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第三百十四話 脱王

国王陛下「やったー、自由だー!」

???「くくく、はじめてですよ……この私たをここまでコケにした国王陛下おバカさんは」

「国王陛下、ご機嫌麗しゅう」

「お前、全然敬う気ないだろう。なんで面会の手続きいつもすっ飛ばして来るんだ」


 国王陛下はなんか書類に判子をついてた。お仕事ご苦労さまです。あの書類って単に判子つけばいいってもんじゃないんだよね。確認出してぺったんぺったんつるぺったんするだけなら何の苦労もないんだよ。


 いや、こないだね、そんな風に判子押してたら後でラヴィアに叱られてね。あの子、ダミーの書類混ぜてたの。それが三人の給料を倍にするって書類。いや、私としてはそれでも構わないんだけど、そもそも給料出してるの私じゃないしね。


 で、そういうのはやめろと言われて気をつけて確認しながら判子を押してるんだよ。お陰で書類の処理が捗らないったら。


 で、私でそれなんだから国王陛下の机には山積みの書類がある訳ですよ。うんうん、分かる分かる。うんざりするよね!


「ちょっと憂さ晴らししませんか?」

「何をやらせる気だ?」

「実は今アンダーゲートに貴族が来ててですね」

「誰だ?」

「デブンシャ子爵、とか名乗ってましたけど」

「ああ、奴か。何度か拝謁した記憶がある。確か魔法至上主義派閥だったはずだが」


 その通り。よくご存知で。で、そいつがアンダーゲートの領主を呼んでこいと言われたので王様を迎えに来たという話をしました。国王陛下は「剣をやったろうが」って言ってましたが、「どこで盗んだんだとか言われたくなかったので」とか返しときました。


「お前の言うことはわかった。しばし待て。支度して来よう」


 国王陛下は部屋を出て行ってしばらくして戻ってきた。なんか近衛騎士なのか何人かつれてきてる。なんだろう、威圧用かな?


「一人で行くつもりだったんだがこいつらがどうしてもついて行くと聞かなくてな」

「当たり前です! 王城の外に出るなんて言語道断ですよ!」

「キューが居るから心配は要らんだろう」

「ダメです! 冒険者は信用出来ません!」


 随分な言われようだがこれはまあ仕方ない。何せ近衛騎士というのは代々王城に仕える事を前提として選ばれた家の人達だけで結成されたロイヤルガードなのだ。私なんて何処の馬の骨か分からないような冒険者風情だもの。まあそもそもこの世界の人間ですらないんだけど。魔臓もないし。


「分かりました。じゃあ転移しますんでなるべくかたまってくださいね」

「我々に指図するつもりか?」

「あ、嫌なら置いて行くんで」


 私がそう言うと渋々ながらも従ってくれた。最初からそうしなさいよ。は? 馬車で? いやいや、それは出来ません。安全は保証しますんで大人しく従ってくださいね。


 私は転移テレポートを発動した。うん、アンダーゲートまでなら一回で来れるようになったね。もしかしてよく行く場所は転移テレポートしやすくなるのかな?


「ふむ、海の匂いがするな」

「はい、港町なので」

「なるほど。アンダーゲートだな」


 国王陛下は深く息を吸い込んでいた。近衛騎士の皆さんもそうすればいいのに、とは思うが国王陛下の身を守る事が第一らしくリラックスとかはしてない。


 転移した場所から徒歩でこの街一番のホテルに向かう。あ、もちろんエイリークさんのところじゃないよ。お金持ちしか泊まることを許されないような豪奢な建物だ。


「よし、では入るか」


 私は気後れしたけど、国王陛下はなれてるのか意に介さない様だ。そのままホテルの中に入る。エントランスで従業員が出迎えるが近衛騎士たちを見て血相を変えた様に走り寄ってくる。


「あの、お客様方はどちらの」

「うむ。この街の領主となったものだ」

「そ、そうですか。前の領主から代わったのは知っておりましたがあの小娘二人と思っていたんですけど」

「彼女らはよくやってくれている。今後ともよろしく頼む」

「はっ、分かりました!」


 ホテルのかなり偉い人なんだろうな。なんか直立不動の体勢で返事をしている。これは国王陛下に畏れ多いとかよりも後ろにいる近衛騎士の皆様の「不敬を許さない眼光」が怖かったのかもしれない。


「デブンシャ子爵は?」

「はっ、当ホテルの一番の部屋に。ご案内致します」


 そう言って昇降機に私らを乗せてくれた。あ、やっぱこういうホテルではあるんだなあ。


「デブンシャ様、お客様がお見えです」

「通せ」


 中から偉そうな声が聞こえる。私だけ中に入るよ。


「お待たせしております」

「遅いぞ。まあ領主とやらは連れて来たのであろう? とっととそいつを連れて来い!」

「はい、分かりました。領主様、こちらです」


 私の合図で国王陛下が部屋の中に入ってきた。その途端にデブンシャ子爵の顔が青ざめる。


「こっ、国王陛下!? ど、ど、ど、どうしてここに?」

「どうしても何も領主を呼んだのであろう? 直轄地の領主は国王たる私だからな」

  「ちょっ、直轄地ぃ!?」


 素っ頓狂な声をあげるデブ。


「それで、金を請求した上に、自分に恥をかかせたことを面罵めんばしてやる、だったか? なかなか面白いな。やってもらおうか」


 いや、国王陛下。近衛騎士が囲んでるこの場で国王陛下を面罵したら不敬罪で首と胴がサヨナラーになっちゃいますよ? あ、近衛騎士たち、誰が処断するか決めてるのかな? そういうのは処断される本人の前でやらない方が優しさだと思うんですけど。


「い、いえ。陛下を面罵などとそんな……はははははは」

「それでこの街に金を貸していたと?」

「そ、その通りでございます。金貨八十枚でございます」


 国王陛下はうんうんと頷いた。


「それは大金だな。渡したのはシンターになのだろう? 本人に直接請求するがいい」

「は? それはどういう」

「まあ奴は取り調べ中だからな。同じ拷問……取り調べの部屋に入ってもらうことになるが別に構わんだろう?」


 今、拷問って言った!? いやまあそりゃあ拷問して吐かせてるんだとは思ってたけど。あ、デブ豚野郎が真っ白になってる。まあ不敬罪で拷問というのも可哀想とは思うけど、自業自得だよね!

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