反骨(episode313)
四季咲、参戦!
ステフが紹介してくれたのは比較的小さなリース会社。と言っても別に大手じゃないから問題なのかって訳でもなく、むしろそういうしがらみとかないので影響を受けづらいみたい。
その中の一社にお邪魔した。受付に美人さんが座ってる。ふむ、なるほどねえ。
「こんにちは。社長さんはいらっしゃいますか?」
「どなたでしょうか? アポイントメントはお取りですか?」
「いえ、飛び込みで申し訳ないんですけど是非ともお話を聞いていただければ、と」
「そうですか。あいにく社長は不在でございます。戻りましたらご連絡差し上げますので連絡先を……」
けんもほろろに追い出そうとする。まあ所作は綺麗だし納得だね。
「そうですか。まあ受付嬢さんも大変ですね。赤ちゃんのお世話」
「あの、私はまだ独身なんですが?」
「いえ、あなたの本当の子どもじゃなくてお世話してる赤ちゃんがいるでしょう? おしゃぶりまで咥えてたり」
その言葉に思い当たる節があったのか、受付嬢は顔色を変えた。というか血の気を失い青ざめている。
「もう一度聞きますね。社長さんはご在社ですか?」
「…………少々お待ちください」
そんな感じで通された。脅し? 違う違う。これは立派な交渉術だよ。
「お前たちか……うちみたいな小さな企業に脅しをかけても大して金は出んぞ?」
「あ、いえ、お金が目的では無いです。むしろこっちが払いたいくらいで」
「なんだと?」
「私、こういうものです」
私が差し出したのは「ユグドラシルCEO」の名刺だ。そう、作ったんですよ。名刺カッターとか言って壁に投げつけたら未涼さんから拳骨くらいましたが。
「ユグドラシル、というとあの酔い醒ましの薬の? いや、うちはパチンコ台のリース屋ですよ? なんか勘違いしてませんか?」
「いえ、私は古森沢の人間なんですが」
「その様ですな。で、それが? 失礼だが八家の圧力に屈するつもりはありませんぞ?」
受付嬢と二人きりの時はバブバブ言って甘えてるのになあ、なんて事は言ったりしない。思ってはいるけどね!
「ご覧の通り、私は古森沢の実子ではありません。この見た目の通り、八洲の人間でもありません。私を引き取ってくれたのが古森沢の人間なだけです」
「ふむ、八家とは関係ない、と?」
「いえ、その私の義父が古森沢の本家に睨まれていて、パチンコ台のリース契約を一方的に破棄されました」
私の話を聞いてピクリ、と反応する社長、この人、気骨のある人で反逆精神旺盛というか、八家にギャフンと言わせたいと思ってるらしい。まあでもバブバブ(以下略)
「そこでうちに?」
「はい、御社なら妨害にも負けずにリースさせてくれるかと思いまして」
「なるほどなあ。ふむ、少し考えさせてくれ」
そう言って懐からタバコを取り出して火を……あれ、タバコにしては大きいし、なんだか形が……っておしゃぶりじゃねえか! いや、私らにバレてるからって遠慮ねえな!
「普通の商談ではタバコを咥えるんだがな、君たちにはバレてるからもうこっちで構わんだろ。この方が落ち着くし」
タバコを吸うのは口が寂しいかららしい。おしゃぶりはずっと咥えていられるから安心だとか。霊気でも凝縮して魔封環でも撃つつもりですか?
「うち一社だと潰されるかもしれんな。色々伝手を当たって数台ずつで分散させることにしよう」
この社長、割と人望もあるらしく、同業者にも慕われてるんだそうな。いや、社長で、カリスマで、頭もそこそこ良さそうで、顔も割と整ってるのに、おしゃぶりかあ。
「ありがとうございます。義父も喜びます」
「いや、八家に立ち向かおうなどというのは余程の事だ。協力させてもらうよ」
そこにドアがノックされて先程の受付嬢がお茶を持ってきた。
「失礼します。社長、お茶をお持ち……何やってるんですか?」
「あ、マミー。この方たちとの商談が決まったんだ」
「その呼び方は二人だけの時にしてください、恥ずかしい。いえ、あれですか? その方のおっぱいに惑わされましたか? 確かにそれに比べたら私のは物足りないかもしれませんが」
お前は何を言ってるんだ? いやまあそういう趣味の人なら乳房にこだわりがあるのかもしれない。大きいことはいいことだって言うし。こっちの世界でも言うよね? えっ、でかけりゃいいってもんじゃないってことを肝に銘じろ? 女性の敵? そ、そんなあ。
「いやいやあんなお化けみたいな大きさは手に余るよ。マミーくらいの手にすっぽりと収まるくらいがちょうどいいんだ」
「社長……」
なんでそこで目を潤ませてんだ。いやまあ二人とも独身なんだし結婚すればいいんじゃね? えっ、何? 結婚したらマミーって呼べない? 奥さんと夫じゃなくてマミーと赤ちゃんがいい? いやもう勝手にやっててください。
それから社長を伴って何件かのリース会社を回った。どの会社も社長の顔があるからかスムーズに話が進んだ。終わる頃にはしっかりと台数が確保出来ていた。
「社長、ありがとうございました」
「八家がどんな嫌がらせをしてくるか分からん。気を付けてくれたまえ」
「はい、一緒に頑張りましょう」
社長と別れて源三パパのところに。パパは台数が確保出来たと聞いてほっとしていた。まあ少し割高にはなるんだけどね。その辺は仕方ない必要経費だよ。足が出た分は私が補填するし。あれ、電話だ。
「おう、薬師殿。何やら古森沢の本家から喧嘩を売られたらしいの」
「耳が早いですね」
「まあの。わざわざ鷹月歌の御曹司がご注進してきたわい。で、どうする? 融資を止めるか?」
なんか物騒なことを言ってきた。いやいやそんなことしたら八洲全体を巻き込む経済戦争になっちゃうでしょうが。
「やんなくていいです。向こうは兵糧攻めできたのでこちらは別口で兵糧を確保したところですよ」
「なるほどなあ。そこの社長に言っといてくれ、なんかあったら四季咲の本丸まで来てくれと。薬師殿の名刺を出せばフリーパスで通してやるように言っておこう」




