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見送(episode309)

料理酒と清酒は米からして違うそうです。奥が深い。

 あくだいかーんの言葉に胡蝶さんはニヤリと笑った。


「お気付きでしたか」

「ふむ、まあ古森沢でも似たようなのは飼っとるからな」

「楓魔は飼っているのではありません。その能力を買っているのです」


 飼ってるとか買ってるとか八洲語はやっぱり難しい。勝ってる? 狩ってる? ガッテム!


「それに……友と呼ばれたものに守られっぱなしでは黒曜の名が廃りますから」

「ふむ、なるほどのう。今度は十分な戦力を用意しておくことにしよう」

「さて、ティアは強いですわよ。楓魔総動員で掛かって勝てるかどうか」

「参考にするとしよう。お客様がお帰りだ。玄関までお見送りして差し上げろ」


 そう言うと脇息が置いてあるちょっと高くなった部分が人が乗ったまま、ういーんと上に上がって行った。何あれ、すごい! 寝たまま移動出来るってやつ? うちにも導入出来ないかな?


「珍しい機構ではありませんがあまり意味はありませんわよ」

「えっ、なんで?」

「上下移動しか出来ませんから。右記島の工業部門でも注文が来なくて」


 あ、右記島製だったのか。いやまあそうだよねえ。我がァ、右記島のォ、科学力はァ、世界一ィィィィィ! だもんね。それはそうとあそこにひれ伏して居た人たちが私たちの後からぞろぞろと着いてくるんだよね。恐らくあのあくだいかーんに言われたからそうしてんだろうけど。


 外に出ると黒塗りの高級車が停まっていた。こ、これは、もしかして、あの、不幸にも追突される車!


「縁起でもないことを言わないでちょうだい」


 胡蝶さんは何も不思議がる事なくスタスタと車に向かって歩いていく。後ろの方では私らを見送りに来た奴らが頭を下げていた。あー、なんだか分かんないけど手とか振った方がいいのかね?


「お帰りなさいませ、胡蝶様」

「ありがとう狭霧。出迎えご苦労」


 胡蝶さんの前に颯爽と現れて後部座席のドアを開けたのは狭霧さんだ。あー、そういえば狭霧さんって胡蝶さんのボディガードだっけ?


「お久しぶりです、狭霧さん」

「ご無沙汰しております、ティア様。どうぞお乗りください」


 後部座席のドアを開いたまま狭霧さんが言う。あー、私も乗っていいのか。いや、一人で帰れって言われても困るんだけど。キューみたいに転移なんか魔法で出来ないって。


 狭霧さんは助手席へ。運転するのは運転手さんが別にいるらしい。胡蝶さんは車の中にある棚(なんであるの?)からワインを取り出して飲み始めた。


「あなたもる?」

「いえ、未成年なんで」

「私の車の中は治外法権よ?」

「二十歳超えたら堂々と飲みますのでその時は付き合ってください」

「……わかったわ。友達、ですもんね」


 ふいっと顔を赤らめて横を向いた。私の言葉に狭霧さんが騒ぐ。


「良かったですね。友子さん以外にも友達が出来て」

「狭霧! うるさい!」


 キシャーとなっているが顔が赤いままだ。いや、これはお酒のせい、ということにしておこう。


「胡蝶さんはなんで引っかかったんですか?」

「連れ去るならあなた一人と思ったからよ。それにあなた一人ならなんとでも出来るでしょう?」

「それはどういう?」

「私を攫うという事は右記島に喧嘩を売るという事だからよ。古森沢とも密接に繋がってる右記島にね。どうやら相当切羽詰まってるようね」


 あー、家同士の何とかみたいなもんか。いや、それで胡蝶さんが攫われてるのはどう処理するんだよ!


「だから私たちをすんなり返した。建前上は古森沢の店で具合の悪くなった私を本宅で介抱した、ということになるでしょうね」

「それで通るんですか?」

「私が騒がなければね。だからティアも無傷で帰すという選択にしたのでしょう」


 あー、なるほど。私は飽くまで「オマケ」程度なんだね。胡蝶さんがメイン。あれ? というか胡蝶さんからは若返りの水の話は出てないよね?


「胡蝶さんは若返りの水には興味ないの?」

「あるわよ。すごいわね、あれ。肌が見違えるようだわ」


 あー、なるほど。友子さん経由で既に胡蝶さんのところには来てるんだ。で、原料が魔法水って事まで知ってる。だから私がいないと成り立たないとわかってるから無理強いをしてこないんだ。


「胡蝶さん」

「それ、やめなさい」

「え?」

「胡蝶さん、だなんて他人行儀だわ。呼び捨てでいいから」


 そう言うとますます顔を赤くしてワインを注いで飲み干した。なんだよ、可愛いかよ。


「えっと、じゃあ……胡蝶」

「何かしら?」

「胡蝶は魔力水要らないの?」

「要るに決まってるでしょう。あるだけ全部出しなさい」


 いや、これは失言だったかも。胡蝶さんには魔力水を研究する施設もあるんだからそりゃあ欲しいよねえ。


「あ、えーとじゃあ今から胡蝶さんの研究室に」

「三箇所ほどあるからそこに全部お願いね」


 どうやら第三研究室まであるみたい。いや、もしかしたらそういうストック設備がない研究室も合わせたらもっとあるかも。というか病院だって胡蝶さんの研究施設だもんなあ。


 ん? あれ? キューからなんかテレパシーが。なになに? タコの下処理の仕方? 私が知ったことか! タコってあのうねうねしたやつでしょ? まあたこ焼きに入ってるからわかるけどどうやって調理するのよ。ちょっと待ってね。


「胡蝶、聞きたいことが」

「何かしら?」

「タコの下処理の仕方知ってる?」

「……は?」


 時が止まった。


「いきなり何かしら」

「いや、ふと疑問に思って」

「知らないわよ、料理なんかしないもの」

「タコは水で洗って塩で揉むんですよ」


 助手席から狭霧さんが答えてくれた。何でも料理はそれなりに得意なのだとか。助かった。


「そうすればぬめりが取れますからお湯で湯掻いてください。吸盤に汚れが溜まりやすいので念入りに。生で食べるなら二分も茹でれば茹で汁の色が変わります。保存するなら五分くらいは茹でた方が良いですね」


 で、氷水で締める……揚げるなら下味とかもつける、と。醤油と料理酒? 普通のお酒で良いよね?

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