳だけど、ここが元の世界なら死んでたかなって思う。


 さすがにこの世界は殺人は犯罪みたいだから衆人環視の元で私を殺すというか処分出来なかったんだろう。となれば私をどこかの「処理場」に持っていくのかな?


 ガタゴト揺られながら辺りの様子を伺う。と言っても見えてないからなんとも言えないんだけど。車の中には数人の気配がする。恐らくさっきのやつらだろう。で、なんか登ってるような感覚があるからどっかの山に登ってるのか? まあ山の中に不法投棄のゴミ捨て場があったりするって話も聞くし。


 とりあえず脱出の為には私の手足の拘束を解かないと。いや、すぐに解けるんだけどね。風の刃でちょちょいと切れ目を入れとこう。とりあえず止まるまでは様子見だ。


 おっと、止まったみたいだ。私の身体が持ち上げられ、どさりと地面に落とされる。その弾みで顔の布がずれた。右目が見える。場所はなんか薄暗い廃屋? 床が木でできているのはわかる。周りには五人ほどが囲んでいる。外にはもっといるんだろう。


「さて、アジトまで連れて来たがどうする?」

「依頼主に引き渡せば良いじゃねえか。その分ボーナスが出るんだろう?」

「その通りだ。だから手を出すなよ。なんか聞き出したい事があるらしいから精神崩壊は困るんだと」


 精神崩壊って精神崩壊するような事をしようと思ってる奴がいるのか? いや、今までにそういうことをしてきたということなのかもしれない。


「つまんねえなあ、せっかくの女なのに」

「そういうなよ。こんなデブを抱かなくてもスリムないい女が抱けるさ。今回の報酬でな」

「馬鹿野郎、報酬は革命の為の資金にするに決まってるだろうが。武器に弾薬わ揃えなければならないものは多いのだぞ」

「リーダー。そうは言いますが、こいつらだって窮屈な思いをしてるんだ。たまに羽根を伸ばさせてやってくださいよ」

「ちっ、仕方ないな。報酬の額次第だが考えておいてやろう」


 リーダーの言葉に一同が湧いた。なんだこれ。うーん、まあ私は「デブ」だから抱きたくないいうのは理解したし、助かったと思う。一応美少女のつもりだったんだけどなあ。えっ、図々しいって? きっとアニメ化の折には素敵なイラストレーターさんが綺麗に描いてくれるもん!


 それはそうとしてどうやら「依頼主」とやらは私の頭の中身をご所望らしい。だから殺されなかったのかあ。まあボーナス欲しいもんね。女体抱きたいんだもんね。こんな山奥拠点にしてんなら女には不自由してることだろうし。


 とりあえずその「依頼主」とやらが来るまで待ってようかな。でも転がってるだけってやることないんだよね。ゴーロゴロ、ゴーロゴロとかも出来ないし。


 とりあえず頭の中で魔法を構築しとこう。大光量の光で目潰しして手足の縄を引きちぎってダッシュ。目と口の布を剥いで牽制に火魔法でもぶっぱなそうか。木の小屋はよく燃えそうだ。大音量の騒音で邪魔されるといけないから消音魔法掛けといて。よし、とりあえずスピーカーは無力化したぞ。


 とかやってたらなんかエンジン音が聞こえてくる。山道を黒い高級車で登るのは至難の業だと思うんだけど。多分あちこち傷付いてると思う。


 黒い高級車が止まって降りてきたのはクソ眼鏡。それとなんか高そうなスーツを着た精悍な男性。筋肉的にはこっちの方が好み。


「捕らえたそうだな」

「確認してくれ」


 クソ眼鏡は私の顔をまじまじ見つめてにやあって笑った。気持ち悪っ。もう一人は興味無さそうにしている。


「確かに。こいつに間違いはない。よくやってくれた」

「そうかい。じゃあ報酬の方だが」

「わかっている。振込だと足がつくからな。現金で持ってきた。車に積んであるから持って行け」


 そう言って車のトランクを開けさせるとそこには札束が詰まっていた。さすがに「こんなモン、ケツを拭く紙にもなりゃしないってのによぉ!」みたいな世紀末ではないので当然ながら紙幣もバンバン使える。


 男たちが札束に群がってるともう一人の方の男が合図をした。するといつの間にか潜んでいた黒いプロテクターを着けた奴らが展開していた。なんか、これ、ヤバくない?


「撃て」


 静かにスーツ男が号令を下すと周りを囲んだ奴らが一斉に札束に群がってる奴らに弾丸を叩き込んだ。


「うわっ、な、なんだ!?」

「これは、テメェ、裏切りやがったな!」

「ぐぎゃあ、助けてくれぇ!」


 それはまさに地獄絵図。私も見ているしか出来なかった。クソ眼鏡はスーツ男の方を見て言う。


「殺したのか?」

「もちろんだ。こいつらはテロリスト。八洲の安全のためには生かしておいても為にならん。清秋谷けいさつとしては見逃す訳にもいかんからな」

「正義の名に偽りなしか」

「ふん、兄さんの命令でなければ一時的にでもテロリストと手を組むものか」


 どうやらスーツの男は兄とやらの依頼でいやいや来たみたい。余程兄とやらを信頼してるんだろうな。いや、信望かな。でもあの顔どこかで見た事ある様な。人違いかなあ。


「そいつを連れて行くんだろ? さっさと運べよ」

「わかっている。おい、こいつを車に載せろ」


 潮時ってやつかなあ。麓に着くまで待機しててもいいんだけどなんかろくなことになりそうに無いし。よし、動きますか。私は手足の縄を引きちぎって、立ち上がり、それと同時に閃光を広範囲に展開した。


「何!?」

「動けたのか!」

「ぐあああ!」


 悲鳴が上がる。私は急いで目隠しと猿轡を外す。クソ眼鏡はなんか目を抑えて「目が、目がァ」とか言ってる。スーツ男は咄嗟に防いだのか、こっちをすごい表情で睨みつけてきていた。うわっ、こりゃやべぇぞ。

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