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第三百八話 丸投

シャーロッテをシャロと呼ぶのはアンナだけです。

「ただいま。あー疲れた……ってキューさん!?」


 みんなが宴もたけなわになってるところにアンナさんが帰ってきた。お勤めご苦労さまです!


「キューさん、今から代官府に来ませんか?」

「真っ平ごめんですう」

「うわぁーん、手伝ってくださいよお!」


 代官となってシャーロッテさんを手伝ったはいいものの、街の今後のこととか政策のこととか国王陛下に言っても、


「街のことならお前らが一番良くわかってんだろ?」


 って言って何にもしてくれないんだとか。あの国王陛下なら有り得るかも。


「いやいや、アンナさんが仕切ってやらせてるんでしょう? メイドさんたち仕切って」

「いやだって、私の同僚とか先輩とかですよ!? それなのに若造な私が指示を出すだなんて考えただけでも胃が痛い」


 この子こんなにアレなメンタルだっけ? もっと図太かった気がするんだけど。


「それだけ?」

「サボれなくなったんですよ。前は先輩たちの目を盗んでこっそり休憩したりしてたのに、今ではひっきりなしに人が入ってきたりするからずっと張り詰めっぱなしで」


 まあ私と違って転移テレポートでどっか行くとかは出来ないもんね。ん? アンナさんがこれならシャーロッテさんは?


「シャロは私に全部任せる、とか言って街を飛び回ってます。何でも生きた街の声を聞くんだとか」


 あー、なるほど。視察とかそういうやつ。いや、視察にかこつけて遊んでるって可能性もあるのか。とりあえず明日シャーロッテさんのところに行ってみるか。


「わかったわかった、明日一緒に行こう。ね?」

「ありがとうございますぅ」


 それからアンナさんにもビールを出してあげた。エールは普段から飲んでるらしいからまあいいかなって。さんざん管を巻いて寝ちゃった。まあ同情する部分もあるしなあ。


 アディ君とパンドーロちゃんを宿に置いて私はアンナさんと代官府へ。まあ元は領主館なんだけど。


「おはようございます」


 メイドさんは挨拶もきちんとしてる。私の顔を見て特には何も反応してないんだけどそういうもの?


 代官執務室に通された。シャーロッテさんが居るのかと思ったらここはアンナさんの部屋なんだって。


「シャーロッテさんは?」

「そのうち顔を出すと思います」


 とか言ってたらバーンと扉が開いた。シャーロッテさんがすごい笑顔で立っている。


「おはよう、アンナ!」

「シャロ、また海に出てたんですか?」

「当たり前だろ。あたいは海に生きる女なんだ」

「シャーロッテさん、お久しぶり」

「あ、あの時の私らに全部押し付けて逃げたやつ!」


 そんな風に思われてたのか。いや、私は逃げられないようにシャーロッテさんのお母さんのアルテミシアさんを連れてきた位で。いや、十分に酷いか。


「その節はどうも。今日はアンナさんに請われて視察に来ました」

「視察ぅ? 必要なのか? アンナが全部上手くやってくれてんのに」

「シャロ! 私に何でもかんでも丸投げするのはやめてください!」


 私という虎の威を得たからだろうか。シャーロッテさんへの抗議が始まった。いやでも前はシャーロッテさんよりもアンナさんの方が偉かったみたいな構図だったよね。


「なっ、なんだよ、アンナだったらできるだろ?」

「出来るものと出来ないものがあります! 予算は有限なんですよ? それなのにあっちに行っちゃあ約束して、こっちに行っちゃあ約束して」

「だってみんな困ってんじゃねえか!」

「優先順位、というものがあるでしょうが!」


 あー、構図が見えてきた。代官としてシャーロッテさんが意気揚々と頑張る。だけど実務はだいたいアンナさんがやるのでやることが無い。いやまあこの時点で既に歪んでるんだけどそれはそれ。


 で、やることないからシャーロッテさんは海に出たり、街を見回ったりする。そうするとシャーロッテさんはみんなから声を掛けられ、あれに困ってる、これに困ってる、代官なんだから何とかしてくれよ。と都合のいい言葉を並べられて唆される。


 シャーロッテさんは「任せとけ!」とばかりに張り切って持ち帰り、アンナさんに丸投げする。で、アンナさんが精査してみると緊急性も必要性も何もない。あったらいいなぐらいの話だ。しかし、代官として約束してきた事を反故にするのは評判に関わる。


 つまり、アンナさんは次々と積み上がっていくパズルを全部解かねばならないという状態に陥る。いやまあこれ、詰んでない? 積んでるだけに。


 変えるならそれなりのゲームチェンジャーによるブレイクスルーしかない訳だ。それで私が呼ばれたのね。よし、まず行くところは王城だ! ほら、二人とも支度して!


 転移で王城に。受付の門番なんぞ知ったことか。そのまま城内に入る。陛下の居場所もだいたいわかってるが、なんかの会議中とかだとまずい。これでも配慮は出来るオンナなのですよ。


 お、まだ朝早いからか自室でのんびりしてるね。おはよーございまーす。


「うおっ!? な、なんだ? キューじゃねえか」

「あ、どーも。今日はゲスト付きです」

「お久しぶりです国王陛下」

「あ、どーも」

「……誰だっけ?」


 この国王陛下全部忘れてんのか? 頭の中に手ェ突っ込んで掻き回してやろうか!


「あのねえ!」

「いや、ちょっと起き抜けだから名前が出てこなかっただけだ。アンダーゲートの代官を命じたアンナとシャーロッテだろう? ちゃんと覚えているとも」


 良かった。ポンコツでは無さそうだ。創造神がポンコツなのに国王陛下もポンコツならどうしようかと思ったよ。


「それで今日は何の用だ? アンダーゲートで何か問題でも起こったのか? それならアンナとシャーロッテの良いようにしてくれれば」

「それですよ、それ!」

「はあ?」


 国王陛下はなんで怒鳴られてんのかわかんないという呆けた顔をしていた。


「なんで全部アンナさんとシャーロッテさんに丸投げなんですか!」

「いや、だって代官ってそういうものだぞ? いちいち国王自ら指示なんてしないんだからな」

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