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圧力(episode311)

パチンコ屋のリースだの、買い切りだのは適当。八洲ではこうなんだくらいに思ってください。

「源三パパ、何があったんですか?」

「ああ、ちょっとな」

「ちょっとな、じゃありませんよ。だから何があったんですか」

「ふう、身内のゴタゴタに巻き込みたくはないんだがなあ」


 パパはため息を吐いた。いや、むしろゴタゴタに巻き込んでるのは私の方だと思うんだよね。


「ティアはこの店の遊戯機の殆どがレンタルだということは知ってるかね?」

「え? あ、うん。時々入れ替えとかあるけど、買いきってる訳じゃなくて借りてるんだよね」

「そうだな。まあ買ってる台もあるが新品のはレンタルで回している」


 まあうちの店には古い機械を懐かしんで打つ人も居るし、そんな台は少ない金でたっぷり遊べるようになってる。当然ながらリターンも少ない。アケミさんが打ってたのはそんな台の一つだ。一世を風靡した二人組の音楽ユニットの曲が流れるやつだ。なんでもパパがファンだったんだと。なるほどねえ。今度凪沙と一緒にコスチューム着て踊ってあげようか?


「その新規のレンタルを今後は断るという通達が来てね」

「それをあのクソ眼鏡が?」

「クソ眼鏡はやめなさい。あれでも私の兄なんだ。一太兄さんは私や龍二兄さんの事が嫌いでね。事ある毎にいじめられてたんだよ」


 やっぱりあのクソ眼鏡は潰す。今決めた。パパをいじめるやつは許さない。


「だから龍二兄さんが家を出る時に私もついて行ったんだ。龍二兄さんには本当に世話になったよ」


 なんでもお店を作る時の出資金とかの元手も諾子さんの口利きで「ある時払いの催促なし」ということになったそう。身内贔屓にも程があるよ。


 最初は何でも屋をやるとか言って身体ひとつで駆け回ってたんだけど知り合いのおじいさんから遊技場をやらないかと譲られて今に至るそうな。そのおじいさんは数年前に天寿を全うされたそうな。


 で、遊戯機のレンタルしてる会社の株主がクソ眼鏡に変わってて、今後はうちと取り引きしないという話になったそうだ。これ、完全なる兵糧攻めだよね。


「よし、今からそいつを殴りに行こうか」

「殴っても解決しないでしょ。オーナー、他にあてはあるんですか?」

「うむ、メーカーから直接仕入れることが出来れば急場は凌げるが」

「新たなレンタル先を探さないと続かない、という事ね」


 とりあえず遊戯機のメーカーに直接取り引きをしてもらいに行くことに。まあ乗りかかった船だし、私のせいでもあるしね。あ、アケミさんはとりあえず私の秘書ということで雇いました。


「よろしくねー、ティアちゃん。あ、いや、CEOか」

「ティアちゃんでいいですよ。仕事の場だけちゃんとしてください」

「はぁい。でも区別つかなさそうだからCEOって呼ぶね」


 という訳で早速源三パパ、私、アケミさんの三人でメーカーさんに。受付に行ったものの社長は留守。まあ当然だろう。どこの誰とも分からないやつに会うなんて事はない。


「そうですか。実は遊戯機の大量購入を考えておりまして」

「少々お待ちください。……はい、そういう方が。はい、はい、あ、そうですか。分かりました」


 受付のお姉さんは内線をかけて誰かを呼んでくれた。私らは会議室に通されてしばらくお待ちください、とお茶を出された。


 一時間。待っても誰も来ない。これは長く待たせるアレだな、なんて思ってこっそりお電話。


「君から掛けてくるとは珍しいね。メアリーとイチャイチャするのに忙しいから後にしてくれないか?」

「溜まってる貸しをそろそろ返して貰えないかと」

「あー、まあそれを言われると。ナジュドとか米連邦の事とかあるもんね。わかったなんかあったら言ってよ」


 とりあえず保険は掛けておこう。ジジイに頼んでもいいけど借りになりそうだし、それなら貸しがたっぷりある鷹月歌の方がいいよね。そんなのどうなるかは分からないけど。


 二時間が過ぎ、三時間に差しかかろうとした時にドアが開いて偉そうなオッサンが入って来た。横には腰巾着なんだろうせせこましそうなのがくっついてる。


「いや、お待たせしたかね?」

「いえ、お忙しいところありがとうございます」

「私はこういうものだ」


 差し出された名刺にはこの会社の名前と営業担当役員と書いてあった。名前はまあ覚えなくていいか。


「どうも。私は小さいながらもホールを運営しております……」

「あー、名刺はいい。要らんよ。いちいち小さいホールの担当の名前なんぞ覚える価値もない」


 尊大にそんな風に言うと葉巻を取り出して咥える。腰巾着がライターを取り出し火をつける。ぷはぁと吐き出された煙が私たちの顔にかかる。煙たい。殴っていいかな? いいよね? ダメ?


「それで、一体うちから何台くらい仕入れたいと?」

「はい、三十台、いや、五十台は……」

「話にならんな。帰れ」


 源三パパの言葉を遮って帰れと言う。いくらなんでもあんまりじゃないかな?


「それはどういう」

「聞こえんかったか? 帰れと言ったんだ。五十台? バカにしてるのか? 桁が違うんだよ。何百台単位で話持ってこい。そうでもなきゃ、()()()()()()()()()()()お前らに加担する旨みなんてなかろう」


 なるほど。待ち時間が長かったのはこっちの事を調べてたからか。なら仕方ない。裕也さん、出番ですよ。と思ったけどどうやったらひっくり返せるのかわかんない。とりあえずダメ元で、と思ったら電話が鳴った。


「やあティアさん。メアリーが先に貴方のことを優先しないとイチャイチャさせてくれないって言うんだよ。何とかしてくれないか?」

「おい、貴様! 私が喋ってるのに電話に出るなどと無礼な真似を。おい、それを貸せ!」


 そう言って私のスマホを引ったくった。


「おい、今は商談中だ。まあこいつらはすごすご帰るだけだがな。お前が誰かは知らんがワシの楽しみの邪魔をするんじゃない!」

「そうですか。確かそちらは遊戯機のメーカーさんでしたね。申し遅れました。私は鷹月歌裕也と申します」


 あ、凍りついた。裕也さん、電話越しに氷結魔法でも使った?

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